強化された大日本帝国召喚   作:89式小銃

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どうもお久しぶりです89式小銃です。

他の作品に執筆時間を割いていたこともあり、前回から1ヶ月以上の期間が経過してしまいましたが何とか投稿できたことに一先ず安堵です。
さて、次回以降は対グラ・バルカス帝国編へと突入し、自分としては描写が割と楽な近代戦闘となるので投稿頻度は多少改善すると思われます。

決して失脚は致しませんので、完結までよろしくお願い致します。

それではどうぞ


第60話 魔王討伐作戦③

 

 

翌日 昼間

 

ミナイサ地区 領主の館

 

 

そこには、魔王軍に食料として捕らわれた人々が収容されていた。当初は600人を数える大人数だったが、餌として数十人が毎日連れていかれ今では200人を下回っている。

 

エレイ「(怖い……誰か…早く助けに来て…)」

 

その中の1人の女性エルフ―エレイは恐怖に身を震わせていた。

彼女はここミナイサ地区で飯屋の看板娘として働いていたが、運悪く逃げ遅れたところを魔王軍に捕らえられ、食料として保管されていた。

 

生きたまま調理される人の断末魔…それを見て大笑いする魔物…そこはまるでこの世の生き地獄であった。

 

「大丈夫かいエレイちゃん?店から食べ物を少し持ってきたから、これを食べると良いよ」

 

震えていたエレイを見かねた店長が心配しながら彼女の傍にしゃがみ込む。そして手に持っていた袋から少しばかりの食料を取り出しエレイに手渡す。

 

エレイ「あ、ありがとう御座います…」

 

「まだ希望を捨ててはいけないよ。きっと王国軍の兵隊達が助けに来てくれるから、それまでもう少しの辛抱だ」

 

そう励ましてくれるが、エレイは半ば希望を捨てかけていた。

何度か王国軍の騎士達が助けに来てくれたが、その都度広場と城門を結ぶ大通りに立っているレッドオーガにあっさりと倒されてしまい、王国軍でもダメならもう助かる術は殆ど無い。

 

エレイ「(ガイ君…モア様…二人は無事なのかな…?)」

 

 

ガチャ ギィィィ…

 

 

突然の施錠音に部屋の中に居た者たちは怯え始め、軋み音を鳴らしながら扉が開いていくと、数体のゴブリンが現れ中に入ってくる。

 

『出荷の時間だどぉ〜ええと、今日の肉は…』

 

各種族を見ながら、我らが主に献上するメニューの選別を始める。

 

『今日、魔王様はあっさりとしたものが良いと言っていたな。野菜をメインにして―』

 

その言葉を聞き皆に安堵の雰囲気が流れた。だが、次に発せられた言葉にエレイは絶望し酷く怯える。

 

『味付けにエルフの女を使おう。おばえ来い』

 

エレイ「い、いやぁ!!離してっ!!」

 

「彼女を離せこの魔物が!!」

 

右腕を掴まれたエレイは必死に抵抗し、それを見た店長がゴブリンに向かって飛び掛かるが棍棒で頭部を殴られ、うめき声を上げながらそのまま床に倒れる。

 

エレイ「(あぁ…もうダメなのかな…ガイ君…モア様…もう一度会いたかったな…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中隊本部、こちら菊。目標の建物を視認、なお敵の防御兵力として赤鬼1、豚8、小鬼25。終わり送れ」

 

広場に面するとある家屋の中―そこには日米独の混成斥候小隊が潜んでおり、緒方の状況を観察していた。

彼らは広場に堂々と立つレッドオーガをキルゾーンまでおびき寄せる任を帯びており、また一般人救出のため上水道を通じて広場まで向かって来ている日ト合同の別働隊の侵入を助ける役目もある。

 

「あれがレッドオーガか、思ったよりもデカいな。」

 

「日本人は奴をアカオニと言うらしいな。となると、俺達はデビルハンター御一行という訳か」

 

「ハハッ、ちげえねぇ」

 

暇を持て余しているアメリカの兵士達は、軽いジョークを交えた話で作戦開始時間まで暇をつぶしていた。

 

「相変わらずアメさんはお喋り好きですね。彼らの話し声で奴らにバレないかと常にヒヤヒヤしていますよ。ですがその方が逆に安心感があるといいますか…」

 

「まぁそうだが…なんだか調子を崩されてしまうな」

 

普通なら、戦場でしかも作戦中におふざけをするとはなんたることかと叱責されるのだが、ユーモアのあるアメリカ人はそんなことお構いないである。

 

「…時間だ。これより作戦の第1段階を開始する」

 

小隊長の声に全員が気持ちを切り替え、銃を広場に向けて構える。

銃口の先にある魔物の群れは未だ時間達の存在に気づいておらず、敵陣のど真ん中で警戒を疎かにしているその様子には呆れしか出てこない。まぁ、攻撃する側としては安全で良いのだが。

 

「――射撃開始!!」

 

ダララララララッ!!!!

