転生したらラプラス・ダークネスだった件 作:飽和水溶液_pixiv
さて、前回はようやくラプクロギスギスを解消し回想の方もなんかいい感じに消化できましたね。むしろ、クロヱが総帥のことを好き好きし過ぎて胸焼けしそうです。ていうかちょっと重い……holoXの四天王は皆こうなのでしょうか。ラプ様の今後が心配になってしまいます。
また、46話の最後には意味深行動しまくってる魔乃ちゃんが出てきましたね。前の登場の時は宇宙空間で何やらホロベーダ―を使って企んでいたようですが、今はまた船に戻ってきたのでしょうか?でも宇宙人ではない彼女が、一体どうやってその間を行き来しているのか……実に気になるところでございます。
【追記】
二章も終わりに向かうという事で、ようやくここまでの振り返りや再度深堀をすることでこの欄を書くことが出来ます。そんな今回は、ここから数話に渡って少しだけ重要になってくるかつ筆者も若干設定を忘れかけている『ラプツナズ及び総帥に支給されている”無線機”』について振り返っておきましょう。
宝鐘海賊団に捕らわれた暗殺部門の救出作戦にあたり、ラプラスが今回所持していた装備品の一つである『潜入任務用無線通信機器』。それはその名の通り、主に潜入任務に赴くことの多い暗殺部門を中心に支給され愛用されている代物であった。その特徴としては手のひらで握り込めるぐらいのコンパクトさに、特定の相手としか通信を行えないものの緊急時を含め不用意に音等が鳴らない仕様である。小さく持ち運びが楽で、更に潜入時に敵に発見されるリスクを持たないことからその有用性は確かであった。
またその使用方法も簡単で、通信したい相手に応答要請を送り向こうが応答ボタンを押し込めば連絡が可能となる。ただし、注意しなければならないのは三色に光るランプに灯る"色"である。何も点いていないときは通信を送信も受信もしていない状態であり、緑は相手から応答要請を受けた時、逆に赤はこちらが要請を送った時、そして最後の黄は何かしらの理由で通信が不可能な時にひかるのだ。現在、ラプラスの発言から無線機は黄色……つまり通信不可能な状況であるようだが、これが解消された時彼女たちにとっての頼みの綱となる事があるかもしれない。
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「……それでラプラス、沙花叉たちこれから何するの♪さっき、捕まってる仲間達を助けるみたいなこと言ってたよね!」
あまりにも上機嫌なクロヱが、先程落としてしまった銃を拾いながらそう言った。座り込んでしまったときに付いた埃などを払いながら立ち上り、得物を安全な状態に戻してから懐へと収める。
「あ、あぁ……お前にはまだ断片的な事しか伝えてなかったからな、ちゃんと説明するよ……」
新人のその一連の動作を見守りつつ、そのまま自然にヌッと距離を詰めてくる彼女に若干及び腰になる。さっきまでとは見違える程に柔らかい態度になったクロヱではあったが、生憎こちらには超絶素直にデレてくるコイツを楽しむような心の余裕はない。むしろ、これからのことを考えると先が思いやられる気分だった。
「……吾輩たちが今からやるべきことは主に三つ。その中でも最優先なのが未だ捕らわれている暗殺部門の連中の救出だ。って言ってもその場所はわかってるし、捕まってる牢の鍵もあるから後は現場に行くだけだけどな」
だが、クロヱの今の状態がかなりこちらの調子を狂わしてくるものだとしても、当初の予定であった取り敢えずの戦力を手に入れたことには変わりない。素直に言うことを聞いてくれるかつ最低限の武装をしているコイツが側に居てくれるなら、吾輩としても大変安心だ。
そして、そうとなれば早速次の行動に移らなくてはならない。最終目標である『るしあ先輩からの容疑を晴らす』ミッションを果たすため、こちらの戦力を更に増やす必要があるのだ。しかもその為に必要な牢屋の鍵はあくあ先輩から貰っているし、部下の場所についても既に判明している。
