結論から言うと、トーパ王国の日本軍派遣要請は無事承諾された。
大至急の要請とのことで距離が遠い本土の部隊ではなく、パーパルディア皇国に防衛目的で駐屯する戦車第5師団から機動歩兵第4連隊及び戦車第十旅団第19連隊を抽出、そして海軍からも1個艦隊を抽出してトーパ王国派遣軍を編成しいつでも出撃できる状態にあったが、それにある組織が待ったをかけた。
『北方監視連合艦隊(Northern Observation Combined Fleet)』
通称ーNOCF軍。
第三次五カ年計画にて戦力を増強させ周辺国に睨みを利かせているソビエト海軍の北方艦隊及び太平洋艦隊の行動を抑止・監視するべく6ヵ国の海軍で構成された国際連盟軍組織であり、千島列島の択捉島に本部及び艦隊駐留港を置く。
そして、本部及び一部艦艇は大日本帝国と共に転移に巻き込まれてしまい、以後は同じく巻き込まれた米独陸軍と共に日本軍の傘下に組み込まれ、北方海域や占領地域の警備そして海上通商路護衛を今日まで行っていた。
中央暦1640年5月14日 午前8時10分
大日本帝国 帝都東京 首相官邸
山内「(今まで事態を静観していたNOCF軍が話をしたいとは…一体何を企んでいる…?)」
異界の太陽が発する太陽光が窓から差し込んでいる廊下を早足で歩く山内。
この世界に転移してからロウリア王国攻撃作戦やフェン王国救援作戦、そしてパーパルディア戦争と多種多様な出来事が発生したが、それにNOCF軍は介入せず静観を決め込んでいた。
だが、魔王ノスグーラとかいう魔獣の軍団が友邦国であるトーパ王国に侵攻したという情報が自身の耳に入った直後、まるで事態を予測していたかのようにNOCF軍より『トーパ王国への魔王軍侵攻について会談の場を設けたい』との電報が届いた。
何か妙なことを企んでいるのでは?と考えている内に、山内はある会議室の前に到着した。
服装を整えドアノブを捻って部屋の中に入ると、そこには黒のスーツで身を包んだ欧米人2人と米軍及び独軍の将校服を着た欧米人2人が席に座っている。
「お待ちしておりましたMr.ヤマウチ。お会いできて嬉しいです。」
席から立ち上がり、山内の元へ歩み寄って握手を求めるは駐日アメリカ合衆国大使の『ローガン・マーティン』
1931年9月の満州事変以降、関係が冷え切っていた日米の関係修復に尽力した著名な人物であり、彼が居なければ日米関係は更に悪化の一途を辿っていただろうと言われている。
山内「こちらこそお会いできて嬉しいです。マーティン大使」
堅い握手を交わし、挨拶の言葉を述べながら山内はマーティンの背後に立っている残り3人の欧米人に視線を通す。
駐日ドイツ国大使
『アルベルト・フォン・クメッツ』
在日ドイツ国特命全権大使であり、その優れた外交手腕からヴェルサイユ条約の項目緩和、英独同盟締結などの功績を残し、総統アドルフ・ヒトラーから高い信頼を置かれている人物である。
NOCF軍総司令官
『チェスター・ニミッツ中将』
アメリカ合衆国海軍の中将であり、また米海軍きっての親日家でもある。思いやりの深い、人間心理を極め謙虚に充ち溢れた彼の人物像は米国のみならず日本でも好意的に受けとめられている。中将への昇進後は、本人の希望もあってNOCF軍の二代目総司令官に就任した。
第3装甲擲弾兵師団長
『ヨハネス・シュルツ少将』
ドイツ国防軍第3装甲擲弾兵師団長である彼は、1939年9月1日のソ連軍によるポーランド侵攻にてポーランドを支援する『ピャスト軍団』に参加し、自身が指揮する"ショルツ戦闘団"を駆使してソビエト赤軍に多大な損害を与えて侵攻を遅らせ、ポーランド人の国外一斉脱出に貢献した名将である。また、日本陸軍の機動歩兵連隊の創設に携わっていることでも知られている。