 

小隊の装備している2丁のMG42汎用機関銃がノコギリのような軽快なリズムを周囲一帯に響かせ、広場の魔物の群れに毎分1200〜1500発の弾幕の洗礼を浴びせる。

 

人間より体格の小さいゴブリンは日本製30-06スプリングフィールド改良弾によって身体を真っ二つにされ、オークも風通しのいい風穴が複数空き、臓物を露わにして地に倒れていく。

 

「HaHaHaHa!!弾幕はパワーだぜ!!弾幕は全てを解決する!!」

 

初めて撃つMG42に影響され、脳汁ドバドバのトリガーハッピー状態となったアメリカ兵が銃声に負けない声で騒ぎ立てる。

それも相まって、斥候小隊を視認したレッドオーガが大きく咆哮を上げ、こちらに向かって動き始める。

 

「撤収ッ!!」

 

頃合いを見て部隊は射撃を停止すると一目散に家屋を飛び出し、大阪の路地裏のような暗く狭い通路を右往左往へと駆ける。

 

しばらくして、部隊の面々は一本の路地裏へと滑り込むようにして入りキルゾーンへと到着する。

 

『小賢しい人間どもめ!どこまで逃げるつもりだ!?』

 

彼らの意図に気づくことなく、まんまと罠の方へレッドオーガは進み続ける。

 

そして……

 

「今だ!!手榴弾投擲!!」

 

合図と共に建物から外に向かって数個の手榴弾が投げ込まれ、僅かな時間を置いて起爆すると爆風と破片、音がレッドオーガの行足を止める。

 

そして、間髪入れずに待機していた攻撃班がパンツァーシュレックの砲口を目標に向けると、瞬時に撃鉄を引きロケット弾を発射―

 

ボンッ!

 

ドガァァァァン!!

 

放たれた8発のHEATロケット弾は全て命中し、レッドオーガの姿は黒い爆煙で見えなくなる。

命中角90度で230mmの均質圧延鋼板を貫通する性能を持つHEATロケット弾に耐えれる生物はいないと全員が勝ちを確信していた次の瞬間、黒煙の中から現れたレッドオーガの姿に思わず息を呑んだ。

 

「穿甲榴弾を耐えただと…!?」

 

なんと奴は生きていたのだ。

身体の所々が黒く煤んでおり重篤な火傷を負ってはいたが、動くことには支障無いのが誰からも見て取れた。

 

『グウッ…いったい何が…』

 

攻撃された本人も自身が生きていることに困惑していた。

HEATロケット弾の命中時、網目のような針金状の体毛と内側の戦車級に厚い皮膚が擬似的な空間装甲として機能し、モンロー/ノイマン効果を無効化したのが攻撃を防げだ理由であった。

 

「て、撤退ッ!!城門前まで一時撤退!!」

 

対戦車ロケット弾発射器を再度装填していては、その隙に立ち直った奴に攻撃されてしまう。

作戦の第二段階が失敗した場合の万が一の予備として立案された作戦第三段階に移るべく、未だに怯んでいるレッドオーガを背に小隊は慌ただしく駆け出す。

 

『人間どもが、虫のようにちょこまかと…!!殺す!!殺す!!』

 

攻撃から立ち直ったレッドオーガは、撤退する小隊の後ろ姿を見るやいなや地面を大きく蹴り上げ、その図体からは想像できない速さで物凄い剣幕をしながら小隊を追いかける。

 

「Shit!!猛スピードで向かってくるぞ!!」

 

「こちら菊!!作戦第二段階は失敗!!現在、そちらに向け撤退中!!支援を求む!!送れ!!」

 

 

    ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

その頃、戦車第十旅団第19連隊のパンターG型14輌が砲口を城門前に向けて待機しており、その中の指揮戦車型に搭乗する戸狩は混成斥候小隊からの通信を受け取ると部隊へ即座に指示を送る。

 

