スペちゃんとチート持ち転生者の幼馴染   作:成田 きよつぐ

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 誤字脱字のご報告・お気に入り・ご評価・ご感想を下さった方々、本当にありがとうございます!


 この拙作での【URA賞授賞式】に関しては筆者の妄想などが入っておりますのでご了承下さい。各部門の選定は現実と同じく記者の方々の投票で行われます。(満票は300票としております)


 現実のJRA賞の授賞式は1月下旬ごろに行われるとの事ですが、ここでは12月30日に行われる形となっております。

 (現実とは違いウマ娘の娘たちは学業がありますもんね……トゥインクル・シリーズの終了直後すぎて、授賞式を運営される方々などは大変でしょうが…まあ頑張ってもらいましょう☆)


 レースの数やグレード・賞金などは2023年時を参照としております。ただ開催日に関しては少し変更していたりするため、ご了承頂けたらと思います。




URA賞授賞式

 

 

 

 

 

 

 

 スペちゃんが有記念から、アヤベさんがデビュー戦から怪我なく無事に勝利を収めて帰って来てくれ、

 その余韻に浸りつつもスペちゃんの疲労回復ケア、アヤベさんの東京コースに向けたトレーニングの追加、マックイーンさんのスタート技術向上のトレーニングの追加に尽力させてもらっていた今日この頃。

 

 

 本日の日時は12月30日のお昼ごろ。大晦日を明日に控えて世間の方々は仕事納めを迎え忘年会などで街も盛り上がっているシーズンである。

 ……ん? 俺たちトレセン学園のトレーナーはどうなのかって? やだなあ、昨日ダートの有記念にあたる大井レース場で行われる東京大賞典が終わったばかりですよ? そんなまだまだレース熱が冷めやらぬ中、仕事納めなんて出来るわけがないじゃないですか〜。

 

 

 …勝手におちゃらけてしまい申し訳ございませんでした。けどまあ土・日にレースが行われる関係上、世間の方々がお休みの時にウマ娘たちは頑張るという感じの為、その娘たちを支える立場である俺たちトレーナーも世間一般的なお休みとはならないのは当然の事である。

 土・日にはレース、平日でも学業にトレーニングと、一番頑張っているウマ娘たちの姿を見ていると逆に自分も頑張らねば! と活力が湧いてくるものだからね。

 

 

 それに申請を出しておけば割といつでも休みを貰えるため、トレセン学園の職場環境はかなり快適な部類ではないかと思う。

 もちろんウマ娘お一人お一人の人生を背負う覚悟や、勤務時間が決まっている訳ではないので仕事に慣れるまでは朝から深夜まで仕事…なんてザラにあったり、式典・祭典・インタビューなどの対応もあったりと、決して楽な職場ではない為、ウマ娘に対する熱意が何よりも必要な職場である事も事実ではあるのだが。

 

 

 そして何を隠そう…今まさに俺とスペちゃんは、今チラッと職務の一つに挙げた式典の対応…というよりも、今年トゥインクル・シリーズで行われた中央GⅠレース・全26レース(ハードル走も含む)の内、一つでも勝利した事のあるウマ娘さんとその担当トレーナーさん。

 または海外のGⅠを勝利している両名、そしてサマー・ウィンターのドリームトロフィーリーグのいずれかを勝利した両名のみがお呼ばれする伝統の式典、【URA賞の授賞式】に参加させて頂いている最中である。

 

 

 参加できる条件上、アヤベさんとマックイーンさんはお留守番となってしまった。お二人とも今取り組んでいる課題に向けた自主トレーニングに励むとの事であまり気にしてはいない様子だったけど。

 それに、お二人なら近い将来に必ずお呼ばれするだろうからね。俺がそう信じてると伝えた時も『またこの人は…』と呆れられつつも、お二人の闘志が少し上がった感じもしたので良かったと思いたい。

 

 

 スペちゃんもまだ本格化前の状態で今年一年を走り抜いた事に加えての有記念での激走による疲労…

 有記念後のウイニングライブなども何とか大盛況で終わったものの、ここ二日はスペちゃんの今後の為にもとにかく後を引かない様に疲労回復に努める日々であった。

 何とか無事に身体へのダメージも問題ないと言い切れる具合に回復してくれたので本当に一安心だ。もしほんの少しでもダメージが残っていたら今回の参加も見送っていた所だったからね。

 

 

 ここ二日でこれだけスペちゃんの回復を促せたのも全てチートによる恩恵なので、このお力を授けて下さった神様なのか仏様なのかは分かりませんが本当に感謝の心でいっぱいでございます。本当にありがとうございます。

 

 

 身体の各所の疲労具合などを認知できる眼と、何か特殊な気功を送れるハンドパワーを用いたチートマッサージ。あらゆる想像を具現化できるチート創造力を用いた新たな疲労回復ソファ・クッション・寝具・入浴剤などの開発。(アヤベさんとマックイーンさんも愛用。特にアヤベさんが喜んでくれた)

 

 

 原理不明のチート亜空間たる場所による、チート養殖・栽培で育てた食材による滋養強壮な料理を振る舞う。(今回使ったのはウナギと白瓜で、蒲焼きと奈良漬けにして皆んなで美味しく頂きました。因みにタレの匂いにつられたゴルシさんにも振る舞いました)

 

 

 とまあこんな感じでチート全開によるケアを行なっていたのである。後は……最早恒例となりつつあるお姫様抱っこをしたり、スペちゃんの尻尾ハグを受けながらのんびりと二人で部屋で過ごしたり、備品などの買い出しついでに商店街にて二人で食べ歩きをしたりもしたが、まあそれは些細な事だろう。

 

 

 ……うん、分かってます。だから何も言わないで欲しい。外堀と言うものが割と取り返しのつかない埋まり具合なのは俺もちゃんと分かってるんだよ?

