紫陽花が咲いている   作:万葉

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入学式はない

 

 

 

「駄目だ。親父も何を言ってるんだ……」

「治崎いいじゃねぇか!こいつが行きたい所行けばよ」

「だからってあんな病人共の場所にか」

 

 

死穢八斎會のTOP2の2人が口論しているのを誰が割り込めるだろうか。片や死穢八斎會組長の祖父、片や死穢八斎會若頭の治崎廻。この二人の間に入り込めるやつなんて相当のバカか命知らずだ。もう少し落ち着いた頃に話しかけようと思い、静観する。

事の発端は俺が雄英高校ヒーロー科に合格、入学したい節を祖父に伝えたところ。それを偶然同室していた治崎が反対し今に至っている。

話しかけたら飛び火するのが分かっているので同室している死穢八斎會本部長、若頭補佐などは沈黙を貫いている。あと、俺も。

治崎が反対するのは幾つか理由がある。一つ目は治崎のヒーロー嫌いが理由だ。恩人である祖父を端に追いやったヒーローを治崎はかなり嫌っている。潔癖症の治崎に浮浪者とヒーローどっちが嫌いかと聞いたらヒーローと言うほどだ。ヒーローやヒーロー志望の者をよく英雄症候群に冒された病人と呼んでいる。

 

 

だがずっとこのままだと、話が進まない。俺はなんとしてでも印鑑を押して貰わなくてはならない。意を決して、怖い人ランキング1位に長年君臨する治崎の前に立ち目を合わせる。 

 

「治崎行かせてくれ。面倒事も…なるべくだけど、起こさないし何か決めることがあれば治崎に聞く。独断では動かない。…家のことはいつか知られるだろうけど、大丈夫だから。」

 

そしてもう一つ、恐らくだが組長の娘が原因だ。彼女は家の事を知られ嫌がらせを受けていた。一時期護衛として彼女のそばに居た彼だから知っているのだろう。そして、それが原因で出て行ってしまったことも。血も涙もないように見えて優しい男だ。

 

「…そんなことで俺が頷くとでも思っているのか?」

 

「俺が雄英に入った方が組のためになる。体育祭で優勝したら死穢八斎會の名を高められるし、職場体験でヒーローの情報を集めれる。だから……行かせてください」

 

そう言って頭を下げる。

 

「治崎、いかせてやれ」

 

祖父の言葉を聞いて、さらに深く頭を下げる。

 

「親父…分かった。だが組の名前に泥をぬるなよ」

「はいっ!!ありがとう治崎!直ぐに書類持ってくる!」

 

 

2人の気が変わらないうちに急いで入学書類を取って戻ってくると、治崎から親父を待たせるなという小言が降ってきた。ファザコンはこれだから!

 

 

******************

 

 

庭では桜やハナミズキ、果てにはチューリップが咲き庭を彩っている。

今年もまた春が来た。

 

 

クローゼットから、新品の雄英の制服を取り出す。寝巻を脱ぎ、洗濯用の籠に入れる。真白のシャツのボタンを留め、ズボンを履きベルトを締める。最後にジャケットに手を通し、鏡の前に立つ。

鏡には雄英高校の制服に身を包んだ俺が映し出されている。

…本当に入学したんだな。というのが俺の気持ちだ。今でもドッキリじゃないかと思っている。入学したからにはヒーローになってやる。途中で投げ出すなよ、自分。そう意気込み視線をネクタイに向ける。

昔から首に何かあるのが嫌だった。その為マフラーやタートルネックなど首を覆う物が苦手だ。

自分で調べて結ぼうにも時間が迫っているため、鞄を掴んで部屋を出る。

走らないようにしかし急ぎ足で廊下を進む。

車庫では俺の送迎の準備をしてくれているはずだ。そこで誰か捕まえて結んでもらおう。

廊下ですれ違った人たちに声をかけて、玄関を目指す。

だが、すんなり止められた。

 

「若、ネクタイ」

「玄野」

 

