転生したらラプラス・ダークネスだった件 作:飽和水溶液_pixiv
少し気が早いですが、次話から遂に第二章も終盤戦を迎えます。いやーあまりにも長かったですね。話数的にはそれほどかもしれませんが、一話ごとの文字数が多かったこともあり体感一章の二倍近くかかっている気がします。果たして、宇宙を漂う海賊船の中で起きた事件の結末は如何ほどに……乞うご期待!
【追記】
今回の深堀シリーズはお休みです。本編もここ最近に比べてほんの少し短いですが、切りのいいところが見つからなかったのでこれで許してください。というか、こっちが普通だからッ!毎回毎回10000字クオリティはちょっとキツイです……いや書く分にはじっくりストーリーを展開できるので構わないのですが、それだと更新も遅くなるしいつまでたっても二章が終わらないです。ここだけの話、正直ラプクロのこのくだりは引っ張りすぎたなとは思ってます。構想の段階ではこれの半分くらいで終わる予定でした。しかし読んでくださる方々が思いのほか面白いと言ってくれていたので、つい擦りすぎてしまいましたね。
そう好評と言えば、前回の45話は私の想像以上に皆さんに受け入れてもらえたようで大変うれしかったです。この辺りは物語の世界観的に絶対やりたかったので、かなり好き勝手書いたのですがそれがいい味出せていたみたいです。是非この世界の空気感を噛みしめつつ、彼女たちの異様な関係と歪な感情を楽しんでください。ちゃんとオカシイんですよ、カノジョたちは。
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「…………きゅうひゃく……ろくじゅう、はちばん……」
あなたの問いに対し、私はようやくそう応えた。
しかし、それは質問をした者にとって満足のいく回答であるとは言えなかった。
「968番ン??それがお前の名前か?ヘンテコな名前だな」
”頭を撫でられる”という心地の良い感触をくれるあなたが、首を少し傾げながらそう言った。何だろう、”へんてこ”って……でも、よしよしされるの気持ちぃなぁ……。
「いや、それは名前じゃないでしょ。……それは恐らく、そのコの”製造番号”」
「……んなことはわかってる。コイツの足首についてるプレートに書いてあるからな」
すると、私とあなたのやり取りを後ろの方で見ていたらしいお姉さんが口を挟んできた。またそれを受けて、角の人はそっと立ち上がりそちらを振り返り答える。
「……ぁ…」
しかし、その際に角の人の手が私の頭から離れてしまった。それをとても名残惜しく感じて、思わず誰にも聞こえないほど小さな声を漏らす。だがそれは、目の前に居るあなたですら気が付くことは無い。
「製造番号、【0968番】……そう言えばあの工場を攻める際の下調べで、こよりが一部の被検体のリスト手に入れていたわよね。ちょっとそれ、見せてくれる?」
「えっ…!あ、うん……はい、コレ…」
お姉さんの要望に動物耳の子が応じると、”りすと”と呼ばれる何かが書かれた紙の束を手渡していた。それを見て、あの場所に居た怖い大人達の姿がチラつき嫌でも身が強張るのを感じる。
「どれどれ……あら、興味深いわね。『被験者0968は先天的に筋力の数値が突出しており、動物細胞移植実験で【オルキヌス・オルカ】の細胞に上手く適合できた数少ない成功例』……だそうよ。人工の獣人に近いのかしら、なんだか親近感が湧くわね。……このコは、たまったものじゃないでしょうけど」
その話は確か、何人かの怖い大人達がヒソヒソと喋っていたような気がする。他の子供たちに聞こえないように話していたみたいだけど、何故か私にはやけに鮮明に聞こえたっけ。……まあ結局、その内容についてはこれっぽっちも分からなかったんだけど。
「”おるきぬすおるか”ぁ……ってなんでござるか?」
先程お茶を淹れに行くと部屋を出て行った、フリフリとしておそらく絹で出来ているであろう洋服を着た女の子が戻ってきてそう言った。またその手には、一人分の湯呑を上に乗せた木製の丸い板を大切そうに持っている。
「さぁ……でも”動物細胞”というくらいだし、何かしらその類の名前だとは思うんだけど……こより、それについても調べてある?」
「えっ、あ……ご、ごめん、調べてない……」
お姉さんの質問に対し、動物耳の子がまたしてもオドオドとした様子で答えていた。
……何だろう……なんだかこの子を見てると、ちょっとだけモヤモヤする。その何にでもビクビクしてる感じ……なんかイヤだなぁ……。
「……【オルキヌス・オルカ】は一部の惑星に生息している海洋生物のことだ。哺乳類ではあるが体毛をもたないから”獣”かどうかは微妙なところだな」
「ラプ……知ってるの?」
「私を誰だと思ってるんだ。『ラプラスの悪魔』は伊達じゃないぞ。……それよりも、お前”シャチ”なのか。それはいいな」
あ、く……ま……?
