転生したらラプラス・ダークネスだった件   作:飽和水溶液_pixiv

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第63話です。皆様、超絶久しぶりの投稿大変長らくお待たせしまして誠に申し訳ありませんでした。更新が遅れた理由はXの方で言及していますが、本当にしょうもない個人的理由なので気にしないでください。ですがようやく落ち着いてきましたので、これからまた変わらず投稿を続けていきたいと思っています。決して失踪等したわけではありませんので、また気長に『転ラプ』を楽しんで頂ければ幸いです。


さて、前回が途方もなく昔のこと過ぎて私自身もあまり覚えていませんが、確かラプ様がクロヱと色々と会話したところまで進んだと思います。ようやく腰を据えて話すことが出来た二人は、今回の件についてその胸に秘めていた想いや気持ちを打ち明け合うことが出来ました。任務の失敗、そして総帥への不信、そんな許されざる失態に対してクロヱは抱えきれない程の後悔と自責の念を抱いていました。しかしその全てを聞いたラプラスは怒るどころか、彼女が奮闘し償うため行動したことを褒めたたえちゃっかり『頭なでなで』というご褒美を与えていましたね。結果色々溢れ出し泣き出してしまったクロヱも、最後には笑って総帥に応えることが出来ました。
一方、誰にも言えぬとある『真実』を抱えるラプ様。しかし一瞬の気の迷いから、優しく自分に寄り添ってくれるクロヱに”己の正体”を打ち明けようとしました。勿論幾つかの葛藤を抱えているようでしたが、それでも自分を信じてくれる部下たちにこれ以上隠し事を続けたくなかったのでしょうね。……ですが、現実は想像以上に残酷なもので、ハッキリと彼女の口から『ラプラスの偽物など許せるはずが無い』と言われてしまいました。クロヱの生い立ちや立場を考えれば当然ではありますが、やはり【ラプ様】はこの世界で生きていく限り最愛の部下たちを騙し続けなければならないようです。またそんな悪魔には、恍惚な表情を浮かべる”カノジョ”がこれ以上なく異様な存在として見えていた事でしょう。頑張れラプ様。


【追記】
今回の深堀シリーズはお休みです。……が、この場で一つだけガチ追記を。あるかはわかりませんが、今後もし感想欄等で作品に対する質問を頂いた際にはこの欄で回答していきたいと思います。決してコメ稼ぎなどでは無いのですが、結構物語が難しいというか複雑気味なので、もし気になる事があれば書き込んで頂けると嬉しいです。ただし、後のストーリーに関わる内容の場合はあからさまにはぐらかします。その辺はご容赦くださいませ。


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飽和水溶液(@Suiyoueki_suba) https://twitter.com/Suiyoueki_suba


第63話 小さな箱

 

何処までも続く、広い荒野が支配する惑星。

あるのは地表の三割を占める森林と、一つの巨大な大陸を包む湖のみ。そこには知性のある生物が存在しておらず、また生息している生き物のほとんどが岩石を摂取して暮らす何とも不思議な星であった。

 

 

 

 

 

……しかし、そんな彼らの日常にある変化が起きる。それは遙か彼方より現れた、『異星人』達による”襲来”であった。

 

 

「おい!何か食べられそうなものは見つかったか!」

 

「こっちはダメ。水源はちらほら見つけるんだけど、そこらを歩いてるやつはみんな岩みたいに固くってさ」

 

「そうか……だが生き物ではあるんだろ?なら我々に害がなければ食べられないという訳でもなし、ダメ元で割ってみるというのは……?」

 

 

などと、物騒なことを言い合いながら惑星内を土足で踏み荒らすのは泣く子も黙る【秘密結社holoX】の『暗殺部門』に所属する者たちであった。彼らは不時着した惑星での一時的生存圏確保の為食糧や飲み水、及び拠点や物資調達、更には周辺の環境調査にあたっていた。しかし、その成果に至っては食料品の確保についてのみ若干苦戦している様子であった。

