転生したらラプラス・ダークネスだった件   作:飽和水溶液_pixiv

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第48話です。正真正銘、今年最後の投稿です。本当は50話とかキリのいい感じにしたかった……。しかし今年の3月の終わりから書き始めたこの転ラプシリーズも、かなり長い連載となりましたね。まだ一年の継続は出来ていませんが、ここまでに本当にたくさんの方々にこの作品を読んで頂けて言葉に言い表せない程嬉しいです。今年はこれで最後の更新となりますが、来年も引き続き投稿していきますのでまだまだお付き合いください。今年は、本当にありがとうございました。


さて、連続投稿ですが前話は主にラプクロの会話や微妙に距離のある あくるし のやり取りが行われましたね。ラプ様の心境はともかく、holoXの二人が仲直り出来て更に普通にやり取りしてるのを見てるだけで嬉しい気持ちになってしまいます。今回も程々にクロヱ→ラプラスのラプクロが見られると思いますので、楽しんでください。
そして前回の後半についてですが、あちらは随分と何というか……気まずそうですね。あくまでこのパラレル世界限定の話ですが、人見知りなあくたんと自分からあまり絡みに行かないるしあの二人は凄く仲がいいという訳では無いみたいです。勿論特段険悪な仲という訳でもありませんが、学校内に居る友達の友達ぐらいの感覚なのでしょう。普段二人の間にはマリン船長の存在があり、それが無い今円滑なコミュニケーションが出来るという訳にはいかないようです。しかし、少なくともるしあからあくたんに対するリスペクトの様なものはあるようで、彼女のことをよく『狂犬』と呼んでいますね。沙花叉もあくたんには何かがあると感じているみたいですし、彼女の今後の活躍に期待しましょう。


【追記】
今回の追記は何を書こうかすっごく考えたのですが、すみません思い浮かびませんでした。まあ上に結構色々書いたのでそれで許してください。

そう言えば、皆様は今年どのようなホロライブライフを送りましたか?(ここから本編に関係ない話が始まります。興味の無い方はこのまま本編にお進みください)。私は配信のアーカイブをがっつり見たりするのを基本的にやっていたのですが、今年初めてとあるホロメンのメンバーに入ったりもしてみました。まあ入っただけで未だにメン限配信とかは見れていないので、来年は大変良いと噂のおかゆんやフブキングのメン限配信に挑戦してみたいです。勿論いつも通り過ぎるスバちゃんも気になっていますね。
また、今年のホロライブで印象に残ってるのは年始から始まった濃厚すぎるmiCometでしょうか。年始にリアルタイムでシャッフルメドレーを見ていた時はかなり興奮いたしました。それこそ一人で踊りだすほどです。来年もあるんですかね?是非やってほしいです。そして、そこから始まりあくまでビジネスと言い張る同室での海外出張やしら健での活動、二人でのコラボ配信は見ていて本当に「尊いッ!」ってなりました。今後も二人には末永くビジネスして欲しいです。実際問題、今年でmiCometは相当仲良くなっていると思ってます。勿論煽りすぎるのはよくないですが、もっと供給してほしいのも事実……むず痒いですね。
他に覚えてる配信や企画で言えば、ぷよテト大会や大運動会ですね。聞いた話によるとペコちゃんとすいちゃん主催のぷよテト大会はホロメンの過去の配信の中でもかなりの視聴率を誇ったとか。私もリアタイしてましたがかなり燃えましたね。船長上手くなりすぎです(笑)。また大運動会は準備の段階からかなり面白かったです。ReGLOSSが入ったばかりで参戦という事もあり、彼女たちについてもいろいろ知ることが出来ました。最近の推しは青くゆとりりかですね。限界飯ヤバ過ぎます。

とまあ、語りだしたらキリが無いですね。あんまり関係ないこと書き過ぎるのもあれだと思うので、今回はこれくらいにしておきます。また、もし読者様の中で『自分はこういうホロライブライフを送った』というのがあれば語ってくれると嬉しいです。
それでは、また来年お会いしましょう。


↓作者:飽和水溶液のXアカウント。主に執筆状況や気に入ったホロ関連のリポストしてます。
飽和水溶液(@Suiyoueki_suba) https://twitter.com/Suiyoueki_suba



第48話 秘密結社の暗殺部門

 

 

 

