転生したらラプラス・ダークネスだった件   作:飽和水溶液_pixiv

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第51話です。今年の目標は、一先ず今年度中に二章を終わらせることですがちょっと難しいかもですね。出来る限り頑張っていきますが、三章に到達するのは今年の夏ごろとかになるのかな……?物語を楽しみつつ、気長にお付き合いださい。

さて、前回は遂にラプツナズの隊員を一人助け出し、別れたラプラスとクロヱが『狂犬さん』と接敵したところで終わりましたね。はたして、ここからどのような展開になるのでしょうか。一応武装している掃除屋と、何やら戦闘態勢にある狂犬との遭遇なので戦いは必須か?ホロベーダ―との接触も近づいているようですし、これからが気になりますね。

【追記】
今回の深堀シリーズでは別のことを書こうと思っていたのですが、例の件について触れておかなければならないと思ったのでここでのみ言及しておきます。

皆様、先日ホロライブのX公式アカウントより投稿された【夜空メル】さんの件はご存知でしょうか。私自身募る想いが多々ありますが、今は只受け止めるしかないと思っています。よってここでその件の内容等について触れるつもりはありませんが、今後のこの転ラプシリーズ内での彼女の立ち位置は今のところ変更なしで行こうと思っています。まだ先になりそうですが、夜空メルの登場する場面等は大方決めているのでそこで構想通りに活躍させるつもりです。また、このシリーズ内ではまだホロライブに所属しているメンバーとして扱っていきますのでご理解のほどよろしくお願いいたします。


↓作者:飽和水溶液のXアカウント。主に執筆状況や気に入ったホロ関連のリポストしてます。
飽和水溶液(@Suiyoueki_suba) https://twitter.com/Suiyoueki_suba


第51話 回避の手引き

 

奴との遭遇で、さっきのラプラスの反応に合点がいった。

 

 

あいつ……【湊あくあ】が、ただのメイドではないことは明らかだった。細かな所作なんかは素人同然なのだが、本当に何の取り柄も理由も無い者が宇宙海賊の一番船副船長を任されるはずが無い。それに、何と言っても奴の異常なまでの”隠密力”が私にとっては脅威でしかなかった。影が薄いとか、存在感が無いとかもはやそういう次元ではない。一体誰が、負傷していたとはいえ”本気で警戒していた沙花叉”の寝込みに近づけるというのだ。しかも、ただ傍に来るだけではなくその身体に触れ手当てを施すなんて……こいつがその気であれば、私はとっくにこの世に居ない。

 

掃除屋、延いては暗殺を生業とする私と似た部類。あるいはそれを専門とする職業に湊あくあは就いているに違いない。更にそのレベルは、沙花叉ですら感知できない程高位にいる。そんな者に自分たちのテリトリー内で気配も殺意も隠して隠密され続けたら、例え暗殺部門の精鋭100人を用意しても壊滅させられることだろう。

 

 

それだけ、私は湊あくあを評価しまた警戒していた。

 

 

 

 

そして、そんな者からの襲撃で最も警戒しなければならないのが”完全に気配を消している”ところからの『奇襲』だ。意識外からの突然の攻撃、少人数で戦場を駆けている時にこれ以上に怖いものは無い。しかも相手はさっきも言った通りの隠密の達人だ。それこそ、あの時あのタイミングに私が”走る以外のこと”に意識を広げた瞬間でなければその攻撃を躱すことは叶わなかっただろう。

 

 

『……というか、あくあさんが先に船長室に行ってるって言ってたし、あわよくば先に話を付けてくれてるんじゃないかってことを期待してたんだが……そんなことは無かったみたいだな』

 

 

突然、ラプラスがそんなことを言い出した時沙花叉は混乱した。何故このタイミングでアイツの名前を?とも思ったし、その後に私の湊あくあに対する不信を伝えても『へ?』と何を言われているのかわからないという反応。それどころか、そんなことはまるで考えてもいなかったという感じだった。沙花叉は、その事に少なからず違和感を覚えた。

