もうひとつの帝国   作:ぽーりゅしか•ぽーれ

9 / 11
東雲

「なんという幸運だ……ツイてるな」 

 

 外務省職員の島田は、海軍が不明機を発見し迎撃機を飛ばしたかと思ったらワイバーンを連れて帰ってきて、更にそのワイバーンが勝手に帰って行く様子を見て、少し混乱していた。

 よく分からないが、日本はフェン王国の争いに巻き込まれたようだ。運が良すぎる。この機会にフェン王国が同盟を結んでくれたら大成功だ。

 

 しかし今回の国籍不明の部隊は話を聞いた限りフェン王国に攻撃を加えようとしており、それが本当なら王城近くにいた島田自身も死の危険があっただろう。

 攻撃を諦めてくれて本当に良かった。島田は自分の運命に感謝した。

 

 夕方、日本とフェンの会談が行われた。

 

 豪華さは無いがおくゆかしさと趣のある来賓室で、日本の外務省職員たちが待っている。

 

 一時して、フェン王国騎士長マグレブが現れた。

 

「日本のみなさま、今回フェン王国を不意打ちしてきた者たちを見事に退治していただいたこと、まずは謝意を申し上げます」

 

 騎士長は深々と頭を下げる。

 

「いえ、我々は何もしていませんが……?」

 

 会談が始まるなり身に覚えのない感謝をされ、困惑する外務省の面々。

 

「いやいや、かの者たちに力を見せつけていただいたこと、誠に感謝しております。彼らは大日本帝国の名を聞いたとたんすぐ引き返して行きました」

 

「はぁ……」

 

「さっそく、国交開設の事前協議を……実務者協議の準備をしたいのですが……」

 

 話の展開が早いが、手間が少ないのはありがたい。

 

「ええ、お願いします。ついでに同盟についても話し合いましょう」

______________________________________________

 

 フェン王国の首都、アマノキの港はこの国で最大規模の港だったが、軍艦を停泊させるほどの水深は確保出来なかったため、送迎はヘリで行っていた。

 ヘリはアマノキの一角に駐機し、エンジンを切り外務省の一団が来るのを待っていた。

 

 外務省の一団がくると、ヘリを物珍しそうに見ていた人々が目を輝かせ、一団に手を振る。

 

「とーちゃん、あの人たちがさっきの悪い奴らをやっつけたんだよね」

 

「そうさ!列強パーパルディア皇国を、追い払ったんだ!!」

 

「わぁ……!すごい!」

 

「おーーい!!」

 

 満面の笑みで一団に手をふるフェン王国の人々。外務省の職員は少し固まった笑顔で手を振る。

 彼らにとって、それほどまでに好意的な視線を受けたのは初めての経験だった。

 

 一方その頃、パーパルディア皇国のワイバーンロード部隊をあっさりと追い返したフェン王国、そしてその裏にいる大日本帝国の様子を見て、文明圏に属さず、軍祭に参加した各国武官は放心状態となっていた。

 

「な……何が起こったんだ?」

 

「あのパーパルディア皇国があっさり引き下がった……」

 

 空を眺めていた文明圏外の国々の武官たちは、自分たちの常識が崩れる様子を目にし、味方になれないか考えていた。

 

 フェン王国の軍際に来たのであれば、フェンとは友好関係にあるという事だ。

 フェン王国と良好な関係を築き、あの船の国と仲良くなれば、もしかしたらパーパルディア皇国の属国化を防げるかもしれない。

 

 後にフェン王国軍祭襲撃未遂と言われた事件の後、日本は急激に多数の国と国交を結ぶ事となる。

______________________________________________

 

パーパルディア皇国 第3外務局

 

 局長カイオスは、その報告を聞き、脳の血管が切れるのではないかと思われるほど激怒していた。

 事の始まりは、フェン王国が皇国の領土献上案を拒否した事からはじまる。

 第二案の498年間の租借も許否された。

 