 

「……なんか、あっちの方から火薬の匂いがする……」

 

 

 

 

「えっ?火薬?……あの部屋か?」

 

 

未だ捕まっている部下の救出の為に地下牢を目指している道中で、突然新人がそんなことを言い出した。彼女のその言葉を聞き、地下へと続くもう一つの階段を下りる直前で足を止める。

 

 

「スンスン……間違いないよ。しかも、うちで使ってるやつ。たぶんあの部屋に私達の荷物があるんだと思う」

 

 

ここに来るまでにゾンビに遭遇するのも幾何か、その全てを相手より先に存在を察知したクロヱによって処理されていた。初めは実体験からコイツが居ようとも多少移動に苦戦すると思っていたのだが、それはとんだ杞憂だったらしい。流石はholoXが誇る戦闘員沙花叉クロヱってところだな。

 

 

「は?匂いだけでそんなことまでわかるのか?」

 

 

「うん。holoXで使ってる武器は全部、こんこよが作ったものだからね」

 

 

「?」

 

 

階段横の部屋、そちらに二人で注目する。あくあさんの話によればるしあさんの研究室を抜けた廊下の先、この下の階に暗殺部門の連中が囚われているということらしい。ならば、そこから近い場所に捕えた際に取り上げた荷物を保管していても何らおかしくは無いだろう。ただ、それが匂いだけで分かりかつ博士の作ったものであるならば自分たちの物と分かる理由が吾輩には理解できなかった。

 

 

「お、おう、そうか……」

(おい烏、今のクロヱが言ったのはどういう意味だ?)ツンツン

 

 

しかし、わからないならわかるヤツに聞けばいいだけのこと。そう思ったラプラスはクロヱの言葉に適当に応じつつ、こっそり胸元に潜んでいた小動物をつつく。すると、自分の言わんとしていることを察したらしい相棒が首をもたげながら教えてくれた。

 

 

(……俺も詳しく知らないが、holoXで作られたほぼ全てのもんにはあのコヨーテのやつが発見した”特殊な物質”が含まれてるらしい。まあ、これは普通特定の匂いがするようなもんじゃないんだが……鼻の利くこいつにはどうやらその判断が出来るみたいだな。ちなみに、それは今に始まった事じゃなくシャチの奴がしょっちゅう言ってることだから必要以上に聞き返さない方がいいぞ。またボロが出る)

 

 

一言余計だぞ。

でも、なるほどそういう意味だったのか。つまりはあの部屋から少なくともこよりの手の入った火薬を使う何かがあるってことだ。いやそれを嗅ぎ分けられるクロヱ凄いな。吾輩にはその博士が見つけた物質とやらどころか、火薬の匂いすらわからなかったんだが。どうやら、この世界のクロヱは相当嗅覚に優れているらしい。

 

 

「……どうしたのラプラス、ボーっとして。荷物の方が先?」

 

 

「え?あ、いや回収は後でもいいだろ。まずは部下たちを助けに行くぞ」

 

 

「はーい、りょーかい」

 

 

どうせ帰り道だし、今荷物を取ったところで二人では持ち運べないかもしれない。むしろそうしている時間があるなら、一刻も早く部下たちを救出するべきだろう。

 

 

そう判断したラプラスは、引き続き先導してくれるクロヱに続いて下方向への階段を進んだ。折り返しの踊り場を抜け、より薄暗くなった廊下へと突入する。実際に変化があったのかは定かではないが、その目的地へと一歩一歩足を運ぶごとにひんやりとした空気が肌に触れ空気中の熱が低下しているような感覚に陥る。

 

……そして、そんな道を数メートル程進んだところでぼんやりと灯る明かりの存在を認めた。

 

 

 

 

 

「…………クロヱ様……?」

 

 

 

 

 

その明かりの元まで辿り着き、自分たちの存在がこの空間で強調されたところでふと誰かのそんな呟きが聞こえてきた。その声は今歩いている廊下の左右のどちらから響き、鉄格子の嵌められた牢屋の中から発せられたものだった。

 

だが、今この場所で新人のことを様付で呼ぶ者達など彼らしかいない。そんな確信の下右手に広がる格子の向こうを覗き込むと、その中にはやはりこの船に潜入した最大の目的達が居座っていた。

 

 

 

「クロヱ様、生きてたんですかっ?!!」

 