 

 

 

……しかしその直後、渡り廊下の先からアイツに狙われたことによりラプラスの思惑を思い知らされたのだ。

 

 

 

 

総帥に言われたことを理解できず、数秒会話が途切れたことで船内に静寂が走る。その結果、生物的に耳の良い私は奴からの奇襲に気が付くことが出来たのだ。

 

 

「―――ッ!…………ラプラスッ!!」

 

 

それがトリガーを引こうとする音だと気が付いた瞬間には、私はラプラスの方向に跳び彼女を守るためだけに体が動いた。そして案の定、『バンッッ!!』という発砲音の後にさっきまでラプラスの立っていたところを銃弾が通過する。だが、この時の沙花叉は襲われたことよりも総帥のその観察眼に驚いていた。

 

 

 

(わかってたんだ、ラプラスには…………ここで、湊あくあに襲われることが……!!)

 

 

 

この沙花叉クロヱですら事前に察知することは難しいだろう暗殺者湊あくあからの奇襲、その初撃をこの総帥は見事防いで見せた。まるで相手のことを疑わず、待ち伏せしている敵に聞かせるように、そちらの存在にはまるで”気が付いていない”という風に見せかけたブラフ。またその上で、装備を持たせた沙花叉よりも一見無力そうに見える自分を標的にさせることで更に相手の油断を誘った。

暗殺者として最も重要で、警戒し絶好の機会を伺うべきは『最初の一撃』だ。それで作戦の是非がほぼすべて決まると言っても過言ではなく、かく言う私もその場面だけは慎重にならざるを得ない。勿論それは湊あくあも理解しているだろうし、それを考慮した上での奇襲だったのだろう。……もっとも、今回はターゲットの方が一枚上手だったようだが。

 

 

「大丈夫?ラプラス。怪我してない?」

 

 

まったく、この総帥は……こういうことをさらっと、へーきでこなすんだから。しかも襲われたことに酷く動揺するような”演技”まで、本当にぬかりない。それに、最終的には沙花叉がそのことに気が付き助けてくれるだろうという信頼もすっごく嬉しかった。これがどんくさいこんこよとかだったら、きっとそんな手段はとらなかっただろう。

 

 

 

そんなことを思った私は、思考を切り替え改めてその【敵】の姿を見据えた。旧食堂で会った時とは服装が変わっており、いつぞやで見かけた紺色の帽子の上から上着を羽織ってフードを被っている。また、顔には”子供が書いた落書き”の様な見た目の仮面をつけていた。

 

(何あれ……猫?ネズミ?……まあ、なんでもいいや。ダサいのには変わりないし)

 

真っ白なタイツも履いていることから手以外のほぼすべてが隠れ、もはや元の人となりがわからなくなっている。だが、そんなことよりも目に付くのはその両手で持っている長物のライフル銃だ。所謂スナイパーライフルと呼ばれるもので、先程撃たれたのも恐らくあれだろう。ただ、一般的なものよりも大型だしあいつが使うにはかなり大振り過ぎない?……それに、さっきの銃声もなんだかおかしかったような……。

 

(……いや、違う。私が今やるべきは頭を使うことじゃない。すぐに総帥からの命令を聞いて、次の行動に出ないと)

 

沙花叉の仕事は考えることではなく、総帥の指示に従い作戦を完遂することだ。

 

 

「悪いな……助かった」

 

 

「ううん、気にしないで。…………それよりも、無事なら指示が欲しい。……”アレ”、どうしたらいい?」

 

 

そう判断したクロヱは、総帥の無事を確認しつつ次の行動について尋ねる。ラプラスにとって、ここでの湊あくあとの接敵は予め分かっていたことだ。であれば、奴をどう処理しこの後どのように展開をもっていくかについても考えがあるはず。正直、沙花叉には状況を呑み込むのでやっとなんだけど……総帥には、全部わかってるんでしょ?

