転生したらラプラス・ダークネスだった件   作:飽和水溶液_pixiv

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第49話です。あけましておめでとうございます。新年初めての投稿ですが、前回から半月ほど時間が空いてしまい申し訳ありません。ですが、今年も変わらず転ラプシリーズを書いてまいりますのでお付き合いのほどよろしくお願い致します。


さて、前回では遂にクロヱの協力により暗殺部門の方々を助け出せましたね。これで取り敢えずの戦力は整ったようで、ラプ様の反撃開始と言ったところでしょうか。ところで、暗殺部門は随分とフランクな仕事環境のようですね。上司であるクロヱに逆らうことはせずとも、思ったことをズバズバという感じ信頼度の高いことは伺えます。ですが、本来のクロヱと飼育員さん達の関係はこんな感じなのではないでしょうか。このパラレル世界で表現するのは難しいと思っていたのですが、上司にも平気で不満を言ったりする辺りがいつもの配信などでの関係値と近いものを見せられたのではないかと思っています。本当は、これくらいフランクに関わってくれる方がラプ様も嬉しいのかもしれませんね。


【追記】
今年一発目の投稿なので、何か深堀出来ることは無いかと必死に考えました。結果、最初に相応しいわけでは無いですが、前話で登場した『博衣こよりの発見した特殊な物質』について軽く触れておきます。尚、これが今後どの程度本編に関わってくるかは不明です。何度か描写はされると思いますが。


『 ある日、研究部門代表博衣こよりはラプラス・ダークネスが戦闘を行った後の地を調査していた。彼女の強大過ぎる力に当てられ、その周辺環境にどのような影響を及ぼすのかを調べていたのだ。その際、どこにでもあるようなありふれた物質と結合し合う特殊な物質を発見。それは単体では人体に触れるだけで有害となるが、他の物質と結合させるだけで途端に無害となりかつそのモノの『効力を高める』性質があったのだ。具体例を挙げるならば、水素と結合させることで水素爆発の範囲を拡大、ブドウ糖と掛け合わせることでエネルギー効率の上昇、更には単純に鉄の生成過程に混ぜることで硬度を高めることが出来る。また、この物質の良点は汎用性の高い所にあり現在holoXで発明されるもののほとんどにこれが使われている。
彼女は、そんなラプラス・ダークネスの力により生成された物質に発見した自身の名前を冠し『コヨリ二ウム』と名付けた。 』


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第49話 『任務』の再始動

 

懸念点の一つであった帰還船への連絡、またその船に乗船しているラプツナズとの情報交換。その問題は思わぬ形で既に解決へと辿り着こうとしていた。

 

 

「えぇ……なんか、使えるようになってるんですけどぉ……」

 

 

先程まで我が物顔で点灯していた通信不可を示すシグナル。しかしそれは持ち主の気付かぬうちに解消されていたようで、現在は手のひらを返したように慌ただしく点滅している。

 

 

「あれぇ……?確かにさっきまでは、なにも反応なかったはずなんだけどなぁ……」

 

 

数時間前から確かに使えなかったそれは、何故か今になって使用可能となっていた。ところがそうなった理由に全く心当たりがなく、このタイミングで発端だと思われるるしあ先輩が通信妨害を解除する必要性も無いはずだ。一体どうなっている?

 

 

「でも、使えるに越したことはないんじゃなの?これで帰りの船と連絡取れるなら、それでいいじゃん」

 

 

「……まぁ、それもそうか。めっちゃ呼び出してるみたいだし、早速連絡してみるか」

 

 

そうなった原因がわからず思考を広げていると、無線機を見つめながら黙り込んでしまったラプラスに対しクロヱがそう言った。だが新人の言う通り、連絡が取れること自体は喜ぶべきことだろう。もしかしたら先輩たちの方で何かトラブルが起きたって可能性もあるし、そろそろ本格的に動き出したい頃合いだしな。

 

