転生したらラプラス・ダークネスだった件 作:飽和水溶液_pixiv
実はずっと前から作るだけ作っていたのですが、わたくし飽和水溶液にはTwitterアカウントが存在します。特に何か重要なことを書き込むつもりはありませんが、執筆状況や私の気に入ったホロライブ関連のツイートをRTしていければなと思っています。また一応DMも解放しておりますので、ホロSSに関してリクエスト等あれば受け付けます。構想が生まれそうなら書きます。まずは、フォローの方からお願いします。
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【追記】
今回の深堀シリーズもお休みです。決して手を抜いているとかではなく、本編を頑張ったからです。本当です。
「どうして……どうしてあなた達holoXは、るしあ達の星を襲ったのです?」
潤羽るしあから告げられたその言葉は、ラプラスにとって全く予想だにしていないことであった。
吾輩たちが、るしあ先輩たちの星を襲ったって?……え、ちょっと待て。一体何の話だ???
「いや、あの……吾輩には、何のことかさっぱりなんだが……」
「とぼけないでよッ!!……よく考えたら、ヒントはあったのです。魔の力を強く感じる”ホロベーダ―”と、大悪魔の生まれ変わりと呼ばれ星々を征服している貴方……むしろ、この宇宙に出てから関係性を疑わない方がおかしかったのです。……この、侵略者……!!」
怒りと、殺意に満ちた眼差しを向けながらるしあはそう言った。
しかし、その身に覚えのなさすぎる疑いにラプラスは本気で頭を捻る。侵略者【ホロベーダ―】とは、確か先輩方の星で幼体が発見されたという存在だったはずだ。またその会話内容と名前から、るしあ先輩たちの住処を荒らしている奴らと勝手に認識している。
そんな奴らと、我々holoXとの関係性?……あ!もしかして、そのホロベーダ―を自分たちの星に仕向けたのが吾輩たちの仕業だって思われてるってことか!?
「は?!待て待てお前、吾輩とそのホロベーダ―とやらは完全に無関係だ!!……大体、どうして吾輩たちがお前らの星を襲わなくちゃいけないんだよ!」
るしあ先輩から向けられた疑惑の意味を理解し、それは何かの間違いであるとラプラスは主張する。というか、一体何処からそんな話が出てきたんだ。さっきまで、そんな素振りは無かったくせに……。
数時間前にラプラスがこの船の船長室で会話を盗み聞いた際に、ホロベーダ―の存在とholoXへの対処について示唆されていた。しかし、その二つは全く別の内容として処理されていたはずだ。ホロベーダ―はその幼体が彼女たちの故郷と思われる星に出現したという話で、holoXに関しては捕らえた侵入者を利用して交渉をするつもりだと。またその時はるしあ先輩もあくあ先輩もholoXを怒っているような感じでもなく、むしろ穏便に事を済ませようとしているように見受けられた。
それが、今になってなぜholoXと事を構える気になってしまったのか……。
だが、その理由や真実をラプラスは知ることが出来ない。それは相手側にもはや対話の意思がなく、またその真実はどうあれ置かれている状況的にその誤解を解く術がないからである。そして、必死に訴えた自分の意見さえあっさりとるしあ先輩には否定されてしまった。
「そんなの……るしあが、知るわけないのです。むしろこっちが聞きたい。どうして貴方たちは躊躇いもなく、数々の星を襲うことが出来るの?奪われた、犯された人達の気持ちを考えたことある?……まあ、どうせ考えたこともないよね。貴方は”悪魔”で、るしあ達の敵。それで十分なのです」
「……こっちの話なんて、端から聞く気も無いってことか」
るしあ先輩から指摘されたことについて、その内容からラプラスはそれを強く否定できないでいた。何故なら彼女たちの星を直接襲っては無くとも、そう疑われても仕方ないだけのことを自分たちがしてしまっているからであった。我々holoXは吾輩の力を封印するため、『ラプラトナイト』を探すために宇宙中の星々を征服している。それは今の吾輩がしたことでは無かったが、今の吾輩が向き合わなければならないことでもあった。
