1639年 11月5日 アルタラス王国 王都ル・ブリアス
フィルアデス大陸の西側に位置する文明圏から少し外れた国、アルタラス王国。人口1200万人を抱え、文明圏外の国としては国力と人口は大国である。世界有数の魔石鉱山があるこの国は、資源輸出国であり国は豊かになっており、人口50万人を抱えている王都ル・ブリアスは人々の活気で溢れていた。
王城
ターラ「………これは正気か?」
王城で頭を抱えている人が一人。国王のターラ14世が苦渋に満ちた表情をしていた。ターラが手にしていた紙にはパーパルディア皇国からの要請文が書かれていたが実質、命令文である。
ターラ「今までは双方に利があった要請文だった…だが今回はどうだ!何なんだこれは!!」
ターラの顔に怒りの表情が浮かぶ。パーパルディアの要請文(命令文)には、
○貴国の魔石鉱山シルウトラスをパーパルディア皇国に献上すること。
○アルタラス王国王女ルミエスを奴隷としてパーパルディア皇国に差し出すこと。
この2つが書かれており、とても受け入れがたい内容だった。最後には、上の2点を2週間以内に実行することの要請文。そして「出来れば武力を使用したくないものだ」と書かれており舐めているとしか思えない言い方だった。
ターラ(魔石鉱山シルウトラスは我が国最大の魔石鉱山であり、国の経済を支える中核だ…これを失うと我が国の国力は大きく落ちてしまう……それに娘ルミエスの奴隷化…これは、パーパルディア皇国には全く利が無いはずだ!我が国を戦争に引き込もうとしているとしか思えん!事の真意を直接、パーパルディア皇国に聞きに行ってやる!)
ターラは王都ル・ブリアスにあるパーパルディア皇国第三外務局アルタラス出張所に向かい事の真相を確かめに行った。
パーパルディア皇国第三外務局アルタラス出張所
ブリガス「待っていたぞ、アルタラス国王。」
パーパルディア皇国第三外務局アルタラス担当大使ブリガスは椅子に座り、足を組んだまま一国の王の名を呼びつける。王は立ったままであり、大使の他に席は無かった。
ターラ(なんと無礼な…)
ブリガスの態度に唖然とするがターラは話を始める。
ターラ「あの文章の真意を伺いに参りました。」
ブリガス「内容の通りだが?」
ターラ「魔石鉱山シルウトラスは我が国最大の鉱山であり、我が国の生命線です。」
ブリガス「それが何か?他に鉱山はあるだろう。それとも何か?え?皇帝ルディアス様の意思に逆らうというのか?」
ターラ「とんでも御座いません。逆らうなど……しかし、これは何とかなりませんか?」
ブリガス「ならん!!!」
ターラ「…では、我が娘のルミエスですが、何故このような事を?」
ブリガス「ああ、あれか。王女ルミエスはなかなかの上玉だろう?俺が味見するためだ。」
ターラ「……はぁ?」
ブリガス「俺が味を見てやろうというのだ。まぁ、飽きたら他国に奴隷として売り払うがな。」
ターラ「………それもルディアス様の御意思なのですか?」
ブリガス「ああ!!!なんだ!!?何様のつもりだ!!その反抗的な態度は!皇国の大使である俺の意思はパーパルディア皇国の意思!つまりルディアス様の御意思だろう!!蛮族風情が!!誰に向かって話をしていると思っているのだ!!」
ターラ「………」
ターラは無言で後ろを向きその場を去ろうとする。
ブリガス「おい!話は終わっていないぞ!!」
ターラは無視を続けその場から立ち去る。
ブリガス「俺様を無視するなよ、蛮族の国王よ!貴様など国ごと踏み潰してくれるわ!」
王城
ターラ「あの馬鹿国の馬鹿大使をパーパルディアに送り返せ!!要請文も断る!!国交を断ずるとはっきり書くと共にパーパルディア皇国の我が国での資産を全て凍結しろ!!」
ターラは吼える。