そう思ったラプラスは使い慣れない無線機の応答ボタンを押し込みながら口元で構え、そして言葉を発した。

 

 

 

 

「あー、あー、こちら吾輩。聞こえるかー?」

 

 

 

 

こちらの声を発信し終え、応答ボタンを放すことでお互いが話すことのできる通話状態となる。この無線機で連絡を取り合える相手は捕まってしまったラプツナズの隊員4人と、後は宇宙船で留守番している連中。つまり、今吾輩と連絡を取ろうとしている相手は後者の方だと思うのだが……。

 

 

 

 

『…………――ラプラス様ッ!!ご無事ですかッ??!!』

 

 

 

 

いきなり大声を出したが為にハウリングが生じ、キーンという不快音が廊下に静かに響いた。

しかし予想通り、この声は宇宙船で留守番をさせているラプツナズの隊長の声で間違いない。それにこの様子だと、通信妨害を受けていた間も何度か連絡を取ろうとしていたのだろう。

 

 

「あぁ、長いこと連絡できなくて悪かったな。この船の船長たちの妨害とかでこっちも立て込んでたんだ」

 

 

『い、いえ、我々も幾度かラプラス様への連絡を試みたのですが、繋がらず……こちらに居る部下の話だと、恐らくその船から強力な磁力場が展開されていたようです。そのせいで他の隊員との定期連絡すら行えず……』

 

 

案の定、彼らはずっと吾輩たちのことを気に掛けてくれていたらしい。って、そりゃそうか。なにせ総帥を含めた部隊の半数が船に潜入してから数時間、そのほとんどの間音沙汰がなければ心配や不安を通り越し取り乱しても仕方ないこと。むしろ、その間にこいつらだけで早まった行動をとらなかったことを褒めたいぐらいだ。

 

 

『本当に……申し訳ありません、ラプラス様……!!主上の危機とわかっていながら、この船を守り管理することが任務の我々では只見ていることしか出来ず……あまつさえ、その船すらかなり”危うい状況”に……』

 

 

引き続き慌てたような口調で話す隊長が、吾輩達が大変だった時に何もできなかったことを謝罪してくる。しかし、今回の場合それは仕方のないことだ。吾輩が彼らに命じたのは、救出した暗殺部門の連中を含めこの場に居る仲間全員の命運を分ける『帰還船の防衛』だった。万が一の際はそれだけが我々の希望となり、最後の頼みの綱となる。だから、ただ船で待機しているだけというのも絶対に必要な役回りだったのだ。

……だが、それにも間もなく限界を迎えようとしていたらしい。

 

 

「……いや、お前らが謝る事じゃない。むしろそんな不安の募る中で、勝手な行動をせずよく吾輩の指示に従ってくれた。お前達を褒めはしても責めたりしないから安心しろ。……それよりも、船の状況とやらを知りたい。こっちの現状についても色々教えるから情報共有をしよう」

 

 

ラプラスは彼の言葉を聞きつつ、向こうが一通り吐き出し終えたと判断したところで口を開く。そして尚も謝罪を述べる冷静じゃ無さそうな隊長を諭すような言葉をかけ、彼らの状況について尋ねた。何はともあれ、ここで宇宙船と連絡を取れたことはこちらにとって本当にありがたいことだ。単純に使える手駒が増えたことにもなるし、上手くいけば彼らの協力が捕まってしまった残りのラプツナズの捜索に使えるかもしれない。

 

 

『……了解致しました。それではまず……』

 

 

「あ、ちょっと待ってくれ。他にも聞かせたいやつらが居るから少しボリュームを上げる。……悪いけど、お前らも少し近くに寄ってくれ」

 

 

説明を始めようとする隊長の話を遮り、ラプラスは一度顔を上げる。そして、目前で乱れず整列していた暗殺部門の者達に近くに来るよう手招きした。

 

 