 

「クロヱ様ぁぁァぁ!!よくぞご無事でぇぇ!!!!」

 

 

「で、でも、どうしてこんなところにっ??」

 

 

 

吾輩より前を歩いていた新人に一早く気付いたらしい彼らは、慕っていた上司が生きていた事実を知って次々に喜びの声を上げる。またその様子を見る限り、全員思っていたよりも元気そうであった。勿論多少衣服が汚れていたり、包帯を巻いていて明らかに怪我をしてそうな者も居たが、少なくともクロヱに対しそれだけ声を出す体力はあるという事だ。それもこれも、全てはこいつらを面倒見てくれていたあくあさんのお陰だろうな。

 

……しかし、そんな部下と上司の感動の再会に対し一見歓喜していない者が居た。彼女は彼らの言葉を聞くなり黙り込み、そして静かに目を閉じている。それはまるで、今はそれ以上に気づくべきことがあるだろうとでも言いたげな様子だった。

 

 

「……なぁ、おい。何かクロヱ様ずっと黙ってないか?」

 

「あ、あぁ、そうだな……あ。もしかして、今回の任務をしくじったこと怒ってる?」

 

「うーん…でも、あれは明らかにクロヱ様のミスっていうか……本人も割と自覚はしてたっぽいしなぁ」

 

「ちょ、ちょっと、流石に上官の指示を誤りだったって言うのは失礼なんじゃ……」

 

 

彼らの居る牢の前で仁王立ち、何故か沈黙を決め込む新人に対し彼らはコソコソとそんなことを話していた。その内容や喋り方はこの世界で今までに会ったholoXer達とは違い少し砕けたような感じで、それを聞いてるだけでも部下同士や彼らを率いる上官との関係がかなり近いことが伺える。吾輩も、眷属やラプツナズとこんな感じで話せたらいいんだけどな……。

 

しかし、ラプラスがそんなことを考えている間もクロヱは目を瞑り何も言わない。そして、そんな彼女を見て不思議に思っていた中でふと誰かが口を開いた。

 

 

「……あれ?……ちょ、ちょっと、クロヱ様の後ろに居るのって…………まさか……ッ!!」

 

 

誰かのその一言で、静かに佇むクロヱの後ろについていた吾輩に一斉に注意が向いたのが分かった。その事に若干の気まずさを感じてへらっと苦笑いをすると、数秒の後その場に居た自分とクロヱ以外の全員の声が重なった。

 

 

 

 

 

 

「「「ラプラス様ッ!?何故ここにッッ!?!?」」」

 

 

 

 

 

 

この地下牢全体が揺らぐくらいの大声に、ラプラスは思わずビクっと反応してしまった。どうやら、彼らにとって総帥である吾輩がこの場に居ることは相当驚くべきことだったらしい。そして、そんな部下たちの反応を見たクロヱはようやく何かを喋る気になったようだった。

 

 

「はぁ~。皆やっと気づいたの?あのさぁ、大好きな沙花叉に会えて嬉しいのはわかるけど総帥の前なんだから少しちゃんはとしてよね~。恥かくの私なんだから」

 

 

まるで呆れたとでも言いたげに、彼女はわざとらしくため息をつく。そして、子供にでも言い聞かせるような口調で彼らを叱った。その態度は明らかに相手を小馬鹿にしていて、あのいつもの憎たらしい新人の姿そのものである。まあ、こいつらも大将自ら敵地に乗り込んでくるなんて普通は思わないよな。

 

……だが、そんな上司を見て彼らから口々に反論や抗議が飛び交う事になる。

 

 

「いや、普段ちゃんとしてないのはクロヱ様の方じゃないですか。いっつも任務に対して不真面目だし、めんどくさがりだし」

 

「そうですよ。おまけにholoXの『掃除屋』の癖に部屋の掃除は出来ないし、お風呂は入らないし」

 

「食う寝る遊ぶ、そればっかりじゃないっすか。俺たち知ってるんですよ、この任務に来る前だって娯楽街で夜通し遊んでたの」

 

「……スロ叉カスヱ……」

 

 