しかし、今この場においては自分たちのしていることを棚上げし彼女らを説得するのは不可能だろう。力も、立場も状況も平等ではないこの場において、るしあ先輩の怒りを収めるだけの術を吾輩は持ち合わせていない。口で吠えるだけでは人の心を変えられないことはフレンズ王国の件で学んだし、今回ばかりはここで吾輩が大人しく捕まったところで事態の悪化以上の成果は得られないと思われる。それに……また吾輩が捕まりでもしたら、今度こそ幹部たちが宝鐘海賊団と本気でぶつかりかねないしな。
「さぁ……貴方もここで大人しく捕まるか、さもなければ殺されて欲しいのです。……大悪魔、ラプラス・ダークネスッ!!」
そう言ったるしあ先輩が手を前に突き出すと、後ろに控えていたゾンビたちの数体がこちらに向かって迫ってきた。その足取りはゾンビという名の通り決して早いものでは無かったが、吾輩たちを狙っていることは確実でこの場に留まっていては接触は避けられない。
「ラプラス様、お下がりください。……ここは、私が対処いたします」
護衛のラプツナズの隊員がそう言って前に出る。腰の鞘から刀を抜き、両手で構え敵を見据えた。
しかし、ラプラスは今ここでやり合ったところで意味は無いと考える。一度状況をリセットするべきで、るしあ先輩と話すにしても時間をおいて場を整えるべきだ。
「待て、今やり合っても意味は無い。ここは……一先ず、”逃げるぞ”」
戦略的撤退。不利な場面は逃げるに限る。
そう思ったラプラスは、踵を返し各棟を繋ぐ連絡通路をA棟側に向かって走り出した。また総帥からの指示を受け、護衛の女もそれに従い同じく駆け出す。
「絶対、逃がさないのです。……”ふぁんでっと”っ!」
しかし、そううまくはいかない。ラプラスたちの行動を見たるしあもまた、想定の範囲内であったと”通路の反対側”で待機させていた部下たちに呼びかける。するとA棟側、ラプラスの進行方向上からも数体のゾンビたちが姿を現しその道を塞ぎだした。
「まだいたのか、どんだけ居るんだよゾンビ!!」
一本道の廊下で、ラプラスたちは完全に挟まれる。
しかし、後ろにはるしあ先輩が居る以上無理矢理にでも前に突き進むべきだ。
「おいお前、”アレ”何とかできるか?!」
そう判断したラプラスは、走る足を止めずに前方の障害を排除しろと部下に指示を出す。すると、彼女も待っていましたと言わんばかりにその刀身をゾンビたちへと向けた。
「お任せくださいませ。……多少、手荒にはなってしまうかもしれませんが」
ラプラスの数歩先に素早く移動し、迫りくるゾンビの一体へと刃を突き立てる。そして先程とは違い、明確な攻撃命令を受けた彼女は躊躇いなくその身体を一刀両断してみせた。今も彼らが正式なこの船の船員である可能性があるので、必要以上に傷つけることは憚れるわけだが……襲われている以上仕方のないことだし、相手はゾンビなので多少のことは大丈夫だろう。
「……」ーーザシュッーーバシュッーー。
(……一応人の形をしてるものを、無言で切り伏せてくコイツ……普通にゾンビより怖いだろ)
自らが命じたとはいえ、一言も発さずに敵を切る部下の姿にラプラスは若干引き気味になる。いくらゾンビと言ったって自分たちと同じ人の形をしているわけだし、当然赤黒い血や臓物などもたくさん飛び散っている。しかし当の本人はそれを気にした様子もなく、淡々と命令をこなしていた。
「流石、最強の組織って言うのは伊達じゃない……でも、多勢に無勢。しかもこの逃げ場のない船内で、どこまでやれるか見ものなのです」
後ろから迫るゾンビに続いて、いつの間にかこちらに近づいてきていたるしあ先輩がそう言っていた。確かに、これはその場の一時凌ぎにしかならない。それにここは大きな宇宙船の中であり、言うなれば袋の鼠状態なのだ。そんな中で、逃げると言ったって限界がある。
(どうする……ここで吾輩が捕まったところで、問題の解決に繋がるとは思えない。でも、流石のこいつも一人で戦うには限界があるだろうし……)
護衛の彼女は、今尚眼前に立ち塞がるゾンビたちと戦っていた。勿論こちらが抵抗の意思を見せているので、相手も複数人が同時に襲い掛かってくる形になっている。いくらラプツナズが精鋭の中の精鋭部隊であり強いといっても、このままではジリ貧だろう。