 

(さぁ、何でも言ってよラプラス。沙花叉、あんたの命令なら何でもするからさ)

 

強者と対峙しているこの状況ですら、もはや沙花叉クロヱはラプラス・ダークネスを疑わない。そして、羨望と大きな期待を持った瞳で総帥の方に振り返ったーーーーー。

 

 

********************

 

 

 

 

 

(は?えっ??ちょっ…………はぁ???何で吾輩たちあくあさんに襲われてるんだ?!?!)

 

 

 

 

 

尚、当の本人はこれ以上ないほど動揺していた。

 

A棟とB棟の三階同士を繋ぐ連絡通路の中央。そこであくあ先輩は元の世界で言うところのセーラー服に白いパーカー、更には”陰キャップ”に彼女のデザインした【NEKO】の仮面を着けていた。またその手には、どこかで見覚えのあるような長物の銃が握られている。その姿には少し違和感を覚えるものの、先輩のもう一つの側面をよく知る吾輩からすればそれが彼女なりのスタイルなのだという事を理解できた。

 

 

湊あくあというのは、基本的に自己を主張するのがかなり苦手な人物だ。しかし、それは決して自分の考えや意見を持っていないという訳ではない。むしろ大事な場面では仲間よりも自分の考えを優先する時すらあるくらい、自己をしっかり持っている。それに、とても努力家かつ諦めの悪い性格で自分の『好き』や『大切』に一生懸命になれる人だ。

また、そんなあくあ先輩の一面を見られるのが彼女の『ゲーム配信』だろう。特に、難易度が高ければ高いほどゲーマーとしての血が作用し彼女の本領が発揮されるのだ。その時の実力には、その分野のプロたちも一目置くほどである。

 

そして、そんなゲーマーとしての彼女の姿と今のあくあ先輩の姿は何となく重なっている気がした。

 

 

メイド服よりは動きやすいだろう服に身を包み、これだけ広い廊下の真ん中に堂々と立って銃を構えていれば、いくら吾輩でもそれが戦闘態勢であるという事は分かる。ただ、それが彼女なりの見掛け倒しでなければ……更には、あの”電子世界上”での先輩の戦闘能力を有しているとするなら……その脅威度は、計り知れない。

 

 

 

もし、仮に宝鐘海賊団内でのあくあ先輩の立ち位置がただのメイドなどでは無くれっきとした戦闘員ならば、ここに至るまでの彼女の違和感にも幾つか合点がいく。例えば、あの”数歩歩くだけ”で息切れを起こすほど体力の無い人が最初に出会った時ゾンビに追い掛け回されながらも吾輩と普通に会話したり、逃げ切ってからも自分よりもずいぶん早く呼吸が整ったりしていた。その時は特に何とも思わなかったが、実はそれがあくあ先輩の本来の心肺機能を表していたとすれば納得だ。

 

(……けど、それが仮に真実だったとしてもここで先輩に襲われる理由が無い……いや、至極真っ当な可能性があるか)

 

これから吾輩たちが船長室に向かうにあたり、あくあ先輩がそれを邪魔する理由など一つしかない。それはるしあ先輩から我々への容疑の件を聞き、holoXを敵視し始めてしまったということだ。それ以外に、こちらの要望を話したあくあ先輩が襲ってくることは考えられない。

 

 

(……ねぇ、ラプラス。沙花叉どうすればいい?)ボソッ

 

 

先輩からの初撃をやり過ごしてから数秒、その間ラプラスは時間をフルに使って思考を巡らせていた。しかしそれも、小声で再度指示を仰ぐ新人によって終わりを余儀なくされる。兎にも角にも、ここであくあ先輩と戦いを始める程愚かなことは無い。そんな時間が無いのは言わずもがな、吾輩自身彼女とぶつかることを望んでいないからだ。

 

 

(クロヱ、一先ず吾輩の一歩後ろを離れるな。それと、これからあくあさんに何をされても吾輩がいいというまで戦闘も反撃も禁止だ。いいな?)