ターラ「軍を招集し王都の守りを固めよ!!予備役も全員招集だ!監察軍が来るぞ!!パーパルディア皇国に我が国の力を見せつけてやれ!!!」
「「「「「おおぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
辺りが歓声で包まれる。
ターラ「あと側近よ、
側近「そう仰ると思いまして既に呼んでおります。」
ターラ「話が早いな。早速行くとするか。」
側近「では、こちらへ。」
ターラと側近が応接室へと移動する。
応接室
二人は応接室前に着き、ターラが扉を開ける。
ターラ「大変待たせてしまい申し訳無い、杉原殿。」
応接室で紅茶を飲みながら待っていたのは、
杉原「いえいえ、大丈夫ですよ。…それより隣に居る方から話はお聞きしました。大変な事になりましたね…」
ターラ「はい…ですがこうするしか無かったのです…パーパルディア皇国の要請文は我が国を戦争に引き込むような内容だったのです…」
杉原「そ…そんなに酷い内容だったのですか…」
ターラ「はい、それを断ったのでパーパルディア皇国は監察軍か正規軍を我が国に送り侵攻を開始するでしょう。そこで貴国と締結した安全保障条約に則って我が国と共にパーパルディア皇国を撃退してほしいのです!どうか!!全国民を代表してお願い致します!!」
側近「私からもよろしくお願い致します!!」
ターラと側近が頭を下げる。
杉原「…お顔を上げてください。」
杉原が頭を上げるように言いターラと側近は頭を上げる。
杉原「我が国は同盟国を決して見捨てはしません。」
ターラ「で、では!!」
杉原「はい、我が国は貴国と結んだ安全保障条約を適用しパーパルディア皇国軍を共同で撃退致します。」
ターラ「あ、ありがとうございます!!」
ターラが二人に感謝する。
横島「既に我が海軍の第一航空艦隊29隻が本国を出発しアルタラス王国に向かっています。」
ターラ「に、29隻ですか?…お、お言葉ですが…少なくありませんか?」
横島「ご安心下さい。第一航空艦隊は最高練度を誇る艦隊であり別名[何でも力量で解決する脳筋集団]や[人間のような何か]と言われています。」
ターラ「………なんか…別名が酷いですね…」
こうして大日本帝國はまたまた、争いに巻き込まれるのであった。
パーパルディア皇国 皇都エストシラント
第三文明圏において唯一の列強国、パーパルディア皇国の皇都エストシラントにある皇帝ルディアスが住まう皇宮は、パーパルディアの威厳を示すため柱の一本一本まで丁寧に職人によって作られており、見る者を圧倒する。この皇宮を訪れた各国の大使や国王は思うだろう。
巨大な柱を作るための気の遠くなりそうな人的資源。
天国を思わせる程の美を追求した庭、そしてそれを維持する能力。
この世の富を全て集めたかのような宮殿の内装、そしてその規模。
なんと凄まじい国力だろうか、と。
…だがこのとき、皇帝や政府要人…いや…パーパルディア皇国全国民は思いもしなかっただろう。その後の争いでこの城…いや…国が轟音を立てるように崩壊することを…
皇宮において跪く者が一人、第三外務局局長のカイオスだった。
???「…おもてを上げよ。」
カイオスは冷汗をかきながら顔を上げる。視線の先には、27歳といった若さからは想像も出来ない程の威厳を保つ若き皇帝ルディアスの姿があった。
ルディアス「フェン王国への懲罰のための監察軍の派遣…余への報告はどうした。」
ルディアスが少し怒りが籠もった言葉で尋ねる。
カイオス「ははっ!監察軍派遣の報告を行わず誠に申し訳ございまs…」
ルディアス「たわけ!!!!!」
カイオス「っっ……!」
カイオスが謝罪しようとするがルディアスの叱りの言葉で遮られる。
