転生したらラプラス・ダークネスだった件   作:飽和水溶液_pixiv

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※こちらは転ラプの外伝作品です。本編とは同一世界ではありますが、本筋よりは若干脱線したお話となるため名前のあるモブキャラ等が多数登場します。ホロメンや架空キャラクター同士などの絡みが苦手な方はご注意ください。また一応この外伝シリーズは本編に影響のない範囲でお話を組んでおりますので、小話程度の感覚でお楽しみ頂けると嬉しいです。


今回は少し短めですが、短編的な感じでお楽しみください。内容は以前希望のあった、秘密特殊部隊ラプツナズの誕生秘話的な感じです。終始ラプツナズの隊長である【アルファ】視点且つ、現ラプ様がパラレル世界に来る少し前のお話になります。
転ラプ外伝も残すところ、後3、4話くらいでしょうか。早く三章が書きたいので頑張っていきます。
それでは、本編へどうぞ。


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転ラプ外伝⑦ 任務『ラプツナズ』の始動

 

 

 ――――数年前。

 

 

 ある日の、秘密結社holoX総本部。総帥執務室の前にて、一人の女幹部がある構成員を連れ立っていた。

 

 

「……それじゃあ、私についてきて」

 

 

「は、はい!ルイ様っ……!!」

 

 

 人気の無くなった、静かな廊下。そこで緊張した面持ちの男が、上擦った声で返事を返した。

 されどそんな彼の様子には目もくれずに、その女幹部は眼前の扉に手をかざす。

 

 

 ……そうして、開かれた扉の先にはこの組織を束ねる最凶の悪魔様が鎮座していた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 ――自分は、しがないholoXerである。

 

 総帥ラプラス・ダークネス様を崇拝する【ぷらすめいと】の名を冠しており、現在は戦闘斥候部門にて作戦参謀班の班長代理を務めている。作戦参謀班とは、その名の通り戦闘斥候部門のあらゆる活動における作戦、戦略を計画したり指揮を執る為に存在する。元来、我々戦闘斥候部門はこの秘密結社holoXにおいて時に強靭な盾として、或いは強大な矛として、その役割を全うしてきた。そして、そんな彼らの行動を統括しこの部門全体の動きを担っているのが我々作戦参謀班なのである。

 

 そもそも、我が部門は所属人数だけで見れば組織内で最も大規模な部門であり、故にこの場所に持ち込まれる任務量も膨大である。そのほとんどは星々を征服するための武力行使であるのだが、中には建設部門や開発部門の手伝い、または親交部門である暗殺部門への護衛等の協力なども含まれている。そんな中、どの班にどの任務を割り振るのか。更にはそれに必要な人材や物資の派遣手配、そして本部から通達された事項を実際に作戦にあたる者達に共有する事等々。そんなところが、私が日々この班でこなしている業務内容であった。

 

 

 

 ……だが、そんな自分はある日突然とんでもない方からの訪問を受けた。それは、ある意味我々参謀班の直属の上司とも取れる、普段から任務を言い渡されたり指示を受けたりしていたその御方。秘密結社holoXに存在する唯一の大幹部、【鷹嶺ルイ】様である。

 

 

 きっかけは、何の前触れもないことだった。

 私がいつも通り戦闘斥候部門が管理している作戦室に出社していると、何やら部屋の中が騒がしかった。いつもは厳格な班長殿の方針で殆ど私語が許されていないその場所が、その日だけはやけに人の話し声が聞こえたのだ。

 

 しかも、あろうことかその声の主が班長殿本人なのである。異様に謙った口調で、静かながらも僅かな焦燥が漏れ出していた。

 

 

「ま……まさか、あなた様のような方にこんな場所まで自ら足を運んでいただけるとは……」

 

 

「朝早くから連絡も無しにお邪魔してごめんなさいね。実は、あるholoXerに用があって……作戦参謀班の班長代理は居るかしら?」

 

 

 班長殿と話す妙に芯のあるその声音に、私は一瞬にして滝の様な冷や汗をかく。何故なら、それは数いるholoXerの端くれである自分ですら大変聞き覚えのある人……いや、御方の声であったから。

 

 

「お、おはようございますっ!……お、お呼びでしょうか、鷹嶺ルイ様っ!!」バタンッ

 

 