「……ラプラス様。ここは、私に任せていただけませんか?ラプラス様の逃げるまでの時間を稼ぎます」
「え…?」
ラプラスが打開策を考えていると、いきなり護衛の女がそんなことを言い出してきた。
吾輩が逃げるまでって……まさか、ここに一人で残るつもりなのか。
「任せろって……お前はどうするんだよ!潤羽るしあは、吾輩たちを恨んでる。……捕まったら、何をされるかわからないんだぞ」
「だからこそです。そんな者達に、ラプラス様を差し上げる訳には参りません。……それに、私のような雑兵より総帥であるラプラス様が生き残る方が組織の為にもなります。どうか、ご自愛ください」
「なっ……お、おい、ちょっと待て!」
そう言った彼女は、既に覚悟が決まっているようだった。また切っても切ってもバラバラの身体のまま迫りくるゾンビたちの対処をすべく、ラプラスの返答を聞く前に再度走り出してしまう。
ーー総帥の、自らの主君の通る道を切り開くために。
「……」
そんな勇敢にも自分のことを守ろうとしてくれる護衛の姿を見て、ラプラスも腹を括った。一度逃げると決めたからには、最後までちゃんとやりきる。そして、こいつの勇気とその行いを無駄にしないためにもきっちり場を改めて状況を打開してやろうと。
「悪い……お前の行動、絶対に無駄にしないぞ」
相手に届いたかは定かではないが、ラプラスはそう呟くと彼女の作ってくれた隙を利用し船内のA棟方向へと走り出す。後ろからゾンビたちのうめき声と、るしあ先輩の殺意に満ちた声が聞こえた気がした。しかし、ラプラスは振り返らない。愛する部下が命懸けで作ってくれた時間を無駄にしないために、彼女らの攻防と喧騒が聞こえなくなるまでラプラスはその廊下を駆け抜けるのであった。
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「……まんまと、逃げられたのです」
ラプラス・ダークネスが去った後の渡り廊下。
彼女を逃がすため一人残った女を縛り上げるように指示を出したるしあは、特に焦った様子もなくそう言った。
「まあ行先については大方予想がつくし、この船からいなくなったわけじゃないから別にいいのです。……あなたの頑張りも、全部無駄だったね」
この船の中で一人になったラプラスが、その後に取る行動など大体予測できる。それに直接的な攻撃力は無くとも、『霊体』のふぁんでっとならるしあと同じく”透明になった者を索敵出来る”のだ。肉体を持つ死体さん達と違って、現世に魂だけの存在である彼らだからこそ可能なことなのだろう。
「は、ぁは……何も、無駄な事なんて無い……」
「……へぇ?」
逃走した悪魔の対処についてるしあが考えていると、ふぁんでっとによって組み伏せられている女がそんなことを言い出した。ラプラスが逃げるまでの時間を作り出すためにこの場に残ったその者は、先程までたった一人で複数の部下たちと渡り合っていた。とは言いつつも、流石に数の力には敵わなかったようで今はこうして傷だらけになりながらお縄につこうとしていた。大した戦闘能力だとは思うけれど、先日大変暴れてくれたあの【沙花叉クロヱ】に比べればなんてことはない。
「無駄じゃないって、それどういう意味?……例えあの少女が大悪魔ラプラス・ダークネスだったとしても、あんなキッズ一人に一体何が出来るって言うのです?ここはいわば、宇宙空間を漂う監獄船。捕まるのは時間の問題だと思うけど?」
「お前は、何もわかっていない。……あの御方は、全宇宙をまたにかけ不可能を可能とする秘密結社holoXの総帥ラプラス・ダークネス様だ。あの方さえ居れば、我々の勝利はもはや確定しているッ!」
死体さん達の常人離れした腕力に押さえつけられながらも、彼女はそう叫んでいた。その言葉からは、自分の主人に対する絶対的な信頼が感じられる。いや、もはやこれは崇拝や偶像と言った宗教の類だ。
だからこそ、その聞いているだけで吐き気のするような心酔っぷりが気に入らない。何があの御方だ、何が勝利だ……その何の役にも立たない、ただの自己満足で身勝手な〖功績〗とやらのせいで一体どれだけの人々が悲しむことになると思っている。