直属の部下達から次々に上がってくる新人の欠点に、本人は思わず「ン˝ッ」という声を漏らしていた。先程まで若干得意げに彼らを咎めていた手前、自分の落ち度を指摘されまくり返す言葉が見つからなかったのだろう。その代わりに、数秒前の凛々しい上司としての姿は消え去りまるで叱られたことをただ誤魔化す少女の様な風貌になっていた。

 

 

「えー、何のことぉ?沙花叉ぁ、みんなが言ってることぜんぜんわかんな~ぃ。ぽえぽえ~?」

 

 

 

「「「「「 ぶん殴りますよ??? 」」」」」

 

 

 

彼女の可愛い子ぶった態度に対し、彼らはさっき吾輩に驚いたとき以上に声を揃えてそう言った。しかし、それはこの場に居た全員の共通認識であり、現に吾輩も今のはちょっとイラッときた。部下視点で見るこいつウザすぎだろ。

 

 

「ふえーん、何でみんなそんなに沙花叉に厳しいのぉ~……みんなのことが心配で、折角助けに来てあげたのにぃ…」

 

 

だが、その怒りを向けられた本人は心底心外であるという風に振舞っていた。またほっぺをぷくーと膨らまし明らかに不貞腐れているように見せ、同情を誘っているようでもある。正直、そのあざとさ過ぎる仕草には同性として更にイラつきを覚えそうだった。しかし、その気持ちをぐっと抑えここに来た本来の目的を果たす為にクロヱへ声をかけた。

 

 

「はぁ……おいクロヱ、茶番はそれくらいにしろ。吾輩たちにはふざけてる時間は無いんだぞ」

 

 

「はっ…ご、ごめんなさい総帥……」

 

 

吾輩に注意されたクロヱは、急にしおらしくなり素直に反省しているようだった。やっぱり、この世界のコイツはラプラスの言うことだけは聞くのか……そんな、普通に怒られた子みたいな顔も出来るんだな。

……しかし、その一瞬見せてくれた幼子の様な表情も直ぐに消え去り、今はもう組織の重役としての目つきに代わっていた。

 

 

「ン゙ン゙ッ……皆、色々理解できない状況かもしれないけど一先ず聞いて。これから私達は総帥の指示の下、この船の船長への接触及び外部との通信手段を確保する。この中に動けないほどの負傷者はいる?点呼も取りたいから、牢から出たら直ぐに並んで」

 

 

「「「 ――了解。 」」」

 

 

先程までの砕けたような雰囲気は既に無く、一瞬にして彼ら彼女らははっきりとした上下関係の下統率を取り出していた。その切り替わりようは見事なもので、傍から見ていただけの吾輩にすらピリつき始めた空気感を感じ取ることが出来る。しかしそれに総帥である吾輩が怖気づいてはいけないと必死に踏みとどまり、地下牢の扉から一番近いところにいた女性構成員に鍵の束を手渡した。

 

 

「ほら、この鍵で開くはずだ。全員に回してくれ」

 

 

「ハッ!ラプラス様。頂戴します」

 

 

彼女はあくあ先輩から託された鍵を謙った態度で受け取り、そのまま牢の扉や仲間たちに付けられている手錠の鍵穴へと通していく。そうして捕らわれの身から解放された彼らはぞろぞろと狭く薄暗い廊下へと赴いていき、そして新人の指示通りに三列で整列した。

 

 

「お待たせしましたクロヱ様、ラプラス様。暗殺部門所属構成員12名、整列が完了しました。軽症者が数名いるものの作戦実行に支障はございません。次の指示をお願いします」

 

 

「うん、よろしい。……ラプラス、喋っていいよ」

 

 

彼らの動向を見守りつつ、その合間合間で部下たちの様子を確認していた。こいつらは捕虜としてここに捕らわれていたわけで、下手をすれば取り返しのつかない状態のやつが居るかもしれない。だが、それもどうやらいらぬ心配だったようだ。彼らは全員が自分の力で立ち上がり、そのまま作戦行動に移れると豪語している。ついさっきまで捕らわれの身だったにしては、随分と頼もしいことだな。

そして、そんな部下を見て準備が整ったと判断したクロヱが話の主導権をこちらに渡してくれた。

 

 

「ああ、わかった」

 

 

それを受け吾輩も総帥として彼らの前へと赴き、対照的にクロヱは一歩身を引き完全にこちらを立てる態勢を作ってくれる。その状況にはもはややり易さすら感じて、心の内で彼女に感謝を述べつつ口を開いた。