玄野針_死穢八斎會の古株で若頭補佐。面倒見が良く優しい男だ。誰かに結んでもらおうとしていたので、丁度良い。

 

「ネクタイ結んでくれませんか?」

「いいですよ。」

 

持っていたネクタイを玄野に渡す。玄野が手際良く結んでくれるのを観察する。そんな風に結ぶのか。役目を終えた玄野の手が離れていく。ネクタイが俺の首にあたり…少し嫌だ。

 

「もう少し緩めてくれないか?」

「はい」  

 

玄野は再度ネクタイに手を伸ばし緩めてくれた。なんなら位置も調節してくれた。有難い。流石あの治崎の補佐をしているだけある。

 

「ありがとう」

「とんでもないですよ。ほら、時間がないんですから急いでください」

「ああ、いってくる!」

「前を見ないと転びますよ」

 

適当に返事を返して先を急ぐ。オカンかよ、と言おうとしたがやめた。

玄関に差し掛かり、珍しい二人の姿が見え思わず声を出す。

 

「祖父さん?それに治崎?」

 

玄関先では祖父が見送りに来てくれたらしく、手を振ってくれた。

治崎からは親父を待たせるなという視線を感じるが無視する。知らなかったんだから許して欲しい。

 

 

「悪いな、入学式行けなくて。」

「仕事と被ったんだろ?仕方ないよ祖父さん。仕事頑張って!」

「ああ、友達作れると良いな」

「出来たら、家連れてくるから安心してくれ」

 

久しぶりに祖父と他愛無い会話をするのが嬉しくて破顔する。しかし、そんな祖父との会話打ち切るのが治崎だ。

 

「時間だ、とっとと行け」

「はい…。治崎、祖父さんの事頼むよ」

「早く行け」

「ん、行ってきます」

 

 

扉を開けて、振り返る。微笑んでいる祖父と早く行けという顔の治崎。二人を目に入れると、扉を閉めた。二人の顔を思い出し、軽い足取りで車庫まで向かう。

車庫の近くでは天蓋が待機してくれていた。死穢八斎會の常識人と言うのが俺の認識だ。天蓋は俺の部下じゃないから、俺の命令には従わない。けど、ちょっとしたお願いや頼みなら聞いてくれる優しい男だ。いつもの着物ではなくスーツを着ているので、恐らく俺の送迎担当になったのだろう。

 

「天蓋が運転してくれるのか、ありがとう」

「ええ、他は…些か問題がありますので。」

「…アレは確かにな。あ、校門前はやめてくれ。初日から目立ちたくない」

「了解した」

 

他のやつはやばい。何がやばいかって、警察と追いかけっこした経験を生かして司法のぎりぎりを攻めた合法ドライブを披露してくるからだ。反対に天蓋は安全運転をしてくれる素晴らしい人だ。車に乗り込み、ラジオを聞き流す。隣では天蓋が運転している。

ラジオから今日の天気や談笑する声が聞こえてくる。

右から左に流れる景色に、段々と雄英の制服を着た生徒が多くなる。脇道に入ると少しずつスピードが落とされ、道路の脇に駐車した。

 

「この辺りで問題ありませんか?」

「ん、ありがとう」

 

ドアを開けて、小走りで歩行者道路に向かう。

天蓋を見送ろうと、振り返る。しかし、少し経っても走り出さない。不思議に思っていると車の窓が下げられ天蓋と目が合う。

 

「若、少し。」

 

手招きをされて側によると、襟を直された。どうやら曲がっていたらしい。

 

「ん、ありがとう」   

 

「気にする事はない。では、私はこれで」

「ありがとう、気をつけて」

 

小さくなる車にしばらく手を振る。雄英はここから歩いて数分で着く。時間も迫っていないし走らなくてもいいだろう。

桜が舞うのを視界に入れ俺もまた歩き出した。

 

******************

 

事前に通知されたクラスに校内図を片手に教室を探す。廊下と校内図を見比べて迷いながら歩いていく。校内図によると1-Aは確かここを右折したら……ビンゴだ。どうやら合ってたらしく1-Aと描かれたドアを見つけた。ドアの前まで歩いて、止まる。