「この船のA棟にある、お前が捕まってた場所とは反対側の地下牢。まずはそこを目指すぞ。道中でゾンビ共……"動く死体"と遭遇した場合はお前に対処を頼む」
「了解、任せて♪……で、その後は?」
「ああ、やること二つ目はそいつらとは他の場所で捕まってるらしいラプツナズの隊員の捜索。またそれと同時進行で”通信手段の確保”だ」
ある程度人数が集まってくれれば今の二人の時よりも取れる選択肢が更に増える。暗殺部門の連中がどういう状態なのかはわからないが、あくあ先輩の話的には少なくとも大事に至っている者はいないだろう。そうとなれば開放されて早々に申し訳ないが、直ぐに働いてもらう必要がある。この船に来たばかりの頃に吾輩を守ってくれた護衛含め、一緒に潜入してきたラプツナズの隊員計四名を捜索して救出しなければならない。
また、その後のことを考え吾輩たちの乗ってきた宇宙船への連絡も必要だ。何故か吾輩が持っている唯一の通信手段であるこの無線機は数時間前からずっと黄色のランプを点灯させていた。それはつまり不接続状態であることを示しており、この船の内外問わず現在通信が行えない。そのせいで宇宙船で留守番中の残りのラプツナズの隊員とも連絡が取れないので、こちらの状況を知らせることも出来ていなかった。救出作戦を開始してからかなり時間も経ってしまっているし、そろそろ船の燃料の方も危いだろう。
「迎えが無いと、いくら仲間を助け出したところで吾輩たちはこの船から出られない。皆揃って本部に帰るためにもしっかりやるぞ」
「帰りの宇宙船と連絡を取る為ってこと?……それなら、面倒な事せずこの船を制圧しきった方が早くない?」
「……いや、ダメだ。確かに最後のやる事として"船長潤羽るしあに接触する"というのはあるが、それまでに不必要な武力行使は控える。戦う為というよりは潤羽るしあの元に辿り着く為の戦力と保険が必要なんだ」
どういうわけか、自分たちの仇敵がholoXであると信じて疑わないるしあ先輩。そんな彼女を説得し、こちらと協力関係になる為には一方的にならない平等な立場での話し合いが必要になる。またその状況を作り出し、交渉のテーブルに着いた後の成功率を上げるためにも不要な戦闘は避けた方がいいだろう。といいつつ、既にゾンビ共相手には吾輩も護衛の女も手を出してしまってはいるが……まあ、彼らはあくまで魂が本体という存在のはずなので多少は見切りを付けなければならない。どっちにしろ、向こうから襲ってくるなら衝突は免れないしな。
「ふーん、そうなんだ。んー、なんかよくわかんないけど……わかった、ラプラスの言う通りにするね♪」
助け出したばかりの時とは打って変わって、クロヱは吾輩の言うことに一切迷いなく従ってくれるようだった。確かにそれは嬉しいことだし、面倒が増えないのは結構なことだが……やっぱり、まだ慣れないなぁ。
「……じゃあ、沙花叉が前に立つからラプラスが後ろで道案内してね」
準備も整い、まずはもう一つの地下牢を目指すために行動を開始する。吾輩の身の安全を守るためにとクロヱが前線に立ち、新人よりはこの船の構造を理解している吾輩が後を追い道順を示す形だ。
「ああ、わかった。……だが気を付けろよ、ゾンビがどこに潜んでるかわからない。それにお前の分のヘッドギアは無いんだからな」
目的を達成するうえで最も障害となるのが、この船の主な戦力である【ふぁんでっと】のゾンビ達だ。彼らは常人の数倍の腕力を持ち、最低限の意思疎通を可能とする知能も持ち合わせている。更にその正体は既に亡くなった者の魂であり、ただの器である身体を攻撃したところで殆ど意味がない。強いて言うなら肉体が不全になるため、それ以上戦闘が継続できなくなるというくらいだ。
加えて、今まで吾輩の生命線として活躍してくれていたこより印のヘッドギアもこの場にはたった一つしかない。これはこれでるしあ先輩が居ない場所限定では非常に優秀であり、最低もう一つでもあれば更に行動がしやすかったことだろう。ちなみに、今吾輩が被ってるヘッドギアは博士が作ってくれたラプラス専用の特注品ではあるが、ぶっちゃけ機能自体は普通の物と変わらないらしく被れさえすれば誰でも使えはするらしい。