ルディアス「余への派遣の報告を行わなかった事はどうでも良い。それは余が認めた第三外務局の権限だからだ。一々蛮国への侵攻報告なぞ受けたら朝から晩までかかってしまう。そこは良いのだが、問題は……敗北したことだ。」
カイオスの顔から汗が間欠泉のように吹き出す。
ルディアス「何処に負けた?まさかフェン王国か?」
カイオス「ははっ!現在全力で対象国の割り出しを行っておりますが、現在までの調査結果では文明圏外の国と思われます結果がはっきりしないため、まだご報告する段階に有りませぬ…」
ルディアス「まだ、解らぬというのか!!」
再度、怒りが爆発したルディアスがカイオスに向けて横に置いてあったフルーツ皿をフルーツごと投げつける。
カイオス「も、申し訳御座いません!!」
ルディアス「ふん…、旧式艦とはいえ我が皇国に土をつける文明圏外の国が居るとは…その国には必ず責任を取らせるように。皇国に逆らうとどうなるか、きっちり教育を行え。」
カイオス「ははっ!!!」
カイオスは頭を深く下げる。
ルディアス「各国は、皇国がフェン王国ごときに敗北したと見るだろう。我が国に逆らった国が判明したならば本国艦隊がフェン王国諸共叩き潰す。分かったな?」
カイオス「ははっ!!……皇帝陛下、もう一つ報告したい件が…」
ルディアス「何だ。」
カイオス「アルタラス王国の件ですが、予測通り魔石鉱山シルウトラスの献上を断って来ました。」
ルディアス「ふむ。」
ルディアスの顔に笑顔が浮かぶ。
カイオス「更に、アルタラス王国は国内での我が国の資産凍結及び国交断絶を伝えてきました。」
ルディアス「ほほう……ここまであからさまに反逆を見せるとは…予定通りではあるが、いささか頭にくるな、舐められたものよ。」
ルディアスは傍らに立っている軍の礼服を着た者に問う。
ルディアス「アルタラス王国は、監察軍ではなく本国の軍で叩き潰す。皇軍の準備は出来ているな?」
問いに軍人が答える。
軍人「陛下の命があれば、いつでも出撃できる準備は整っております。陛下の御言葉一つで、すぐにでも出陣し、アルタラス王国を滅し、全ての魔石鉱山を皇帝陛下に献上致します。」
ルディアス「そうか…では任せた。アルタラス王国人の取り扱いについては好きにいたせ。」
軍人「ははっ!!!!」
この日、パーパルディア皇国はアルタラス王国に対し宣戦布告し戦争が始まろうとしていた。
翌日 夜
アルタラス王国 王都ル・ブリアス 王城
国王ターラ14世は、自分の娘である王女ルミエスに語りかけていた。
ターラ「ルミエス、今、大日本帝國に脱出手段の手配をした、港に移動して大日本帝國海軍の船で脱出するのだ。」
ルミエス「何故ですか?!お父様!」
ターラ「パーパルディア皇国が我が国に宣戦布告してきた……この意味は分かるな?監察軍では無く正規軍が来るだろう。」
ルミエス「民を見捨て、王女のみ逃げるなど!皆に示しがつきません!」
ターラ「…パーパルディア皇国は巨大で強い。我が国土が侵攻されたら必ず敗北するだろう…我が国が敗北したら王族は酷い目に遭う。…そしてルミエスは要請文にあったから他より酷い目に遭うだろう…だから一人の父親として娘には助かってほしいのだよ。」
ルミエス「しかし…」
ターラ「大丈夫だ。今回、大日本帝國軍が参戦してくれる。彼らは巨大なロウリア王国軍を破り、フェン王国沖では、パーパルディア皇国の監察軍を撃退している。だからきっと大丈夫だ。」
ルミエス「……分かりました…」
ターラ「よし、港に大日本帝國の船が待っているから今すぐここを出て港に向かうのだ。」
ルミエス「分かりましたわお父様…ご無事で…」
この日の夜、ルミエスは王城を出発し、港に停泊していた水上機母艦「千歳」に乗艦し護衛と共に王都を出発した。