__俺は組の為にここに来た。全ては組の為。これはその為の布石に過ぎない。

 

目的を再認識しドアに手をかけた。教室に入り、席を探していると眼鏡と目があった…気がする。いや、あった。眼鏡がこちらに近寄り、喋りかけられる。

 

「ぼ…俺は私立聡明中学出身の飯田天哉だ。これからよろしく!」

「…仁路引斥だ。仲良くやろう」

 

差し伸ばされた手を掴み握手をする。こんな人も居るんだなと思い歩き出す。無愛想な俺を気にせず、彼は新しく来た人に話しかける為か去っていった。注がれた視線を気にせず、指定された席に座る。異形型個性の者も居るんだなと、教室を一瞥してざっくり把握する。

特にやる事もないのでスマホを取り出し、時間を潰す。速報を見るとずらりとヒーロー関連の話が出てきて内心ため息を吐く。

 

 

「お友達ごっこしたいなら他所にいけここはヒーロー科だぞ」

 

その言葉に先ほどまで賑やかだった教室が静まりかえる。

スマホから顔を上げて声の主を探す。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

 

担任らしからぬ風貌に驚く。無性髭に伸びた髪の気だるげな教師。こんな人がプロヒーローか…。

 

「早速だがこれ着てグラウンドにでろ」

 

 

言葉の通りに更衣室で体操服に着替えるとグラウンドに集合する。更衣室で何やらはしゃいでいたが輪に入らず黙って着替えていた。ノリが若い。おじさんにはキツいよ。

 

 

「「「「個性把握テスト?」」」」

 

 

皆が先生の言葉をオウム返しする。動揺する俺たちを置いていくように淡々と説明される。入学式に参加している時間なんてないやら、文部科学省の怠慢やらと色々。つまり、人生に一度の高校の入学式はないと言う事だ。

 

 

「実技入試成績のトップは仁路だったな。」

「……」

 

……今初めて知った。後で祖父さんに自慢しよう。

 

 

「中学の時ソフトボール投げ何メートルだった?」

 

「69mです」

「じゃあ個性使ってやってみろ」

 

そう言ってほいと、ボールを渡される。

 

「円から出なきゃ何してもいい。はいよ思いっきりな」

 

 

俺の個性は引力と斥力。引力と斥力の二つを操る個性で、銃弾などの飛び道具に加え、相手そのものも弾けると言う優れものだ。デメリットは使いすぎによる身体の不調。激しい頭痛がする時もあれば、鼻血、吐血など多岐にわたる。

 

(個性を物に使うのは初めてだ。もしかしたら、上手くいかないかもしれないし行くかもしれない。だが、結果はどうあれやってみる価値はある。それに普通に投げるよりかは良いだろう)

 

 

円の中に入り、手袋を取る。俺の個性__斥力を使いボールを弾き飛ばす。

 

「ふん"っ!!」

 

ピ、と計測器がなり数字が表示される。

490.6m

 

 

「おおー!!」

「なにこれ面白そう!」

「個性思いっきり使えんだ、流石ヒーロー科!」

 

ワイワイ楽しそうな声が聞こえるがそれを無視して、球が向かった方向を眺める。もう少し調節すればさらに行けたか?今度練習するか。

 

 

「おもしろそう、か」

 

ボソリと相澤先生が呟く。この教師さっきと目つきが違う。何が琴線に触れた。

 

「ヒーローになる為の三年間。そんな腹づもりで過ごす気でいるのか?よし、8種目トータル成績最下位の者は見込みなしとし、除籍処分としよう」

 

 

「「「はぁあああ!?」」」

 

入学初日で除籍だと…!?本当に何でもありなんだな、雄英っていうのは。ボブヘアの女の子が相澤先生に抗議するが聞き入れられなかった。

 

(対応が手慣れている。恐らくこんな事をしたのは初めてじゃない。…この男本気で除籍する気だ。)

 

