どうも89式小銃です。
大変お待たせしました。本話と陸軍航空機設定をやっと投稿することができました。いや〜設定集って中々大変であることを改めて感じました。アベーラ合衆国兵器の設定集も執筆しておりますので気長にお待ち頂けたらな〜と思います。
それではどうぞ
数時間後
大日本帝国 帝都東京
首相官邸 執務室
鈴木「…分かった。雪風が帰還後、直ちに査問委員会を設置してくれ。そしてその件は他言無用だ。決して外部には漏らさないように、ではよろしく頼む。」
電話を終え受話器を戻す鈴木海軍大臣。
山内「鈴木君、何かあったのかね?」
鈴木「はい首相。先程、我が海軍の艦艇が奇襲してきた不明潜水艦と交戦したと連絡が。」
山内「せ、潜水艦と交戦!?艦の乗組員は無事なのかね!?」
予想外の返答に、山内首相は慌ただしく問いかける。
鈴木「落ち着いて下さい。乗組員は無事です。…そして不明潜水艦はやむを得ず撃沈しました。」
山内「そ、そうか。…それにしても潜水艦を撃沈してしまったか…何処の国の物か分かっているのかね?」
鈴木「いえ。現在、調査委員会を急遽設置しており襲撃してきた潜水艦の所属究明を行う予定です。また、戦闘前に国籍不明の漂流者数名を救命したとの報告があります。」
続く話に無言で頷くと、座っている椅子の背もたれにもたれかかる。
山内「不明潜水艦による海軍艦艇への攻撃、そして国籍不明の漂流者救助…パーパルディアとの戦争が終わってから一ヶ月しか経っていないにも関わらず、また新たな問題か…」
鈴木「山内内閣が戦争屋と呼ばれてもおかしくありませんね。」
山内「まったくだよ…はぁ…総選挙を控えているこっちの身にもなって欲しいよ…」
深いため息をつく理由は、来月に衆議院議員総選挙が控えているからであった。彼の所属する『護国党』―ひいては翼賛政治体制協議会は前回の総選挙で議席の3分の2以上を獲得し、彼は首相となった。そして山内は首相の重任を狙っている。
しかしこの頃、翼賛政治体制協議会非推薦の党派が勢力を伸ばしてきており、今度の総選挙では激戦が予想されていた。非推薦側で最大規模を誇る『愛国会』は"戦争はしない・軍隊はいらない"をモットーに活動しており、戦争や地域紛争で親兄弟・親戚を亡くした人々に支持されている。そして大日本帝国憲法の改正、陸海軍の解体、財閥解体を目的に掲げており、山内派閥からは非常に警戒されている。
山内「愛国会が総選挙に勝ち、内閣が成立すれば我が国が崩壊しかねん。この世界は弱肉強食であり軍隊を持たない国などいいカモだ。大日本帝国を存続させるためにも、来月の総選挙には必ず勝利しなければならない。」
改めて首相重任の意志を固める。
山内「…少し話が逸れてしまったな。一刻も早く不明潜水艦の所属を明らかにしてくれ。当然、当事国又は組織との外交問題へ発展するだろうが、我が国の兵士の命が危険に晒されたんだ。そう簡単に引き下がる訳にはいかない。」
鈴木「承知致しました。それでは失礼します。」
ガチャ バタンッ
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場面は、日本近海を航行する雪風に移る。
救助されたアルフェッカ達は身体に付着した重油を丁寧に拭き取ってもらったり、食事を用意してくれるなど寛大な処置を受けた。初めは、拷問されたり殺されるのではないかと警戒していたミラ乗組員達だっが、今はすっかり雪風乗組員らと仲良くなっていた。
そしてアルフェッカ以下数名の士官・下士官達はこの艦の艦長に呼び出されたため、士官用食堂を訪れていた。
食堂に入ると奥にある席には純白の軍服を着た艦長らしき者、そして両脇には部下らしき者が2人ずつ立っている。
前橋「はじめまして。大日本帝国海軍、駆逐艦雪風艦長の前橋 健一郎中佐です。」
アルフェッカ「アルフェッカ・モーランドです。前橋中佐、私と部下達を救助して頂きありがとう御座います。そして新しい着替えと美味しい食事まで用意して頂き、感謝しかありません。」