「わーかってるって。沙花叉の分は捕まった時に取り上げられちゃったし、そもそもソレ私には似合わないからさぁ。……あ、ラプラスはすっごく似合ってるよ♪被ってるほうが可愛いし、安全の為にもちゃんとつけててね♡」
随分と軽い口調で言うクロヱに、やはり吾輩は不安が募った。確かに、何故か今の今までこの食堂の中にゾンビが入ってくる様子は無かった。それに事情を知ってるはずの烏が何も言ってこない辺り、霊体のふぁんでっとについてもそれは同じなのだろう。だが、それは連絡通路から逃げ出しあくあ先輩と出会うまでの道中を考えるとどうにもおかしいように思われる。何か更なる問題が起きたのかもしれないが、だとしても必要以上に吾輩たちを放っておくのは危険だとるしあ先輩なら考えることだろう。だとしたら、それこそ今この瞬間にでもゾンビが押しかけてきてもおかしくないと思うんだけどなぁ。
「……本当に警戒しろよ。奴らはどういう構造か知らんが、見た目に寄らず聴力も視力もいい。今お前を失う訳にはいかないんだからな」
「んもう、本当にわかってるってば。心配してくれてありがとね。……でも、大丈夫だよ」
クロヱの実力を疑っているわけでは無いが、慎重になるに越したことはないとラプラスは再度彼女に警戒を促した。しかしクロヱはそれをまたしても軽く了承するだけで、そのまま食堂の出入り口の方へと向かう。そして、部屋を出る為にと扉を引いて開け放った。
―――それとほぼ同時、彼女は懐に収めた銃を素早く取り出し二度発砲したのだった。
―――――バンッ!!!……バンッッ!!…………ベチャッ。
突然の出来事に、ラプラスはただその光景を呆然と見ていることしか出来なかった。まさに瞬きのようなほんの短い時間の間、彼女はこの部屋に迫る危機を事前に察知しその『掃除屋』としての技術力を見せつけたのだ。
「ア˝ッッ……ア˝……」
もう、この船では見飽きてしまった厄介な存在。全身の各所を腐らせ、ただ主の命の下徘徊するだけの傀儡。その頭部と胸部に的確に一発ずつ、肉体を貫き本来生命活動に必要不可欠なそれらに破滅をもたらす。
「……ほらね、大丈夫でしょ?どんなに動体視力に優れてても、”ぞんび”なんかより沙花叉の方が先に気付くんだから♪」
ようやく事態を認識してきたラプラスを他所に、クロヱが得意げにそう言った。またその直後、撃たれた彼は殆ど声を上げることも叶わずその場にバタリと倒れ込む。直接的なダメージにはならないものの、流石に頭部を貫かれれば多少運動能力が低下するようだった。
「お、おう……そ、そうみたいだな…………コイツ、まさか待ち伏せしてたのか?」
大きな銃声音と、突如出来上がった血を漏らす肉塊を目の前にラプラスは未だ暴れる心臓を抑えながらそう言った。今の今までしばらく音沙汰がなかったくせに、ここに来てこれとは本当に驚かされる。
「んーん、たまたま通りかかっただけみたい。……でも、沙花叉たちのことを探してるのは確かっぽいね」
もしや、扉の先にはゾンビ達がびっしり……なんて地獄絵図を想像したが、新人が言うにはどうやら偶然ここに居合わせただけのようだった。しかし、この船の中を徘徊し吾輩たちを捜索していることは間違いないだろうと言う。
「……ちんたらしてる余裕はないみたいだな。急ぐぞっ」
しかしラプラスは、そのクロエの言葉を聞き今はまだ此処も吾輩にとって敵地であるということを再認識させらる。そして自分たちにタイムリミットが迫っているということすらも実感し、早急に行動に移るようにとクロヱに指示を出した。
「うん、そうだね。…………ところで、その”ちんたら”ってなーに?なんか卑猥だね///」
「……」
折角、この世界のクロヱのことを見直したところだったのに……早速それを帳消しにするような発言をしてきた。何が卑猥だよ。ていうか、もしかしてその部分に限ってだけは元の世界と同じ……何てことは無いだろうなぁ??