 ……でもさ、スペちゃんが凄い喜んでくれるんだもん…幸せオーラ全開で笑ってくれるんだもん…俺はスペちゃんのあの笑顔には勝てないよ…

 

 

「わあ〜……見てくださいお兄さん。やっぱり凄いですね…会場のホテルの大きさにもビックリしましたけど、こんなにも沢山の方が参加されるなんて…しかも偉い方々ばっかり…あはは、ちょっと緊張しちゃいますね」

 

「本当だね…有記念の事前インタビューの時も凄かったけど、今日は更に凄いな…」

 

「…むーっ、そんな事言って、実はお兄さん全然緊張してないじゃないですか〜! 顔がちょっと笑ってます! 私は騙されませんからねっ!」

 

「はははっ、バレたか」

 

「あ〜! やっぱり! お兄さん昔から全然動じないんですから…」

 

 

 スペちゃんの笑顔には勝てないな…なんて事を考えていた俺は、ホテル会場にて隣で一緒に授賞式の始まりを待っているスペちゃんからの言葉に反応したものの、どうやらスペちゃんには俺がさほど緊張していない事はバレていたらしい。

 むーっ! っと口を尖らせて少しいじけてしまった。何だいスペちゃんその反応は? 全然怖くないどころかむしろ可愛いんだけど? …って、何て思ってる場合じゃないな。

 

 

「本当にごめんよスペちゃん。ほら、せっかく今日のドレスも似合ってて素敵なんだから、機嫌直してくれないかな?」

 

「に、似合ってる…そ、そう言われちゃうと……えへへ〜、も、もうっ! お兄さんだから今回は特別に許してあげます!」

 

 

 俺がスペちゃんの目を見てちゃんと謝ると、スペちゃんは“にへら〜”っと笑って許してくれた。

 良かった…これで『許してあげませんっ!!』なんて言われたらどうしようかと思った。まあスペちゃんがそんな事言ってるところは見た事ないんだけど。

 

 

 それにしても今伝えた通り、ドレスアップしたスペちゃんは本当によく似合っている。

 着ているのは薄い紫を基調とし、腰のリボンなどはピンクであしらわれた膝丈ほどのドレスに、袖がフリフリとした半袖の白いパーティジャケットと、こちらも白色のヒール型のパーティシューズを合わせた、年頃らしい可愛いさと大人っぽい綺麗さのバランスが素晴らしい装いとなっており、控えめに言ってとても素敵である。

 

 

 それに加えて、ジャパンカップを勝利した記念に世界的に有名な時計メーカーであるガルデン社様から先日贈られた、スペちゃんモデルの限定腕時計がとても素敵なアクセントとなっている。

 

 

 文字盤はスペちゃんの瞳と同じアメジスト宝石の様な綺麗な紫色。針の色はシルバーで、文字盤の真ん中辺りには、走っているスペちゃんのイラストマークが刻まれている。

 女性用のモデルの革ベルトは白色で、男性用のモデルはスペちゃんの髪色に合わせたとの事でダークブラウンの革ベルトが使われている。

 

 

 そう、この腕時計…今まさに俺も男性用のモデルを付けているのだ。これが俗に言うペアルックと呼ばれるものなのだろうか…

 俺は無地のダークネイビースーツをスリーピースで着ているだけの普通すぎる装いのため、これ程の高級腕時計は逆に浮いていないか心配なんだけど…

 

 

 基本的にはこういった場で腕時計を付けるのはマナー的にどうか? というお話もあるのだが、今回はガルデン社様から広告の為にも身に付けて欲しい。とお願いを受けてたから全然付けさせて頂くんだけどね? あと何だかスペちゃんが凄い喜んでくれたし。

 

 

「お! 居た居た…よお〜! 相変わらず仲良いなぁ〜お二人さん」

 

「あ、沖野さん! お疲れ様です」

 

「スズカさんのトレーナーさん! こんにちは! …えっと、仲が良いって私たちの事ですか? お兄さんとは昔からこんな感じなんですけど……もしかして、都会だと普通じゃない…とか?」

 

 

 しばらくスペちゃんと談笑を楽しんでいると、ネイビーのタキシードに白シャツ、そして黄色のベストと蝶ネクタイという装いをファッション雑誌の表紙を飾れるほどにビシッと着こなした、チームスピカを率いる凄腕トレーナー、沖野さんがこちらに挨拶をしに来て下さった。

 

 

 うーん…沖野さんからも俺たちの距離感は少し特殊に見えるのだろうか? ま、まあ時折スペちゃんとの距離感が近すぎるかな? と思う事が無い訳じゃないんだけど…

 でもなぁ……スペちゃんも言ってる通り、昔からの距離感といえば距離感だからなぁ……これは俺も長閑な田舎街特有の距離感という事で乗り切るしかないか?

 

 

「いやいや、お前さんたちの仲の良さは凄ぇ良い事だと俺も思ってるさ。まあ、ここまで絆が深いのは都会とか関係なく珍しいとは思うが…とにかく俺はお前さんたちのその絆の深さは好きだぜ。ウマ娘とトレーナーとの関係性の、一つの理想形って感じがしてよ」

 

「り、理想形…えへへ、そ、そんな事を言ってもらえると嬉しいですけど、な、何だか照れちゃいますね〜? お兄さん」

 

 

 沖野さんからの言葉を聞いて、少し恥ずかしそうに顔を赤めつつ自身の頬を掻きながら、それでも嬉しそうに含羞みながら俺の方を見つめるスペちゃん……

 全くこの娘は…そんな反応をされたらこっちまで照れちゃうでしょ? 思わず嬉しくなっちゃうでしょ? 帰ったらスペちゃんが食べたいモノ何でも作ってあげちゃうよ? 今ならこの娘の為に新たな扉でも開けそうな気がする。

 

 

「はいはい、お二人ともご馳走さん。…っと、いけねぇいけねぇ、実はスペシャルウィークに用があってよ。ちょっと待っててくれよっと…」

 

 

 そう言って自身の携帯を取り出し、誰かにビデオ通話を掛ける素振りをみせる沖野さん。その動作から俺は何となく事情を察する事が出来た。

 

 

「……おっ、繋がった繋がった。 よお! そっちは夜も遅いのに悪いな。今大丈夫か? そっか、良かった…ん? おう! 今ちょうど一緒に居るから、早速スペシャルウィークと代わるな? ほらっ」

 

「え? 私にですか?」

 

 

 沖野さんから手渡された携帯を少し不思議そうに受け取ったスペちゃん。しかしそのビデオ通話のお相手を確認した瞬間、とても嬉しそうに身体を揺らしてはしゃいでいる。そう、そのビデオ通話のお相手は勿論──

 

 

「──スズカさん! こんにちは──あ! アメリカだと、今はこんばんは…ですね。でも良かった〜! 無事にアメリカに着いたんですね!」

 

『ふふっ、こんばんはスペちゃん。ええ、さっき無事にこっちのトレセン学園の寮に着いたわ。荷物もちゃんと届いていたし、スペちゃんが荷造りを手伝ってくれたお陰でスムーズに荷物を出す事も出来たの。本当にありがとうスペちゃん』

 

「いえいえ! 私のほうこそ引越し直後で大変な時に、電話を下さって本当にありがとうございます! こうしてスズカさんとお話し出来て本当に嬉しいです! 今度そちらに人参を送りますから楽しみにしていて下さいね!」

 

『ありがとうスペちゃん、とても楽しみにしておくわ。でも、あんまり沢山の量を送ってくれなくても…その、大丈夫よ? 送ってくれる時は…スペちゃんのトレーナーさんに手伝ってもらってね?』

 

 