 

 

(わかった)

 

 

出来ることなら、話し合いで解決してしまいたい。だが少し話しただけで簡単に疑いが晴れるなら、あくあ先輩がこんな行動に出ることは無いだろう。しかし、だからと言って争わずに解決する道の模索を諦めるわけにはいかないんだ。

そう決意したラプラスは、未だ佇むあくあの挙動に細心の注意を払いつつゆっくりと立ち上がる。また、彼女が手に持つ得物の先がこちらに向いていないことを確認しながら口を開いた。

 

 

 

「……一体、どういう風の吹き回しですか?あくあさん。……こっちの思惑については、説明したつもりですが」

 

 

 

NEKOの仮面の向こう側に居る先輩に、ラプラスは語りかける。自分たちの目的について話し、向こうもそれに同意したはずなのに今更意思を変えたのは何故かと訴える。

そして、それにあくあ先輩は答えてくれた。

 

 

 

 

「ごめんね、ラプラスちゃん。……私には、あなたの言うことを仲間の言うことより優先する理由が無いの」

 

 

 

 

しかし、彼女はラプラスの言葉に応えてはくれなかった。

確かに、先輩の言うことはもっともだ。ポッと出の、しかも敵である吾輩の言葉よりも仲間であるるしあ先輩の言葉の方を信じるのは当然のこと。それにいきなり現れた得体の知れない人物が突然自分たちを助けてあげると言われても、理解が及ばず警戒をするのが普通だろう。むしろ、あの場において自分たちの言うことを一時でも信じてくれたあくあ先輩が異常なくらいだ。

 

だが、だからと言って納得するわけにはいかない。吾輩はどうしても、先輩たちと戦いたくないのだ。

 

 

「それはつまり、吾輩たちholoXが宝鐘海賊団に……いや、あくあさんたちの故郷惑星【ふぁんたじあ】にホロベーダーを仕向けた犯人だと疑ってるってことですか?これから吾輩たちでそいつらを倒そうって話をしてたのに?」

 

 

「それは、とってもいい提案だと”まだ"思ってるよ。……けど、るしあちゃんが黒幕はラプラスちゃん達だって言ったの」

 

 

………ん?

なんだ、その変な言い回しは……?

 

 

「だからって、いきなり襲ってくるのは酷いじゃないですか。大体、その話だってこっちとしては全く身に覚えが無いんですよ。ホロベーダーなんて言葉この船に来てから初めて聞いたし、何を根拠にそんな疑いをかけてるんですか?」

 

 

「確証も無いし、証拠も無いよ。……けど、私は宝鐘海賊団の一番船副船長として、ただ仲間の言うことを信じてるだけ。……だから、この先の"操舵室"に居るるしあちゃんの所には行かせない」

 

 

……まただ。

違和感のある、その言い方。あくあ先輩の口下手なところが出ているだけなのか、それとも……。

 

 

「……さ、お話は終わりでいい?ごめんね、この先には”ぞんび”が一人もいないから手加減するわけにはいかないの」

 

 

湊あくあはそう言うと、持っていた長物のライフルを構え銃口をラプラスたちに向けた。明確に攻撃の意思があることが伝わり、自分の斜め後ろに立っているクロヱが自然と身構えたのがわかる。だが、この時のラプラスは全く別のことを考えていた。

 

(さっきっから、あくあさんらしくない言動……まさか、そういうことなのか……?)

 

ラプラスの中には、一つの仮説があった。そして、それが正しいのかは行動を起こしてみればわかる事。どちらにしてもこの連絡通路を押し通る以外に選択肢は無く、自然とその予想に賭けるしかなかった。

 

 

(クロヱ。いいか、よく聞け…)

 

 

自分の考えと、彼女を信じることを選択したラプラスはこっそりと部下に指示を下す。この賭けに負ければ、宝鐘海賊団諸共全滅するかもしれないという覚悟を持ちながら。

 

 

(……という訳だから、お前にはその間の吾輩の援護を頼む。それと、吾輩がここを切り抜けた後出来るだけ長く湊あくあをここに引き留めろ)

 

 