 

 

「……とにかく、少しでも多くの食料を確保するのだ。我々は最悪そこらの草木でも食べればいいが、任務でお疲れのラプラス様にそんなものをお出しするわけにはいかない!」

 

「そうだね。まあでもラプツナズさん達が船にも少し食べ物が残ってるって言ってたし、暫くは大丈夫なんじゃない?」

 

「”暫くは”、だ。いつ本部と連絡がつくかもわからんのだから、備えがあるに越したことはない!」

 

 

そう言った一人の言葉に、彼らも『それもそうだ』と頷き作業に戻っていた。彼ら暗殺部門は組織において、『戦闘斥候部門』に並ぶ現地戦闘のプロ集団である。故にサバイバル知識や経験も豊富であり、十数人もいる団体であれば多少過酷な環境であっても問題なく生きることが出来るのであった。

 

 

 

 

 

一方、総帥を守り仕える矛、秘密特殊部隊【ラプツナズ】は乗ってきた小型宇宙船の近くにて”護衛対象の監視”及び本部への連絡手段確保に勤しんでいた。

 

 

「……どうだ、通信機の様子は。変わらず本部からの応答は無いのか?」

 

「はい、隊長。電波は届いているみたいなんですが、どうやら向こうの方が今立て込んでるみたいで……」

 

「うーん……もしかしたら、本部の方で何かあったのかもしれないな。引き続き連絡を試みてくれ」

 

「了解です」

 

 

彼らの中の隊長格の男が、大型の金属製の箱と睨めっこをしていた隊員にそう指示を出す。万が一の事態に備え、holoXで製造された各宇宙船には博衣こよりの作成した『長距離用中型通信機』というものが常備されている。それを平らな地面に設置し、アンテナを立て必要な手順で操作をすれば数光年離れた先の本部とも連絡が可能であるのだ。

 

また、そんなやり取りをしていた彼らの背後から一人の女性がひょこっと顔を出す。彼女は本作戦にて総帥の護衛を任されていた者であり、現在は停泊させていた小型宇宙船内にて護衛対象の見張り及び看病を担当していた。

 

 

「隊長、護衛の見張りを交代してきました。他に何かやることはありますか?」

 

「おぉ、そうか。護衛対象に何か変化は?」

 

「いえ、今のところは……ラプラス様の連れ帰った潤羽るしあは未だ昏睡状態。命に別状はありませんが、よく寝ています。恐らく相当疲労が溜まっていたのでしょう。またクロヱ様の連れ帰った湊あくあの方ですが、こちらも変わらずで……どうにも私達に怯えてるみたいですね。あの御二方のどちらかでないと話が出来なさそうです」

 

「わかった。……では、一先ずラプラス様の様子を見て来てくれないか?クロヱ様が落ち着いたところで寝かせてあげたいと言ってラプラス様を連れて行かれてからしばらく経つし、もしかしたら目を覚まされているかもしれん」

 

「了解」

 

 

見張り交代の為手が空いた彼女に対し、隊長の男は再び指示を出す。彼らの主上は力を使った反動か、現在は意識を失い沙花叉クロヱによって看病をされていた。しかしそれから3時間ほどが過ぎていたため、そろそろ目を覚ましていてもおかしくは無いだろう。

 

そうして彼女が総帥の下を目指そうとした矢先、先程から唸っていた通信兵が声を上げた。

 

 

「ッ!……隊長っ!本部との連絡が取れました!」

 

「なにッ?!それは本当か!……おい、直ぐにラプラス様とクロヱ様を呼んで来い!」

 

「は、はい!わかりました!」

 

 

隊長からのその掛け声により、彼女は急ぎ足で主の下へと飛んで行ったのであった。

 

********************

 