「全員で通信が聞こえるように円になれ。ついでにしゃがんでくれると吾輩の首が疲れなくて助かる」

 

 

『……ラプラス様、そちらに誰かいらっしゃるのですか?』

 

 

「あぁ、うん。”ついさっき助けた”暗殺部門の奴らがな。ちゃんとクロヱも居るぞ…………ほら、どうしたお前ら。遠慮せずもっと寄れよ、そんな離れてたら声が聞こえないだろ」

 

 

吾輩と隊長とのやり取りが全員に聞こえるようにと、自分の周りに集まって座るように部下に指示を出す。しかし、何故かクロヱ以外の全員が吾輩から1、2メートルぐらい距離の空いたところでおろおろしていた。それはどうやら、「ラプラス様のお側に寄るなど恐れ多い……」という事らしいのだが……生憎、今はそんなことを言ってる場合じゃない。時間も無いんだから、早くこっちに来いって。

 

 

『はっ?暗殺部門?……もしやラプラス様、既に捕まっていた仲間を救出なされたのですか……?』

 

 

「ん?そうだぞ。結構苦労したんだけどな。…………んじゃ、集合したんで早速こっちの状況から話すぞ?まず今この場に居るメンツなんだが、吾輩とクロヱ、捕まってた暗殺部門の構成員達の計14人だ。ただ、こいつらを助けるまでにさっきも言ったこの船の船長……潤羽るしあとその配下の妨害を受けて一緒に連れてきたラプツナズ4名が欠けた状態だ。また武装状況については吾輩が潜入時とほぼ変わらず、クロヱがお前の持たせてくれた荷物のお陰で多少戦える。あとの他の奴らは今は武器を持ってないが、ここに来るまでに荷物を保管してるらしい部屋も見つけてるからそれで解決するかも……って感じだな」

 

 

『…………ゑ˝?』

 

 

今回の任務の本命である『暗殺部門の救出』が既に完了していることに対し少し驚いたような反応を示したラプツナズの隊長が、続けてラプラスから告げられた”現状報告”を聞き先程とは比べ物にならない衝撃を受ける。それは、もはや驚愕を通り越し無線機越しの相手に畏怖を感じる程であった。

 

 

 

 

『ま、まさか……ラプラス様たったお一人で、そこまでのことをやってのけたのですかッ!!??』

 

 

 

 

再度大声を上げた彼により、ラプラスは自分の鼓膜に僅かな痛みを感じた。

 

 

「ウ˝ッ……い、いや、別に吾輩一人でってわけじゃないぞ。一度捕まりかけた時だって護衛のやつが庇ってくれたから逃げ切れたわけだし、その後もある協力者を確保できたから何とかなっただけで……」

 

 

『し、しかし、部下を失ったうえでクロヱ様や暗殺部門の方々を助け出したという事には変わりないのですよな?!しかも、その協力者というのも宝鐘海賊団の船内で見つけたのなら敵方の者のはず……さ、流石ですラプラス様…感服致しました……』

 

 

勝手に騒ぎ立て、勝手に尊敬されたらしいラプラスは隊長との温度差に首を傾げていた。

 

 

しかし、今回の場合で言えばこの場で正しい反応をしているのはラプツナズを率いる隊長の方であった。ラプラスは現状について『自分はただできることを必死にやっていただけであり、そのほとんどを部下や湊あくあ、最初に助けた沙花叉クロヱの助けがあったお陰である』と思っている。

だが、本来であれば敵陣で一人取り残され、更に通信手段も経たれているような危機的な状況にもかかわらずその盤面を単独でひっくり返し、かつ当初の目的であった『沙花叉クロヱ及び暗殺部門の救出』のほとんどを達しているという功績はもはや計り知れない。しかも事情を知る者からすれば碌な武器も持たず、ただその身と僅かな潜入品を携えただけの外見は少女である総帥がそれをこなしたという事になる。そんなことを、現在holoXに所属している者の中で一体誰が成し遂げられると言えよう。それだけ、今のラプラスの行動は異次元の所業であった。