角の人が言った、その『あくま』という言葉には聞き覚えがあった。それはあの場所で一緒になった、番号はもう忘れてしまったけどその子がいつも傍らに大事そうに持っていた『聖書』という本に書いてあった。その中で登場する悪魔はとても悪い者とされていて、私はそれを聞いて勝手に施設に居た大人達のことを指しているんだと思っていた。
でも……もし仮に、この優しくて心地良い温もりをくれる角の人が【悪魔】だと言うのなら……私にとっての、悪魔とはーーー。
「おい、キッズ。私はお前が気に入ったぞ。……そう言えば、お前に質問しておいてまだ自己紹介してなかったな」
私がそんなことを考えていると、角の人が突然その思考を遮るように口を開いた。そして、未だ困惑の最中に居た私の元へと再度歩み寄りあなたは名前を告げてくれたのだ。
「――私は、【秘密結社holoX】の総帥”ラプラス・ダークネス”だ」
角の人……ラプラス・ダークネスが、私の目の前で堂々とそう言った。
「私は……とある”崇高な目的”の為、この組織を創った。だが秘密結社とやらの運営は私も初めてでな、色々と手探りでやってる最中なんだが……一先ず今は、組織に必要な拠点と人材と……あとなんだったっけか?」
「……資金と後ろ盾、あとは実績ね。この組織がある程度大きくさえなれば万が一の保険も必要なくなるし」
ラプラスがほろっくす?というのについて淡々と語っていると、その説明に足りない部分をお姉さんが補っているようだった。しかし、今の私には難しい話すぎるあまりいまいち何を言われているのかわからない。
すると話を理解していない私を知ってか知らずか、ラプラスはとても分かりやすい一言を私に伝えてくれた。
「まぁ、そういうわけだ。…………そこでキッズ、お前私の”部下にならないか”?」
ラプラスの言葉を聞いた私は、その真意を理解せずともあなたが私に”何かを求めている”ということだけは分かっていた。何も持たず、何者でもない私にラプラスは何かしらの『価値』を見出しているらしい。
「勿論強制はしないが、私は意思無き者を側に置くつもりも無い。…………だから、選択肢をやる」
そう言ったあなたは、左右の手の人差し指をピンと上に立て真っすぐに私の前に差し出してくる。その時に、場違いにも『小さな手だなぁ…』なんて思ったっけ。
「――――ここで私の部下として働くか、それともどこにあるかもわからないお前の故郷を目指して一人で旅立つか……好きな方を選べ。生憎お前の今まで居た場所は私が滅ぼしたから帰してやれないが、どちらを取っても私はお前の意見を尊重する」
あなたが私に提示したのは、要はあなたの物になるか、それともここを出て自由と孤独を手に入れるかという事だった。
どうして、私がこの場所に連れてこられたのかはわからない。何故、この人が私にそんなことを言ったのかもわからない。一見すれば、それはあの地獄のような場所で体験したことと似ていた。知らぬ間に訳の分からないところに連れてこられ、やりたくもない仕事を無理やり強いられる。その時私は誰かの所有物であり、『どれだけ主人の役に立てるか』が私の存在価値。そんな風に、捉えようによってはこの場所とあの場所で本質は変わらないだろう。
……それでも、あの怖くて恐ろしかった大人たちと、この人とではあまりにも大きな違いがある。だから私は、ラプラスにそう問われた時既に答えが決まっていた。
「…………ここで、はたらけば…………あなたのそばに、ずっと居られるの……?」
奴らと、あなたとの違いは……『私を求めてくれている』ということ。私を必要としていて、私の存在を望んでくれている。それがラプラスの言葉や行動から伝わってきた。とても優しくて、温かいあなたの可愛らしい手からも。
……だからこそ、私もそれに応えてみたいと思った。
「……ああ、勿論だ。三食屋根付き寝床付きでたっぷりこき使ってやる」
私の”願い”に対し、あなたはそのすべて受け入れるというように笑ってくれた。その表情にホッとした私は、生まれて初めて自分で考えた『自分の意思』を口にすることが出来たのだ。
「……私を、ここにおいてください。……あなたのために、はたらきたいです……」
私を助けてくれたあなたになら、使われてもいい。ラプラスが『悪魔』だろうと、悪い人だろうと何だろうと構わない。だってあの時、あの場所で救いを求め続けていた私を見つけてくれたのはあなたなのだから。そんなラプラスの為になるというのなら、私は私の持つ全てをあなたに捧げる。
―――それが、私の誓い。
「ははっ……いい判断だ。歓迎するぞ」
私の返事を聞いたラプラスが、とても楽しそうに言った。
すると、私達の会話を横で聞いていたらしいお姉さんが話はひと段落したと判断したらしくこちらに近づいてくる。