相澤のその言葉に酷く動揺する者、そうはならないと余裕の者、そして好戦的に笑みを浮かべる者と多種多様だ。

 

「ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」

 

髪をかき揚げ悪どい笑みを浮かべ、相澤先生はそう言い放った。

そんな楽しそうな先生とは対称に俺は顔を覆って絶望していた。あれは本気だ。初日から除籍なんてされたら治崎に怒られる。確実に。不承不承ながら了承してくれたあの治崎にネチネチぐちぐち言われるのが目に見える。あいつ根に持つからなぁ…。    

 

 

目を強く閉じて開ける。大した意味なんてない、ただ俺の気合いを入れる儀式のようなものだ。

もしもの事は考えるな。もしもをどうやって回避するか考えろ。

今俺にできる事を考えろ。動揺を悟らせるな。表情に出すな。頭を働かせろ。

 

個性把握テストは全部で8種類。ボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。

俺の個性を使って高記録を出せるのは、三つ。いや、四つか。

個性をメインで使うのは立ち幅跳び、50メートル走、反復横跳び。

あとは、個性を使いつつ身体能力でカバーしていく。

 

「そんじゃ、出席番号順でやってくぞ」

 

第一種目_50m走。両手から斥力を使い飛んだ。両手で均等に個性を使うのが難しく少しタイムロスが生じたが記録は上々。

第二種目_握力。これは個性を使うのは無理だと判断し己の筋肉で挑んだ。540キロを叩き出すものがいた。流石は異形型個性だ。

第三種目_立ち幅跳び。50m走での経験をもとに飛んだ。両手から均一に個性を出して終わった。50m走に比べると少し良くなった。

第四種目_反復横跳び。靴の寿命がすり減っていくのを感じながら、斥力を使い俺の体を交互に反発させた。短時間で何度も使うのは流石に難しく個性を使ったわりにはまぁまぁの結果だった。

 

次はボール投げ。

筒がなく終わるかと思ったが、そうも行かなかった。揉めているらしく、話し声が聞こえる。あの緑髪の子__デクさんが無個性であるとかそうでないとか。他の種目で突出した結果を出しているわけではなかったし話の通り本当に無個性なのか、はたまた出し惜しみしているのか。まぁ、俺には関係のない話だ。影に入って休もうと足を進めようとしたその時だった。

デクさんが相澤先生の方を向いて叫んだ。

 

「イレイザー・ヘッド!」

 

その名前に動かそうとした足を止めて振り返る。

クラスの人たちが誰だと言い、周りに聞いているが、返答は知らないの一色だ。…その名前昔聞いたことがある。死穢八斎會の警戒対象リストに名前があったはずだ。

 

「ああ…あのヒーローか」

「知ってるのか?」

「…界隈じゃ有名だ」

 

思わず声が漏れ、短く返す。

イレイザー・ヘッド。見たものの個性を抹消するアングラ系ヒーロー。俺たち日陰者では有名なヒーローだ。ちょくちょく名前が上がる。所有する会社や土地にガサ入れに来て欲しくないヒーロートップ10入りを果たしている。頭がきれ、その厄介な個性から彼がいたらグレーゾーンの取引は中止にした方がいいと言われるほどだ。

そんなヒーローが担任か。参ったな。

恐らくだが、先ほどデクさんの個性を消したのだろう。個性を知っただけでヒーロー名まで行き着くとはデクさん凄いな。イレイザー・ヘッドに何か言われたのかデクさんは俯きぶつぶつと何か言っている。

……覚悟を決めたようにボールを構え、投げる。

 

「SMASH!」

 

ボールが高く遠く飛んでいった。個性を使用したのだろう。

先ほどとは打って変わって、してやったという顔をしている。記録は705.3m。個性を使用した反動か指が腫れ上がっているが、デクさんは笑って相澤先生にまだ動けますと進言している。その姿にか記録にかクラスの皆が彼を称賛するが一人違う意味で飛び出す男が一人。

 

「どう言う事だ、わけを言えクソデクっ!!」

 