 お電話のお相手はスペちゃんのルームメイトさんであるスズカさんだ。

 今年の宝塚記念・天皇賞(秋)を制している彼女は、本来ならこの授賞式にお呼びが掛かるところなのだが、つい先日に彼女自身の挑戦の為にアメリカへと遠征を行なっているため今回は会場に足を運ぶ事は叶わなかった。

 

 

 俺も夏合宿でご一緒させてもらったり、スペちゃん経由で交友を持たせて頂いていた娘のため、こうして無事に渡米できた事を知る事が出来て嬉しい限りだ。

 そしてスズカさん、安心して下さい。スペちゃんが人参を送る際はしっかりと隣で手伝わせて頂きますので。流石にちょっと多過ぎるかな? という量を送っちゃう可能性があるからねこの娘…

 

 

 こうして授賞式が始まるまで、スズカさん・沖野さん・スペちゃん・俺の四人で会話に花を咲かせていく。

 俺が遠征の応援として贈らせて頂いた【簡単組み立て式快眠ベッド】・【スズカさん専用に改良したトレーニングシューズ】などを始めとした“アメリカでも快適に過ごして頑張っちゃおうぜ! グッズたち”をとても喜んでくれていたので本当に良かった。今度チート冷凍保存を施した【いちご大福】も送らせていただきますからね。

 

 

『──会場にお集まり頂いた皆様、お待たせ致しました。間も無くURA賞授賞式を執り行います。本年度、輝かしいご活躍をされたウマ娘様と、その支えとなられたトレーナー様は会場の中央付近に並んでおりますテーブル席に、お一人お一人のお名前が書かれた席札がございますので、その席札に沿ってご着席をお願い致します。ご来賓して下さった皆様は、会場にご用意させて頂きました来賓席へのご着席をよろしくお願い致します』

 

 

「お? どうやら授賞式が始まるみたいだな。そんじゃまあ、お互いにそろそろ席に着くとしますか」

 

「──あ、はい! じゃあスズカさん、もうすぐ授賞式が始まるので…夜も遅いのに本当にありがとうございました! また今度は私のほうからお電話させて貰いますね!」

 

『ええ、またお話し出来るのを楽しみにしておくわね。私もこっちでスペちゃんに負けないぐらいの走りをしてみせるから、来年はお互いに頑張りましょう。トレーナーさん、そしてスペちゃんのトレーナーさんも、今日はお話し出来て本当に嬉しかったです』

 

「スズカさん、こちらこそ嬉しかったよ。夜も遅くて色々と大変だっただろうに…本当にありがとう。アメリカでもスズカさんがあの走りで活躍するのを心から応援しているよ!」

 

「何かあったらすぐに連絡しろよ? どんな些細な事でも良い。遠く離れてたって、何かあったらすぐに駆けつけるからよ。…あ、そうだ! もしそっちに行く時はコイツとスペシャルウィークも一緒に連れて行ってやるからな!」

 

『もう、トレーナーさんったら…ふふっ、でもそれなら直ぐに連絡して会いに来てもらおうかしら?』

 

「ええっ!? す、スズカさん!? スズカさんのトレーナーさんも! 今度会う時はまた日本で一緒に走る時ってこの前約束したじゃないですか〜! からかわないで下さいよ〜!」

 

 

 沖野さんとスズカさんの冗談に反応するスペちゃんに思わず笑いが溢れてしまう俺たち。四人での談笑の時間もあっという間に過ぎ、俺たちは沖野さんにお礼を言いつつ携帯をお返しする。

 そうしてお互いにそれぞれ割り当てられた席へと向かった。スペちゃんと俺は会場右寄りのテーブル席に、沖野さんは左寄りのテーブル席に席札があり、今回の授賞式では離れた席順になってしまい残念である。

 

 

 また沖野さんの席のすぐ近くには、東条さん率いるチームリギルの皆さん、ルドルフさん・エアグルーヴさん・フジキセキさん・マルゼンスキーさん・タイキシャトルさん・エルさん・オペラオーさんの八人が着席されており、こちらに気付いて会釈をして下さった。『こちらこそ』と俺たちも会釈を返させて頂く。

 

 

 それにしても…東条さんは勿論、チームリギルの皆さんは本当に凄いな…

 今年のサマー・ウィンターのドリームトロフィーリーグ(クラシックディスタンス)で連覇を達成したルドルフさん。マイルと短距離部門で勝利を収めたフジキセキさんとマルゼンスキーさん。今年のトゥインクル・シリーズの短距離・マイル路線で国内外問わず無敵の強さを発揮したタイキシャトルさん。NHKマイルCを制したエルさん。朝日杯FSを制したオペラオーさんと…この授賞式でも、まさに学園最強チームの貫禄を感じる…

 

 

 しかも今回お留守番となってしまった娘たちも、ドリームトロフィーリーグ(クラシックディスタンス)でルドルフさんにあと一歩まで迫ったブライアンさん。中距離部門でシービーさんに迫ったヒシアマゾンさん。有記念でスペちゃんに迫ったグラスさんと…

 普通ならこの場に居ないのが不思議なぐらいの娘たちである。まあ、それはウチのチームのアヤベさんとマックイーンさんも変わらないけども! お二人の担当としてそこは譲れない!

 

 

 そしてそんなチームリギルを率いる東条さんはというと…沖野さん同様にファッション雑誌の表紙を飾れるほど、黒のパーティドレスをサラッと着こなしておられる。

 会場に配置されたテレビカメラとスタッフさんもリギルの皆さんだけではなく、そんな東条さんのお姿も映そうとしている感じだ。当のご本人は現在、沖野さんに話しかけられて何なら楽しそうにお話ししていらっしゃるけど。

 

 

 そんな風に会場に居る各々が指定の席へと着席してしばらく、会場内の照明が暗くなったと思いきや、会場に設置された巨大モニターに授賞式のPVが流れ始めると、舞台にある司会者台にスポットライトが当てられ、今年の授賞式を進行してくださる男性・女性お二人のアナウンサーさんが紹介される。

 

 

 そして開会を告げるオペラ歌唱などを堪能しつつ、いよいよ今年のURA賞授賞式が始まった。

 ちなみにオペラ歌唱にスペちゃんは聴き入って、チームリギルのオペラオーさんが随分と心打たれていたみたいだけど…そんな二人の反応にほっこりしたのは内緒だ。

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

『お待たせ致しました。それではこれより、URA賞授賞式を執り行います。先ず最初は、URA賞・チーム部門の発表に移らせて頂きます。今年、トゥインクル・シリーズ。ドリームトロフィーリーグで素晴らしい成績を収めたチームを讃えるこの部門。それでは始めに、今年の【最多勝利チーム】から発表致します。今年、最も勝利を収めた最多勝利チームは────【チームリギル】です!』