「……まあ、あなたの判断なら私も文句は無いわ。一応あの工場の被検体だったのだから、何かしらの危険性はあるかもしれないけど…………ていうかラプ、三食屋根付き寝床付きって何。皆のご飯を用意してるの私だし、私とこより今回の件で数日寝不足なんですけど」
「うぇ!?……あー…まぁ、そうだな……ごめんルイ、今日からは五人分お願い出来たりしないかな……なんて……」
「えぇ、いいわよ。……ラプのおかずを一品減らすだけだから」
「ご無体なっっ!!?」
先程までとってもかっこよく見えたラプラスだったが、お姉さんのそのたった一言で泣きながら縋りつくという醜態を見せていた。しかし、それを間近で見ていた私はラプラスの株が下がるどころか面白い人だなぁとよりあなたへの興味を持つ。
そして、同じくその様子を見ていた他の二人もこちらへと寄って来ていた。
「新しいなかまでござるか!やったー、こうはいでござるっ!」
「い、いろはちゃんはラプちゃんの”ようじんぼう”なんだし、後輩かはびみょうだけどね……」
「どっちでもいいでござるよ。かざまは仲間がふえて、楽しくなれば!」
相も変わらず、ござるが口癖のござるちゃんは明るくて元気いっぱいであった。またそれに比べ、獣耳の子はあまりにも覇気がない。
でも……”仲間”、かぁ……。
「あ~確かに、コイツにも役職をあげないとだよな。いろはは私の用心棒、こよりはholoX自慢の頭脳、ルイは皆のお母さん……まあ取り敢えず、しばらくは【新人】ってことでいいか」
「誰がお母さんよ。私、一応あなたの右腕なんだけど?…………そういえばラプ、この”子”の名前はどうするの?流石に番号のまま呼ぶのはねぇ……」
お姉さんがそう言ったのを合図に、皆が一斉に私の方を向いた。だが今までにそんな誰かに注目された経験が無く、悪意が無いのはわかっていたが少しばかり警戒してしまう。すると、それにいち早く気が付いたござるちゃんが私を気遣う言葉を掛けてくれた。
「あっ、ごめんね?いきなりみんなに見られたら、びっくりするでござるよな。え、えーっと……968番ちゃん?心配しなくても大丈夫、かざまたちがちゃんとした名前考えてあげるでござる!」
「そうね。この子に元々の名があるならそれでもいいんだけど、それも無いなら私達で考えるしか……ねぇあなた。他にこう呼ばれてたとか、こう呼ばれたいとかある?」
ここに来てから一度もちゃんと目を合わせてくれなかったお姉さんが、ラプラスに負けないくらい優しい目を私に向けながら聞いてきた。こちらも先程までは少なからず警戒していたの感じていたし、このお姉さんの方を見るのを控えていたのだが……私がラプラスの誘いに乗った辺りから、それも徐々に薄れているようだった。
「なまえ……これいがいに、ない……他には…おマエとか、キサマとか…………あと、”キッズ”って……」
そう言った私は、直ぐ近くに居てくれたラプラスの方にチラッと視線を動かした。
「いや、キッズは名前じゃないんだが……それに、お前がデカくなったらそう呼ぶのもおかしいからな。仕方ない、私が直々にお前の名前を考えてやる。うーん、そうだな……」
私は別に、ラプラスが呼んでくれるなら何でも構わないと思っていた。しかし、本人を含め”仲間の皆”はそれだと不便だという事らしい。
そして、しばらく考え込んだ後にラプラスが徐に口を開いた。
「―――――【”沙花叉クロヱ”】、なんてどうだ?」
私の中に眠る、形状もはっきりとしない鈴がリンと鳴った気がした。
また、あなたは私に大切なものをくれたんだ。優しさと、居場所と、そして『名前』。
「あら、いいんじゃない?どういう意味なの?」
「『沙花叉』はオルキヌス・オルカの別名で、クロヱはまあ……そのままの”当て字”だな」
「あぁ……そういう、こと……?……で、でも、それなら”くろは”か”くろや”なんじゃ……」
「確かに……でも、可愛らしくていい名前でござるよ!かざま、気に入ったでござる!」
名付けられた本人を他所に、他の四人だけで盛り上がっていた。それを傍から少しだけ羨ましく思いながら見ていると、ラプラスが私の前に立ってまっすぐこちらを見つめてきた。
「お前はどうだ?沙花叉クロヱ、我ながら結構いいと思ってるんだが」
「……うん、それがいい…………ラプラスが、くれたから……」
私はもう、あなたの物。
だからラプラスが私をそう呼んでくれるなら、もうそれが今日から私の……”沙花叉クロヱ”の名前。
「はっ、即決か。やっぱり私はネーミングセンスも完璧だな。…………よし”クロヱ”、お前の名前が決まった&部下になった記念として総帥である私から最初の命令をやる!」
