もうひとつの帝国   作:ぽーりゅしか•ぽーれ

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彼は誰時

 フェン王国の軍祭の後、日本は文明圏に属さない国々と、次々と国交を結んでいった。

 今までは、日本から出て行き、調査して国交を申し込んでいたが、フェン沖海戦の後はレトロな船にのって次々とやってくる国が増えた。

 

 この機をモノにしようと日本側も張り切って外交を進めたおかげで大東洋共栄圏にはパーパルディア皇国を脅威と感じる第3文明圏付近の国ほぼ全てが加盟することになった。

 

 その結果が早速出始めている。

 

 パーパルディア皇国第3外務局

「なんだと!?今年は奴隷の差出が出来ないだと!?」

 

 外務局職員が、トーパ王国(文明圏外)大使に怒鳴りつける。

 

「ええ、我が国の民を奴隷として貴国に差し出すのはもうやめさせていただきます」

 

 大使が冷静に答える。

 

「ふん!では、各種技術供与の提供を、貴国だけ停止させるぞ!!」

 

 文明圏外の国々は皇国からの技術に頼っている。これで完全に国が立ち行かなくなるはずだ。

 

 だがトーパ王国の大使はいやらしい薄ら笑いを浮かべた。

 

「技術ですか……そんなものはもう要りませんよ。何しろ、我々はあの日本と同盟を結んでいるのですから」

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神聖ミリシアル帝国

 港町カルトアルパス とある酒場

 

 中央世界にある、誰もが認める世界最強の国、神聖ミリシアル帝国。

 その交易の流通拠点となっている町、港町カルトアルパスは各国の商人たちが集う町であり、商人たちの生の声は、各国の事情を現す生の声として、情報源としても非常に価値があるため、商人の姿に紛れた各国のスパイたちの集まる町でもある。

 神聖ミリシアル帝国は文明圏の中でも魔導技術が特に優れており、光魔法を使った街灯等、町並みにも高い魔導技術が見受けられる。

 とある酒場では、酔っ払った商人たちが自分たちの情報を交換していた。

 

「そういえば、ロウリア王国ってあっただろ?」

 

「東の蛮国か?あの、人口だけは超列強な国だろう?」

 

「ああ、俺が交易にいった時期に、隣のクワ・トイネ公国に喧嘩を売ったんだよ。亜人の殲滅を訴えてな」

 

「亜人の殲滅?無理に決まってるだろう。さすが蛮族の国!」

 

「で、大日本帝国っていう国が参戦して、負けたよ。圧倒的に強かったらしい。ロウリア王国は日本の兵を1人も倒すことが出来なかったし、4400隻の大艦隊も、日本を前に出撃すら出来ず無力化された。日本も今後、世界に名を轟かせる国になるぞ!」

 

「兵を1人も倒せないとか、港も出られなかったとか、どう考えても情報操作だろう。ありえなさすぎる」

 

「ロウリア王国が負けた?列強や文明圏なら理解できるが、文明圏外の蛮族に!?信じられんな。」

 

「まあ、グラ・バルカス帝国や日本がいくら強かろうと、神聖ミリシアル帝国とは、格が違うさ。絶対に勝てないよ。結局、中央世界はいつまでたっても安泰さ!古の魔帝が復活でもしない限りな」

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 ムー 統括軍情報通信部 情報分析課

 

 ここは、国の諜報機関であり、情報を分析する部署である。様々な国の情報が集まり、それを分析する場所だ。

 軍人からは、

・何をやっているのか解らない部署

・無意味な事をしている部署

として忌み嫌われており、ムー軍の情報技術に対する理解は乏しい。

 情報分析官であり、技術士官のマイラスはグラ•バルカス帝国の戦艦を分析した後、もう1つ与えられた日本という国の分析をこなそうとしていた。

 

 だが。

 

「うーん……全く解らん」

 

 船体は大きいのに、砲をたったの2基しか搭載していない。

 よほど連射がきくのか、もしくは砲撃精度に自信があるのか……連射するにせよ、たくさん付けたほうが威力は高いし、当たりやすくなる。

 設計思想が全く理解できない。

 砲が高価すぎて、2基しか設置できないのだろうか?

 理解できない装備が所々見受けられる。

 この艦に関しては、用途が全くもって理解できない。

 

「訳の解らない国が、突然出てきたな・・・。」

 

 技術士官マイラスの苦悩は続く。

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 アルタラス王国 王都ル・ブリアス パーパルディア皇国第3外務局アルタラス出張所

 

 アルタラス担当大使カストは困惑していた。

 

 事の始まりはカストがアルタラスに対して魔石鉱山シルウトラスをパーパルディア皇国に献上することと、王女ルミエスを奴隷として差し出すことを求めたことだ。

 魔石鉱山シルウトラスはアルタラス王国最大の魔石鉱山であり、国の経済を支える中核であり、世界でも5本の指に入るほどの大鉱山である。これを皇国が手にすれば、一気に国力が増大する。

 王女の方はカストの個人的な欲望であり、本国の意図とは違うのだが、蛮国をどうしようと勝手だろう。

 

 この要請文自体には問題は無いのだが、問題はアルタラスがこれを断ってきた事だ。さらに向こうはカストの本国への送還と国交断絶、パーパルディア皇国のアルタラスでの資産を凍結すると言ってきた。

 