 作戦室の外側で中の様子を窺っていた部下たちを掻き分け、私はすぐさまそこに駆け込む。すると、室内には思った通りの光景が広がっていた。いつもなら班長殿が座っているはずの席には大幹部様が座り、逆に班長殿はその御方の隣でこれでもかと腰を低くして立っている。また、恐らくはルイ様が連れてきたであろう秘書らしき女性と彼女らの護衛であろう他の班所属の構成員も近くに控えていた。

 自分が驚いたのは、妙に騒がしく感じた作戦室内は実際には野次馬の如く集まった部下たちと、後は班長殿とルイ様の話し声ぐらいで部屋の中自体は異様に静かだったこと。ピりつき、張り詰めた空気感に、場違いなほど落ち着いた様子の大幹部様。それに対し、いつもは厳格で少々横柄な態度のはずの班長殿が冷や汗を垂らしている……と、色んな意味で長居したくはない空間であった。

 

 そんな中、私は勢いよく開け放った扉の前で硬い表情のまま立ち尽くす。

 

 

「……あら、あなたが?」

 

 

「は、はいっ!自分が戦闘斥候部門所属、作戦参謀班班長代理でありますっ!」

 

 

「そう。会えてよかったわ、無駄足にならなくて。……あなたに私からお話があるの。ここではなんだから、場所を移したいのだけど……班長、この人を借りていってもいいかしら?」

 

 

「え、えぇ、勿論ですとも。……是非必要なだけお連れ下さい」

 

 

 ルイ様から直接の呼び出しと聞いて私は更に心の臓が跳ね上がった。な、何故いきなり話しなどと……自分はこれまで、至極真面目に仕事に取り組んで来たつもりだった。今までに取り返しがつかない程の大きな失敗はしたことが無く、寝る間も惜しんで我らが総帥様にこの身を捧げてきた。故に後ろめたいことなど一つもなく、わざわざ大幹部様が出向いてまで私に話す事項などあるはずがないのだが……。

 

 しかし、そう怯えるように思い悩む私を差し置いて、自分の連れだし許可を求めたルイ様に班長殿は二つ返事でそれを承諾した。その顔は微妙に引き攣っていて、万が一にも私が粗相を犯していた場合自身にも何かバツが下るのではないかと心配している様子である。決して悪いことであるとは言い切れないが、その自分の保身ばかりを考えている上司の姿はあまりみたくない。

 

 

「ありがとう。……班長はこう言ってるけど、あなたはどう?」

 

 

「……私の行動権を持っているのは自分ではありません。ですので、大幹部様が命令し班長殿が許可を出されるのであればそれに従うまでです」

 

 

「――なるほど、評判通りのようね。……それじゃあ行きましょうか」

 

 

 ……評判……?

 

 ルイ様が放ったその言葉に、私は内心首をかしげる。

 だが、その答えすらも分からぬままに私はアジト本社へと連れ込まれてしまうのだった。

 

 

 ********************

 

 

 今朝、いつも通り職場に行くと荘厳な光景の中自分は大幹部様より呼び出しを受けた。

 

 そして現在、あろうことか私はルイ様とその秘書様に連れられアジト本社の中を歩いている。しかし、戦闘斥候部門の作戦室からここに至るまでの移動中に会話等は一切皆無であった。まさか只の中級構成員である自分から大幹部様に話題を振るわけにはいかず、されど対するルイ様は頻りに何かの資料に目を通されていただけである。こんな言い方はあれだが、呼び出したうえで何の説明も無いというのは……一体、自分にどんな用があるというのだろうか。

 

 

 だが、その静寂はあるタイミングで突如破られる。

 それは、少し前を歩くルイ様が厳重に警備された部屋の前で足を止めた時。分厚く重そうな両側が左右に開く扉に、その端を武装したどこの所属かも定かではない構成員が護っている。その部屋が普段どんな用途で使われている場所なのかはわからないが、とても只事では無さそうな雰囲気に私の鼓動はさらに加速した。

 

 

「着いたわ、ここよ」

 

 

「はい!……あっ、え、えっと……鷹嶺ルイ大幹部様、一つ発言をしてもよろしいでしょうか……!!」

 

 

「いいわよ、なに?」

 

 

「あ、あの、この厳重な警備網が敷かれた部屋は一体……それに、自分の様なただの一般構成員に用とは、何なのでしょうか……?」

 

 