 

 

「……時間があんまり無いんで、名乗りとか形式とか色々端折っていくぞ。長い監禁生活で疲れてるところ悪いんだが、お前らには早速働いて欲しい。まずは現在吾輩たちが置かれている状況について軽く説明する。質問はその都度聞いていくから、何かある奴は挙手してくれ。いいな?」

 

 

「「「 了解! 」」」

 

 

総帥からの言葉に対し、暗殺部門の構成員たちは同意の意を示した。そして、その反応に満足したラプラスは自分たちの現状について簡潔かつ出来るだけ明瞭に説明を始める。今我々が乗っているこの船は宝鐘海賊団の二番船であり、潤羽るしあが管轄している場所であること。諸々の理由から総帥自らラプツナズを連れ捕まった仲間を救出しに来たこと、またその半数が現在別の場所に囚われておりもう半数が帰還用の宇宙船で待機していること。そしてその船と通信をする為連絡手段を確保しなければならないということを。

 

 

「……また、この船には船長潤羽るしあ以外にも一番船の副船長湊あくあやふぁんでっと達が同船している。想定される障害はそれくらいだが、湊あくあに関してだけは既にこちらとの協力関係を持ち掛けているため敵ではない。もしどこかで見かけても事情を説明し決して手出ししないように」

 

 

自分たちの取り敢えずの現状を説明し、ラプラスは彼らを見渡しながら一間置く。質問等は都度聞くという話だったのでそれらを見越してのことだったが、案の定手を上げる者達がちらほらいた。

 

 

「む、思ったより多いな。説明不足だったか?……じゃあ、取り敢えずお前。質問は何だ?」

 

 

「ハッ!ラプラス様。僭越ながら質問させていただきます。……先程のお話出ていた、想定される障害である”ふぁんでっと”とはどのような存在なのでしょうか」

 

 

挙手する部下たちの中から、適当に目についた者を選びラプラスは指名する。すると彼は一礼の後、説明の中で名前の挙がった『ふぁんでっと』について質問をしてきた。あぁ、そう言えばクロヱにもそうだがその辺の呼び名とかについてちゃんと説明してなかったっけ。

 

 

「それは悪い、説明不足だったな。お前達も一回目の救出作戦の時とかに遭遇したかもしれないが、ふぁんでっととは潤羽るしあの作りだした魂を素体とする兵隊のことだ。今のところ二種類のふぁんでっとが確認されてて、特に注意が必要なのは力の強い”動く死体”の方だな」

 

 

質問に対する回答をラプラスが話していると、最初は皆なんのこっちゃという顔をしていた。しかし、それも最後のその一言で全員が「あ~なるほど」という理解の反応を示す。彼らも当初宝鐘海賊団についての調査や、捕まった仲間をクロヱの独断で救出する際なんかに会っているのだろう。そして勿論のこと、彼らの強さや厄介さについても理解しているはずだ。

 

 

「……ちなみに、その動く死体単体のことを沙花叉達は『ゾンビ』って呼んでるから。あんた達も今後そうするように……ね?ラプラス♪」

 

 

「えっ?……あ、うん、そうだな……」

 

 

静かだったクロヱがいきなり話し始め、何事かと思えば吾輩が要所要所で使っていたゾンビという単語の説明を部下たちにしてくれていた。そうか、今までクロヱに指摘されなかったから気が付かなかったがそう言えばあくあさんも吾輩が動く死体をゾンビって呼んだ時に不思議そうな顔をしてたな。もしかして、この世界にはゾンビとかっていう単語や文化が存在しないのか……?

 

 

「あー……まあ、ふぁんでっとについてはそんな感じだ。後は目に見えない幽霊って呼ばれる種類のもいるみたいだが、そっちに関してはほとんど存在を感知できないしこちらに干渉してくる様子も無いから一旦は無視する」

 

 

潜入任務という性質を考えるならば、圧倒的に後者の霊体ふぁんでっとの方が厄介である。だが吾輩達が今からやろうとしていることは一種の実力行使というものだろう。最終的にお互いの実力が拮抗した状態でるしあさんの元に辿り着ければいいわけで、今更逃げ隠れする必要もない。下手すれば、今のこの状況さえ幽霊たちによってるしあさんに筒抜けかもしれないしな。

 

 