ラプラスの問いに沙花叉が肯定の意味をもって小さく頷くと、それを見たラプラスは明らかに上機嫌になった。その楽しそうな顔はあまりにも無邪気で、見ているこっちも嬉しくなる。
そして、沙花叉に『最初の命令』をするというあなたは右手を私の前に差し出しこう言った。
「―――――私と来い。お前の力は、私と私の望むモノの為に使え」
先程までの少し浮かれていた雰囲気が嘘のように、真剣そのものの瞳をラプラスはこちらに向けてくる。それでも、その言葉には嘘など無く本気で私にそれを”望んでいる”ようだった。
……だから私も、あなたからのその命令を本気で実行していこうと決意したのだ。
「……はい、総帥……っ!」
これが、秘密結社holoXに属する掃除屋【沙花叉クロヱ】の始まり。
あの時、あなたに出会えたから今の私がある。私に命をくれたあなたに報いるために、今日も総帥の為組織の為生きる沙花叉の”オリジン”だ。
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烏に言われたことを、ただひたすらに復唱した。
その結果、吾輩(相棒)はいい感じに会話の流れを誘導しクロヱと仲直り?出来たっぽいのだが……。
「……ひゃぃ………ご主人さまぁ…………♡」
頬を赤らめ、非常に蕩けた様な声を出す新人に対し吾輩は”顎クイ”をしていた。しかもその時のクロヱから発せられた声も、その表情も、普段の彼女の態度からはとても想像できないものだった。……いや、唯一”あの先輩”の前ではこんな感じだったかもしれないけど。
(ていうか、ホント……いや何これ……)
状況を打開する為とはいえ、烏に”言わされた”言葉たちはあまりにも……『アレ』だった。結果的に見ればいきなり銃を向けられたあの状況からここまで挽回してくれたのだから、相棒には感謝しかないはずなのだが……生憎、素直に感謝する気分にはなれない。烏が言っていた台詞の全ては、吾輩の思い描く〖ラプラス・ダークネス〗とはあまりにもかけ離れていた。もしあの言動が、態度が、あれこそがこの世界の秘密結社holoXの総帥としての姿というならば……今の吾輩を見て、よくそのままで大丈夫などと言えたもんだな。
(……次はその拾ったマスクをシャチの奴に付けたら、ゆっくり立ち上がりながら『まあそういう訳だから、今後も吾輩の多少変だなと思う行動については目を瞑ってほしい。ただ、これからはちゃんとクロヱにも指示をあげよう』だ。最後までしっかりやれよ!)
引き続き細かな動作にまで要望を出す烏をうっとおしいと思いつつも、言われたことをそのまま行動に移す。先程拾えと言われたクロヱのマスクをそっと彼女に掛けてやり、そして立ち上がってから口を開いた。
「……まあそういう訳だから、今後も”吾輩”の多少変だなと思う行動については目を瞑ってほしい。……ただ、これからはちゃんとクロヱにも指示をあげよう」
それは今後、クロヱが偽物である吾輩の行動を見ても同じように不信感を抱かせない為の予防線であった。
そう、わかっている。結局これっぽっちも納得がいかないし、初めて知った事実に困惑したりもしたが……確かに烏はその節々で吾輩の行動に対するフォローや、今後偽物である【ラプラス】がやりやすい状況を作ってくれていた。その事を嫌でも理解していたからこそ、言っていて気分の悪くなりそうな台詞だって相棒の言う通りに従ったんだ。……そうしなければ、この事態を収束させることが出来ないとわかっていたから。
「う、うん……わかったよ…………総帥……♡」
「ッ……」
彼女から聞いたことも無いような甘ったるい声が発せられ、ラプラスは得体の知れないぞわぞわとした不快感に襲われる。流石にクロヱに失礼ではあるが、正直その猫撫で声を今すぐにやめて欲しい。あの生意気で憎たらしい、いつもの彼女は何処にってしまったんだ……。
(……おいあるじ様、気持ちはなんとなく察するが……我慢しろよ。シャチの奴も悪気があるわけじゃないんだぞ)
わかってる、わかってるよ……クロヱが本気で、〖ラプラス〗のことが好きだってことは……。
でも、それはあくまでこの世界のラプラスのことであり、彼女の睨んだ通り『偽物』である今の吾輩ではないんだ。その事実からくるクロヱを騙しているという罪悪感と、彼女が本当に大切な人の前でしか見せないその素振りを自分なんかが見ていいのかという後ろめたさにとても耐えられそうにない。
「く、クロヱ……吾輩ももう”普通に”話すし……お前も、普段通りにしていいんだぞ?」
そして、その居心地の悪さから顔には出さなかったものの遂にラプラスは烏の指示なく勝手に話始めてしまった。
(はぁ?!おい、あるじ様!俺まだ何も言ってないぞ!!)