 ルイ様の許可を得てから、私は思っていた疑問をぶつける。ここに来るまでの間に呼び出された用事の概要位の話は聞けるかと思えば、大幹部様は終始無言を貫いていた。その空気は自分にとっては耐えがたい程に重苦しく、正直今でも気が気では無い。故に、この部屋の中に入ってしまう前にせめてどうして呼ばれたかの説明を少しだけでも受けておきたい……。

 

 しかし、そう願っていた自分に告げられたのは、更に耳を疑いたくなる事実であった。

 

 

 

「……ここは、ラプの――――総帥、ラプラス・ダークネスの執務室よ」

 

 

 

 驚愕。

 一驚を喫するというのは、まさにこのことだった。

 

 

「らっ?!……ラプラス様の、おられる部屋……!?……な、何故そんな場所に、自分を……」

 

 

「詳しい事は中で話すわ。ここでは人目があるから…………というわけで、悪いけど人払いしておいてね」

 

 

「はい。かしこまりました、ルイ様」

 

 

 呆気に取られている私を他所に、ルイ様はそう言って秘書様に指示を出していた。またそれに従うように、近くに立っていた護衛等もサッとその場から離れていく。

 結果、残ったのは自分と大幹部様だけになってしまった。

 

 

「……それじゃあ、私についてきて」

 

 

「は、はい!ルイ様っ……!!」

 

 

 ルイ様はそう言うと、部屋の横にあったモニターに手をかざし扉を開く。また私も、未だ何も理解できずとも彼女に言われるがままにその後を辿って中へと足を踏み入れた。

 

 

「ごめんねラプ、今大丈夫?……例の候補者を連れてきたわ」

 

 

 部屋に入ると、すぐ目の付くところに卓面が広めの机。またその机に向かって、椅子に座る少女の姿が一つ。――――この御方こそが、我らが秘密結社holoXの総帥ラプラス・ダークネス様その人である。

 

 

 

「……あぁ、ルイか。……いいよ、丁度退屈してたところだ」

 

 

 

 そう言うと、ラプラス様は何やら動かしていた手を止めペンを置く。そして両肘を机の上に突き立てながら、そこに顎を乗せつつこちらに視線を移した。

 

 

「それで?……確か、ルイが考案した例の”特殊部隊”の件だったかな。ということは、そこに居る男がその部隊の隊長候補かい?」

 

 

「……ッ?!?!」

 

 

 もはや何度目かわからない、目が回りそうな程の驚きが私を襲う。特殊部隊の……隊長だって!?私なんかが、その候補としてここに連れてこられたというのか……?

 

 

「えぇ、そうよ。身元や普段の仕事ぶりを粗方調べさせたけど、中々優秀な男だわ。見たところラプへの忠誠心も問題なさそうだし……一応、彼の資料を置いとくわね」

 

 

 驚愕のあまり倒れ込みそうになっている自分など露知らず、ルイ様はそう言って手に持っていた資料をラプラス様の机の上に置く。なるほど、大幹部様がさっきまで執拗に見ていたのは私自身のことが書かれた書類だったのか……。

 

 

「ふむ……まぁ、人選についてはルイに任せるよ。私は君を信頼しているからね。……そんなことより、本当にその特殊部隊とやらは必要なのか?今のところ、私は別に困っていないんだけど」

 

 

「勿論、必要に決まっているでしょ。あなたがいつでも自由に、即座に使役できる部隊はずっと作るべきだと思っていたもの。……あなたが”ダメ”って言わない限りは、私の考えは変わらないわよ」

 

 

「別に、ダメだなんて言うつもりはないよ。むしろ君が私の事を想って考えてくれたことなら嬉しいぐらいさ。……ただ、幹部が考案した部隊なんだから君が責任を持って信頼に値するメンバーを選出するべきだろう?私の一番近くに置く者達というなら、尚更ね」

 

 

「……確かに、それはそうね」

 

 

 一端のholoXerであっても、その場にいるだけで震え上がってしまいそうな御二方の会話。更に、その節々でこちらに一斉に注意を向けられようものなら心臓が止まってしまいそうな程の緊張を経験する。

 

 だが、そんな自分の顔の強張りや冷や汗に気が付いたのか、かの御方はこちらを見ながらふんと息を吐いた。

 

 

「それに……どうやらこの男は、状況を全く理解していないようだけど。幹部、ちゃんと彼に事情を説明してここに連れてきたのかい?」

 

 