 これを「舐められている」と考えたパーパルディア皇国は、第3外務局所属の皇国監査軍東洋艦隊22隻と、2個ワイバーンロード部隊を派遣した。

 

 ワイバーンロード部隊により、フェン王国首都アマノキに攻撃を行い、フェン人に恐怖を植え付け、軍祭に参加している文明圏外の蛮国武官に力を見せつける。

 そして、艦隊による無慈悲な攻撃により、フェン王国首都アマノキを焼き払い、パーパルディア皇国に逆らったらどうなるのかを他国に見せつける……計画だった。

 

 事態は思いもよらない方向へと進んでいった。

 

 神聖ミリシアル帝国の天の浮舟に似た飛行物体が飛んで来たのだ。飛行物体はなぜか魔信を使わず手振りでついてくるよう伝え、ワイバーンロード部隊をアマノキ上空まで連れて行くと、そのままこちら側を監視するようにワイバーンロードの後ろを飛んだという。

 

 飛行物体が所属する国の物であろう超大型船も呼びかけには答えず、部隊は列強間の戦争を避けるために仕方なく撤収したと報告した。その際、フェン王国は飛行物体の持ち主を『大日本帝国』と言ったという。

 

 考えられる事態は2つ。

 

 1つはなんらかの理由で神聖ミリシアル帝国が『大日本帝国』に援助を行い、その国がフェンを助けた、という可能性である。

 その場合、神聖ミリシアル帝国には我が国と敵対する意思があり、理由はパーパルディア皇国がロデニウス大陸に行ったのと同じように第3文明圏を手に入れるためと考えられる。

 

 だが、その理由がミリシアルにはないように思える。

 パーパルディアがロデニウス大陸を手に入れたいと思ったのは、主にクワトイネの肥沃な大地が理由である。

 しかし、第3文明圏にはそのような土地はない。強いて言えばグラメウス大陸と繋がっており、魔獣や魔物の研究にはもってこいだが、デメリットの方が大きい。

 

 2つ目は、艦隊が嘘をついている可能性だ。

 こちらは単純だが、根拠はない。ただ1つ目の可能性があまりにもありえないのでどうしても頭に浮かんできてしまう。

 

 とにかく皇国の顔に泥を塗った大日本帝国とやらを殲滅する必要がある。

 しかし、敵が誰か知らなければ攻めようが無い。

 今回は第1外務局にも関わりのある出来事だ。皇帝の耳にも入るだろう。次は、監査軍ではなく最新鋭の本国艦隊が動くこととなろう。

 第3外務局は「敵」を知るため、情報収集を開始した。

______________________________________________

 

パーパルディア皇国 皇都エストシラント 第3外務局

 

「あ!あなた方は!」

 

 約束した会談の為に訪れていた外務省の職員たちは、窓口に着くなり大声で呼びかけられた。その声に周りが驚くのも構わずに、前に見たときより明らかに痩せた窓口職員はさらに畳み掛ける。

 

「まったく、あなた達のせいで私たちは今大変なことになっているんですから!」

 

 外務省職員たちは何が何だか分からずに困惑するばかりだ。

 

「今確認してきますので、お待ち下さい」

 

 既に日本は皇国監査軍を破った蛮国として第3外務局の中では有名になっていた。日本のせいで第3外務局の皇帝陛下からの信頼は地に落ちてしまった。おかげで上は信頼を取り戻すことに躍起になり、窓口勤務のライタは多忙な日々を送って痩せ細っている。

 

 しばらくして

 

「お待たせしました。第3外務局長カイオスが対応いたします。どうぞこちらへ」

 

 外務省職員は顔を見合わせる。

 今日は課長と会談できるとは聞いていたが、それを飛ばしていきなり局長とは。

 帝国が参加したフェン王国の軍祭にパーパルディア皇国のワイバーンが飛来して、海軍機が出張る一幕があったようだが、航空機に恐れを抱いたのだろうか。

 

 そんなことを考えながらライタについて行く職員を、他の国の使者たちは驚きの表情で見つめていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。