頼りにしている新人に対し嫌な予感がよぎったが、これ以上は考えてはいけないとラプラスはその思考を放棄した。
そして、まずは地下牢を目指そうと旧食堂を飛び出したのだった。
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A棟一階旧食堂にて、ラプラスが自分に対するクロヱからの信用を取り戻していた頃……同船B棟三階、操舵室内の状況は逼迫していた。
「なんで……どうして、こんなところに……ッ!!」
驚愕と困惑、そして強い怒りを持ちながらこの場の総指揮官である【潤羽るしあ】は言葉を漏らした。
彼女はこの船に迫る”とある問題”を解決へと導くため、数時間前からこの操舵室で待機していた。それは自星で起きた事件の為に帰路を急いでいたところ、突如としてその進行方向上に居座る『何か』が発生したのである。この海賊船とは名ばかりの宇宙船は、基本的に自動操縦機能で動作しており目的地を設定したなら後はその星の重力場に辿り着くまで特にすることは無い。しかし、極稀にその航路に障害物が発生することがある。ただそれも大体は宇宙空間を漂う岩石や小惑星、その中でも極々稀に他所属の宇宙船だったりする。だが、どれにしたってそう何度も遭遇するものでは無く、ましてや今回の様な”宇宙空間でも生存できる生物”など……。
「何故、ここに…………”ホロベーダー”が居るのッ!!」
星空の海に影を落とし、真っ黒に蠢くそれは……彼女たちが最も恨みを抱く存在、侵略者【ホロベーダ―】であった。
「×××ッ!!」
「〇〇……」
自分の配下である霊魂たちが、次々に声を上げる。
だが、それもそのはず。何故なら今尚私達の故郷を蝕むあの害虫が、こんなところに居るはずが無いのだから。
奴らとの因縁は、もう随分と前からのことになる。強靭な肉体に生命力、極めつけは死んだ生命から魂を吸い出し繁殖することから成る圧倒的な数の暴力。奴らを自分たちの星から追い出すためと戦えば戦うほど、相手の戦力は増えていく。そんな一方的な蹂躙を繰り返され、るしあ達は追い出された先で見つけた不毛の大地衛星『コメット』で暮らしていくほかなかった。
しかし、これだけで悪夢は終わらない。ホロベーダ―の生存欲求ともいえる”繁殖”、それに伴った殺戮と破壊衝動。だがその中にはある一定の条件下での『ナワバリ形成』というものが含まれていた。本来食い物が減り、暮らしづらくなった住処に長く滞在する生物などいない。ほとんどが新たな土地や食べ物を求め、移動しや運搬をし生きていくのが定石だ。しかし最悪なことに、数十年経った今ですらホロベーダ―にはそのような気配が見られない。その理由には幾つかの憶測はあるものの確かめる術も無く、ただ一つ確かなのは奴らを根絶やしにするかあの星が完全に滅びるまでこの戦いは終わらないという事だけだった。
……だが、その事実までもが最近になって崩れつつあるのかもしれないと私は感じている。先の報告にあった、コメット星にホロベーダーの幼体が出現したという一件。しかし今までにそんな事態が起きたことなど無く、前述の通りならば奴らが住処から移動していること自体がこれまでの常識から逸脱した状況なのだ。だからこそ、るしあ達もこの事態を重く捉え本国への帰路を急いでいたのだが……ここに来て、更に故郷である惑星『ふぁんたじあ』から”遠く離れた”この場所でホロベーダ―との遭遇。もはやこれは、私達の知らないところで何かしらの力が働いているとしか思えない事象であった。
「これも……あの”悪魔”のせいだって言うの……」
部屋の上部に設置されたモニターと、この船に搭載されているレーダーの反応からその”黒い影”がホロベーダ―であることは間違いない。しかも先行させていた幽霊さん達の話によると、どうやらそいつは魂を喰らって繁殖する『ファントム』の方らしい。だがそれも実におかしいことだ。何故”食べる者”も、食べられるモノも無いこの宇宙空間に”生み出される側”であるはずのファントムが居るのか……。
「ーーー……~!」
「わかってるっ!……慎重に、静かに通り過ぎて……やり過ごすのです…」