 このありえない通告に、カストは激怒を通り越して逆に冷静になった。

 よく考えてみると今までどんな要求でも飲んでいたアルタラスがこんな態度をとる訳がない。きっと何かしらの間違いだろう。そこでアルタラス国王を呼び出して今に至る訳だが……

 

「なぜ国王は来ない!?」

 

 国王は来ず、その使いが来た。

 

「国王は所用で忙しく……」

 

「パーパルディア皇国大使に会う事以上に大事な事があるのか!?」

 

 使者を怒鳴りつける。

 

「国王もいろいろ事情があるようで……」

 

「まったく……お前じゃ話にならん。国王を呼んでこい!」

 

 だが少しして来たのは王ではなく、兵士たちだった。

 

「何の用だ?」

 

「パーパルディア皇国大使カストだな。お前を不敬罪で逮捕する」

 

 驚いて言葉が出ないカストを、兵士たちは手際良く拘束する。

 

「おい、何をやっている!俺はパーパルディア皇国の大使だぞ!俺を逮捕するなんて……どうなるか分かってるんだろうな!」

 

 カストは大声をだして暴れるが、屈強な兵士たちを前になす術はなく、気がつけばカストは檻の中にいた。

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パーパルディア皇国 皇都エストシラント

 

 第3文明圏で最も繁栄した都市、皇都エストシラント。そこにある、パーパルディア皇国の皇帝ルディアスの住まう皇宮は、柱の1本1本まで繊細な彫刻で作られており、見る者を圧倒する。

 この世の天国を思わせる鮮やかさを、繊細な整備で維持している庭。

 この世の富を集めたかのような豪華絢爛な宮殿の内装。

 

 その全ては、国内外にその威を見せつける為にある。

 

 その皇宮において、男が1人跪いている。

 

「おもてをあげよ」

 

 冷汗をかきながら顔をあげた第3外務局局長カイオスの先には、27歳という若さからは想像も出来ないほどの威厳を保つ若き皇帝、ルディアスの姿があった。

 

「フェン王国への懲罰の監査軍の派遣、予への報告はどうした」

 

「ははっ!監査軍派遣の報告を行わず、真に申し訳ございま……」

 

「たわけ!!!!!」

 

「っっっ……!!」

 

「予へ派遣の報告を行わなかった事はどうでも良い。それは予が認めた第3外務局の権限だからだ。一々蛮国への侵攻報告なぞうけたら、朝から晩まで終わってしまう。問題は、戦いもせず逃げ帰って来たことだ」

 

 カイオスの顔から滝のように汗が吹き出る。

 

「飛行兵器があったと報告があったが、それは本当か?」

 

「本当です。神聖ミリシアル帝国の天の浮舟に似た飛行物体が確認されています。フェン王国は、その飛行兵器は『大日本帝国』と呼ばれる国家の物だと言っています。

 このことから、おそらく神聖ミリシアル帝国またはムーが影で糸を引いているものと思われますが、ムーは伝統的に中立を保っていますので、第3外務局としては可能性は低いと見ています」

 

 皇帝の顔が怒に満ちる。

 

「ミリシアルめ……我々を恐れて脅威になる前に潰すつもりか……この件は、第1外務局に移管する」

 

「ははっ!!!!」

 

 カイオスは、さらに深く頭を下げる。

 

「皇帝陛下、もう一つ報告したいことがございます」

 

 カイオスはおそるおそる話始める。

 

「何だ!!!」

 

「アルタラス王国の件ですが、予定どおり、魔石鉱山シルウトラスの献上を断ってきました」

 

「ふむ……」

 

 先程まで険しい顔をしていた皇帝ルディアスの顔に笑みが浮かぶ。

 

「さらに、アルタラス王国は国内での皇国の資産凍結と、国交断絶を伝えてきました」

 

「ほう……ここまであからさまに反逆を開始するとは……予定どおりではあるが、いささか頭にくるな……なめられたものよ」

 

「アルタラス王国は監査軍ではなく本国の軍で叩き潰す。皇軍の準備は出来ているな?」

 

 傍らに立つ軍の礼服を着た男に言う。

 

「皇帝の命があれば、いつでも出撃できる準備は整っております。陛下の御言葉一つで、すぐにでも出陣し、アルタラス王国を滅し、すべての魔石鉱山を皇帝陛下に献上いたします」

 

「そうか……では任せた。アルタラス王国人の取り扱いについては好きにいたせ」

 

「ははっ!!!」

 

 ここでカイオスが口を開く。

 

「皇帝陛下、それについてお耳に入れておきたいことがございます」

 

「何だ!」

 

「アルタラス王国ですが、件の大日本帝国と同盟を結んでいるようです。アルタラスに戦争を挑めば、大日本帝国も参戦すると思われますが……」

 

 皇帝が表情を和らげ言う。

 

「何を言うのかと思ったらそんなことか。よいか、日本は皇国のすぐ近くだろう。ならば、戦争が起きた時真っ先に戦場となるのは日本だ。いかに神聖ミリシアル帝国の支援を受けているといえ、自前で兵器を生産することは不可能だろう。出来てしまえば、ミリシアルすら脅かされかねないからな。

 そうであれば、日本は皇国の圧倒的な兵力で押し潰されるだけだ。文明圏外の蛮国と言えど、そのくらいは分かるだろう。つまり、日本が参戦してくることはありえない」

 

 この日、列強パーパルディア皇国はアルタラス王国に対し、宣戦を布告。日本も集団的自衛権の発動を宣言し、ここに第3文明圏の雄を決定する戦いが始まった。

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