「いえ、まだ話していないわ……内容が内容だけに、他の構成員達の目がある所で話せなかったもの」

 

 

「なら、まずは話してあげるといい。肝心の本人が全く状況を飲み込めていないとなると、話が進まないからね」

 

 

 大幹部様と自分に交互に視線を向けながら、ラプラス様は淡々と言葉を紡がれる。また、それに対し

 

「……えぇ、わかったわ」

 

 とルイ様は答えた。

 

 

「――戦闘斥候部門所属、作戦参謀班班長代理。あなたには、私鷹嶺ルイ大幹部の名の下ある極秘の任務を任せたいと思っている」

 

 

「……極秘の……任務、ですか」

 

 

 そして、まず初めに大幹部様はそう話を始められる。

 

 

「そう、今までに前例のない特命よ。よってここから先の話を聞いた時点で、あなたにはこの任務を受ける意思があるとこちらは判断する。……当然、特命というぐらいなのだからその栄誉は保証するけど。引き返すなら今の内だわ」

 

 

 そう言ったルイ様の目は、鋭く唸り黄金の輝きを秘めていた。……噂に聞いたことがある、彼女の目には特別な力が宿っていると。そんな瞳で見つめられては、どうにもこの場から逃げることも……逆らうことも、出来ない気さえしてきてしまう。

 

 

「…………その、任務内容とは……」

 

 

「あら、退かないのね。やはり見込みがある。――――あなたにやって貰いたいこと、それはこれから新設される総帥ラプラス・ダークネスの為の私用部隊……秘密特殊部隊【ラプツナズ】の”隊長”を務めて欲しいの」

 

 

「――!!」

 

 

 はっきりと、自分に向けて放たれたのはそんな任であった。

 

 これまでの御二方の会話内容から、凡その事情をなんとなくは察していた。だが、改めてそう言われると全くもって実感がわかない。総帥ラプラス様の、私用部隊……その隊長に、こんな自分なんかが……。

 

 

「この部隊創設案は元々、『総帥が自己都合で直ぐに使役できる人材が必要』という構想の下発足した。その為ラプの名を一部冠し、通常時は総帥の近辺に潜伏しながらもいざって時はこの子の盾となり矛となってもらう。それがラプツナズの信念であり、役割……そんな重要な部隊の隊長として、私はあなたを推薦したいの」

 

 

「そ、そんな、ルイ様直々になんて…………どうして、自分なのでしょうか……?」

 

 

 総帥様を守る盾、また使われる手足としての部隊。そんな重要かつ重大な役回りを、どうして自分なんかに任せるのかと私は大幹部様に問う。もっと他に、相応しい人物などいくらでもいるだろうに。

 

 

「それはね……ラプツナズの隊員には、現状各分野の専門家をそれぞれ組み込もうと思っているの。戦闘、調査、潜伏、警護、操縦、修繕、等々……ラプが今後どんな目的でその部隊を使うかわからない以上、あらゆる事態に備える必要がある。既に幾つかの分野ではメンバー候補を決めているわ。……ただし、そんな構成員達をまとめより効果的に扱えるリーダーもまた必要になる。僅か数名の限られた人数の中で、隊員を上手く導きながら総帥から下される命令に全て応えられるような逸材が」

 

 

「――それが……自分である、と……?」

 

 

「えぇ、そうよ。普段から戦闘斥候部門の作戦参謀班、その班長代理をやっているあなたは適任だわ。体格も良く体力もあり、頭もキレる。その上仕事にも真面目でラプへの忠義も感じられた、恐らく口も堅い……まさにうってつけの人材だわ」

 

 

 まさにべた褒め。ルイ様からそう評価されていることには、純粋に嬉しく本当に身に余る光栄だと思えた。

 

 ……だが、同時にそれ相応の精神的重圧を感じる。果たして自分に、そんな大幹部様からの期待に応えられるような実力があるというのか。ただ日々与えられた任務に適材適所を当てはめていただけの、大した実績もない私が。

 

 

「それで……どうかしら?勿論さっきも言った通り、あなたには既に拒否権は無いわけだけど……一応、本人の口からも聞いておかないとね。――あなたは、総帥の為に仕える特殊部隊の隊長になる気はある?」

 

 

「……。」

 

 