意味の分からない現状に対し私が思考を巡らせていると、ふぁんでっとの一人が私に指示を仰いできた。とにもかくにも、今ここで奴らと事を構えることは出来ない。戦力的に言えば私とあくあさんが居るので問題はないだろうが、それ以前にこの船の外が宇宙空間である以上襲われたら戦いにすらならないのだ。
一応、この船にもそれなりに戦いに使える機能が備わっている。迎撃用の砲台は勿論、こうした事態に対応するための迷彩システムが導入されている。この船は海賊としての略奪を生業とする為、後付けではあるが背景と同一色に変化させその場に溶け込ませる機能があるのだ。それは宇宙空間であっても使用は可能であり、迷彩システムを使えば幾ら索敵能力の高いホロベーダ―相手でもある程度は騙せるだろう。
「……大丈夫。何も起こらなければ、気付かれることは……」
この船にある可能性を信じ、今はただ静かに見守ることしか出来なかった。
―――そんな折、その緊迫した状況を突き破るように突如自分の背後にあった扉が開け放たれた。薄暗い操舵室内に廊下の明かりが差し込み、”わざわざ扉を開ける”など一体誰が訪れたのかとるしあは後ろを振り返る。すると、そこには酷く息を切らしたメイド姿の少女が立っていた。
「ハァ、ハァ、ハァ…………や、やっと見つけたぁ……るしあちゃん、ここに居たんだ……」
るしあはそう言った彼女……湊あくあの存在を見て、少しばかり安堵する。こんな状況下で自分の元を訪ねてくる相手に嫌な予感がしていたが、どうやらそれは外れていたようだ。
「……あくあさん、探したのです。死体さんたちを向かわせたのに、全然捕まられなかったので心配しました。……今までどこに居たのです?」
「えっ?……あ、えーっと……捕虜たちのお世話してた、よ?……るしあちゃんは?…何で、こんな所に……」
「そうですか……まあ、何事も無いなら良かったです。折角マリンに貸してもらってるあくあさんにもしものことがあったら、るしあ怒られちゃうので。…………それよりも、聞いてください。緊急事態なのです」
捕虜の世話というなら、A棟の地下に向かわせた死体さんたちと会っているはず……ということは、その歯切れの悪い感じ恐らくまたどこかで仕事をサボっていたのだろう。あくあさんはいざという時はとても頼りになる人だが、少し抜けているところや時より自分のお務めをサボるところがたまにキズなのだ。もっとも、そういうところを含めマリンは彼女を気に入っているみたいだけど。
それに、今は借りてきた猫さんにおサボりの説教をしている暇はない。一応、これでも彼女は宝鐘海賊団一番船の副船長なのだ。よって今この船に迫りつつある危機について共有するとともに、あくあさんにも意見を聞かなければならない。
「え、あ……あ、あてぃしも、るしあちゃんに話があったんだけど……」
「すみません、今はこっちを優先させてください。……実は、この船の進行上にホロベーダ―が居るのが確認されたのです」
「えっ…?!」
彼女も私に用件があるようだったが、生憎それよりも重大な事だとこちらの話を優先してもらう。そうしてあくあさんの方を見つめながら一呼吸間を置き、この船に迫る事態を告げた。
「な、なんで……」
「詳しいことはまだわかっていません。ですが、そこに奴がいるのは確かです。既に幽霊さんたちにも確認をしてもらいました」
「え……で、でも、どうするの……?」
案の定、事実を聞いたあくあさんも動揺しているようだった。まあ、それも当然か。同じ星を故郷に持つ者同士、彼女の奴らを恨んでいるはずだ。それに、この事態が如何に不可解な事かも大まかに理解しているはず。
「……取り敢えず、今は何もしないつもりです。正確には、何も出来ないという方が正しいですけど……この宇宙空間では、例え一匹だけであったとしてもるしあ達にとっては最大の脅威です。このまま、静かに横を通り過ぎるしかありません」
「そ、そっか……」
それ以外に、今のるしあ達にできることは無い。一般的なホロベーダ―・ファントムはこの船の半分ほどの大きさであり、もし見つかればあっという間に大破してしまうことだろう。そうなれば、私達は外に放り出されることになりそのまま……。
「…………あっ。で、でも、それなら……あてぃしに、いい考えがあるかも……」