手から爆破を生じさせながらデクさんに近寄るが、辿り着く前に相澤先生によって捕縛された。

 

「そう何度も個性使わせるなよ、俺はドライアイなんだ!」

 

 

凄い個性なのに勿体無い。知らず知らずのうちに俺がクラス一同と心が一致した瞬間だった。爆破の彼を落ち着かせると先生は、競技を再開させ何事もなかったかのように進めていく。切り替えが早い。

 

「仁路。お前は既に一回投げているからこれ一回投げて終わりな」

「わかりました」

 

ふぅと一息吐いて、足を半歩引き個性を調節して投げる。

 

「ふんっ…!」

 

 

「499.6m」

 

伸びたな。いい感じだ。円の外に歩き出し手袋をはめる。もう個性は使えないと判断しての事だ。残りの持久走と長座体前屈には使えない。

その後は特筆するようなこともなく、体力テストの全科目は終了した。持久走が1番キツかった。

 

「んじゃ、パパッと順位発表」

 

先生が持っていた機械を操作すると、空中に全員分の結果が映し出された。

俺の名前はあっさり見つかった。仁路引斥と書かれた隣に二位の文字。

除籍じゃないなら問題ない。

 

「ちなみに除籍はウソな。君らの個性を最大限引き出す合理的虚偽」

 

世間話でもするように放った言葉に衝撃を受ける。そんな俺たちを無視して先生は気にせず進めていく。

 

(嘘つけ。あれは本当だっただろ。何がこの男を変えた?)

 

「あんなの嘘に決まってるじゃない…ちょっと考えれば分かりますわ」

 

その言葉に振り返る。声の主は…ああ、確か一位の子。この子は純粋なんだろうな。じっと見つめていると目があったので微笑み目を逸らす。

 

「これにて終わりだ。教室にカリキュラムなどの書類があるから戻ったら目通しとけ」

 

 

その後は何もなく。本当にカリキュラムや書類の確認をして解散となった。

荷物を鞄に詰め込んだり、図書室に行ったり自由行動をして時間が流れて行った。家の蔵にない本が大量にありウキウキで3冊ほど借りた。三冊とも絶版になっており入手困難の代物だ。鞄の中にしまい、図書室を出る。

 

さて、と。やりたい事はやったから後は面倒事を済ませるか。

向かうは職員室だ。

 

*************************

 

「失礼します。イレイザー先生はいらっしゃいますか?」

「ここだ、何のようだ?」

「送迎許可証を貰いに」

「ああ……紙もらってくるから待っとけ」

「はい」

 

今のうちに天蓋に連絡しようと、スマホを取り出しメールアプリを開く。

 

”天蓋、もうすぐで終わる。迎えはどこに? ”

"朝と同じ場所で待っている"

 

了解と返してスマホをしまう。暫くして先生から送迎許可証と大きく書かれた紙を受け取る。

 

「はいよ。それに理由書いて俺に出せ。校長先生から認可おりたら使える。」

「ありがとうございます、では」

「はい、さよなら」

 

職員室をでてプリントをファイルにしまうと、鞄を肩にかけて歩き出す。下駄箱に着いたら靴に履き替え、ワークブーツを履き紐を結んで歩き出す。

朝来た道を引き返して天蓋の元に戻る。数分も歩けば朝乗った車が視界に入る。運転席の窓をコンコンと叩き、車の鍵を開けて欲しいと暗に頼む。暫くすると天蓋が俺の意図を汲み取り解除を知らせる音が鳴る。ドアを開けて、乗り込む。荷物を置いて、助手席に座るとどっと疲労が押し寄せてきた。

 

「迎えありがとう。…悪いが、少し休む」

「了解した」

 

俺が疲れているのを察して言葉短く、返事が返ってくる。ラジオを切ってくれた天蓋に感謝して目を閉じる。

あんなに個性を使うのは久しぶりで疲れた。それにイレイザーヘッド。

中々癖のあるヒーローが担任になったな。

 

襲ってくる眠気に抗わず、そのまま意識を落とした。

 

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