 

 

 発表と同時にスペちゃんや俺を始め、会場中から祝福の拍手が起こった。やっぱりチームリギルの皆さんは凄いな…

 チームリギルの皆さんは威風堂々といった感じで一礼を行い、東条さんも『当然』という雰囲気で一礼を行なっておられる。

 ただ、席に座り直した時に密かにガッツポーズをしていらっしゃったので、本当に嬉しかったのだろう。

 

 

『──続きまして、今年の【最高勝率チーム】を発表致します。今年、最も優秀な勝率を収めた最高勝率チームは────【チームスピカ】です!』

 

 

「よっしゃああああああ〜っ!!」っと、会場中の拍手の音に負けないぐらいの沖野さんの雄叫びが聞こえた。

 そのあと少し慌てて周りに一礼を行いつつも、席に座り直した後も喜びを隠せない感じだ。あとそんな沖野さんを悔しそうに見つめる東条さんの目がちょっと怖かったです…

 

 

『──続きまして、今年の【最多重賞勝利チーム】を発表致します。今年、最も重賞の栄冠を積み重ねた最多重賞勝利チームは────【チームリギル】です!』

 

 

 今度は再びチームリギルの発表となった。東条さんも「よしっ!」とガッツポーズをしておられる。

 

 

『なお、今年のチーム部門・特別賞に関しましては【該当なし】となっております。各部門で選ばれましたチームには、部費の増額や夏合宿における宿泊施設・設備利用のグレードアップなど、様々な優待権が贈呈されます。それではチーム部門で選ばれました、チームリギル・チームスピカを率いておられるトレーナーさんは、トロフィー贈呈がございますので、前の舞台までお越し下さい』

 

 

 その呼びかけに東条さんと沖野さんは、拍手に送られながら舞台へと向かわれた。

 そして、URA協会のお偉い方から祝辞のお言葉と共にウマ娘が駆け抜けている姿を模ったトロフィーがお二人に贈呈され、そのままお二人へのインタビューとなった……

 しかしあのトロフィー、何処となくスペちゃんが走っている時の姿に見えるのは俺の気のせいだろうか? …いや気のせいだな、うん。何だか俺、親バカ的な思考になってしまっている。反省せねば。

 

 

『それでは、今年のチーム部門を受賞された2チームを率いておられるお二人にお話しを伺いたいと思います』

 

 

 俺自身の親バカ思考に反省していると、舞台では東条さんと沖野さんに対するインタビューが始まった。

 お二人ともこういった場にも慣れておられるのか、受け答えはしっかりと、しかし非常にテンポ良くアナウンサーの方の質問に答えていく。そしてインタビューも終盤──

 

 

「今年は二つもリギルに譲ってしまいましたが、来年はチームスピカが三部門全てを独占できる様、チーム全員で前に進んでいけたらと思っています」

 

「……今年は一つの部門を取りこぼした事が大変遺憾ですので、来年は学園最強チームたる自覚をさらに高め、チーム全員で更なる栄誉を掴み取れるように精進します」

 

「ちょっとちょっと、おハナさん? 燃えてるところ悪いけど、これからはチームスピカの年になるんだから、今年の成績で我慢しときなって」

 

「フッ、言ってなさい」

 

「あれ? おハナさん、もしかして──負けんの怖い?」

 

「──その喧嘩、お望みなら高く買ってあげるわよ?」

 

『そ、それでは! 今年のチーム部門を受賞された代表お二人に、今一度大きな拍手をお送りください!』

 

 

 学園でも3本の指に入るであろうチームを率いるお二人がバチバチと火花を散らし始めた雰囲気を感じ取り、アナウンサーの方がやや強引にインタビューを終了させた。

 ま、まあ、お二人ともお互いに気を遣わなくて良い関係なんだろう…

 

 

 

───

──

 

 

 

『──続きまして、URA賞・トレーナー部門の発表に移らせて頂きます。今回の発表は先ほどとは違い、各部門を受賞されたトレーナーさんにはスポットライトが当たりますので、スポットライトに照らされたトレーナーさんは舞台までお上がり下さい』

 

 

「あ、次はトレーナー部門ですね……お兄さんが選ばれてたら嬉しいなぁ…」

 

 

 トレーナー部門の発表に移る最中、隣に座るスペちゃんからぽそっとそんな言葉が聞こえてくる。

 本当に…この娘の純情テロリスト具合は俺の理性を弄んでしょうがないよ! だがチート持ちがこの程度で挫けると思うなよスペちゃん!

 

 

 そんなバカな事を考えながら、スペちゃんの零した言葉に心が温かくなっていた俺は思わず、チート持ちの意志などあっさり崩れ去りスペちゃんの頭を優しく撫でていた。

「あっ、やっべこれセクハラか?」とか思ったが、スペちゃんが「ふわあ〜、へへ〜」と笑っていたのでセーフだ。誰が何と言おうとセーフである。にしてもスペちゃん髪サラサラだね? 今度トリートメントのCMモデルでもしてみるかい? まあ、伝手なんてないんだけど。

 

 

 しばらくスペちゃんの頭を撫でていると、会場ではドラムロールの様な音楽が流れ出し、スポットライトが会場中を縦横無尽に巡り始める。

 そして司会者の方が『今年のURA賞・トレーナー部門に選ばれたのは──こちらの方々です!』と言い終わった瞬間──

 

 

 東条さん・沖野さんの下にスポットライトが当たり──あれ? 何か俺も照らされてない? あ、嘘…照らされてる!?

 会場中から拍手が起こり、隣のスペちゃんは「お、お兄さぁぁん〜! おめでとうございます〜!」と自分の事ように喜んでくれてて可愛い──って見惚れてる場合じゃない!

 どうしよう…正直トレーナー部門は全く意識してなかったから、まさか自分が選ばれるとは……と、取り敢えず舞台に向かわないと…あとスペちゃんありがとう。

 

 

 東条さん・沖野さんと共に拍手に送られながら舞台には来たけど、ぶっちゃけ自分が何の部門で選ばれているのかも良く分からん…

 俺の中ではそれぐらい意識してなかった事の為、自分の成績やトレーナー順位なんて全く見てこなかったからな…

 

 

『それではこれより、URA賞・トレーナー部門のトロフィー贈呈に入ります。先ずは今年、【最多勝利トレーナー賞】・【最多賞金獲得トレーナー賞】の二冠を達成されました────【東条ハナ】トレーナー様へのトロフィー贈呈です!』

 

 

 そうして堂々と、しかし嬉しそうにトロフィーを受け取る東条さんのお姿を、「やっぱり凄いな…」と若干ぼーっとした感じで眺めてしまっている……

 いや、俺も選んで頂いているんだけどさ…本当に現実感が無くて夢を見てる様な感覚なんだよな…

 