掃除屋、沙花叉クロヱの望みを聞いた後。

それからしばらくして、吾輩の護衛を担当してくれていたラプツナズの彼女が焦った様子でこちらに駆け寄ってきた。話を聞くと、本部との連絡が取れた為至急宇宙船に戻ってほしいとのことだった。

 

 

「ラプラス様!よかったです、意識が戻られたのですね」

 

 

「あ、あぁ……お前にも迷惑かけたな。海賊船でのこととか、その他にも色々……」

 

 

「そんな、迷惑だなんて……ラプラス様のお役に立つことが我々の仕事です。ですのでお気になさらず、存分に顎で使ってくださいませ。…………ところで、お身体に障らぬようでしたら一緒に来ていただけませんか?先程ようやく本部との通信が繋がったようです」

 

 

”カノジョ”と似たようなことを言う眷属のその言葉に、ラプラスはまたしても胸を突かれるような気分であった。

 

 

「あ、やっと繋がったんだ~。全然向こうからの返事がなくって、なんか苦戦してたよね?」

 

 

「はい、クロヱ様。うちの通信兵が四苦八苦しておりましたね。無事に連絡が取れたみたいでよかったです。……いかがですか?ラプラス様。まだ体調が優れないようでしたら後ほどでも構わないのですが……」

 

 

「……いや、行くよ」

 

 

こちらの身を案じるように聞いてくれる彼女に対し、ラプラスは愛想薄にそう答えた。正直、心ここに有らずであったのだが……それでも、優先すべきは組織のことだと彼女は重い腰を持ち上げた。

 

 

 

 

 

改めてこの星を眺めてみても、一面茶色い景色が広がっているだけの味気ない惑星だという感想に変化はなかった。突出し剥き出しとなった岩肌に、その影でひっそり佇む小さな緑。どこを見ても砂が覆う台地があるだけで、知的生命体の反応はこれっぽっちも感じられない。まあいたとしても、先住民族か何かくらいだろうがな。

 

そして、そこにポツンと聳える異質な何か。周囲に比べ明らかな人工物、かつ高度な文明で出来たそれの周りには数名の異様な服を着た者達が立っていた。

 

 

「隊長、ラプラス様とクロヱ様を連れてきました」

 

「おぉ!ラプラス様!ご無事で何よりでございます」

 

 

その中では最も位の高い、特殊部隊の隊長である彼はそう言って総帥の無事を喜んでいた。

 

 

「ああ、お陰様でな。ラプツナズにも心配かけた。……で、早速で悪いんだが本部との連絡がついたって?」

 

 

「はい、たった今。どうやら向こうでも色々と”トラブル”があったようでして……詳しいことはラプラス様が来てからと。どうぞこちらにお座りください」

 

 

彼はそう言うと手ごろな岩に布をかけ、その上にクッションを置いて簡易的な椅子を拵えてくれていた。吾輩は別に気にしないのだが、外聞的に総帥が直接地べたに座るのはマズいか?……と思っていたところだったので、その気遣いに感謝しながら遠慮せず席に着く。すると目の前には通信機から生えたマイクがあり、またモニターの表記から見るに既に通話が可能な状態のようだった。

 

「ラプラス様、事前に周波数や音量についてはこちらで調整しておきました。今は相手の声がスピーカーから聞こえるようにしてあるのですが、問題がなければそのままマイクのスイッチを入れてお話しください」

 

吾輩が座ったのとほぼ同時、その隣に当たり前のようにクロヱが座り込む。またその反対側に立っていた、ラプツナズ所属の恐らく通信兵であろう男がそう言った。

 

 

「えっと、これか?…………あーあーあー、こちら吾輩。holoXの本部、聞こえるか?」

 

 

通信兵の言葉に従い、マイクの根元についていたボタンを押しラプラスは言葉を発する。

そして次の瞬間、思いがけない人物からの返事の声が上がった。

 

 

 

 

 

『おっ!その声はラプ殿っ!聞こえてるでござるよ~!』

 

 

 

 

 