(は?えっ……それ、危なくない?仮にそれが上手くいったとしても、その後ラプラス一人でどうするのさ)

 

 

(そこら辺は考えがあるから、信じて従ってくれ。あと、湊あくあとの戦闘は許可するけど殺したり致命傷を与えるような攻撃は禁止だ。いいな?…………頼りにしてるぞ)

 

 

(ッ……了解、総帥。こっちは任せて)

 

 

かなりの無茶を言っていることは承知の上だったが、それでもクロヱは渋々従ってくれるようだった。るしあ先輩を説得するために必死で集めた戦力を、ここで手放すことに不安が無いわけではない。だが、あくあ先輩の言っていることが真実だとすれば恐らく……。

 

 

未だその引き金を引かない相手に、確信のようなものを得る。

そして、一度大きく息を吸ってから吐き出すと共に声を上げた。

 

 

 

 

 

「湊あくあッ!!吾輩はお前を信じてるッ!!!」

 

 

 

 

 

叫んだのに合わせて、ラプラスは一気に駆けだす。銃口が向いているにもかかわらず、真っ直ぐにB棟を目指す。しかし、立ち塞がるあくあがそれを見逃すハズも無くそのトリガーに指を掛けた。

両者の距離、およそ30m。

 

(今の吾輩の運動能力的に、銃を撃たれてから避けるのは不可能だ。というか、向けられた時点で避け始めないと到底間に合わない。……だが、愚直に突っ込んでくる吾輩に注意が向いてる今、突然相手が予想だにしない行動に出たら流石のあくあさんも動揺するはず)

 

瞬きの間、ラプラスは必死に思考を巡らす。飛び出した自分が標的になっているのは明らかだが、逆に言えば回避する手段の無いクロヱよりも自分が狙われた方が都合がいい。

 

(あくあさんがこれの存在を知っているのかは知らないが、”るしあさん相手じゃなければ”例え知っていたとしても効果は絶大だ)

 

そう思ったラプラスは、走る足を止めずに自分の首元に手を添える。そして、この船に来てからずっとお世話になり続けた『アレ』にスイッチを入れた。

 

 

 

 

 

――――――バンッ!!

 

 

 

 

 