戸狩「中隊各車へ。作戦第二段階が失敗したため、これより我が中隊が赤鬼を迎え撃つ」

 

「「「了解」」」

 

中隊の各車輌から了承が帰ってくる。

 

戸狩「射撃準備。弾種、徹甲弾」

 

無線の咽頭マイクを介して指示を送り、城門前に現れるレッドオーガを待つ。

 

しばらくして、城門より息を切らしながら走る小隊の姿が見え、続いて身体の所々に酷く火傷を負いながらも棍棒を振り回すレッドオーガが現れた。

 

そして、城門を潜った自身の眼の前にある存在にレッドオーガは思わず立ち止まる。

 

『なッ!?ば、ばかなッ!?鋼鉄の地竜だと!?』

 

硬い鉄で出来た角張った躯に、上部の箱から伸びる魔導砲――その姿は、かつて自分達をグラメウス大陸に追いやった太陽神の使いもといジエイタイと呼ばれる者達が操っていた鋼鉄の地竜に違いなかった。

 

あらゆる生物を凌駕する速さで野原を駆け、どんな攻撃も当然の如く弾き返し、百発百中の魔導砲で魔王軍団を蹂躙した悪魔のような存在…

 

『や、奴らだ…太陽神の使い…』

 

それから放たれる冷たい殺気に怖気づき、恐怖のあまり目から涙を零す。

 

戸狩「―撃て」

 

次の瞬間、パンターG型14輌が一斉に射撃を開始。100mの超至近距離で放たれた14発の三式徹甲弾は弾速を緩めることなく全弾がレッドオーガに命中。針金のような体毛を削り、そのまま厚い皮膚を射貫すると砲弾が内部で爆発し、身体は上下に両断され上半身は文字通り空中へと高く吹き飛んだ。

 

ブルーオーガと同じくレッドオーガもまた、NOCF軍に手も足も出ず、大昔に散った同類と同じようにいとも容易く討伐されたのであった。

 

 

 

 

   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

一方、人質が閉じ込められている領主の館でも動きがあった。

 

ガイ「邪魔だ魔物ども!!」

 

モア「ガイ、あまり1人で先走るな」

 

静観だった広場は、人質救助を行う別働隊と生き残っていた魔物によって熾烈な戦いが繰り広げられていた。近接戦闘を得意とするガイとモアは、NOCF軍より前に出て極度に磨かれた剣術をもってして魔物を次々と斬り倒し、それは鬼神のごとく大活躍であった。

 

ガイ「(待ってろよエレイ…今助けに行くからな!)」

 

脳裏に浮かぶ幼馴染の姿―

作逃げおおせてきた人からエレイが魔王軍に捕まったことを聞いたガイは気が気でなくなり、作戦中も誰よりも率先して魔物を殺していた。

 

あらかた魔物を片付けると、捕らえられた者が収容されている領主の館へと誰よりも真っ先に向かい、入り口の木製の扉を勢いよく蹴破る。

 

ガイ「エレイ!!」

 

捕まった人々が扉を蹴破ってきたガイに戸惑いの視線を見せるその奥に、彼女の姿はあった。数体のゴブリンに服を破かれ裸体を晒し、家畜のように木の棒に両手両足を縛られているエレイを見て、ガイは怒る。

 

ガイ「彼女を離しやがれクソ魔物ども!!」

 

怒りの雄叫びを上げながら剣を振り上げるとそのままゴブリンの一体を両断し、流れるような動きで残りの個体も最初の一体と同様の姿にする。たった数秒で数体のゴブリンを討伐したガイは、肩を大きく上下させ息が上がり苦しかったものの、そんなことお構いないにエレイの元に近寄ると彼女を縛っていた縄を斬り捨てる。

 

ガイ「エレイ!おいエレイ!!しっかりしろ!!」

 

エレイ「が、ガイ君…?助けに来てくれたの?」

 

ガイ「言っただろお前の身に何かあれば一番に駆けつけてやるって!!…そ、それにお前のことまだ好きだしな」

 

エレイ「ガ、ガイ君…///」

 

いつの間にか場は良さげな雰囲気になり、3年前に玉砕したガイも期待が高まる。そこにモアが現れ、裸のエレイにそっと自身のマントをかける。

 

モア「ケガはありませんか?」

 

エレイ「は、はい!(何も言わずマントをかけてくれて耳元で囁かれちゃった…♪相変わらず素敵な方だわ…♪)」

 