そう言われたラプラスは驚きつつも、直ぐに通信の相手が誰なのかを理解する。その特徴的な語尾に、総帥を”殿”と呼ぶその言い方。そんな人物を吾輩は世界で一人しか知らない。

 

 

「あれ……もしかして、いろはかっ?!」

 

 

『そうでござるよ、ラプ殿!お久しぶりでござるな!』

 

 

本部への通信を試みて、最初に声を聞いた人物は秘密結社holoXの誇る個人最強戦力【風真いろは】その人であった。

 

 

風真いろは。

『ござる』が口癖な元気過ぎる彼女は、秘密結社holoXにて総帥の用心棒を務める『侍』であった。その底抜けに明るい性格と、悪とはてんで真逆な純粋さからholoXのオアシスと揶揄されることも少なくない。現にホロライブ内でも数少ない清楚枠(正)の一人に数えられ、その無邪気な笑顔は正しく天使のようだと言って差し支えなかった。

だが、そんな彼女もこの世界ではholoX内最強の『武人』として知られている。組織内で最も所属人数の多い『戦闘斥候部門』を束ね、その性格や風貌からはとても似合わない部門代表兼『元帥』を務めている。またその実力も肩書に沿うものであり、一説によれば”棒切れ一本で山を割る”と言われるほどであった。流石にそれは言い過ぎな気もするが、少なくとも元の世界でも体力馬鹿であった侍ならばあながち遠すぎることも無いだろうというのがラプラスの感想であった。

 

 

しかし、そんないろはが通信相手として出たことにラプラスは疑問を抱く。確か話では、彼女は別の任務で遠出をしているということだった。一応今回のクロヱ達の一件があり早急に本部に帰還するようには伝えていたのだが、もしかしてもう迎えに行っていた本部と合流していたのだろうか。

 

 

「あれ?いろはちゃんじゃん。もう任務から帰ってたの?」

 

 

『おー!沙花叉も一緒だぁ!ということは……さっすがラプ殿。無事役目を果たしたんでござるな!』

 

 

ラプラスの隣に陣取るクロヱもまた、彼女の応答に驚いているようだった。しかし、その反応から察するにいろはも吾輩がクロヱ及び暗殺部門の救出に先行していることについては把握してるらしい。あ、そう言えば幹部がいろはに任務から帰ってくるよう伝えた時に軽く説明してたっけか。

 

 

「いろは、お前が帰ってると知って安心したぞ。…………ところで、悪いんだが幹部を呼んできてくれないか?ちょっと話したいことがあってな」

 

 

久しぶりに彼女の声を聞き、ラプラスは安堵と何とも言えない懐かしさを感じていた。強いいろはが本部に居てくれるなら多少のことは大丈夫だろうし、またその声音を聞く限り吾輩の良く知る普段通りの彼女と遜色ないようであった。

 

そして、そうとあらば早速こちらの状況を本部に伝える必要があるだろう。現在の我々は窮地を脱したとはいえ、燃料も無く物資も少ない状態で見知らぬ惑星に不時着している状態なのだ。このままここに長期間滞在するのは難しいだろうし、可能であれば早急に迎えを寄越してほしい。また立て続けに働いてくれていたラプツナズや、暗殺部門の奴等もそろそろ疲労のピークだろう。今後のるしあ先輩との『約束』の件もあるし、吾輩達は一度集まって今後の方針を話し合うべきだろうな。

 

ラプラスはそう思い、通信機越しのいろはにルイを呼ぶよう声をかける。だが、それを受けた彼女は何故か歯切れの悪い反応をしていた。

 

 

『あー……一応、ルイ姉は近くに居るんでござるが……今、ちょっと手が離せないというか……』

 

 

「ん?なんだ、取り込み中か?まあそういうことなら博士でもいいんだが」

 

 

『ん、んー……その、こよちゃんの方がもっと重症というか……』

 

 

「???」

 

 

今本部に居るはずの幹部、或いは博士を呼んでほしいというラプラスに対しいろはは変わらず煮え切らない様子であった。その口ぶりから察するに、恐らく同室自体はしていると思うのだが……もしかしてあいつらに何かあったのか?

