リコリコ面子を送り込みます。
「う~ん」
「なに、どうしたのあんた?」
終業後のリコリコ、クルミが何かのチケットを眼前でぷらぷらと振りながら眺めていた。
「いや…エボルラビットからもらったんだがどうしようか悩んでてな」
「貰ったって…それ? 何かのチケット?」
「ミレニアムタワーにあるレストラン『クロスオーバー』の無料ディナー券」
「『クロスオーバー』のディナー券!?!?!?!?!」
ミズキはガタッと椅子から立ち上がる。周りもなんだなんだと駆け寄ってきた。
「あ、『クロスオーバー』ってあれ? 予約10年待ちとか言われてる超高級レストラン」
「誰しも一度は行ってみたいと言われるあのレストランか…」
「聞いたことはありますね…すべての料理が過去になるとか…」
「ディナー券って言えば予約なしでも行ける凄いチケットでしょ!? なんでエボルラビットそんなもん持ってんのよ!!!?」
クルミの手からチケットを取りかざすように眺める。
チケットにはおあつらえ向きに五名までとのこと。ここにいるのもちょうど五名だ。
「使える日はちょうど明日ですね」
「ちょうどいいし明日は早めに店を閉めてみんなで行こうか」
「あれ、この店ドレスコードとかないんだ」
「でも一応着ていきましょ。ミレニアムタワーだし」
ミレニアムタワー。
東京都内にある60階建ての高層ビルであり様々なテナントが入っており、建設した会社である真島建設も最上階にある。レストラン『クロスオーバー』は57Fにある。45Fより上は高級というのはみんなの共通認識である。
「たきなの分もあるよ~」
「にしてもエボルラビット。どこでこんな凄いの手に入れたのかしら」
翌日
「ここって初めてきました」
「あー『聖域』だもんね。そりゃリコリスは来ないわ」
「『聖域』? ってなんですか?」
千束の言葉にたきなは疑問を投げかける。どうやらたきな以外は知っているようだ。
「『聖域』って言うのは表社会裏社会両方から『ここで絶対に争ってはいけない』とされている場所だ。ここで争うことは文字通りすべてを敵に回すことになる」
「それ、守る人がいるんですか?」
「守らざるを得ない、が正しいな。もしここで争えば即座に殺される。例えどんな人物であろうとな」
「組織に所属してたら即座に切り捨てられるわよ。武器は所持してても許されるけどぶっ放した瞬間アウト。なんなら武器の調達も出来るわよ。今度紹介してあげましょうか?」
「そんなところがあるんですね…」
「おっ、リコリコの面々やんか~。久し振りやな~」
「-ッ!?」
たきなが妙な関西弁に振り返ると文字通り『妙な』人物がいた。
素肌に羽織られた蛇柄のジャケットとテクノカットと左目の眼帯。曝け出された胸元には刺青が見え懐にはドスが差してあり『クレイジー』を体現したような人だ。
「あっ、真島くみちょー久し振りぃ~」
「真島くん久しぶりだね」
「いやぁ最近忙しくてほんまきつかったんや」
そこで真島組長と呼ばれた男性の目がたきなに向きたきなはびくっと体を震わせた。
「知らん子がおんな、新入りか?」
「い、井ノ上たきなです…」
「あぁ、あのたきなちゃんか! よろしゅうな。わしは真島吾朗や、組長さんやからえらいんやで!」
「あと真島建設社長でこのミレニアムタワー建てたのも真島くみちょーなんだよ」
「えっ!? だったら『聖…」
「親父~~~!!!」
たきながぽろっと『聖域』の件を口から出そうとした瞬間、サングラスをかけたスーツの男性が走りながらこちらへとやってきた。
「なんや龍」
「親父ぃ! 霧島もオルガも探してましたよ!」
「あかん仕事放置しっぱなしやった、ほなな~」
そういいながら真島は手を振りながら去っていった。
「相変わらず凄い勢いだな」
「台風みたいなやつだ」
「たきながいない時に会ったことあるけど圧が凄い」
「というか『聖域』のこと言っちゃだめだよ、知ってるかどうかも分からないんだから」
そんな話をしながらエレベーターへと乗った。
57と数字が表れエレベーターが止まる。エレベーター前にいた従業員にチケットを見せると「こちらへどうぞ」と案内してくれた。ついていくと『クロスオーバー』と書かれた入口が見える。
「ここが…」
「おぉ。凄いいい匂いがする…」
「楽しみねぇ」
ドアが開き一人の男性が現れた。スーツを着て金髪の眉毛が特徴的な男性だ。
ミズキがイケメンの登場に黄色い声を上げた。
「いらっしゃいませ、レストラン『クロスオーバー』へようこそ」
店内に入ると全員は驚く、なんとテーブルが一つしかないのだ。
一つのテーブルと椅子が五組。
「テーブルがこれだけ…?」
「結構広いのに」
「お客様に快適な時間を過ごしてもらうためでス、そのため一日に一組しか招待していないのデスネ」
裏方からコックコートを着た男性がお水を持ってきた。喋り方をみるに外国人だろう。
「私はトニオ・トラサルディー。イタリア人です。ここのコックでイタリア料理を提供しています」
「おっと失礼、俺はサンジ・ヴィンスモーク。副料理長でフランス料理を提供している」
「へぇ色々な料理があるのね」
「コース料理では様々な国の料理を提供していマス。皆様はコース料理でよろしいでしょうか?」
「あぁ、それでお願いするよ」
5人は席に着いた。メニューもないようで聞いてみたところおまかせしかないようだ。
アレルギーだけはちゃんと聞いてくれた。
注文も終わり料理を待っている間クルミはワイングラスに注がれた水を傾ける、その瞬間表情が変わった。
「うわっ、なんだこの水。いや? ミネラルウォーターか?」
「ん…? うわなにこの水うっま~」
「ほう…出される水ですらこのレベルなのか…」
「では料理を続けましょうか?