ガイ「?エレイ、頬が赤くなっているぞ?」

 

エレイ「そ、そう?熱でもあるのかな〜?」

 

ガイ「??」

 

三人の様子を見ていた恋愛にうるさい米兵達がOh my godを何度も繰り返し、ガイに哀れみの視線を送る。

 

ガイ「この辺りの魔物はあらかた片付けたが、まだ残党が残っているかもしれない。エレイは他の人達の一緒に避難を…ッ!?な、なんだこの、背筋も凍るような殺気は…!?」

 

モア「…どうやら魔王軍の首領が直接出向いてきたようだ」

 

剣を構えそう語るモアの目線の先には、空中に浮かぶ粒程の黒い黒点があった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノスグーラ『食事が運ばれぬから何事かと様子を見に来たが、下種どもの分際で我に楯突く輩が居るとはな』

 

赤竜の玉座を立ち上がると空中へと浮かび上がったノスグーラは、広場に立ち尽くすモア達を見下すようにして話し始める。

魔王ノスグーラの体からはドス黒い膨大な魔力が溢れ出ており、トーパ王国の兵士や民衆でも目視可能な魔力量に恐怖と衝撃を感じさせる。

 

ノスグーラ『完全な生物である我に敵う者など、この世界に存在しない。愚かにも楯突いたことを後悔しながら死んでいくのだな』

 

そう告げると、か細い声で詠唱を始める。

 

ノスグーラ『生と死の傍らで誓いの言葉を示す、胎動せよ主を殺す者、黙すなかれ狂気に笑え、万物の理はすでに暴かれた――出でよエンシェントカイザーゴーレム!!』

 

ゴゴゴゴゴゴゴッ…

 

地響きのような轟音が鳴り始まると、大地が盛り上がり大きな岩の塊が現れ、やがてその岩塊が人の形をなし巨大なゴーレムとなる。

 

「エ、エンシェントカイザーゴーレムだと…!?」

 

「あぁ…もう終わりだ…」

 

「魔王ノスグーラにエンシェントカイザーゴーレム、そして赤竜…どうやって奴らに勝つというのだ…」

 

通常のゴーレムの何倍…いや何十倍はあろう大きさと重量のゴーレムが、伝説の赤竜と死の軍団と共にドスドスと迫ってくる光景に、トーパ王国の兵士達は絶望する。

 

「どうやら我々の出番のようだな」

 

絶望的状況の中、黒いローブを纏い黄金の金環をいただく10人の集団が城壁に上がる。

その者達は"王宮戦闘魔導隊"と呼ばれ、太陽神の使いと共に戦った古の勇者を凌駕する魔導の使い手。トーパ王国の切り札である彼らは魔王軍に視線を向けると、そのまま詠唱を開始する。

 

「大海より出でしその姿は虚ろ、岩より重く月より軽い、声なき声が大樹を穿つ、貪食の翁に供物を捧げよ、花嫁は英雄を産むだろう――ライトニングテンペスト!!」

 

すると雷を伴った巨大な竜巻が魔王ノスグーラとエンシェントカイザーゴーレム、赤竜のいる場所に複数発生し、数多もの小型の魔物を巻き上げる。

 

「「「「オォォォォォ!!!!」」」」

 

トーパ王国の兵達が歓声をあげる。

 

勝ったとそう思っていた矢先、収まった竜巻の中から現れた全く無傷の3体の姿に再び絶望する。

 

ノスグーラ『こんなもので我を倒せると思っていたのか下種め。お前達に今から本当の魔法というものを見せてやろう』

 

王宮戦闘魔導隊の放った魔法を嘲笑うと、魔力を使い果たし肩で息をしている彼らに向けて手をかざす。

 

ノスグーラ『詩を紡ぎ、静寂を迎えよ。汝、福音をもたらす時、灰燼は土に舞う。極彩食いて彩落とすべし、照らせ我が使者、空の彼方はまだ暗い。ダークフェニッ――』

 

ドォォォォッ!!

 

ドォォォォッ!!