 更なる圧力の中、確認の為ルイ様は私にその意思を問う。この先その部隊の隊長として、ラプラス様のために働きその身を捧げる覚悟があるのかと。もうこの話の実態を聞いてしまい、既に自分には拒否権が無かったとしても……あくまで、本人の意思でかの御方に仕えるために。

 

 

 

「――――その特命、謹んでお受けいたします」

 

 

 

 ……だが、私はそんな大役を直ぐに、迷わず受けると言った。その場に片膝をついて頭を垂れ、ルイ様とその先に居るラプラス様に謙りながら。

 

 否、迷いが無かった訳ではない。自分なんかに務まるのか、どうしてそんな重要を自分に任せるのかと思い出したらキリがない。……しかし、それでもこの組織に、ラプラス様に身を捧げるという決意は今更の話であった。私が戦闘斥候部門内で作戦参謀班の班長代理という席に腰を下ろす時、私の心は既に決まっていた。従って、今後より総帥様の御力になれるというのならそんな光栄な機会を逃す手はない。

 

 

「そう、よく言ってくれたわ。……では、たった今よりあなたを私の命の下ラプツナズの隊長に任命する。尚、これは特殊な任務により表向きには一般ぷらすめいとへの”降格扱い”にし、その本当の役職については然るべき場所以外では触れないこと。作戦参謀班の班長らには私から、あなたは懲戒降格になったと説明しておくわ」

 

 

「はい、了解しました」

 

 

「また、自身の身分同様ラプツナズの隊長として知った情報のその全ての開示を禁止する。私やラプから言われない限り何も語らず、関与も否定すること。現状、この話を知っているのは総帥と四天王の四人、そしてあなただけだから。……最後に、今後は他のメンバーを順次勧誘していくんだけど……その現場には、あなたにも立ち会ってもらうわ。自分の目で見て、きちんと扱える人材か確認してもらう」

 

 

「御意」

 

 

 ルイ様から告げられた言葉を聞き、それを受け入れるように私は彼女を見上げた。

 またこの瞬間、組織内における私の位が変わった。それは公には何かしらの規約違反を犯しての、懲戒降格。その為作戦参謀班からの任を解かれ、これからは下っ端兵である無名のぷらすめいとへと戻る。……しかし、その実で他に口外できぬ役職に席を置くことになる。

 秘密特殊部隊【ラプツナズ】、その隊長というのが今日から自分の役職名である。

 

 

「……というわけだけど、ラプ?構わないかしら」

 

 

「あぁ、問題ないよ。こういう事を伸び伸びやって貰う為に、ルイにはholoX内でのほぼ全ての裁量権を渡しているわけだし。……そうだ、私からも彼に言いたいことがあるんだけどいいかな?」

 

 

 自分に話があると言い、ラプラス様は椅子から立ち上った。そして机の前側、私の眼前へと歩み来る。

 大幹部様が一歩身を引き、その場にはより一層強い緊張が走った。自然と、体が理解する……これから、自分は主より言葉を授かるのだと。

 

 そう思った私は、片膝を付いた姿勢のまま再び首を垂れた。

 

 

 

「そのまま聞いてくれ。――――君には、これから私が自由に使える駒となってもらうそうだ。その身が朽ちるその時まで、私は君を使い古そう」

 

 

 

 主の姿を見上げずに、私はただその言を聞く。かの御方の御言葉は妙に重く、そして我が心に深く浸透した。

 

 

「故に、君は今日までの自分を全て捨て文字通りただの私の道具になってもらう。そうだな……私は、今日から君を【アルファ】と呼ぶ。新しい君の名だ――”こーどねーむ”なんて、如何にもな感じだけどね」

 

 

 役職……いや、自身の役目が変わり同時に別の名を冠した。私は今後ただのアルファとなり、この御方に全てを捧ぐ。

 

 

 

 

「――アルファ、私は君を使役する。これから、私の野望を叶えるために是非心置きなく死んでくれ」

 

 

 

 

 ラプラス様からその任を授かり、私は僅かに自分の身が震えたのを自覚した。

 

『”死んでくれ”』、という言葉に怖気づいたのか。或いは、これからこの方のお役に立てることへの喜びか。はたまた、元武人としての武者震いというべきか。兎も角、私は意を決し口を開く。

 

 

「仰せのままに。……この身この魂が尽きる時まで、自分はあなた様のモノになることを誓います」

 

 

 そう、私は答えた。

 

 

 ――――これが、秘密特殊部隊ラプツナズの創設秘話である。

 

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