 

『続きまして今年、【最高勝率トレーナー賞】・【最多勝利新人トレーナー賞】を獲得されました──』

 

 

 そういえばそんな賞あったな〜…とか他人事の様に考えていると、その二部門で俺の名前が呼ばれた事で瞬時に意識が戻る。

 そして表面上は問題なく取り繕いつつも、内心は割と大慌てで二つのトロフィーを受け取った。

 ……うーん、やっぱりこのトロフィー、スペちゃんに似てるよな……ん? またその事考えてるのかって? ちょっとした現実逃避です…

 

 

『続きまして、あのサイレンススズカさんをチーム移籍後という難しい状況で、優れてた成績を収められるほどに導かれたその指導技術を讃えて、【特別賞・優秀技術トレーナー賞】を獲得されました──』

 

 

 このトロフィー何処に置こう…てかそろそろスペちゃんが獲得したレース勝利記念のトロフィーを置く場所も手狭になってきてるから…更にこれからアヤベさん、マックイーンさんお二人のトロフィーも増えるとなると……

 よし、ちゃんと保管できる棚を作らないとな。とか色々と考えていると、特別賞で沖野さんが選ばれていた。確かに移籍後の状況でスズカさんの能力をあそこまで開花させた手腕は、心から凄いと俺も思う。

 

 

『なお、トレーナー大賞につきましては、【最多勝利トレーナー賞】・【最高勝率トレーナー賞】・【最多賞金獲得トレーナー賞】の三冠を獲得されたトレーナー様がいらっしゃらなかった為、今年は【該当者なし】となっております』

 

 

『それでは、今年輝かしい成績を収められた御三方にお話をお伺いしていきたいと思います。先ずは今年トレーナー部門二冠を達成されました東条トレーナー、今の率直なお気持ちを聞かせてください』

 

「チーム部門でもそうでしたが、トレーナー部門でも最高勝率を取りこぼして三冠を逃してしまった事が遺憾ですね。それだけ自分が担当している娘を輝かせてあげられていないと言う事になるので。来年はトレーナー大賞に選ばれる様、目の前の一つ一つのレースに集中して担当している娘たちをさらに輝かせられる様に精進致します」

 

 

 さすが東条さん。こちらのインタビューでも受け答えがスムーズ過ぎてカッコ良すぎるよこの人…

 本当にアナウンサーの方の質問に次々と答えていく。その為あっという間に俺がインタビューされる番が回ってきてしまった…は、早いよ…

 

 

『──【最多勝利新人トレーナー賞】を獲得された事は勿論素晴らしい事なのですが、新人トレーナーさんが【最高勝率トレーナー賞】を獲得されるのは史上初であり、更にその勝率は歴代最高である“100%”という脅威の数字を記録されましたが、今のお気持ちは如何でしょうか?』

 

「…正直、この記録は自分の力では無く担当させて頂いたスペシャルウィークさんとアドマイヤベガさんのお力によるモノですので…あまり語れる事が無いというのが申し訳無いと思います。頑張っているのはウマ娘さんご本人なので…彼女達の頑張りによる結果が、この様な素晴らしい賞へと繋がったと考えると大変幸せには感じております」

 

『あくまでも結果はウマ娘の娘たちご本人のモノであると?』

 

「そうですね。もちろん私たちトレーナーがやるべき事は沢山あるんですけど、実際レースになると…私はその娘を何が何でも信じる事しか出来ないので。一番頑張っているのは、実際にレースで闘っておられるウマ娘さん達ですからね」

 

『なるほど…では最後に、ファンの方へのメッセージなどで締めて頂いて宜しいでしょうか?』

 

「はい。来年も自分が担当しております娘たちが、皆様を始め沢山の方々から応援して頂ける様な活躍ができる様に、全力を尽くす事をここにお約束致します。そして今度は、今年よりも胸を張った状態でこの素晴らしい舞台にもう一度立てるように努めて参ります」

 

 

 そうして俺のインタビューが終了した。

 

 …大丈夫か? 大丈夫だよな? 俺変な事言ってなかったよね? 拍手が起こっている会場の雰囲気的に大丈夫だと思うのだが…別に俺に対して何かバッシングなどがあるのは全然良いんだけど、それがスペちゃん・アヤベさん・マックイーンさんらに及んだら色々と対処しなきゃいけなくなるからな…大丈夫だったと信じたい。

 

 

 俺が「大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせていると、続いては沖野さんへのインタビューが行われて──

 

 

「いやあ〜、特別賞を頂けた事は嬉しいんですけど…俺は殆ど何もしてないので。スズカの才能と、その才能に溺れない様に磨いてくれたおハナさ──ごほんっ、東条トレーナーの力があったからこそなので、何か…恥ずかしいですね」

 

 

 沖野さんも、そして東条さんも、基本的には俺と同じくあくまで主役はウマ娘本人だと考えている為、こうした俺たち個人に飛んでくる質問にはあまり語れる事が無いんだよな……

 まあ、東条さんは慣れておられるのか受け答えが凄すぎて尊敬なんだけど。

 

 

 沖野さんへのインタビューも終わり、最後に俺たち三人に拍手が送られて舞台を後にする。

 席に戻ると、満面の笑みを浮かべたスペちゃんから「お兄さん! 本当におめでとうございます!」と言ってもらえ、ぶっちゃけURAのお偉いさんから頂いた祝辞より何億倍も嬉しかったのは内緒である。何かすみません、お偉い方。

 

 

 あと、トレーナー部門の贈呈品として特上にんじんハンバーグに加えて、東条さんと沖野さんには何ならお高そうなお酒飲み比べセットが、俺は未成年だからなのか高級ブランド米の一年分ギフト券が贈呈された。

 チームの皆んなで食べられる物のため素直に嬉しかったです。因みに、トレーナー大賞の贈呈品は温泉旅行券らしい。何故? いや、そりゃ貰えたらメチャクチャ嬉しいけども…

 

 

 

───

──

 

 

 

『それではいよいよ…最後の部門となりました。本年度もまた、沢山の名レース・沢山の優駿たちが誕生致しました。トゥインクル・シリーズの顔として輝かしい成績を残し、そしてウマ娘業界に最も貢献したウマ娘を讃える……【URA賞・ウマ娘部門】の発表を執り行います!』

 

 

 次はいよいよ今日のメインイベントと言ってもいいだろう…【URA賞・ウマ娘部門】発表の時間である。

 舞台に設置された巨大モニターにも、受賞されたウマ娘さんを紹介する映像が流れる準備が整っており、会場中も心なしか、これまでよりも緊張感が増した気がする。スペちゃんもやや緊張した表情を浮かべながら俺の手を握っているところだ。

 

 