 

 

だが、やはりラプラスはそんなことを知るはずもない。よって、その隊長の反応を皮切りに一緒に盛り上がる他の部下たちの様子を見ても、いまいち実感が湧かなかった。

 

 

「ふふん、当たり前でしょ。なんたってここに居るのは、沙花叉たち全員の総指揮官ラプラス・ダークネスなんだから♪てか、ラプラスはholoX結成当初は現場任務をほとんど一人でこなしてたんだよ?これくらい朝飯前に決まってるじゃん!」

 

 

「ラプラス様、流石ですね」

 

「素晴らしいです、ラプラス様っ!」

 

「……ラ様誇……」

 

 

本人を置いてけぼりにしたまま、彼ら彼女らは自分たちの総帥を次々に称えていた。しかし、『自分は本当に大したことはしていない』という後ろめたい感情が、ラプラスの背中を徐々に蝕む。てかホント、もう恥ずかしいからやめてくれないか……。

 

 

「あーもう!いいってそういうの!……ほ、ほら次はそっちの番だ!船が危うい状況なんだろ?!何があったかさっさと教えろッ!」

 

 

大勢の人に一斉にべた褒めされるというのは、どうにも心臓に悪い。そもそも誰かに称賛される機会すらホロライブ入って多少増えたという程度なだけで、吾輩の長い人生の中でそう多くは無いのだ。結果、その照れくささとほんのり赤く染まってしまった顔を隠すように吾輩は話を逸らしたのだった。

 

 

『……はい、ラプラス様。憚りながらご報告させていただきます。…………現在、この船は当初の予定より長い時間の飛行を余儀なくされたが為に、本部への帰還に用いるための燃料が僅かに不足している状況に陥っています。今すぐにこの場から離脱し母艦へ向かったとしても途中で燃料切れを起こしてしまうでしょう』

 

 

「あぁ~……やっぱり、間に合わなかったか。……まあ、吾輩たちがここに着いた時点で既に時間かかってたしな」

 

 

我々暗殺部門救出部隊がこの船を目指すために選んだ宇宙船は、任務の内容にマッチした"速さと隠密性"を重視した小型船であった。それは長時間の作戦展開に耐えうる想定をした代物ではなく、つまりは短期決戦にのみ我々には活路があったのだ。

しかし、本部を出た瞬間から始まっていたタイムリミットは目的地に着いた時点で既に予定より浪費してしまっていた。その原因は主にこの海賊船が急激に進行速度を増加させたことにある。後にその理由が彼女らの本部で起きた問題に対処する為と知ったが、そんな船になんとか追いつきそして潜入、その後も吾輩たちを拾う為の追尾飛行と長時間かつ高速な移動を余儀なくされ遂に燃料の底が見えてきていたのであった。

 

 

『本当に不甲斐ない限りです……こちらは照明や本部との通信等不必要なエネルギーを極力消費しないよう努めたのですが……』

 

 

「いや、むしろここまでよく持たせてくれた。全然上出来だぞ。……とりあえず、まだアジトに帰還するのにギリギリ足りないくらいの燃料は残ってるんだよな?なら一先ずは引き続きこの宝鐘海賊団の船を追ってくれ。最悪帰りの方は幹部たちに迎えに来てもらえば何とかなるだろ」

 

 

吾輩がこの船で出来る最善は、るしあ先輩からの疑いを晴らし宝鐘海賊団とholoXが和解の道を進むきっかけを作りだすこと。だが万が一それが上手くいかなかった場合、せめて我々が互いに干渉し合わず間違っても争いに発展するなんてことにならないようにしなければならない。その為にも今回のことでどちらの陣営にも被害が生まれないことが、何よりも重要視すべき事。つまりは、例え吾輩の望みを全て諦めてでもこいつらを生きて本部に返さなければならないのだ。