前橋「いえいえ、我々はシーマンシップに則って行動したまでです。」
アルフェッカ「それでも我々の命が救われたのですから、前橋中佐には頭が上がりません。」
そう言うと深く頭を下げ、改めて感謝の意を伝えるアルフェッカ達。
異世界人は知識が無く野蛮で醜いものだと教えられていたが、今目の前に居る前橋らは野蛮でもなく、知識がない訳でもなく、温情で溢れた人格者であり立派な海軍軍人であった。
前橋「立ち話はあれですから、どうぞ席に座り下さい。」
アルフェッカ「では、失礼します。」
前橋に促されたアルフェッカ達は席に座り、続いて前橋達も着席する。
前橋「さて、我々は幾つか気になることがあります。貴方方は何処から来たのですか?そして目的はなんですか?」
「………」
前橋の言葉に、先程まで笑顔だった士官・下士官達は真顔になり顔を俯かせて黙り込む。
グラ・バルカス帝国の情報を異世界国家に渡すのは禁止されているためであり、彼らはそれを守ろうとしていた。
アルフェッカ「…我々はグラ・バルカス帝国人です。そして同国海軍に所属しています。」
だが、アルフェッカが沈黙を破るように前橋の質問に答える。
「か、艦長!」
アルフェッカ「瀕死状態だった我々を助けてくれて、更には着替えと食事を与えてくれだんだ。恩を返さない訳にはいかないだろう。」
「し、しかし…」
アルフェッカ「…君達の気持ちも分かる。だが恩を仇で返すなど清廉潔白な帝国海軍軍人にあるまじき行為、君らはそんな人物になりたいのか?」
アルフェッカの言葉に、部下達は渋々納得する。
前橋「なるほど、グラ・バルカス帝国ですか。では、どういった目的で大東洋に?」
アルフェッカ「調査のためです。私は潜水艦ミラを指揮して大東洋に位置する国家や地勢を調査していました。ですが途中、海魔の襲撃に遭い艦が大破したためやむ無く放棄し、結果漂流してしまったのです。」
前橋「そうだったのですか。それにしても貴国は潜水艦を保有しているのですか?」
アルフェッカ「はい。前橋中佐の国も潜水艦を?」
前橋「ええ、我が海軍では40年前から運用しています。この世界では我が国以外に潜水艦を保有する国は居ないと思っていましたよ。」
アルフェッカ「私もまったく同じ思いです。」
前橋の言葉に頷き、同意を示す。
前橋「おっと、話が逸れてしまいましたね。では最後の質問をします。先程、我が艦が所属不明潜水艦からの攻撃を受けましたが…その潜水艦とは関係がありますか?」
アルフェッカ「………分かりません。…ですが、大東洋海域で行動していた潜水艦はミラともう1隻居ることを伝えておきます。」
前橋「…分かりました。これで質問は以上です。本国まではまだ距離がありますから、到着までゆっくり休んで下さい。」
そう告げると、前橋達は部屋を退出しようとする。
アルフェッカ「最後に、私から質問よろしいですか?」
前橋「何でしょうか?」
アルフェッカ「私と部下達はこれからどうなるのでしょうか?」
前橋「…現状ではなんとも言えません。ですが、我が国は民主主義国家ですので、貴方方が想像しているようなことは決して行わないと約束します。それでは。」
前橋達は退出し、士官用食堂にはアルフェッカ達だけが残っていた。
「艦長、本当に異世界人に話してよかったのですか?仮に本国へ帰還できたとしても厳しい処罰は免れないのでは…?」
すると1人の士官がアルフェッカに話しかける。
アルフェッカ「…中尉は疑問に思わないのか?」
「疑問…と言いますと…?」
アルフェッカ「先程の対潜戦闘―あまりにもタイミングが良すぎるとは思わないか?まるで我々がこの艦と遭遇する機会を伺っていたかのように…それに潜水艦を保有しているのは我が国以外に先程分かった大日本帝国のみだ。日本の潜水艦が真っ昼間の味方艦を誤って攻撃するのは考えられない。だとすると―」
「ま、まさかそんな。ありえないですよ。」
そう否定する中尉だったが、彼も内心はアルフェッカと全く同じことを思っており全ては否定しきれなかった。