 

突然、ノスグーラの詠唱を邪魔するかのようにゴブリンとオークの軍団に幾つもの爆発が発生し、数百匹が血肉と化する。

 

ノスグーラ『爆発?詠唱を邪魔するのはどこの下種―』

 

そう言いかけた瞬間、近くの森から続々と現れたその正体に驚愕する。

 

ノスグーラ『あ、あれはまさか!!た、た、太陽神の使いだとぉぉぉぉ!?』

 

見間違う訳がない。形こそ違うが、キュラキュラと異音を鳴らしながらこちらに魔導砲を向けるやつこそ、かつて大昔の戦いで魔王軍を殲滅した鉄龍だった。

 

ノスグーラ『おのれ人間ども!!どおりでレッドオーガとブルーオーガがやられた訳だ!!太陽神の使いを再度召喚していたとは!!エンシェントカイザーゴーレム!!奴らを踏み潰せ!!』

 

 

 

       ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

戸狩「全車射撃開始。目標、敵地上部隊。繰り返す、全車射撃開始」

 

ドォォン!!

 

ドォォン!!

 

ドォォン!!

 

ドォォン!!

 

自軍のパンターG型39輌、独軍の新型戦車13輌及びパンターⅡ26輌、米軍のM18"ヘルキャット"36輌―計114輌の混成戦車部隊は、戸狩の指令に待ってましたと言わんばかりに続々と射撃を開始。

自走砲フンメル6門とヴェスペ12門、そして米軍の師団砲兵司令部傘下の2個砲兵大隊で編成される混成砲兵部隊の支援砲撃によって混乱する魔王軍に放たれた百発以上の榴弾は、爆圧と爆風でゴブリンやオークの内臓を破壊し、砲弾片で体をズタズタに切り裂く。そこにさらなる支援砲撃が加わり、魔物ごと地面を耕す。

 

数分間に渡った一連の破壊的な攻撃を運良く生き残った一部の魔物が戦車隊に向かって突撃するが、装甲兵員輸送車やそれに便乗する歩兵の十字砲火によってことごとく粉砕され、野原は血と肉塊の海と化した。

 

「こちら3号車、主目標群に動きあり!岩人形が接近中!距離1700!」

 

僚車からの通信を受け、戸狩は車長ハッチを開けると顔を少し覗かせる。

 

通信内容の通り、ゴーレムが地響きを鳴らしながらこちらに向かって遅い速度で向かってきていた。

 

戸狩「目標変更、全車岩人形に攻撃を集中せよ」

 

いくら戦車といえど、あんなものの攻撃を受けてはひとたまりもない。大隊各車は戦車砲の仰角を最大まで上げ、頭部や胴体を集中して攻撃する。だがそれは相手の表面を軽く削るに留まる。

 

『こちら4号車!目標に損傷なし!!繰り返す!目標に損傷なし!!』

 

目標との距離が1500mあるとはいえ、パンターG型の搭載する70口径75mm KwK42戦車砲はその距離で100mm近い装甲貫通力を有する。しかし、度重なる満ソ国境での小競り合いでソ連戦車に猛威を振るった75mm砲では、ゴーレムには有効打と成り得なかった。

 

「連隊長!トーパ王国軍騎士のモアによると、奴の弱点は胴体の中心にある動力コアの模様!そこを狙えば崩壊するそうです!」

 

戸狩「よし。全車、目標の胸部中心を集中的に攻撃せよ」

 

通信手づてでモアの助言を聞いた戸狩は即座に指示を送り、ゴーレムの胸部中心に攻撃を集中させるがそれでも砲弾が硬い岩盤に阻まれてしまう。

 

戸狩「やはり75mm砲では限界か……」

 

しばらく考えた後、独軍戦車隊の指揮官に通信を繋ぐ。

 

戸狩「こちら戸狩。貴隊の新型戦車で奴を倒すことはできるか?」

 

『パンターの75mmが効かないとなると少々不安ですが…やって見ましょう』

 

戸狩「あぁ、頼んだ」

 

通信を終えると、独軍戦車隊から1個戦車小隊13輌が分離し、進出する。

 

「あれが独逸の新型戦車ですか。中々変わった見た目をしていますね」

 

照準鏡を覗いていた砲手が呟く。

 

砲塔・車体共に全体的に傾斜と丸みを帯びた構造をしており、従来の戦車とは一線を画す先進的な設計を伺わせる。

 

"レオパルト戦車"

ドイツ国防軍の次世代新型中戦車として1944年末に開発が完了したばかりの40トン級中戦車である。パンターと同等の装甲に、既存の戦車を上回る高い機動力、そして主砲に10.5 cm FlaK 38を軽量・高初速化した10.5cm KwK 38 L/48を搭載。新型砲弾のAPDS弾であるPzgr.41を使用した場合、距離1000mで230mmの均質圧延鋼板を貫徹する当時としては絶大な威力を持つ。

本車と同等の性能を有する戦車は他になく、まさにドイツ国技術の総結晶とも言うべき車輌である。

 

レオパルト小隊は、少しでも攻撃の成功確率を上げるため距離を500mまでに縮めると停車し、ゴーレムの胴体中心部に照準を合わせる。

 

「Feuer!」

 

ドゥゴォォォン!!

