紫陽花が咲いている 作:万葉
1話目から捏造があります。
前世の記憶を持ったまま第二の人生を歩んでいるなんて誰が信じるだろうか。それも今や天然記念物と呼ばれるようになった極道で。
前世の記憶を思い出した時は、酷く驚いて泣き、部屋の外にさえ出たがらなかったのを覚えている。漫画でしか知らない世界が広がっているのが怖くて怯えていた。でも慣れというのは恐ろしいもので、少しずつこの世界に適応していった。
まず知ったのが極道のことだ。
このご時世、極道というのは爪弾きにされている。指定敵予備軍、時代遅れ。天然記念物。生きた化石。俺たちを表した名前は数多くある。オールマイトという平和の象徴に極道は摘発、解体され数を減らした。摘発を逃れたもののあまり過激に動けなくなり細々と活動するか衰退していくかの二択だった。死穢八斎會も類に漏れず、衰退していた。
だから、俺が、
それに終止符を打った。
__恐らく見ていられなかったのだ。来る日も来る日も組の在り方で対立する二人。日に日に争いが増し自分の目にも組織内で派閥が出来ているのがわかった。
苦しかった。辛かった。聞きたくないのに聞こえてくる声。何も出来ない無力感。
だから、賭けに出た。ヒーロー達が入り込めないように、政府が介入できないように、じっくりと練ってそして取った。
公共の場でも個性を自由に使用できる特許__団体個性使用特許、これをとった。ヒーロー免許とは似て非なるもので、ヒーロー免許は個人免許。対して、団体個性使用特許は企業或いは法人免許だ。
企業や法人が政府にいちいち個性届けを出さなくてもいいようにと政府が発行した許可証。病院や建設業などに対して用いられている。急患の手当てをしたり、骨組などをクレーンで持ち上げなくても個性を使って持ち上げたりと色々融通が効く。
更にヒーロー免許に比べて、多大な信頼、信用、料金、そして手間がかかり複雑なことだ。一次申請から落ちることもある為保持者はかなり少ない。一時期取らせる気がないと話題にもなったあれだ。
それを俺たちは、偶然…ウチのシマに身を潜めた犯罪者_それも凶悪犯の引き渡しを対価に手に入れたものだ。信頼も信用もないがこれ以上悪事を増やされると世間の目や、民間人の犠牲が増えるということでなんとか取れた。
恐らく所詮は極道と舐められていたこともあり取れたのだろう。
組が所有する土地や息のかかった会社などで野暮が起きた際に誰の目も伺わずに個性を使えると言うのは大変有り難い。少しでも法に触れたら即剥奪だろうがその分リターンが大きい。
…ヒーローの監視の目が増えたがそれを入れてもお釣りが来るほどだ。
__
中学三年生の冬。俺は高校受験の安否に絶望していた。
「終わった…。またこれかよ…」
手に持った書類を再度見て、変わらない文字を見て背中を曲げる。終わったな。
書類に書かれた文字それは、不合格の三文字。またというのも理由があり、机の上に置かれた紙が全てを語っている。
第一志望__不合格。
第二志望__不合格。
第三志望__不合格。
志望校は今のところ全て全落ちである。今のところ合格しているのは滑り止めの高校のみ。中卒でいいやと思ったが、馬鹿だと損しかないのでやめた。
まだ結果を見ていないのは、倍率も偏差値も高い雄英高校ヒーロー科のみ。これは経営科のついでに受けた。記念受験だ。なんと言っても雄英高校ヒーロー科は、偏差値70超えに加えて倍率が300倍とかいうとんでも高校である。受かったらほぼ奇跡。一次の筆記試験は特筆するようなことはないが、実技の二次試験はとても楽しかった。あんなに個性を使えたのはとても久しぶりだ。久しぶりに奮発した。かさりと、手にした封筒を眺める。
(いや、これも絶対落ちたって…)
人生二周目なのにこの有様!やはり馬鹿は救えない。
悟った理由は、合格を知らせる封筒が小さすぎるから。諸先輩方から開けなくても、封筒の厚みなどで安否の判断ができると聞き横から見てみたが。…これはあまりにも小さいし薄い。
意を決して封筒をちぎり中身を取り出す。手にコツンとした感触。紙じゃないのかと思いながらそれを掴んで机に置く。途端光を放ちホログラムが映し出される。映し出されたのは金髪で画風が違う男。俺たちの衰退する原因となった男
『私が投影された!!!』
__オールマイト
何故オールマイトが。まさか、今年なのか。今年が原作軸なのか!?嘘だろ。そんな、そんなの……最高だろう!不祥事に漬け込んで俺たちに有利な条件を提示する。そしたらまた俺たちは栄えていく。
「___よってギリギリ合格!!」
思考の沼から引き上げられる。今なんて言った?俺は合格したのか…?あの雄英高校に?
「ここで待っているよ!!少年!」
受かった…のか。受かった…。受かった!
「受かったッ……!」
グッと拳を握りしめて喜びを噛み潰す。良かった…。受かった。本当に良かった。記念受験してくれてありがとう、過去の俺。よくやった。
感動の余暇に浸り、宙を眺める。暫くすると、余韻が冷めていく。
__報告してくるか。
軽い足取りで襖を開ける。眩しさに目が眩みながらも空を見上げると青い、青い空が広がっていた。
入学おめでとう。
ようこそ。