「すいません、局長が無理なら、課長でも良いので、権限のある方との会談をお願いしたいのですが……」
パーパルディア皇国の第3外務局、窓口勤務員のライタはここ3ヶ月、非常識な国に何度も時開を割くことを余儀無くされた。そして今もその国に手間を掛けさせられていた。
「しばらくお待ち下さい。順番に手続きを行っていますので……しかし、貴方たちの要求内容を見ましたが、かなり高度な、いわゆるハードルが高い事が記載されていますので……」
「と、いいますと?」
「あなた方は、もしもパーパルディアの民があなた方……大日本帝国でしたか?の中で、犯罪を犯したとして、治外法権を認めないと言ってらっしゃるので……」
「それが何か?国と国の間では通常の事と理解していますが……」
ライタは呆れ果てた。
「……我が国は列強ですよ?」
「それが何か?」
「あなたの国は、出来たばかりですか?文明圏以外の国とはいえ、国際常識を知らないにもほどがある」
語気を強める窓口勤務員に、外務省の一団は困惑した。
「?」
「いいですか?今、世界において、治外法権を認めないことを我々が了承している国は4カ国のみです。つまり、列強国のみなのです」
「列強国でない、まして文明圏にも属していない、国際常識すら理解していないあなた方の国が治外法権を認めない、対等の国として扱えとか、列強国のごとき要求をしている。課長はあと2週間くらい後には空きますので、あと2週間待って下さい。ただ、私としてはこれはかなりハードルが高いと言わざるを得ません」
なんとか非常識な文明圏外国を引き下がらせ、課長に押し付けることができた。これで2週間後にはこの国の相手をせずに済む。
この2週間がパーパルディア皇国にとって、大きな2週間になる事は、このとき誰も知らなかった。
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「剣王が入られます」
外務省職員らは、日本から西に500kmの位置にある勾玉のような形をした島国、フェン王国に来ていた。
「そなた達が、大日本帝国の使者か」
剣道7段の外務省職員島田は相手の剣の腕の凄さを動きだけで感じ取って、少し気圧されていた。
「はい。本日は貴国との国交を開設したく、また、可能であれば同盟関係まで発展させたいと考え訪問いたしました」
贈り物の後、日本からの提示条件と書類に間違いがないか確認する。
「失礼ながら、私はあなた方の国、日本を良く知らない」
「貴国からの提案、これはあなた方の言う事が本当ならばすさまじい国力を持つ国と関係が築けるし、夢としか思えない技術も手に入る。我が国としては申し分ない」
職員たちの顔が明るくなった。
「しかし、国ごとの転移や、海に浮かぶ鉄船等、とても信じられない気分だ」
「ならば我が国に使者を派遣されるのはいかがですか?」
「いや、我が目で見て確かめたい」
「と、良いますと?」
「貴国には水軍の代わりに海軍というものがあると聞いた」
「ええ、あります」
「そのうちの1艦隊でもいいから我が国に派遣してくれぬか?今年我が国の水軍船から廃船が4隻出る。それを敵に見立てて攻撃してみてほしい。要は力が見たいのだ」
そういうことであれば話は簡単だ。元々今の海軍は砲艦外交が仕事のようなものであり、我々のような艦隊と共にない外交官を守るためにいつでも出撃出来る体制を整えている。
すぐに艦隊の派遣が決まった。
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フェン王国 首都アマノキ 上空
ガハラ神国の風竜騎士団長スサノウは隣国、フェン王国の首都上空を飛行していた。
今日はフェン王国が5年に1回開催する「軍祭」が行われるため、その親善として3騎で上空を飛ぶ。
軍祭は文明圏外の各国の武官も多数参加し、武技を競い、自慢の装備を見せるものだ。各国の軍事力の高さを見せる事により、他国を牽制する意味合いもある。
文明圏の国も呼びたいが、「蛮国の祭りには興味が無い」というのが本音らしく、また「力の差を見せ付けるまでもない」といった考えもあるらしい。
スサノウは、上空から下を見た。
常軌を逸した大きさの灰色の船6隻が見える。
そのうち1隻は着陸出来そうなくらい大きい。
東の国、大日本帝国という名の新興国家らしい。
「まぶしいな」
相棒の風竜が話しかけてくる。
風竜は知能が高い。
「確かに、今日は快晴だ」
太陽がまぶしく、雲の少ない日だった。
「いや、違う。太陽ではない。あの下の灰色の船から、線状の光が様々な方向に高速で照射されているのだ」
「船から光?何も見えないが」
「フッ……人間には見えまい。我々が遠くの同胞と会話をする際に使用する光、人間にとっては、不可視の光だ。何かが飛んでいるか、確認も出来る。その光に似ている」
「飛行竜が判るのか?どのくらい遠くまで?」
「個体差がある。ワシは120kmくらい先まで判る。あの船の出している光は、ワシのそれより遥かに強く、そして光が収束している」
まさか……
「まさか、あの船は、遠くの船と魔通信以外の方法で通信出来たり、見えない場所を飛んでいる竜を見ることが出来るのか?」
「あそこにいる6隻すべてがそのようだな」
「日本か……すごい国だ」
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大日本帝国海軍 巡洋艦 妙高
「信じられんな……」
「しかし、間違いありません」
上空に飛んでいる風竜と呼ばれる生物から、電探のものに酷似した電波が照射されている。
この電波は航空機の物として見ればそれなりに出力が高い。
文明圏から外れた国で、電探を持つ飛行物体が確認された。
つまり、文明圏にはこれを大量に運用出来る部隊がある可能性もある。
この報を受けて本国は文明圏への警戒度を引き上げるのだった。