 

ドゥゴォォォン!!

 

105mmという大口径砲の射撃の反動を受け止めたため、車体が僅かに後ろへ後退する。

ライフリングを回転したAPDS弾が砲口から飛び出すと装弾筒を切り離し、タングステン合金製の弾頭部は初速時と変わらない速度でゴーレムに真っ直ぐ突き進む。

 

ガリッ バコォォォォォン

 

砲弾はゴーレムの厚い岩石装甲をいとも容易く貫徹し、胴体のコアを破壊するとそのまま背中から飛び出す。エンシェントカイザーゴーレムはガラガラと派手な崩壊音を立てながら崩れていき、瓦礫の山と化した。

 

ノスグーラ『おのれ太陽神の使い!!行く先々まで邪魔をする!!我が直に手を下してやろう!!』

 

その様子を見たノスグーラは怒りが頂点に達し、狂ったように大声を出しながら攻撃しようと魔法の詠唱を始める。

 

戸狩「全部隊全力射撃。目標、魔王。容赦なく叩き潰せ」

 

部隊のありとあらゆる火力がノスグーラに向けられる。

ノスグーラは咄嗟に金色の防壁を張って反撃の機会を伺うが、終わりの見えない攻撃に焦りを見せ始める。

 

ノスグーラ『ぬぐっ…!!我が一方的に押されているだと…!?』

 

足は地に深く埋まり、攻撃が着弾する度に大きく後ろへ押し出される。防壁も光が弱々しくなり、あちこちにヒビが入り始めたその時、直上から自身に急降下してくる飛行機械の姿―そして、その腹から黒光りする爆弾が既に投下されていた。

 

ノスグーラ『お、おのれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』

 

憎悪に満ちた断末魔は爆炎及び爆音によってかき消され、その姿も爆煙の中に沈む。

 

「撃ち方やめ!!撃ち方やめ!!」

 

各所から上がるその命令に次々と射撃が停止していき、辺りを一瞬静寂が包み込む。

 

「…や、やったぞ!魔王ノスグーラを討ち倒したぞ!!」

 

「あぁ!神よ!我が故郷を救って下さり感謝します!!」

 

「万歳!!万歳!!トーパ王国万歳!!日本万歳!!」

 

次第にトルメスから歓喜の声が上がり、未曾有の危機から救ってくれたNOCF軍の将兵達にトーパの民衆が感謝のエールを送っていたその時、突然ノスグーラの頭部が薄い煙の中から浮かびあがり、その衝撃的な光景に現場に居る全員は度肝を抜かれる。

 

ノスグーラ『よく聞け太陽神の使いと下種の面々!!近い内に我が主―魔法帝国様が復活なさる。魔法帝国様の軍勢にお前達はなすすべなく蹂躙され、世界は再び魔法帝国様のものとなるだろう。それまで束の間の平和を享受するのだな。フハハハハッ…!!!!』

 

その遺言は段々と弱くなっていき、最後には石化し塵となって消滅していった。

 

王の死によって、生き残っていた赤竜や他の魔物達は逃げるようにして向こう側のグラメウス大陸へ引き返していく。

 

戸狩「…戦闘停止。全ての部隊は一度トルメスへと帰還し、弾薬及び燃料を補給後、詳細を報告せよ。繰り返す―」

 

部隊に一連の指示を与えるとハッチを開け身を乗り出し、逃げ帰る魔物の群れを眺める。

 

戸狩「(奴の言っていた魔法帝国…どのような国かは分からないが、少なくともマトモな連中ではないだろうな)」

 

その思いに答えるように、寒冷地特有の冷たい風が自身を少し震わせる。

 

こうして、トーパ王国に甚大な被害を撒き散らした魔王ノスグーラとの戦争は終結したのであった。

 

 

 

 

to be Continued…

 





前回から未だに感想返信が遅れていますが、頂いた感想は全て目を通しており必ず返信する予定です。自分のモチベーションアップにもなりますので、ぜひ感想をお待ちしております。

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それではグッバイ

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