3人とも、地球では名の知れた外交官及び軍人であった。山内は彼らとも軽い挨拶を交わすと、同伴の外務省職員と共に用意されていた席に腰掛ける。
山内「さて、あなた方が私を呼んだ理由であるトーパ王国に侵攻する魔王軍について話をしたいとのことですが―まず、何処でその情報を知ったのかお聞きしても?」
マーティン「えぇ、簡単なことです。我々は共産主義国へ対抗するため数多くの諜報員を用意しておりました。そして、転移に巻き込まれた諜報員の誰かが偶然情報を知ったのですよ。それにトーパ王国の東に位置する―グラメウス大陸でしたかな?あの地域は誰も住んでいない"未開の地"―いや、新天地であると。」
山内「…いったい何を仰りたいのですか?」
マーティン「おっと、回りくどい話でしたね。単純に言いますと―貴国が立案しているトーパ王国救援作戦を我々とNOCF軍に任せて頂きたいのです。」
山内「…なるほど、そういうことですか。」
衝撃的な言葉だったが、以前よりNOCF軍が妙な動きをしていると軍及び外務省お抱えの諜報員から情報が入ってきていたため、冷静に受け止める。
マーティン「少し驚くとは思ったのですが…まぁいいでしょう。貴国が異世界に転移するという理解し難い超常現象によって、我々のように"祖国"を失った者達が発生しました。それも何十万、何百万という大勢がです。」
真剣な表情で話を進めるマーティン大使。
マーティン「現在、この国には200万人の合衆国国民を含めておよそ1600万人の外国人が居ます。彼らは愛する祖国と家族を突然失い、二度と故郷へ帰れないことに悲観に暮れました。仕舞いには自ら命を断つ者まで現れてしまっております。」
山内「!遂に自殺者まで出てしまったのですか…」
初めて知った話に驚きつつ、亡くなった人に哀悼の意を示す。元の世界と切り離されてしまい、祖国と家族を失った外国人達の気持ちは痛いほど共感できる。
クメッツ「祖国が消えてしまった今、我々が身を寄せることができる新たな祖国が必要なのです。ヤマウチ首相。トーパ王国救援作戦を我々に任せて頂けませんか?」
山内「……たとえ、あなた方がグラメウス大陸に国を建国しても建物の建築にインフラの整備、資源の輸出入はどうするのですか?それにNOCF軍はアベーラ合衆国との通商路護衛を担っております。私は臣民を代表する者でありますから、そう簡単に要求を受け入れる訳にはいかないのです。」
ショルツ「ですがヤマウチ首相。この提案は貴国にとっても悪くない話だと私は思います。NOCF軍に加えて、我々第3装甲擲弾兵師団及び米軍2個師団の維持費はかつて地球で世界第三位の経済力を誇った貴国でも無視できないはずです。」
山内「っ…確かにそうですが…」
ショルツ少将の話にも一理ある。
転移に巻き込まれたNOCF軍はほんの一部とはいえ空母2隻、戦艦6隻、巡洋戦艦2隻、重巡2隻、軽巡8隻、駆逐艦22隻、潜水艦9隻の計51隻。そこに米陸軍2個歩兵師団及び独陸軍1個装甲擲弾兵師団を含めるとかなりの規模であった。そして兵士達の食事や居住施設に、戦車や航空機、艦艇の弾薬・燃料の整備及び補給はもちろん大日本帝国が全て行っている。
これらは国の経済運営の大きな負担となっており、議会や国民からも早急な解決を求められていた。
マーティン「もちろん無条件とは言いません。要件を受け入れてくれれば、日本国内に展開している欧米企業の工場を提供するよう彼らを説得してみせましょう。」
山内「…!それは本当ですか?」
思わぬ話に山内は思わず驚いてしまう。