その結果、案の定胸元に居座る小動物に怒鳴られる。でも、しょうがないじゃんか!もう限界なんだよ、こんなクロヱいつまでも見てられるかッ!!
そう思ったラプラスは、彼女に普段通りにしてよいと指示を出した。……しかし、それは文字取り総帥から部下に対する『命令』であった。
「普段通り……それが、”最初の命令”?…………はぁーい、総帥♡」
「……。」
もう……勘弁してくれ……。
これに今後も耐えないといけないなんて、絶対にごめんだぞ……。
(まぁ……これでもいいか。上出来だぞ、あるじ様っ!)
自分の行動を褒めてきた烏の言葉も、既に今のラプラスには届かなかった。
そして、ただひたすらに自分に強いられたこの運命を恨み続けるのであった。
********************
―――――カツン……カツン……カツン……。
静かな船内に、一定のリズムで何かが床を打ち付ける音が響く。
それは人が歩む時に奏でる音のようで、また刻一刻とこの船の”終焉”を知らせる秒針のようであった。
「~~♪~~~♪」
また、”彼女”が首に掛けていた『魔具』から微かに旋律が漏れ出している。それはとても明るく、弾むような音色をしておりその持ち主の心情を表しているようだった。
「確か、この辺りのハズ……おっ!あったあった♪」
彼女は、その船のとある場所を目指していた。
そして、お目当ての部屋を廊下の先に見つけると嬉々として歩を進める。そこは、宝鐘海賊艦隊二番船……『動力室』という名を冠していた。
「これでようやく、ここでやるべきお仕事も終わりだな。予定よりちょっと早いし、”魔界”に帰る前にどっか寄り道でもしようかな~」
既に事を済ませた気でいるその少女は、無駄口を叩きつつ冷たく閉ざされたその扉の前に立つ。そして、この為に”わざわざ船長室から盗んできた”鍵を取り出し、その扉に掛けられているはずの鎖を解き放とうとしていた。
「るしあちゃんってば、ずっと船長室から動かないからこれ盗むのに苦労したぞ。まあ、天才の”我輩”に掛かれば造作もないことなんだけど……って、え。なんで鍵開いてんだ???」
トモダチを騙し、嘘をついてまで手に入れた『南京錠の鍵』。
……しかし、何故か動力室というこの船にとって重要な部屋を閉ざすための楔が、見るも無残な姿となり砕け散っていた。
「えぇーーー!!嘘だろぉ!?折角苦労して手に入れたのに……」
現在、この船に乗っている正気な者は宝鐘海賊団の二番船船長と一番船の副船長、あとは偽ダークネス率いるholoXの部隊。しかしその内ここに用があって立ち入る可能性のあるメンバーは全員B棟に居るのを確認しているし……え、本当にただ不用心なだけ??
「るしあちゃんに限って、そんなこと無いと思うんだが……ま、まぁ、仕事をこなせれば何でもいいんだけどさぁ……」
そう呟いた少女……【魔乃アロエ】は、やるべきことを終わらせる為と急ぎ早に部屋の中へと姿を消したのだった―――。
まだ未定なのですが、実は今書いている第二章が終わりましたら第三章に入る前にいくつか番外編を書こうかなと考えています。またその中で秘密結社holoXの総本部で働いているモブキャラ視点の外伝の様なものを書きたいのですが、皆様ご興味がおありでしょうか?(例:書くかはわかりませんが、四天王たちの側近の日常・本部内にある飲み屋店主の話・こよラボ従業員の悩み等)※読まなくても本編には関わりなくするつもりです。
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是非読んでみたい
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興味はあり
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どちらでもいい
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出来れば書かないで欲しい
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絶対読まない