……ほぼ同時、ラプラスは”その場から姿を消し”左手の壁際に思いっきり飛び込んだ。

 

~~~~~~

 

 

(クロヱ。いいか、よく聞け………今から吾輩が、湊あくあの注意を引きつつ”ヘッドギアのステルス機能”を使う。そして、そのまま連絡通路を突っ切ってこの船の操舵室を目指す。流石の奴でも、透明になった吾輩を的確に狙うことは出来ないだろ)

 

 

総帥からの作戦を聞き、クロヱは最初驚愕した。

この総帥は、本気で言っているのだろうか。明らかに手練れであるアイツが、姿が見えなくなった程度で敵を見失うわけが無い。それはラプラスだってわかってるはずなのに、何でそんな危険なことを……それに、仮にここを抜けたとしてその後のことはどうするつもりなのか。

 

 

(……という訳だから、お前にはその間の吾輩の援護を頼む。それと、吾輩がここを切り抜けた後出来るだけ長く湊あくあをここに引き留めろ)

 

 

本当に、何を考えているの?ラプラスが逃げた後、沙花叉がここに残るなら総帥がまた一人になってしまう。それに問題があるから、わざわざ私達の救出を優先したんじゃないの?だし、個人的にもラプラスが敵地で再び孤立するのは許容できない。

 

 

(は?えっ……それ、危なくない?仮にそれが上手くいったとしても、その後ラプラス一人でどうするのさ)

 

 

(そこら辺は考えがあるから、信じて従ってくれ。あと、湊あくあとの戦闘は許可するけど殺したり致命傷を与えるような攻撃は禁止だ。いいな?…………頼りにしてるぞ)

 

 

ラプラスからの指示に疑問が湧き、思わずクロヱは反論を口にしてしまう。しかし、それを更に否定するように総帥は言葉を強めた。

ズルいよ、ラプラス。そういう言い方をすれば、沙花叉が逆らえないって知ってるくせに。……でも、もう同じ過ちは犯さない。

 

 

(ッ……了解、総帥。こっちは任せて)

 

 

ラプラスは考えがあるって言った。なら、それを信じて私はただ従うだけでいい。自分の総帥が最強で、天才で凄い人なんだってわかってるなら、沙花叉は沙花叉の成すべきことを成す。

 

そう判断し、覚悟を決めたクロヱはラプラスに合わせ自分も戦闘態勢を取る。懐に手を伸ばし、いつでも総帥の援護が出来るよう備える。そして、ラプラスが口を開いたと同時に自分は向かって右側へと身を逸らした。

 

 

「湊あくあッ!!吾輩はお前を信じてるッ!!!」

 

 

見え透いた陽動を口にした総帥が、手筈通り注意を引くために駆けだす。直後、再び違和感を感じる発砲音が鳴り響いた時には既にラプラスの姿は消えていた。

 

 

 

―――――ガンッ!!…………タッタッタッタッ……。

 

 

 

何かがぶつかったような音が左からした後、続いて小刻みに地を蹴る音が微かに聞こえた。それをラプラスのものだと理解し、クロヱは指示通りに彼女の援護に努める。

 

(本当に避けた……!?それとも、アイツが勝手に外しただけ?……ううん、そんなのはどっちでもいい。沙花叉はラプラスのサポートをしないと。戦闘許可は、もう出てるッ!)

 

戦闘状態にあるクロヱの思考は早く、また冷静に対局を見る癖が染みついている。敵の位置、味方の位置、地形、自分の装備、etc……多くの情報をそのご自慢の五感をフル活用して得る。そして、その上で今自分がしなければならないことを『第一』に添える。例え任務の成功と自分の命を天秤にかける羽目になった時、迷わず前者以外を切り捨てられるように。

 

(あのメイド擬きの使っている大型のライフルでは、一発撃つごとに数秒のタイムラグが生じる。次弾の発射は後1.37……1.18……1.06……)

 

約一秒ほどの隙。しかし、プロの掃除屋はその数秒を見逃さない。予め懐から取り出していた銃を二丁両手に持ち、即座にコッキング中の湊あくあ目掛け射撃する。

 

 

―――バンッ!…バンッ!!

 

 

発進の指令を受け、装填されているマガジンから銃身を通り外部へと放出する弾丸。しかしその刹那、クロヱは狙ったはずの相手の身体が僅かに揺れたのが見えた。

 

 

「……」スゥ、スゥ

 

 

身体を左右に移動させ、あくあは最小限の動きでクロヱの弾を避ける。ラプラスからの言いつけ通り急所は外していたものの、確実に当てるつもりだったそれをいとも容易く躱して見せた。

 

(チッ……やっぱり、めちゃくちゃ感いいなぁ。油断できない)

 

だが、相手を見くびっていないクロヱにとって初撃を避けられることはもはや予測していたことだ。暗殺と違い、面と向かっての戦闘は最初よりも二撃目以降どのように攻撃を繋げるのかが大事。それを理解している掃除屋は、今度は避けられること前提で少し幅を効かせながら更に四発撃ち込む。

 

 

バンッ、バンッ……バンッバンッ!!

 

 

……だが、それすら見透かしたように、奴は向かって右側に大きくサイドステップした。

 

(ッ!…まずい、その位置はッ!!)

 

銃弾を避けながらにコッキングを終え、オートマティックであるクロヱの銃のハンマーが上がりきる頃には既にあくあは狙いを定め発射準備を完了していた。また横に大きく移動した結果廊下の壁に体を預ける形となり、”対岸の壁際を走っているはず”のラプラスを鋭角に狙う事の出来るポジションへと着いていた。

 

 

「ちょ、待t……!!」

 

 

クロヱの次弾も、制止の声ももはや間に合わない。

そうして、あくあはそこに居るはずの視界に映らない標的を目掛けトリガーを引いた。

 

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