「よし、それじゃ次だ。……お前、質問は何だ?」

 

 

「はい、ラプラス様。此度の我々の救出の際に主上がお連れになったという『ラプツナズ』という部隊についてお聞きしたいです。私は未熟ながら、今までそのような名の者達がいるなど聞いたことが無いのですが……確かお話の中では、未だ半数がこの船に囚われているのですよね。彼らはこの船に残していくのでしょうか?」

 

 

一人目の部下の疑問を解消したと判断したラプラスが次の者を指名すると、この中では珍しい女性の構成員がそう聞いてきた。あ、そうか。この人さっき吾輩が牢のカギを渡した人だ。確かに、その辺のこともまだ話してなかったな。

 

 

「いや、今のところラプツナズに関しても同時進行で……」

 

 

 

「―――ラプツナズは総帥を守るために組織された極秘特殊部隊のこと。本来はあんた達下っ端にはその存在すら明かすことは無いんだけど、緊急事態だから仕方なく説明したの。だから、彼らについてはこの任務外で口に出すことは禁止。またここではあくまで一仲間として扱って、他のことと同時進行でラプツナズの救出も行うから。……ね?ラプラス!」

 

 

 

いやなんでお前が答えんの??吾輩今喋ろうとしてたじゃん。

部下の質問に対しラプラスが答えようとすると、それを完全に遮り被せる形でクロヱが全てを話してしまった。まあこいつの言ってることはその通りだし別に構わないんだけどさ……その、「私は総帥の言いたいこと全部わかってますよ」みたいなドヤ顔は何だ。

 

 

「なるほど、理解しました。お答えいただきありがとうございます」

 

 

質問をしてくれた彼女もその解答に満足したようで、結局吾輩は殆ど話すこと無く会話が終わってしまった。普段関わることの無い部下たちと話すのは地味に大切なことだと思ってるし、いい機会だからコミュニケーションの一環としても話したかったんだけどなぁ……。

 

 

「ま、まぁ、今はそんな時間も無いしいっか…………それじゃあ、次は?……はいお前」

 

 

「は、はいっ、ラプラス様!お聞きしたいのですが……先程帰還船と連絡を取るため通信手段を確保されると仰っていましたが、それはつまりこの船を占拠するという意味でしょうか?」

 

 

新人と彼女とのやり取りを若干不満に思いつつ、抗議する時間も勿体ないという事で次の質問に移行する。するとまた一人、今度は少し若手の男性構成員が挙手しそう問いてきた。あーなるほど、新人の時もそうだったが今のholoXの考え方的に通信手段を確保する=通信室又はコックピットを制圧=船を占拠って事になるのか。まあその思考もわからなくはないんだけど、あくまで吾輩はるしあさん達との関係を良好にするためにこの船に来た様なものなのだ。よって出来るだけそう言う手段はとりたくない。

そう思ったラプラスは、質問をしてきた彼に対しその旨をきちんと総帥らしく説明しようとした。

 

 

「あぁ、いやそういうことじゃなくt……」

 

 

「そうじゃないでしょ。さっきの沙花叉とラプラスの話聞いてなかったの?これからの目的は船長潤羽るしあへの接触、それはつまり湊あくあと同じように協力関係に持ち込ませるってこと。それなのに武力行使で占拠してどうすんの。ていうか総帥が”敵の殲滅”って言ってない時点で、それぐらい察してよ。……ね?ラプラス♡」

 

 

だから何でお前が答えんだよっ!!!

つーかクロエだって、さっき似たようなこと言ってただろーが。もしかしてこいつ……自分の立場と状況に便乗して、仕返しのつもりなのか?さっき部下たちに散々チクチク言われたこと、根に持ってるのかよ。……それに、ちょっと言い過ぎじゃないか?