前代未聞であるこの事態について大まかに説明し終えたところで、るしあ達の間に数秒の沈黙が流れる。しかし、その後少し考え込んでいた様子のあくあさんが突然そんなことを言い出した。またそれを聞き、もしかしてこの危機的場面を切り抜けるための妙案でもあるのかと私は彼女の言葉に耳を傾ける。
「あ、あのさ……”ラプラスちゃん達に協力して貰う”、っていうのは……ど、どうかな……?」
私は最初、その耳を疑った。
この人は……一体、何を言っているんだ。今この状況下において、奴らを仕向けた張本人であるラプラス・ダークネスに協力を仰ぐことに何の意味がある。むしろ、こんな事になっていることすらもあの悪魔の所業なのではと疑っていたところなのに……。
「……いや…本当に、そうなのかも……」
「えっ?な、何か言った?…………あ、あのねるしあちゃん、実はさっきラプラスちゃんに会ってさ…あ、ラプラスちゃんっていうのは、あのholoXの総帥のことなんだけど……ラプラスちゃんが、あてぃしたちの惑星を取り戻す手伝いをしてくれるって……」
るしあが確信めいた何かを得ていると、その呟きが聞こえなかったらしいあくあさんが続けてまたそんなことを言い出す。私達の惑星を取り戻すだと……?自分たちでそうなるように仕向けておいて、今更何を白々しく”手伝う”などと抜かしているんだあのクソ悪魔は。
……それに、その口車にまんまと乗せられているあくあさんにも正直苛立ちを覚えてしまった。
「……あくあさん。それ、本気で言ってますか?……あいつらが、るしあ達の故郷を襲うよう仕向けた黒幕なのに?」
「…………えっ……?」
恨みや怒り、そんなドロドロとした感情交じりの声で私は真実を告げた。存在、性質、その全てが悪魔的害蟲である奴等を世に放ったのが、あの紛れもなく『悪魔』と呼ばれた少女なのだと。
そして、自分たちの経験した悪夢の実情を知った彼女は酷く困惑したような表情を見せる。
「え……う、そ……だ、だって、ラプラスちゃんはそんなこと一言も……」
「るしあが死体さんに持たせた手紙、読んでないんですか?……そりゃ、私達を滅ぼそうとする張本人がわざわざこっちに教えてくれるような真似はしませんよ。むしろ、アレに会ってたのなら何で殺さなかったのです?……あくあさんなら、隙をつけば出来ましたよね」
「……うそ、だよ……」
この人が何を知り、何を思ってそれが空事だと言っているのかはわからない。先程、今まで何をしていたのかと問うた時歯切れが悪そうにしていたのはあの悪魔と会っていたからだったのだろう。それに、一体どういう経緯であくあさんとアレが出会ったのもわからない。だが、その時にやつに何かを吹き込まれ、またこの事実を知らなかったが為に馴れ合ってしまったのだ。
あの悪魔の、上手い口車に乗せられて。
「例え信じられなくてもそれが事実です。holoXこそが、るしあ達が絶対に滅ぼさなきゃならない最大の敵。……目を覚ましてください、あくあさん」
「……」
るしあの言葉に、あくあさんは何も答えなかった。その表情は薄暗い部屋と、彼女が俯いていたが故に読み取ることは出来な。しかし、この人は普段自己主張が少ないものの決して賢くないという訳では無い。きっと、上手く心の整理をつけているところなのだろう。どんな経緯であれ、一瞬でも信じた相手がこの世で最も恨むべき敵だったと知れば誰でも多少は動揺するはずだ。
そう思考した私は、彼女の答えを待たずして前方のモニターの方へと振り返った。それは決してあくあさんのことを見限ったなどの理由ではなく、敢えて放任することで解決することもあるだろうと思ってのことだった。
それに、先程のあくあさんとの会話の中で至ったとある仮説もある。それはあの悪魔がこの船から部下を救出する為の”奥の手”として、あのホロベーダ―を待機させているのではないかということ。本来この場に居るはずの無い害蟲がわざわざ行き道を塞ぐように配置されているのも、万が一の事態に備え最悪この船を崩壊させればよいと考えているのかもしれない。……ただ、もしそれが本当だとしたら本人たちすらもこの真空空間に晒される危険があるはずだ。そんな橋を、あの謀略家として名高い悪魔が果たして渡るのだろうか……。
「…………あれ……?通信妨害が、”機能してない”……?」