「……人から幸せを奪って得る勝利が、そんなに嬉しい?他人を蹴落とすことでしか立てられない功績が、そんなに誇らしい?……流石は、大悪党なのです。貴方達は本当に救われない。…………ふぁんでっと、こいつも牢に入れといて。出来るだけ他の捕虜とはバラけさせてね」
「ア゛ア゛ウ゛……!」
るしあから指示を受け、死体の兵隊たちはそれに従う。逃げたもう一人の方についても、霊体の子たちを何体か捜索に回せばすぐに見つかるだろう。
そう思ったるしあは、踵を返してひとまず自室に戻ろうとした。
ーーーしかし、そこでふと先程感じたとある”違和感”を思い出す。さっきは怒りのあまり、特段気にはならなかったのだが……本人が去った後で、よくよく考えてみれば『彼女』にはおかしな点があった。
「そう言えば……あのキッズ、なんで魂を”二つ”も持ってたんだろう……?」
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……どれくらい走っただろうか。
無我夢中で船の中を走り回り、孤独な逃走劇を繰り返していた。
「ハァ、ハァ、ハァ……!!……くそっ、なんで……あいつら、吾輩の居場所が一々わかるんだ?!ハァ、ハァ……」
連絡通路で護衛の女と別れてから、ラプラスは度々遭遇するゾンビ達から逃げながら機内を巡っていた。しかし、何故かどの部屋に逃げても、物陰に隠れても、必ず発見されてしまうのである。まるで、どこかから自分のことを監視でもしているかのように。
「はぁ、はぁ……悪いな、クロヱ……お前の”銃”、使っちゃったぞ」
そう言ったラプラスは、自分の利き手に握られている黒光りした得物を確認した。それは、ラプツナズの隊員経由で幹部から捕まっている新人に渡してほしいと言われた『風呂敷包み』の”中身”であった。
ラプラスはこの船に潜入する前に、自分たちの乗ってきた宇宙船の中で部下からとある荷物の入った風呂敷を受け取っていた。その中身は沙花叉クロヱの私物であり、幹部が気を利かせて用意してくれたものだという。またその時に直接中を確認したりはしなかったが、新人の物という事とその風呂敷の重さや擦れる金属音から中に入っている物におおよその見当がついていた。
それはズバリ、沙花叉クロヱが仕事に使用するための『武器』達である。より具体的に言うのであれば、大きな刃の付いたサバイバルナイフや新人愛用の自動拳銃等であった。それらはこと暗殺、もしくは戦闘任務に欠かせないものでありこれらはそのスペアであろう。それを、敵に捕まっているクロヱの為を考えて幹部が吾輩に持たせてくれたのだ。
そして、その気配りが効力を発揮し今の吾輩を守ってくれていた。吾輩が一人、武器も無しにこの船の中を逃げ回るには限界がある。先程も言った通り何度かゾンビとも遭遇していたし、力が封印され腕力だけで言えばただの少女と変わり無い吾輩にはその脅威を排除するための『手段』が必要だったのだ。当初の幹部の想定していた使い方ではなかったかもしれないが、それでも総帥である吾輩を守ってくれる結果となっていた。
「……まあ、流石に初めて撃とうと思った時は躊躇したけどな」
銃の使い方については、幸いにも元の世界で映画やゲームから色々と知識を得ていたので何とか使用することが出来た。しかしゾンビとはいえ、仮にも人の形をしているモノに銃口を向けることは流石の吾輩でも躊躇いが生まれた。いくら吾輩を捕まえようと迫ってきているからと言ったって、これを撃ち込めば相手は肉体的にも『死』を経験することになるのだ。
「……でも、いくら迷っても結局引き金は引けたんだよな。その辺が、吾輩が悪魔って呼ばれる所以なのかな……」
FPSゲームなどでは数えきれないほど引いたその引き金が、実際にはこんなに重かったなんて知らなかった。それに撃った時に起こる反動で肘が痛かったし、飛び出した空薬莢の火薬の匂いがきつかった。そして、それ以上に何より自分が撃った弾が相手の脳天を突き抜けその中身をぶちまけたあの光景を忘れられずにいた。もっとも、それも三人を超える頃にはそれどころではなくなっていたが。