 

 

「は、はい、そうですよね……申し訳、ありません……」

 

 

ラプラスが心配していた通り、案の定折角質問をしてくれた彼はクロヱの言葉を聞き落ち込んでしまったようだった。そりゃこっちから質問していいって言ったのに、それを全力で否定されたらそういう反応になるのは当然だ。これ、このやり取りのせいでholoXの総帥は部下に優しくないとかって評判になったりしないだろうな……。

 

 

「え、えっとー……いや、こっちも言葉足らずで悪かったなっ!一応吾輩の見解としては、この宝鐘海賊団という組織に大変興味があるんだ。その為、武力行使による制圧では無くできるだけ穏便な方法で船長潤羽るしあへの接触を果たしたいと考えてる。ただ、お前らも知っての通り奴らとは未だ敵対関係であることには変わり無い。だから当然ふぁんでっと等との戦闘も発生するだろうし、その時にお前達の力が必要なんだ。…………だ、だからその……お前も、よろしく頼むぞ?」

 

 

「……はい!ラプラス様っ!」

 

 

肩をがっくりと落とす部下を見ていられなくなり、ラプラスは慌てて補足説明と共に彼へのフォローを入れる。すると、総帥から直々に送られた激励によりその者はいくらかやる気を取り戻してくれたようだった。よかった、士気には問題ないみたいだな。

……ちなみに、その際に横から「チッ」という舌打ちの様なものがおもいっきり聞こえた気がしたけど……うん、聞こえなかったことにしよう。振り向くの怖いし。

 

 

「……ですがラプラス様、そうなると通信手段の確保の方はどうするのでしょうか。コックピットを制圧せずに、帰還船との連絡は難しいと思うのですが……」

 

 

そんな中、一人の構成員が再度口を開く。

そう、問題はそこなのだ。単に通信手段を確保すると言っても、それを一体どう実行するのかという点。自分たちの帰還分の燃料の有無なども含め、出来るだけ早めにこちらの状況と留守番組のラプツナズ達の状況の情報共有をしておきたい。だが、それも今手の内にある物だけでは不可能なのだ。

 

 

「ああ……実はそれについては、吾輩も悩んでるところなんだよ。むしろ、この中に何かいい案思いつく奴いないか?一応船との連絡用の無線機を持ってはいるんだが、”通信妨害”されてるみたいでな……」

 

 

そう言ってラプラスは、この船に潜入する際に持たされた装備品の一つである無線機を懐から取り出す。それは緑・赤・黄の三色に点滅するランプが付いており、数時間前から通信不能を意味する黄色が点灯していた。本当なら、これさえ使えれば帰還船で留守番をしているラプツナズとも連絡が出来たのだ。しかし現在は、一種の通信妨害の様なものを受けているらしくそれは叶わない。それも十中八九るしあ先輩の仕業だと思うので、あるいは本人の説得が成功すればこの問題も解決するとは思うのだが……。

 

 

「これが使えれば、話は早かったんだがなぁ……」

 

 

目の前で整列している部下たちに見せつけるように、ラプラスは指先で無力な只の小さな箱と化していた通信機をプラつかせていた。――――つい先程まで黄色に点滅しており、現在は”応答要請を知らせる緑色のランプの点いた”それを。

 

 

 

「……あれ、ラプラス?……なんかそれ、沙花叉には”使えるよう”に見えるんだけど…………」

 

 

 

その場に居たラプラス以外の一同が、その総帥の姿を見て思っていたことをクロヱが代弁する。今議題に上がっている通信手段の確保について、その問題は既に解決しているのではないかと指摘したのだ。

 

 

「え?何言ってんだクロヱ。潜入任務用に作られたこの無線機は普通のとは違った特注品で、黄色に光ってる間は通信不可なんだ……ぞ……」

 

 

暗殺部門の連中からも何だかよくわからない視線を向けられつつ、沙花叉に言われた言葉を聞きラプラスはそんな訳ないだろうと一蹴しようとした。しかし、その際に自分で持っていたそれに視線を移すことで間違っていたのはこちらの方だったという事を自覚する。むしろ、今この瞬間にすら激しく通信相手への応答を求めるように翠緑が光っていた。

 

 

 

 

 

「えぇ……なんか、使えるようになってるんですけどぉ……」

 

 

 

 

 

これからやるべきこと、『通信手段を確保せよ』―――――解決。

 

まだ未定なのですが、実は今書いている第二章が終わりましたら第三章に入る前にいくつか番外編を書こうかなと考えています。またその中で秘密結社holoXの総本部で働いているモブキャラ視点の外伝の様なものを書きたいのですが、皆様ご興味がおありでしょうか?(例:書くかはわかりませんが、四天王たちの側近の日常・本部内にある飲み屋店主の話・こよラボ従業員の悩み等)※読まなくても本編には関わりなくするつもりです。

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