 

どうにも侍の言わんとしていることが理解できないラプラスは、ちょこんと首を傾げていた。すると突然、通信機のスピーカーから音が割れる程の大声が鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 

『ごめ゛ぇ゛ぇぇぇぇ゛え゛んッ!!ラプぢゃぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ん!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

キーンと耳障りなハウリングが聞こえたかと思うと、同時にボロボロに泣いているらしい【博衣こより】が嗚咽交じりの謝罪を口にしていた。しかし、その大泣きっぷりには心配とか驚き以前に只々困惑させられる。その必死な”謝罪”についてもそうなのだが、一体彼女に何があったというのだ。

 

 

「な、なんだなんだ、どうしたこよりっ?!」

 

 

『ごめ゛ん…ごめん、ごべん……ズルッ……ラプぢゃん、ごよ゛はまだァ……う゛うぅ……』

 

 

「ちょ、うるさっ……こんこよ、煩いんだけど!何でそんな泣いてんの!?」

 

 

思わず耳を覆いたくなるほど大声で泣く彼女に、流石のクロヱも声を上げる。さっきまで自分も泣いていたくせに……とまでは言わないが、少しは心配してやれよ。それに、博士がこれだけ泣いてるということはよっぽどのことがあったのだろう。

 

 

「いろは!まだそこに居るか?!こよりがそんな調子じゃ話も出来ないし、幹部を呼んでくれないか?!」

 

 

『りょ、了解でござる!ほら、こよちゃんはこっちに…………ルイ姉!ラプ殿がお呼びでござるよっ!』

 

 

未だぐずっているこよりを介抱しつつ、いろはは要望通りに幹部を呼び出してくれる。すると少しして、またしても普段の様子とは違った【鷹嶺ルイ】の声が聞こえてきた。

 

 

 

 

『あっ…ラプ…………その…私だけど……』

 

 

 

 

スピーカー越しに聞こえてきたその声は、ギョッとする程に暗くまた何かに怯えているようでもあった。あの凛々しく、堂々とした彼女からは似ても似つかないその声音にラプラスは再び動揺を隠せないでいた。

 

 

「ルイ、お前もか……一体何があった。博士のあの泣きようは尋常じゃなかったぞ」

 

 

『いや、その……一応、もう緊急性は無いから大丈夫というか……過ぎたことではあるんだけど……』

 

 

珍しく曖昧な答えを口にする彼女の反応に、ラプラスは益々頭を悩ませる。あのルイがこんな状態になるなんて異常なことだ。ひょっとして、吾輩たちがこっちで色々奮闘していた間に本部の方でも何か問題が起きていたのだろうか。

 

 

「なんだよ、ハッキリしないな」

 

 

『え、えっと…………そ、そっちの様子はどうなの?さっきクロヱの声はしてたけど、救出は順調…?』

 

 

そう言って、彼女はあからさまに話を逸らしているようだった。なんなんだよもう。

しかし本人が言うには緊急性は無いということだし、一先ずこちらの状況について先に説明してしまっても構わないか。

 

 

「何があったんだよ……取り敢えず、こっちはもう終わってるぞ。沙花叉クロヱを含めた暗殺部門13名の救出は無事完了した」

 

 

『えっ…………そ、そう、早いのね……欠員も無し…?』

 

 

「ああ。若干ケガ人はいるが、誰も欠けてないぞ」

 

 

『……そう……流石ね、ラプ……』

 

 

こちらの任務完了報告に対し、幹部は平然を保ちつつもやはり様子がおかしかった。普通、敵に捕まって安否の分からなかったクロヱ達が無事に救出されたと聞けば多少喜んだり、安心したりしてもいいだろうに。どうにも、先程の彼女の反応は僅かばかりに『ガッカリしている』ように思えた。こっちは結構大変な事になってたんだし、吾輩も今回は頑張ったのだから少しぐらいは労ってくれてもいいんだけどな……。