1927年から1931年まで行われた国共内戦に勝利した中国共産党が主導権を握ったことによって撤退を余儀なくされた欧米企業。だが彼らが次に目をつけたのが欧米の技術や製品を取り入れ始めた日本市場であった。独逸のホンシェルや米国のジェネラル・モータースといった大企業は中国法人に充てる予定だった資金を使用して日本法人を大幅拡張し、日本各地には欧米系企業の工場群が立ち並んでいた。
そして、増強される日本陸海軍の兵器・武器製造や第三及び第二文明圏への工業品輸出に今ある工場の数では手一杯になっており、国内向けの製品製造が後手に回ってしまっていたため欧米企業の工場を買収することを計画していたが、それらを代表する者が反対の姿勢を採ったことで計画は暗礁に乗り上げてしまった。だが、実質アメリカ合衆国代表となっているマーティン大使が相手なら代表者も頭を縦に振ってくれるだろう。話は非常に好条件であった。
ニミッツ「さらにはB-29のライセンス生産にも全面的に協力し、もし貴国が他国と戦争状態に突入したならば共同で対処する相互安全保障条約の締結も準備しています。ヤマウチ首相、帰るべき場所が必要な全将兵を代表して要件の受け入れを何卒お願い致します」
席を立ち上がり、深く頭を下げて懇願するニミッツ中将。その姿勢はアメリカ人というより日本人らしく、同伴の外務省職員は初めて目にするニミッツのその姿に驚きを隠せないでいた。
山内「……分かりました。今回のトーパ王国救援作戦はあなた方に任せましょう。ただし我が国の面子がありますので、陸軍の一部隊を作戦に参加させて頂きます。」
数秒考えた後、要求を条件付きで受け入れることをマーティン大使らに伝える。
マーティン「では交渉は成立ですね。この異世界でも貴国と合衆国がこれからも良い関係を築いていけることを願っております。それでは私共々はこれで失礼します。」
そう告げたマーティン大使ら4人は席を立ち、部屋を立ち去っていくのであった。
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数時間後
千島列島 択捉島
東京より交渉成功の報を受け取ったNOCF軍は早速動き出す。
基地がある単冠湾に停泊していた42隻の艦艇は錨を上げ、米戦艦『ワシントン』を先頭に独仏豪の戦艦・巡洋戦艦が単縦陣で航行し、更にその後ろを米空母『キアサージ』及び独空母『ペーター・シュトラッサー』と各国補助艦艇が追従する。
「全艦出港完了。空母キアサージとシュトラッサーが単縦陣より離れ増速します。」
キャラハン「うむ。本艦も第2戦速に増速だ。」
「駆逐艦ニコラス及びスタンリー、独駆逐艦2隻が前方警戒のため増速。本艦の前に出ます。」
キャラハン「今日はかなり海が荒れている。ニコラスとスタンリー、そして独駆逐艦との衝突に注意せよ。」
NOCF軍臨時旗艦となった『ワシントン』の羅針艦橋上のデッキで部下からの報告を受け取るとワシントン艦長のウィリアム・M・キャラハン大佐は指示を飛ばす。42隻もの艦艇が一斉に動くため、衝突事故が発生しないよう最大限集中し指揮を執る。
しばらくして、艦隊は空母及び戦艦、巡洋戦艦を中心にそれを巡洋艦と駆逐艦が取り囲む輪形陣への移行を完了した。
未経験での大規模な艦隊指揮であったが無事に終わり、艦橋内の艦長席に座ると一息つく。
「艦長。昼食をまだ食べていないと聞いたので、サンドイッチとコーヒーをお持ちしました。」
キャラハン「ん、あぁ頂こう。」
軽い昼食が載せられた皿を受け取ると、早速一口かぶり付く。
サンドイッチはハムとレタスが挟まれマヨネーズがかけられた簡単な物だったが非常に美味しい。コーヒーは特有の苦味があるがミルクのおかげでほんのり甘く、朝から続く眠気を覚ましてくれる。
「それにしても日本政府はよく我々の要求を受け入れてくれましたね。自分はてっきり断られるかと思っていました。」