『今回も受賞されたウマ娘には、副賞として新しい勝負服が授与される事となっております。それでは皆さま、舞台の真ん中にありますモニターにご注目下さい。先ずは、【最優秀ジュニア級短距離ウマ娘】から発表致します! 栄えある最優秀ジュニア級短距離ウマ娘に輝いたのは────189票を集めた…【テイエムオペラオー】さんです!』

 

 おお〜! モニターに朝日杯FSをゴールした瞬間がスローモーションで流れて、ウマ娘部門…まず始めに名前を挙げられたのはチームリギルのオペラオーさんだった。

 夏合宿で一緒にトレーニングさせて頂いた娘なので嬉しく思う反面、来年はアヤベさんのライバルになるだろうから気を引き締めないといけないな。

 

 

『次に、【最優秀ジュニア級ウマ娘】に輝いたウマ娘を発表致します。栄えある最優秀ジュニア級ウマ娘に輝いたのは────204票を集めた…【ナリタトップロード】さんです!』

 

 次に名前を挙げられたのは、先輩である沖田トレーナーさんが担当されておられるナリタトップロードさんだった。

 彼女とも以前に朝練中に交友があったので何だか嬉しい。ただ彼女も…来年はアヤベさんのライバルになるだろうから要警戒である。

 

 

 今年ジュニア級を大いに盛り上げてくれたお二人が舞台に呼ばれ、オペラオーさんはまるで歌劇の様な言い回しで、

 トップロードさんはとにかく真っ直ぐな感じが伝わる語彙力で…それぞれの来年に向けての抱負を語っておられた。

 

 

『──続いては、【最優秀ハードル走ウマ娘】に輝いたウマ娘を発表致します。栄えある最優秀ハードル走ウマ娘に輝いたのは────176票を集めた…【ヴォラースイリス】さんです!』

 

 ヴォラースイリスさん。今年の“中山大ハードル”を制したウマ娘さんだ。平地競走でもステイヤーとして活躍されていたが、ハードル走に移ってからはその才能を一気に開花させた。

 お姉さんもトレセン学園に合格しておられるみたいだし、お二人とも優秀なのだろう。

 

 

『次に、【最優秀ダートウマ娘】に輝いたウマ娘を発表致します。栄えある最優秀ダートウマ娘に輝いたのは────269票を集めた…【フルタカポーロ】さんです!』

 

 フルタカポーロさん。今年の“チャンピオンズC”をはじめ、地方のダートGⅠも殆ど制した現ダート界の王者と言ってもいい娘である。

 元は大井所属だったみたいだが、現在は船橋所属となっている。環境の変化にもしっかりと対応しておられるため、精神面の強さは相当なモノなのだろうと思う。

 

 

『次に、【最優秀短距離ウマ娘】に輝いたウマ娘を発表致します。栄えある最優秀短距離ウマ娘に輝いたのは────満票での受賞となりました…【タイキシャトル】さんです!』

 

 最優秀短距離ウマ娘はタイキシャトルさんだ。満票での受賞も当然だろう。

 今年の“高松宮記念”・“安田記念”・“スプリンターズステークス”・“マイルCS”を全て総なめにし、何よりフランスの“ジャック・ル・マロワ賞”も完勝した。

 

 短距離界の人気・世界を制した事による日本ウマ娘界の発展への多大な貢献……彼女を選ばずして誰を選ぶのだ? という話になってしまう。

 ……俺としては仮に彼女が今年の【年度代表ウマ娘】に選ばれたとしても、何も文句は無いというのが正直な気持ちである。それ程までにタイキシャトルさんの貢献度は大きかったと思う。

 

 

 トゥインクル・シリーズの王道路線とは違う…だれけども、間違いなくファンの皆さまの心を射貫くレースを見せてくれる舞台で活躍された御三方。

 特にタイキシャトルさんは来年からドリームトロフィーリーグへの移籍が発表されている為、同じチームリギルのフジキセキさん・マルゼンスキーさんとの対決に胸を躍らせておられるファンも多いだろう。

 

 

『──続きまして、【クラシック級・ミス・ティアラ】に輝いたウマ娘を発表致します。栄えあるクラシック級・ミス・ティアラに輝いたのは────271票を集めた…【ムーンオーキッド】さんです!』

 

 ムーンオーキッドさん。今年の“桜花賞”・“秋華賞”を制しティアラ三冠にあと一歩まで迫った素晴らしいウマ娘さんである。

 あと何故かリギルのブライアンさんと、そのお姉さんであるビワハヤヒデさんと凄く仲が良いらしい。実は従姉妹だったりするのだろうか? …まさかね。

 

 

『次に、【最優秀クラシック級ウマ娘】に輝いたウマ娘を発表致します。栄えある最優秀クラシック級ウマ娘に輝いたのは────満票での受賞となりました…【スペシャルウィーク】さんです!』

 

 スペちゃんと一緒に会場からの拍手に一礼して応える俺たち。この部門に関しては、無敗の三冠ウマ娘に輝いたスペちゃんが選ばれなかったら、俺がURA協会様に鬼の抗議をかます事になっていただろう。

 とにかくまずはおめでとう! スペちゃん。

 

 

『次に、【最優秀シニア級ウマ娘】に輝いたウマ娘を発表致します。栄えある最優秀シニア級ウマ娘に輝いたのは────126票を集めた…【サイレンススズカ】さんです!』

 

 おっ! 最優秀シニア級ウマ娘はスズカさんなのか。正直俺はタイキシャトルさんだと思っていたから少し驚いた。

 けど、スズカさんのあの走りは沢山のファンに夢を魅せ、レース場に足を運ぶファンの数を底上げした貢献度を考えると、選ばれるべくして選ばれたと感じる。スペちゃんもスズカさんの名前が挙がって嬉しそうだ。

 

 

『次に、【優秀シニア級ウマ娘】に輝いたウマ娘を発表致します。栄えある優秀シニア級ウマ娘に輝いたのは────128票を集めた…【タイキシャトル】さんです!』

 

 最優秀短距離ウマ娘に続いて、タイキシャトルさんが二つ目の受賞である。

 というか、この投票数からすると…最優秀シニア級部門でもタイキシャトルさんは120票近く集めていたのでは無いだろうか? 最優秀シニア級ウマ娘にはあと一歩、スズカさんには届かなかった感じだろうな。

 でも確かに今年のシニア級の投票は記者泣かせだったと思う。お二人に加えてエアグルーヴさんとメジロブライトさんも居るからね…

 

 

『次に、【ウマ娘部門・特別賞】に輝いたウマ娘を発表致します。今年はお二人のウマ娘が受賞となりました。栄えあるウマ娘部門・特別賞に輝いたのは────【サイレンススズカ】さん・【タイキシャトル】さんのお二人です!』