 

 

「……ルイ姉、何かさっきっから反応おかしくない?……そういえばさ、沙花叉たち結構前から本部に連絡入れてたんだけど繋がんなかったんだよね。もしかして、それとルイ姉やこんこよの様子がおかしいのって何か関係あったりする?」

 

 

『……ッ……』

 

 

終始歯切れの悪い幹部に対し、隣で自分たちの会話を聞いていたクロヱがそう言った。そして、それを受けルイが通信越しにもわかる程明らかな動揺を見せたのが分かった。恐らく、沙花叉の言ったそれはかなり確信に近いものだったのだろう。

 

 

「幹部、本当に何があったんだ。お前がそんなになるなんてよっぽどのことだぞ?」

 

 

『……そう、ね…………ごめんなさいラプ。ちゃんと、”こっちで何があった”のか……説明するから』

 

 

彼女はそう言うと、堪忍したのかゆっくりとした口調で話始めた。それは、吾輩がクロヱ達の救出へと向かった後に本部内で起きた出来事であり……今後の、自分達の立場を大きく左右するものであった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

時は、ラプラス・ダークネス率いる『暗殺部門救出隊』が本部を出発してから十数時間後にまで遡る――――。

 

 

 

 

 

秘密結社holoX総本部内、こよラボに併設された宇宙船格納庫。その中には修理が必要な船を停船させ、修繕等の作業をする為のスペースが設けられていた。

 

 

「うーん……やっぱり、なんか変だなぁ……」

 

 

その場所にて、頭を悩ませる科学者が一人。彼女は総帥からの直々な命により、任務先で壊れてしまった暗殺部門の宇宙船の修理に勤しんでいた。しかしそんな中、どうにもおかしいと思うことがあったらしい。

 

 

「こより様、どうかしたのですか?」

 

 

「あ、助手くん。そうなの、ちょっと気になっててさ……」

 

 

船の修理のため、彼女……【博衣こより】は宇宙船内にて工具を広げ操作盤を見つめ唸っている様子であった。彼女は作業に夢中になった結果オイル塗れになっており、着ていた真っ白な白衣を所々黒く染めている。しかし、そんな状態でも中々船の中から戻らない彼女を心配した『助手くん』が様子見がてらに声をかけたのだった。

 

 

「気になる、といいますと?」

 

 

「いやね、あのラプちゃんが直接こよに『船の修理をしとけ』って言ってたじゃん?普通は修理班とかに任せた方がいいことで、僕の仕事じゃないのに」

 

 

総帥が本部を出る前、ラプラスはこよりに対し『壊れた暗殺部門の宇宙船を修理』するよう命令していた。しかし、それは本来研究部門の代表を務める博衣こよりがすべき仕事ではなかった。勿論出来るか否かの話をすれば全く問題ないのであるが、大きく成長した現在のholoXには各仕事を担当する部門が存在し本当ならそれに長けた者達に任せるのが一般的認識であった。故に、未だ元の世界の感覚が抜けぬラプラスがこよりに船の修理を頼むのは”異質な事”であり、結果それを命じられた彼女には『何か意図があるのかも』という疑いを持たせることに繋がった。……その実が、ただの【ラプラス】の言葉足らずな指示によるものであったとしても。

 

 

「はい、そうですね。私もそれについては疑問に思いました」

 

 

「でしょ?……でも、ラプちゃんは何の意味も無い無駄な命令をする人じゃない。だから、もしかしたらこよに何かを気付かせようとしてるんじゃないかって思ったの。それで、この船を修理がてら調べてたらさ……”コレ”を見つけて」

 

 

彼女はそう言うと、一本の太いケーブルを取り出した。それは本来操作盤の中に収納されているものであり、既に修理の為撤去した後であるのかその端が”断線している”ようであった。