そう考えた時、最終手段のこの船から逃亡するという道を残しておかなければならない。幸いなことに帰り分を考慮しなければまだ燃料に余裕があるようだし、最悪近くの適当な惑星にでも不時着し連絡を取れれば本部から迎えを寄越してもらえるだろう。

 

 

「うへぇ……マジでラプラスたちだけで来たんだね。そんな無謀な事よくルイ姉が許したなぁ……」

 

 

「一応の勝算はあったからな、ちゃんと説得したんだぞ。……まあ、その為の約束とか諸々破っちゃってるし、そもそも最初の予定から随分とかけ離れてるけどな。計画通りいかな過ぎて現実って厳しすぎる……」

 

 

「あはっ♡またまた~。そんなこと言っちゃって、実際のところ大まかなシナリオから逸脱はしてないんでしょ~?沙花叉を手籠めにして、部下たち助けて戦力増やして、更にはいざって時の予防線もばっちりになったわけだけど……次は何を企んでるの♪」

 

 

そう言ったクロヱは、状況に反して妙に楽しそうであった。こっちの気も知らずに、呑気なものだ。買い被りすぎなんだよ、お前もこいつらも。第一、今回だってそんなシナリオなんていう大それたものなど無かった。あったのは、ただの実際の身の丈に合わない吾輩の独善的な希望だけだ。それにこれからだって、正直どう展開が転ぶかなんて分かりはしないのだから。

 

 

 

 

『……ラプラス様、クロエ様、お話中に申し訳ないのですがもう1つお伝えしなければならないことが……実は、数時間ほど前から船の進行方向上に何やら"生き物のような”黒い影が確認されています』

 

 

 

 

案の定、ラプラスが全くもって想定していなかった『存在』が自分たちに迫っていた。

 

 

「え……生き物?影?何だそれ」

 

 

『我々も未だ詳しいことはわかっていないのですが……その海賊船は間もなくある惑星とその周囲を漂う岩石群の近くを通過します。ですが、その辺りに正体不明の生命のようなナニカがいるのです。まだ幾許か距離がある上にそのモノの表皮が漆黒であるため定かでは無いのですが、岩石群の隙間を縫うようにして移動しているようで……大きさで言えば、この宇宙船を優に超えています』

 

 

「は?そんな生物が宇宙空間に居るって??そんなバカな……」

 

 

ラプツナズからの報告を聞き、ラプラスは最初何かの間違いだろうと思った。いくら小型と言えど、自分たちが乗ってきた宇宙船は人が20人は乗れる大きさだ。そのサイズを超えるだけでなく、更に本来生物が生存できるはずの無い真空空間で優雅に泳いでいるやつが居るというのか。ラプラト星人でもあるまいし、そんなことあるはずが……。

 

 

「……あれ、待てよ……」

 

 

しかし、そこでふととある予感が脳内をよぎる。それはあまりにも荒唐無稽で、他にいくらでも可能性はあるはずだった。そもそもただ事情や因縁を知っているだけで、だからといってそれと必ずしも結び付くわけでは無い。

それでも、今のラプラスにはその最も最悪過ぎる可能性を捨てきれなかった。

 

 

「まさか……それって……ッ!!」

 

 

思わず、その口から漏れ出す言葉にも力が籠ってしまう。だが、この船は奴らと一番の因縁がある彼女たちの船であり、今まさにその害敵と接触しようとしているかもしれないのだ。しかも、その場に黒幕という容疑の掛けられた吾輩たちがいる状況で。

 

 

「……どうしたの、ラプラス。顔色悪いよ?……なんか問題でもあった?」

 

 

この中の誰一人として、吾輩と同じ結論に至る者はいないだろう。こいつらはきっとその存在すら知らないだろうし、かく言う自分だってそうであるという保証も無い。ただし、ソレとの接触までには何としても決着を付けなければいけないことだけは確かだった。