 

 スズカさんは高い完成度による“大逃げ”という戦法を編み出した今後のレース界への貢献度を讃えて。

 タイキシャトルさんは日本のウマ娘では不可能…と言われていたヨーロッパのレース、それもGⅠを勝利した事による貢献度を讃えての受賞であった。

 …それにしてもタイキシャトルさん凄いな。これで三つ目の受賞である。

 

 

『──さあ、お待たせ致しました。今年最も大きな活躍を見せ、レース界に、ウマ娘界に、そして日本中に最も貢献したウマ娘を讃える…【年度代表ウマ娘】の発表に移らせて頂きます!』

 

 

 そのアナウンスを聞いた途端、スペちゃんの俺の手を握る力が少し強くなった。緊張を必死に抑え込みながら、発表を静かに待つスペちゃん…俺もそんなスペちゃんの手を優しく握り返しその発表を待つ。

 

 

 実績だけで選ばれるのであればスペちゃんで固いのだが…貢献度という部分も問われる以上、その部分で評価をされた娘であれば誰が選ばれたって不思議じゃ無い。

 俺の中ではもちろんスペちゃん一択なのだが、果たしてどうか…

 

 

『今年最も日本中に夢を届けてくれたウマ娘に贈られます…栄えある、今年の【年度代表ウマ娘】に輝いたのは────────何と…満票での受賞となりました! 【スペシャルウィーク】さんです!』

 

 ────っ!! やっっっっったぁぁぁぁ〜!! スペちゃんだ……スペちゃんが【年度代表ウマ娘】に選ばれたんだ!

 

 

「スペちゃん、おめでとうっ──本当におめでとう! スペちゃん!」

 

「お兄さんっ──お兄さんっ!──わっはあぁぁ〜!! やった! やりましたよ! やったぁ〜!!」

 

 

 万雷の拍手に包まれながら、俺たちは喜びで溢れてお互いに力強く抱きしめ合う。

 本当に…本当に良かった。スペちゃんのこれまでの努力がちゃんと報われた気がして、それが何よりも、何よりも俺は嬉しかった。

 

 

 しばらく二人で喜びを分かち合いたい気持ちは俺にもあったのだが、これからスペちゃんはインタビューを受けないといけない為、俺はゆっくりと身体を離し…

 その時の「あっ…」と名残惜しそうな表情を浮かべるスペちゃんに絆されそうになりつつ、俺は鋼の意志でスペちゃんを舞台へと促す。まあ、既に抱き合っちゃった時点で鋼の意志も何も無いんだけども…

 

 

 先ほどスペちゃん以外に選ばれた方々も、今回参加する事が出来なかったスズカさんが居ないものの、全員が舞台で順番にインタビューを受けていく。そして最後に、スペちゃんへのインタビュータイムが始まった。

 

 

『スペシャルウィークさん、この度は共に満票での【最優秀クラシック級ウマ娘】・【年度代表ウマ娘】の受賞! 本当におめでとうございます! 今のお気持ちや、メッセージなどがありましたら聞かせて下さい!』

 

「は、はいっ! こ、この度は栄誉ある賞を頂き、大変光栄に存じましてございますっ…!」

 

 

 スペちゃんへのインタビューに入ったけど……す、スペちゃんガチガチになっちゃってる…

 無理も無いよな……幸い取り返しがつかないほどガチガチではないけど…み、見守る事しか出来ない俺を許してくれスペちゃん…

 

 

「すぅ〜……はぁ〜……あの…えっとですね……今年は…私の中でも…本当に……本当に忘れられない…掛け替えのない一年だったと思っています。…掛け替えのない友達──そしてライバルの皆さんに出逢えた事。…そんな皆さんと一緒に走る事が出来たこの一年間という時間は、本当に私の中での宝物です!」

 

 

 さっきまでガチガチになっていたのが幻だったかの様に、大きく深呼吸を終えたスペちゃんは、真剣な表情で言葉を紡いでいく。

 

 

「お母ちゃんから託された夢から始まって…私もその夢に向かって頑張るぞ! って決めて…そして何より……そんな私を小さい頃から傍で支えてくれたお兄さん──私の大切な…大切なその人が…私のトレーナーさんが、私が走らなくちゃいけない道を示してくれて…そして私と一緒にその道を進んでくれました」

 

「正直……今もまだ道の途中で…まだまだ道の先は長くて……これからも、きっとたくさん大切な事を積み重ねていかなきゃいけないと思っています。……ここまで来るだけでも…正直道は全然真っ平らじゃ無くて、諦めかけた事も…一度や二度じゃありません」

 

「でも……でも、これから先…どんなに大きな壁が立ちはだかっても、一歩一歩向き合って、自分の糧とします。…今の私があるのは、これまでもそうして来たからで……何よりそうしないと…私はここまで支えてくれたお兄さんの下に、胸を張って帰れなくなりますから」

 

「……これからの未来、皆さんが託して下さる夢にどこまで応えられるかは…正直分からないですけど……でも、これだけは皆さんに約束出来ます。……私は…自分が出走すると決めたレースには、必ず出走して闘います。…例えどんなに自分にとって不利な条件が揃ったとしても、必ず皆さんの前で走り切ってみせます。……皆さんの夢に必ず応えるという約束は…今の私では出来ません…本当にごめんなさい。……でも、必ず出走して闘うという事は…私は皆さんに約束出来ます」

 

 

 …スペちゃんの言葉で、会場中は少しの静寂に包まれた。

 どこまでも…どこまでも真っ直ぐで、とても澄んでいて、そんな気持ちが伝わってくるからこそ、俺も含め…皆んなスペちゃんに夢を託したくなるのかもしれない。

 

 

『……では、スペシャルウィークさんの中で…既に来年の目標というのは決まっているという事なのでしょうか?』

 

「はい! …これはお兄さんにも既に伝えているんですけど……来年は“大阪杯”・“天皇賞(春)”・“宝塚記念”・“京都大賞典”・“天皇賞(秋)”・“ジャパンカップ”・“有記念”の順番で、シニア王道路線の完全制覇を目指します!」

 

 

 ザワッ! っと、スペちゃんの宣言を聞いた会場からどよめきが起こる。それはスペちゃんの目標に対してのどよめきでは無い。

 会場中が…そしてスペちゃんの宣言を聞いたライバルの皆さんなら確実に伝わったであろうその真意……

 

 

 そう、これはスペちゃんと俺なりの──

『来年、この7レースでの挑戦ならば全て受けますよ』という、ライバルの皆さんに向けた“宣戦布告”である。

 

 

 俺たちの覚悟を決める為でもあった宣戦布告を終えると同時に、スペちゃんへのインタビューも終了となり、最後にウマ娘部門で選ばれた娘たちへの副賞として新たな勝負服が贈呈され、今年のURA賞授賞式は幕を閉じたのだった。