 

 

「それは……もしかして、通信機に繋ぐためのコードですか?完全に切れて使えなくなっていますね」

 

 

「そう、さっきまでコレの交換をしてたの。で、その時に気がついたんだけどさ……コレだけ、”意図的に切られてる”みたいなんだよね」

 

 

こよりはそう言いながら立ち上り、船内を一通り見渡してみた。そこには大型の”鉈のようなもの”で切り付けられた跡が何か所にも刻まれており、誰かがこの船を壊す目的で暴れたのだろうことが窺えた。しかしその破壊ヵ所の無差別無作為さから、これをやった犯人は随分と適当な人物なのだろうと推測できた。

……だが、そんな中この長距離交信用の通信機に繋がるコードについてだけは『明確な目的意識』をもって切断された可能性があったのだ。

 

 

「見ての通り、その辺の切り傷は適当に”斧”でも振り回した跡なんだと思う。だからこそ外側がめくれてたり、基盤が露出しちゃったりしてるんだけど……幸い浅くて船を飛ばすだけなら大した弊害はない。というか、助手くんも知っての通りそもそも飛べない程壊れた宇宙船なら安全装置が作動してエンジンがかからないはずだしね。…………でも、この船は作戦地域からちゃんと宇宙空間を飛行してこの本部まで帰って来た。つまり、この船はあくまで荒らされた程度でそこまで壊れてはいなかったってこと」

 

 

自らの設計により作りだし、そして壊されてしまった船の中を練り歩きながら彼女は語る。そもそも、この船は乗っていた乗組員に比べれば随分と傷が浅いように感じられた。表面上だけに見られるこれらの欠損だって、戦いの最中についたというよりは彼らを乗せる前に宝鐘海賊団の誰かが意図的に荒らしたように思える。

 

 

「確かに、そうかもしれませんね。……ですが、そのコードだけ意図的に切られたというのは?」

 

 

「……コレさ、さっき僕が外したその操作盤の奥の方に配線してるやつなんだよね。……つまり、これを断線させるには意図的にそこを開けた上で、”切ろうと思って切らないと切れない”っていうこと」

 

 

「!」

 

 

彼女のその言葉により、助手である彼もようやく事の重要さを理解し始めていた。故意的に、宝鐘海賊団がこの船を破壊しそして意図的に通信用のケーブルを断線させた。それはそれだけの細工が可能な状況であったことと、この船の構造やそれにどんな意味があるのかをある程度理解していた人物が彼女らの中に居たことを意味する。

 

 

「長距離の通信を出来ないようにした宇宙船を、敢えて見逃してこの本部に帰した……助手くんなら、この船にどんな細工をする…?」

 

 

「……私では、わかりかねますが……恐らく、爆弾や発信機等が仕込まれていてもおかしくないかと……」

 

 

「やっぱり、そう思うよね?……助手くん、直ぐに人払いをして。それと、こういうことに詳しそうな暗殺部門の人達と助手くんたちを数人集めてくれる?ルイ姉への報告も忘れずにね」

 

 

「りょ、了解しましたっ。直ぐに取り掛かります!」

 

 

一見冷静に、されど冷や汗を浮かべながら。研究部門の代表である彼女は助手を務める彼にそう言った。またそれに合わせ、その格納庫では直ぐに避難命令が発令され多くの構成員達が退避する事態にまで及んだ。

 

 

 

……そして完全な避難の完了後、暗殺部門所属の『爆弾処理班』を伴った宇宙船内の大捜索が開始された。操縦室、仮眠室、その席の下や天井、更には外側のエンジンや貨物室に至るまで。もはや半分解体作業ともいえるようなそれらは、約2時間ほどに渡って行われた。

 

 

 

 

 

 

 

―――――その結果、見つかったのは”薄紫色に光る”小さな『発信機』であった。

 

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