 

 

「……いや、まだ可能性の話だ。……それよりも、本当にこんなことしてる場合じゃないみたいだ。今すぐにでも行動を開始するぞ」

 

 

吾輩の思い過ごしならば、それで構わない。

だが、もしそれが真実ならば?……その存在は、こちらにとっても先輩たちにとってもとんでもない被害を及ぼすことだろう。それこそ、それまでに彼女たちの信頼を勝ち得ることが出来なければ最悪全滅すらあり得ることなのかもしれない。

 

そう思い立ったラプラスは、呑気に情報交換をしている場合では無いと次の自分たちの行動について考え始めていた。

 

 

「残りのやる事は二つ。ここには吾輩とクロヱ、あとは部下が12人と3人……ラプツナズ!その黒い影と惑星群に着くまでに後どれくらいかかりそうだ?!」

 

 

『は、はい!今の船の進行速度ですと……おおよそ、『一時間』と言ったところでしょうか』

 

 

「全員聞いたな!タイムリミットは一時間、それまでに何としても作戦を完遂し任務を完了させる。絶対に、その影との接触は回避するんだッ!!」

 

 

 

「「「 !!! YES MY DARK !!! 」」」

 

 

 

ラプラスのその言葉に、彼ら彼女らは賛同の声を上げた。

 

********************

 

 

暗闇へと続く階段を暗黒方面から駆け上がり、錆びれた扉で閉ざされた部屋を力づくで開け放つ。すると、そこは薄汚れた倉庫になっていたようでつい最近人や物の出入りがあったようだった。

 

 

「……本当にあったよ。あいつどんな嗅覚してんだ?」

 

 

室内の更に端。大きな布を掛けられ、その上からロープで縛られ頑丈に固定されていた箱たち。その側面には『Ⅹ』のマークが記されており中身の持ち主が誰であるかを示していた。

 

 

「ん?ラプラス、なんか言った?」

 

 

「へっ?あ、いや……く、クロヱは相変わらず鼻がいいなと思ってなっ!」

 

 

「そう?えへへ♪沙花叉役に立つでしょ~!……ほら、これだけ”武器”があれば何とかなるんじゃない?」

 

 

独り言が聞かれていた事よりも、それを聞き返してきたときに物凄く顔が近かったことに驚きつつ適当なことを口走る。しかし結果的にご機嫌取りに成功したらしく、クロヱが大変満足そうに懐から取り出したナイフでロープと布を切り裂いていた。そして、その中からお目当ての物を発見し此処に来た目的を達せられたことを報せてくれる。

 

 

 

 

数分前、この海賊船に迫る危機を知ったラプラスは直ぐに部下たちに指示を出した。それは大きく分けて二つ、一つは残りのラプツナズの救出でありもう一つは潤羽るしあへの接触の支援である。

 

 

「いいかお前ら、今からこの場に居るメンバーを2チームに分ける。片方は宇宙船のラプツナズと協力して残りの四人の隊員を捜索、救助してくれ。幸いなことに船にはお前らをの居場所を特定するために積んできた”博士のドッグタグ”を検知できるレーダーがある。それがあれば捕まった奴らがどの棟に居るかくらいはわかるだろ。……どうだ?ラプツナズ」

 

 

『はい、ラプラス様。ラプラス様以外の隊員四名、ドッグタグの信号を拾えております。大まかな位置についても解析済みです』

 

 

広大な宇宙を漂っている海賊船を見つけることに貢献してくれた、holoX自慢の科学者が作った特製のドッグタグ。それは一度口に含むことで微弱な電波を発し、特別な装置があればその信号を受信することが出来る。捕まった彼らは規則に則りそれらを直ちに実施していたらしく、既にその場所についても大体判明しているらしい。そこまでわかるんなら、もっと早くこの手を使うべきだったな。

 

 