「…………で、ここどこだ?」
乱れた呼吸がようやく整い、ラプラスは先程自分が逃げ込んだ室内の様子を確認した。
吾輩は現在、宝鐘海賊団二番船のA棟の”どこか”に居る。さっきるしあ先輩から逃げる時に連絡通路を渡ってから、それ以降一度も使用していないのでそれだけは確実である。しかし、その追手を振り切るために何度か階段を上り下りしたり、部屋を突っ切ったりしたので詳細な場所は判明していない。
そして、今はその中でもひときわ静かで、広く薄暗い部屋の中で身を隠していた。……あの非常に不愉快で、気分が悪くなりそうな程甘ったるい匂いのするこの部屋に。
「う゛っ……ここは、一段と匂いがきついな……」
部屋中に充満する強烈な香りに、ラプラスは鼻をつまみたい衝動に駆られた。もしかして、暗殺部門達の報告書にもあった『甘い匂い』というのはここが元凶で匂ってきているのではないだろうか。
ラプラスはそんなことを考えながら、幹部に持たされていたハンカチで口と鼻の周りを覆った。すると突然、服の中に居た”何か”がモゾモゾと蠢く感覚に襲われる。そして、それが思わずくすぐったくなり上着の一部を引ん剝いて懐に隠していたある”小動物”をその中から解放した。
「ぷはぁ!……おいおい、何だよこの匂い。キツ過ぎて鼻が曲がりそうだ」
今の今まで事の成り行きをずっと見守っていた相棒が、あまりの刺激臭に耐えきれなくなったのか服の隙間から顔を出してそう言った。
実は博士の作ってくれたヘッドギア式宇宙服は、厳密にいえばそれを被っている者だけではなくその周りに膜の様なものを生成させる装置らしい。つまり、烏くらいの小さな生き物であれば一緒にくっついて船内に潜入することが可能なのである。まあ今までだってずっと一緒に居たわけだし、今更置いてくるのもどうかと思ってここまで連れてきたのだ。もっとも、こいつの声は吾輩以外には聞こえないらしいので今まで一言もしゃべっていなかったわけだけど。
「ようやく出てきたか烏、ずっと音沙汰がなかったから心配してたんだぞ」
この船に潜入する直前に、ラプラスは烏を自分の服の中に隠していた。それはいつもの定位置である頭の上が万が一ヘッドギアの範囲外だったら困るし、潜入中に走ったり隠れたりする時に邪魔だと思いそうしていた。しかしそれ以降、吾輩が途中休んでいた時も含めずっと顔を見せなかったのである。
「ああ悪かったな。思ったよりもあるじ様の服の中が居心地よかったもんで、半分くらい寝てたんだ」
「寝てたのかよッ!!」
こんな状況下で、よくもまあ落ち落ちと眠れたもんだな……って、それは吾輩もか。
しかし、何だかんだ言いつつもこいつが起きて来てくれたことは素直に嬉しいと思った。何故なら今の吾輩は敵陣の中でたった一人であり、これからこの状況を打開しなければならないからだ。その為の知恵を絞る頭数は、一つでも多いに越したことはない。
そう思ったラプラスは、未だ服の中に入り込んでいる烏を掴んで外に解放してやった。すると、地面に着地しつつこちらを振り返る。
「まあまあ、そういうなよ。……ところで、ここは何処なんだ?いやに”腐敗臭”が籠ってるみたいだが」
「…………は?」
寝起きの目を羽根で擦りながら、烏はサラッとそんなことを言い出した。
腐敗臭って、何を言って……。
しかし、そこでラプラスはハッとする。
先程まで自分のことを追いかけまわし、この船で遭遇した奇怪な『あの者達』のことを。
「まさ、か………………っ!?!?」
おまけに、この船は宝鐘海賊団の二番船であり【潤羽るしあ】の管轄の船なのだ。本業が降霊術者【ネクロマンサー】である、あのるしあ先輩の。
ラプラスはその考えに居たり、途端にある予測が脳内を飛び交った。嫌な冷や汗が背中を伝って、悪い予感がどんどんと膨らんでいく。いよいよそれに耐えられなくなり、その真実を確かめるべくヘッドギアのライトを点灯させ再度周りを見渡した。
ーーーそして、その部屋がとんでもない場所であったことを認識させられる。
「…………なんだよ、ここ……」
そこは、大量の『死体』が保管されている【”死体保管庫”兼”潤羽るしあの研究室”】であった。