キャラハン「あちらにも何かしらの事情があったのだろう。まぁとにかく、この世界で我々の拠り所を創る道の一歩目を踏み出せたということだ。…それにしても先程から不安そうな表情を浮かべているが、何か心配事か?」
「ッ…はい…現地住民からすれば我々は余所者ですから歓迎されないのではと…」
キャラハン「なに、アメリカ大陸を発見したコロンブスは現地住民に歓迎されている。心配せずとも大丈夫だ。」
そう部下を励ますが、内心自身も少し心配していた。
この世界は未知の物で溢れていおり地球の常識が通じないため何が起きるか分からない。
だが作戦は既に始まっており、くよくよしていては任務の達成はできない。世界最大最強のアメリカ軍の一員としての責務を再度認識し、任務達成の意志を固めるのであった。
以下は、日本軍及びNOCF軍共同のトーパ王国派遣部隊の編成表である。
<NOCF軍> 大日本帝国 択捉島発
旗艦∶戦艦『ワシントン』
臨時艦隊司令∶ウィリアム・M・キャラハン大佐
米海軍
空母『キアサージ』
戦艦『ワシントン』『インディアナ』
重巡『セントポール』
軽巡『ビロクシー』『モービル』『フリント』
駆逐『ニコラス』『スタンリー』
『プリングル』『レンショー』
『オールト』『ソーレイ』『コンプトン』
『ブルー』
独海軍
空母『ペーター・シュトラッサー』
戦艦『ウルリヒ・フォン・フッテン』
巡戦『シャルンホルスト』『グナイゼナウ』
軽巡『ライプツィヒ』
駆逐『Z25』『Z26』『Z46』『Z47』
仏海軍
戦艦『ガスコーニュ』
重巡『コルベール』
軽巡『ラ・ガリソニエール』
駆逐『ケルサン』『ル・トリオンファン』
『ル・マラン』
蘭海軍
軽巡『トロンプ』『デ・ロイテル』
駆逐『コルノテール』『ヴァン・ネス』
『チェリク・ヒッデス』
『イサーク・スウェールズ』
豪海軍
戦艦『オーストラリア』『キャンベラ』
軽巡『パース』
駆逐『クェイル』『キブロン』
『クイックマッチ』
<輸送部隊> パーパルディア共和国 デュロ発
護衛隊
軽巡『酒匂』
駆逐『巻波』『高波』『大波』『清波』
水上機母艦『千歳』
輸送隊
輸送船『八幡丸』『第4旭丸』『第8黒川丸』
『あるぜんちな丸』『第2大和丸』
『第3赤城山丸』『かりふぉるにあ丸』
『第2富士山丸』
戦車揚陸艦『第54号』『第55号』『第67号』
『第69号』『第71号』『第72号』
油槽船『日栄丸』『国洋丸』
<陸上兵力>
米陸軍
第23歩兵師団(人員∶1800人)
・第58歩兵連隊
・第89歩兵連隊
・師団砲兵司令部
・第102武器整備中隊
・第25補給中隊
第25歩兵師団(人員∶2160人)
・第20歩兵連隊
・第49歩兵連隊
・師団砲兵司令部
・第8工兵大隊
・独立戦車駆逐大隊(戦車駆逐車×36輌)
独陸軍
第3装甲擲弾兵師団(人員∶3450人)
・第7装甲連隊(戦車×39輌)
・第72装甲擲弾兵連隊
・第102装甲砲兵連隊
・第509装甲工兵大隊
日本陸軍(人員∶2500人)
戦車第五師団
・戦車第十旅団第19連隊(戦車×52輌)
・機動歩兵第四連隊
これら祖国建国の足がかりを担うNOCF軍と陸上部隊を乗せた輸送部隊は、目的地であるトーパ王国に向けて針路を北へと取るのであった。
to be Continued
311系さんから☆10を頂きました!!高評価ありがとうございます!!
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それではグッバイ
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