 

 

 そしていよいよ……スペちゃんが更なる極限に挑むシニア期が、アヤベさんが自身の使命を果たす為のクラシック期が、マックイーンさんがメジロ家に栄誉と名誉を捧げる為の一歩を踏み出すジュニア期が、チームノヴァの新たな年が始まろうとしていた──

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

《北海道・スペちゃんのお母ちゃん・テレビにて二人の抱擁を視聴した直後》

 

「おやおや、スペの奴あんなに嬉しそうな顔しちゃって…こりゃあ、録画しといて正解だったね♪」

 

 

《北海道・主人公の両親・テレビにて二人の抱擁を視聴した直後》

 

「あら〜! あの子ったら…ふふっ♪ これは将来、披露宴で流さないと行けないわね〜♪」

 

「あいつやるな〜! 流石は俺の息子だ!」

 

 

《スペちゃんの宣戦布告を聞いたライバル達》

 

「スペちゃんには必ず勝ちマス…でも、先ずは世界一の称号を手にしてからデス! 先ずはドバイ…その後にフランスに渡って…必ず凱旋門賞を勝ってみせるっ! 世界一のエルになって…その後にスペちゃんとリベンジマッチデース!」

 

「…今のままの私では……スペちゃんには勝てない…春に挑戦するレースは宝塚記念一つに定めて、年明けは…招待を受けていたドバイで、一度世界と戦っておくのが良いかもしれませんね。勝利に繋がる何かを掴む為に……ふふっ、私も少し…エルの影響を受けてしまっているかもしれませんね〜」

 

「なるほどなるほど〜。これは宣戦布告ってやつですかな、スペちゃん? さてさて……どうしますか〜…何故かちょうど私にドバイからの招待状なんかが届いている訳ですし? 面倒なのは嫌だけど…ここは一つ、世界と戦ってみますかな〜……このまま負けっぱなしってのは…ちょ〜っと悔しいとか? 思ったりする訳ですし〜」

 

「宣戦布告って訳ね。…良いじゃない、好都合よ! キングの走りを! 強さを! 今度こそ痛感させてあげるわ! ドバイへの挑戦も捨てがたいけれど…全距離でのGⅠ制覇の為にも、先ずは高松宮記念。そしてヴィクトリアマイルか安田記念を勝利して、宝塚記念でスペシャルウィークさんに勝ってみせる!」

 

「やっと……やっとここまで来られた…やっと皆んなと…スペちゃんと走れるんだ! ここまで本当に…本当に長かった……でも、たくさん頑張ってきたんだ……よぉ〜し、気合い入れて走るぞツヨシ!」




 ここまで読んで下さった方々、本当にありがとうございます! 今回の後書きはかなり長めですが、正直読まなくても一切問題ございませんので、ここで閉じて頂いて大丈夫です!


 ①このお話で名前が出てきたウマ娘さんの史実での名前は下記の通りです。

・ヴォラースイリス→ノーザンレインボー

・フルタカポーロ→アブクマポーロ

・ムーンオーキッド→ファレノプシス


 ②チーム部門ではチームノヴァが選ばれませんでしたが、チーム設立の時期的に規定出走数を満たしておらず選考外となっております。


 ③最優秀シニア級・優秀シニア級の投票数はこんな感じとなっております。

・最優秀シニア級ウマ娘

 126票→サイレンススズカ
 124票→タイキシャトル
 50票→エアグルーヴ

・優秀シニア級ウマ娘

 128票→タイキシャトル
 111票→サイレンススズカ
 59票→エアグルーヴ
 2票→メジロブライト


 ④作中でのスペちゃんのドレス姿のモデルは、ウマ娘一期のBlu-rayBOXでの表紙で描かれていたスペちゃんのドレスです。


 ⑤今回スペちゃんに贈呈された新しい勝負服のデザインは、ウマ娘4thイベントの記念衣装である、【ニュースターズ・ロゼ】です。(この衣装素敵ですね)


 ⑥この拙作での、この年のGⅠ勝利ウマ娘一覧は下記の通りです。(※史実での勝ち馬とは異なる場合があります)

・フェブラリーS:ミールアドバンス(グルメフロンティア)

・高松宮記念:タイキシャトル

・大阪杯:エアグルーヴ

・桜花賞:ムーンオーキッド(ファレノプシス)

・中山グランドジャンプ:カミノスバヤサ(ゴッドスピード)

・皐月賞:スペシャルウィーク

・天皇賞(春):メジロブライト

・NHKマイルC:エルコンドルパサー

・ヴィクトリアマイル:エアグルーヴ

・オークス:リエモワード(エリモエクセル)

・日本ダービー:スペシャルウィーク

・安田記念:タイキシャトル

・宝塚記念:サイレンススズカ

・スプリンターズS:タイキシャトル

・秋華賞:ムーンオーキッド(ファレノプシス)

・菊花賞:スペシャルウィーク

・天皇賞(秋):サイレンススズカ

・エリザベス女王杯:メジロドーベル

・マイルCS:タイキシャトル

・ジャパンC:スペシャルウィーク

・チャンピオンズC:フルタカポーロ(アブクマポーロ)

・阪神JF:ケンヴィリー(スティンガー)

・朝日杯FS:テイエムオペラオー

・中山大ハードル:ヴォラースイリス(ノーザンレインボー)

・ホープフルS:ナリタトップロード

・有マ記念:スペシャルウィーク


 《海外レース》

・ジャック・ル・マロワ賞:タイキシャトル

・モーリス・ド・ギース賞:シーキングザパール

・香港カップ:ミッドナイトレイズ(ミッドナイトヘッド)


 《地方レース》

・川崎記念:フルタカポーロ(アブクマポーロ)

・かしわ記念:フルタカポーロ(アブクマポーロ)

・帝王賞:フルタカポーロ(アブクマポーロ)

・ジャパンダートダービー:レゼルフレッシュ(ウイングアロー)

・南部杯:レイメイオペラ(メイセイオペラ)

・JBCクラシック:フルタカポーロ(アブクマポーロ)

・JBCスプリント:デュエルレーザー(バトルライン)

・JBCレディスクラシック:ヨーヨーマリナス(トーヨーシアトル)

・全日本ジュニア優駿:オウゴンタイアーラ(ゴールドティアラ)

・東京大賞典:フルタカポーロ(アブクマポーロ)



 次回はアヤベさんの共同通信杯・駿川たづな記ね──ごほんっごほんっ……トキノミノル記念になると思います。(文字数が予測できましたらスペちゃんの大阪杯まで書くと思います)


 この後書きまで読んで下さった方は、読んで下さって本当にありがとうございました!
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