置かれた皿にはチーズとトマトが重なるように置かれ周りにはバジリコ葉にオリーブオイルのようなもの、小さな焼いたパンも添えられていた。
「おぉ~美味しそう~」
「トマトと…えっと、もっつ?」
「モッツァレラチーズ、脂肪抜きした柔らかくて新鮮なチーズのことデス。イタリアでは日本でいう『味噌汁』のように好んで食べる
トニオはその後も言葉を続けようとしたが流石に料理を前に長々と喋るのはあれと思い止めた。
「さっ! 召し上がってみてクダサイ。テーブルマナーなどはお気になさらず、文句を言う方は誰もいません」
「なるほど…テーブルが一つしかないのもドレスコードがないのも気にせずに食事をしてもらうためか」
「その通りです、色んな方に料理を楽しんでもらいたいがためそういうものは取っ払っています」
サンジが言葉を続けてなるほどと声が上がる。千束は待ちきれないようにナイフとフォークを手に取った。
「早速たべよーよ!」
「いただきます」
全員食器を手に取りたきなは早速チーズだけをナイフで切り、口に入れた。
そのまま咀嚼したがしていくうちに首を傾げた。
「あれ…? 味が…」
美味しいとは思ったが正直そこまではといったところだ、するとトニオから声が飛ぶ。
「チガウチガウ! トマトといっしょに口の中に入レルンデス」
「…? はい」
と、今度はトマトとチーズを半分に切りそのまま口に入れた。すると見てわかるように頬が緩み目元が喜びで吊り上がる。
周りも同じように口に入れ声を上げた。
「うんま~!」
「こりゃ凄い…現地で食べたものより美味いぞこれは…」
「うっわ、前菜でこれ? すっご…」
「~~~~!」
それぞれ称賛をあげクルミに至っては笑顔でもむもむと頬張っていた。
その様子にトニオとサンジは頬を緩めて皆を見つめる。
「グラッツェ、喜んでいただけてこの上ない幸せでス」
「いやこれ本当に美味しいです! 前菜でこれなんだ…!」
「~~~~!」
「クルミさっきから一言も喋ってないですね…」
「なんか肩こりまで取れた気がするわ」
「あっ、分かる~!」
ミズキと千束が肩に手を当てて言う、クルミとたきなはとある部位に目が行ったが見なかったことにした。
あっという間に皆は皿を空にし息を吐いた。前菜でまさかの満足感だ。流石『クロスオーバー』初撃から凄い。
「次はスープだって、どんなのが来るんだろ」
「イタリアとかならミネストローネとかかしら…?」
「お待たせしました」
サンジとトニオが引っ込み出てきたのは小柄な典型的な日本人男性だ。彼はこちらを見て笑うとそのまま一礼する。
「総料理長の小松と申します。本日はご来店いただきありがとうございます」
そのままコトリと皿が目の前に置かれる。
湯気が立っているのに皿の上には何も見えない、最初は温めた皿を出されたのかと思ったぐらいだ。
クルミは不思議に思い皿に顔を近付けた、その瞬間鼻に突き抜ける濃厚なスープの香り。思わず体をのけぞらせた。
「うっ…わっ…! びっくりした…」
「え…何もないのに凄い香りが…」
「あっ! 違う! 中に透明度が凄い高い液体が…!」
千束がスプーンを皿に入れると何かが波打つ…それがスープということが分かると驚愕に顔を染める。
小松はその様子に笑みを浮かべた。
「続いての料理、『センチュリースープ』です。どうぞお召し上がりください」
今回で全部書こうと思ってましたけど
ちょっと連勤残業で時間取れなさそうなのでサクッと投稿します
キャラ紹介や細かいところも『クロスオーバー』回が終わったらで
と思ったけど
忘れそうなのでヤクザ組の方はやっときます。
・龍 作品名:極主夫道
普通に極道してる。家事が得意だし普通に奥さんがいる
真島組 若頭
・オルガ 作品名:鉄血のオルフェンズ
根が真面目、撃たれる人ってぐらいの認識しかない
真島組 若頭補佐
・霧島 作品名:組長娘と世話係
元ネタしらねぇ~と思いながら組長の世話してる
真島組 舎弟頭