「よし、ならここから一番近いところにだけ全員で向かって、それ以降は回収した無線機を使って他のラプツナズの救出をしてくれ。そんで残りの方は、吾輩とクロヱと一緒に船長室に向かうぞ!」

 

 

つい先程まで捕らわれの身であった暗殺部門の連中は装備品を所持しておらず、今この場には無線機が一つしかない。しかしこれが無ければリアルタイムに宇宙船のラプツナズと連絡を取ることが出来ず、円滑に隊員の救出が行えない。そこで、ここから一番近場に囚われているラプツナズを助け出すことによりそいつの持っていたの無線機を回収できるはずだ。そうなれば、後は二手に分かれても何ら問題はないだろう。

 

 

 

 

そういうわけで現在、一先ずは予め見つけておいた宝鐘海賊団に取り上げられた暗殺部門の荷物を回収しに来ていた。その中身の大半は新人の鼻が示していた通りの『武器』であり、人数的に多少足りない分はそこらに堕ちている物や最悪鍛え上げた肉体でどうにかするという事だった。

 

 

「ねぇラプラス。沙花叉、少しだけ武器に余裕があるんだけど……これ、皆に分けた方がいい?正直ゾンビ相手なら拳でも何とかできそうなんだけど」

 

 

そう言ったクロヱは同じ型の銃のトリガー部分に指を掛け、フラフラと両手に持っていた。確かに、ここにある数少ない物資を分ける他の者達と違いクロヱにはクロヱ用に用意された得物があった。それは吾輩の背負ってきた小さ目の風呂敷一杯に入っていたものだが、コイツの身体能力を考えるならふぁんでっと相手にそこまで重装備である必要は無いのかもしれない。現実世界で言うところのゾンビと違って、触れても感染とかしないだろうしな。

しかし、念のためこの中で最も強いであろうこいつにはフル装備でいてもらった方が安心か。勿論宝鐘海賊団と真っ正面から戦うつもりは無いし、この先に居るらしい”ヤツ”とは流石の新人でも歯が立たないだろうけど……いざって時に、頼りのクロヱが戦えないのが一番困る。

 

 

「いや、お前のはちゃんと自分で持っとけ。むしろ吾輩の銃を誰かに渡した方がいいか?」

 

 

「それはダメ。ラプラスだって絶対何か持ってた方がいいよ。一緒に居る時は沙花叉が守ってあげられるけど、もし離れちゃったときにラプラスが襲われたらどうするのさ」

 

 

彼女から借りていた相棒をラプラスも同じように取り出してそう言うと、クロヱがグッと距離を詰めながら持っていた銃ごと自分の手を握り締めてきた。それはまるで『絶対に手放すな』とでも言っているようで、その熱意の籠った瞳に見つめられて思わず後ずさってしまう。

 

 

「お、おう、わかった……ちゃんと持ってるよ」

 

 

「うん、そうして。…………さっ!みんな、準備出来たぁ~?」

 

 

「「「 はい!クロヱ様っ! 」」」

 

 

新人の呼びかけに対し、部下たちは手にナイフや銃、更には鉄パイプやそこらから拾ってきた空き瓶などの鋭利物を布で包んだ即席の鈍器を作り出し上に掲げていた。そこだけ見れば、少しくたびれた身なりも相まってまるで世紀末の様な風体を呈している。もしくは荒くれ者か。少なくとも、規律の重んじられる悪の組織の一部隊にはとても見えない。しかし、それでも今この状況に置いてだけは頼りになること間違いなしの連中であった。

 

 

「……それじゃあお前ら、次の目的地に急ぐぞ!ラプツナズの特定してくれた信号の発信源はこの棟の中央辺りらしいから、このまま上の階を目指すんだ!」

 

 

総帥ラプラス・ダークネスから飛ばされたその指示に、彼らは一斉に「了解ッ!」と応える。そして、先程まで静かだった海賊船の船内に暗殺部門による大行進と怒号が鳴り響くのであった。

 

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