前方のモニターに視線を移す過程で、視界に入った宇宙船の操作パネル。そこには数時間前から作動させていて、本来であれば点灯しているはずの『通信妨害電波発生中』のランプが消えていた。しかもそれは停止中を知らせる光すら灯ることなく、完全に使用不能状態であることを示している。
「こんな時に、機械の故障?……いや、これもあいつの仕業ってこと?」
もはや、今起きている不可解な事態の全てがあのラプラス・ダークネスという悪魔の所業なのではないかと思い始めていた。機器のトラブル自体は起きないことでは無いとしても、この状況このタイミングで機械の不全となると疑いを抱かずにはいられない。
ともかく、未だ捕まらない奴らholoXをこれ以上この船で自由にさせておくのは危険だ。また船内のみならず外部との通信も防ぐためにも、再度妨害電波は作動させなければならない。
「幽霊さん。妨害電波、もう一度出せる?」
「×××……」
「……そう、こっちのパネルは壊れてないのね。……ということは、やっぱり”元栓”の方か。でもあそこはA棟の地下にあるし……あーもう、人手が足りないのです」
現在、この船には信頼を置ける『生身の人間』が圧倒的に不足している。しかも調子に乗ってこの船を自分仕様に改造した結果、この操舵室は霊体のふぁんでっとが操縦できる代わりに私が居ないと操作すらできないという欠陥っぷり。つまりこれから宇宙を遊泳しているホロベーダ―と接触しようとしているこの船の舵をるしあは離れるわけにはいかないのだ。でも、だからといってholoXを放っておくわけにもいかない。それに機器のトラブルの件だって死体さんたちじゃ到底対処できないだろうしどうしたものか……。
手を付けるべき問題が山積みで、るしあは文字通り頭を抱えた。すると、背後で静かに立っていたはずのあくあさんがこちらに歩いてくる足音が聞こえる。それを聞き、ようやく気持ちの整理がついたのかと思った私も後ろを振り返った。
「……あくあさん……?」
しかし、そこには先程までの酷く困惑していた彼女の姿は無く……代わりに、いつもの彼女からは想像できない程真っすぐな瞳をこちらに向けていた。
「―――るしあちゃん。holoXの方は……”私”に任せてほしい」
そう言ったあくあさんの声はとてもはっきりとしていて、自分の意思をしっかりと持っているようだった。この数分の中で、この人が何を考えたのかはわからない。だが、少なくともあの悪魔たちと事を構える覚悟は決まったらしかった。
「……それなら、そっちはあくあさんに任せるのです。必要でしたらふぁんでっとを何人か貸しますが、要りますか?」
「ううん、大丈夫。今のまま適当に徘徊させといて。……どっちにしろ、目的地はわかってるから」
「……?」
よくわからないが、あくあさんにはどうやらアレの目的について何か心当たりがあるようだった。まあここに来る前に会ったようだし、その時に何かを知ったのかもしれない。なら、本人の意思を汲みholoXのことはこの人に任せよう。
「それじゃあ、よろしくお願いします。……狂犬さん」
「……」コクッ
私の言葉にただ頷いた彼女は、そのまま操舵室を後にしたのだった。
まだ未定なのですが、実は今書いている第二章が終わりましたら第三章に入る前にいくつか番外編を書こうかなと考えています。またその中で秘密結社holoXの総本部で働いているモブキャラ視点の外伝の様なものを書きたいのですが、皆様ご興味がおありでしょうか?(例:書くかはわかりませんが、四天王たちの側近の日常・本部内にある飲み屋店主の話・こよラボ従業員の悩み等)※読まなくても本編には関わりなくするつもりです。
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是非読んでみたい
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興味はあり
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どちらでもいい
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出来れば書かないで欲しい
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絶対読まない