この会話により、彼らの本国に対する不信感はますます強くなるのであった。
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グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ
グラ・バルカス帝国の首都である"ラグナ"。海に面している沿岸都市であり、無機質な建物が立ち並び、市中の道路には自動車が縦横無尽に走り回っていた。そして、帝都の中心部には遥か昔に建てられた城を利用した皇城"ニブルズ城"が存在し、1930年代後半頃の大日本帝国の帝都東京のような外観と雰囲気がある都市であった。
その中心部に建つ、グラ・バルカス帝国軍を統括する"軍本部"。その一角にある海軍東方艦隊司令長官室に、大将の階級を示す士官服を着用した1人の男の姿があった。
その男の名は『カイザル・ローランド』
帝国海軍東方艦隊司令長官であり、前世界ユグドで戦争状態となっていたケイン神王国との戦闘で多大な戦果を挙げたため"帝国の三将"と呼ばれている。
カイザル「今日も帝都の空は淀んでいるな…」
長官室の窓から外の景色を見ていたカイザルは呟く。
帝都周辺には工場群が立ち並び、市内は路面電車や各種自動車が大量に稼働しており、帝国の高い経済力を維持している。その代償としてそれらから発生した排気ガスが都市全体を覆ってしまい、空は淀んで何ヶ月もくすんだままとなってしまっている。
だが、グラ・バルカス帝国人は"機械文明、豊かさの象徴"として誇ってしまっており、これら公害に対する対策は全く施されていない。
帝都がまだ綺麗だった頃の風景を知っているカイザルは、今の帝都の風景はあまり好きでなかった。
コンコン
すると、扉を叩く音が耳に入る。
カイザル「入ってくれ」
「はい、失礼します。」
ガチャ
扉が開くと、1枚の紙を手にしている士官が入ってきた。
「カイザル大将、情報局から報告です。T8区域を調査中の東方艦隊第2潜水艦隊所属の潜水艦ミラ及びメンカルの消息が途絶えた模様です。」
その報告にカイザルは、平常を装いながらも内心驚く。
この世界には自国以外に潜水艦を保有している国は存在せず、仮に他国軍に見つかったとしても海中に潜れば攻撃を受けることはない、まさに無敵の存在であった。それが短期間で2隻失ったことは明らかに異常事態であった。
カイザル「…消息が途絶える前に両艦から何か通信は?」
「ミラからは何もありませんでしたが、メンカルから"異世界軍艦艇を発見"との通信が途絶前に発信されていたそうです。」
カイザル「……そうか、なるほどな。」
しばらく考えた後に、カイザルは納得した様子を見せる。
カイザル「恐らくだが、メンカルはその異世界軍艦艇によって撃沈されたのだろう。」
「そうでしょうか?潜水艦が対潜装備を持たない異世界軍の艦艇に撃沈されるとは思いませんが…」
カイザル「少佐、大日本帝国は知っているな?」
「大日本帝国ですか…?たしか大東洋の南東に位置する、我々と同じ転移国家ですよね?」
カイザル「ああ、この世界には潜水艦は存在しないが、こことは別の世界から来た大日本帝国なら潜水艦やそれに対抗する対潜装備を保有していてもおかしくない。」
「なるほどですね…ということは日本の艦にメンカルがやられたということでしょうか?」
カイザル「いや、まだメンカルを撃沈したのが大日本帝国と決まった訳ではない。だがメンカル撃沈の原因が明らかになるまでT8区域の調査任務はしばらく中止とする。向かっている潜水艦も基地へと帰還させるように。下がって良いぞ。」
「了解しました。では失礼します。」
カイザルに向かって海軍式の敬礼を行うと、士官は部屋を退出する。
カイザル「(大日本帝国か…彼の国の情報を更に集める必要があるな。)」
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