スペちゃんとチート持ち転生者の幼馴染   作:成田 きよつぐ

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 誤字脱字のご報告・お気に入り・ご評価・ご感想を下さった方々、本当にありがとうございます!

 まず初めに私事で恐縮なのですが……7月から続いていた仕事のイレギュラーがようやく片付きましたぁぁ〜!

 ご感想を下さった方を含めて2ヶ月間もお返事が出来ず、本当に申し訳ございませんでした。
 皆様のご感想やご評価はいつも私の励み・力になっておりますので、またお一つずつお返事をお返しさせて頂きます! 本当にいつもありがとうございます!


 ※この拙作でのレース賞金は2023年時点を参照としております。




スペちゃん・シニア級 アヤベさん・クラシック級
新年会/出世レース・GⅢ・共同通信杯


 

 

 

 

 

 

 

 スペちゃんが年度代表ウマ娘に輝くという……

 今後どれだけの時を経ようとも、俺の中では一生忘れる事が出来ない喜びに包まれた日から2日が経った今日の日付は1月1日。

 

 

 世間の皆様も思い思いのお正月を過ごされているであろう本日、此処トレセン学園もカフェテリアなどの学園設備がお休みになったりとお正月ムードは漂っているものの、

 本日の夕方に新春イベントである【ウィンタードリームトロフィー】が開催される事もあり、中々完全なオフシーズンとはいかないのがこの業界の大変な部分の一つかもしれない。

 

 

 特に東条さんや沖野さんの様に沢山のウマ娘さん達を輝かせている方は、担当している娘達のローテーションによっては365日全て気が抜けない年とか有るのでは無いだろうか…

 というか東条さんも沖野さんもチームメンバー的に今がまさにそうなのでは無いだろうか? ……そう考えるとやっぱりお二人を始め、この学園のトレーナーさん達には本当に尊敬の念しか無いよな。

 

 

 俺なんかはチートに甘えまくっているから何とか熟せているだけだからね…何とも恥ずかしい話だけど、持ってるモノは使わせて貰うぜ! その代わりこの力を使って出来る限りウマ娘界にも貢献していくぜ! と俺は開き直る事にしている。

 

 

 まあこんなカッコ付けてる割には昨日の大晦日は普通にお休みだったんだけどね……前にたづなさんにも休むって約束してたし、それにやっぱりさ? いくらチート持ちとは言っても休む事って凄く大事だと思うんだよね〜。

 ……いや本当だよ? 決して『休むとは言ったけど…この間作ったフットマッサージャーとかトレーニング機器の供給数を増やしたいから、年末年始も働いちゃうべ〜♪』とか能天気に考えてて、下半期の給与明細とかの書類を受け取りに行った際に…

 

 

『トレーナーさん? 年末年始の“お休み”はどの様に過ごされるんですか? もしかして──年末年始も働いちゃおう…なんて考えてはいらっしゃいませんよね? トレーナーさん♪』って、微笑みながら覇気を放つたづなさんに言われたから休んだ訳では決して無いよ?

 目が全く笑ってなくて…あの瞬間は生きた心地がしなかったけど、ほんとにほんとに本当だよ? チート持ち嘘ツカナイ。

 

 

『も、もちろんですよ〜…チ、チームの皆んなも帰省とかは見送るみたいですので…ね、年末も年始も〜…そ、そう! み、皆んなで美味しい料理でも食べながら…の、のんびり過ごそうかな〜ってお、思ってましたから〜…あ、あはは…』と、俺の情けない声を上げながらの宣言を聞いて何とかたづなさんは覇気を鎮めてくれた。

 その様子を苦笑いしながら見守ってくれていた秋川理事長には本当に申し訳ない事をしたと反省しております。

 

 

 因みにその後たづなさんから受け取った下半期のスペちゃん・アヤベさん・俺の給与明細の額が…主にスペちゃんの額がとんでもない事になっていたのだが、たづなさんからの覇気の方が凄すぎて、俺は上半期の時ほど慌てる事は無かった。

 まあ現実逃避とも言うんだけどね…もうさ、額が額だから最早どうしようも無いんだよね…勿論頂ける事は嬉しい事なんだけれども。

 

 

 税金などを差引されての支給でも、デビュー戦を勝利したアヤベさんはおよそ【300万円】。京都新聞杯・菊花賞・ジャパンカップ・有記念を制し、更には三冠達成ボーナス3億円も含めたスペちゃんの支給額はおよそ【5億円】。そしてトレーナーである俺にはおよそ【1億2000万円】。

 …ね? ギャグみたいな金額でしょ? 金額を知った時アヤベさんとマックイーンさんはまだ冷静だったけど、スペちゃんと俺は全てを諦めて遠い目をしてたからね……本当ちゃんと使い道考えないとな…

 

 

 そんなこんながありつつも、年末はトレーニングをいつもより早めに切り上げて各々が比較的のんびり過ごす一日となった。

 スペちゃんは同期の娘達とお出かけに。アヤベさんはご実家の弟さん達へのお年玉の手配などを。マックイーンさんは同じメジロ家の娘達との交流会に。俺は年始に皆んなで食べるおせち料理などをのんびり作ったりして過ごしていた。

 

 

 実家に帰省する事も可能ではあったのだろうが、アヤベさんとマックイーンさんは年始からもトレーニングに励むつもりとの事で帰省はせず。

 スペちゃんと俺も、スペちゃんのお母ちゃん・俺の両親からも『帰って来たい時にいつでも帰っておいで』と温かい言葉を貰えたので、帰省は見送りトレーニングに費やす事を決めている。

 

 

 とは言ってもたづなさんとの約束があるから今日は皆んなでおせちを食べて、あとはコレを皆んなに渡して、トレーニングは早めに切り上げて、初詣は…アヤベさんが人混み苦手だから後日でもいいかもな。

 なんて考えながらトレーナールームでおせち料理を並べていると、学園がお休みのため制服ではなく私服に身を包んだ皆んながやって来た。

 

 

「──お兄さん、明けましておめでとうございます! わああぁ〜! お、美味しそう〜! これ全部お兄さんが作ってくれたんですか? うっはああぁ〜っ!」

 

「明けましておめでとう。…これは……おせち? …相変わらず器用なのね…」

 

「トレーナーさん、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致しますわ。…それで、このお料理は? トレーナーさんが作ってくださったんですの? …め、メジロ家が取り寄せるおせち料理よりも…盛り付けが綺麗なのですが…」

 

「やあ皆んな、新年明けましておめでとう。今年もよろしくね。折角のお正月だから作ってみたんだけど、良かったら皆んなで食べよう」

 

 

 おせちを見て目を輝かせながら尻尾が機嫌良く振られているスペちゃんに、やや呆れ気味のアヤベさん、苦笑いを浮かべつつ複雑そうなマックイーンさん、俺はそんな皆んなを以前に時間が空いた時に創ったダイニング炬燵テーブルへと案内していく。

 ほら、外は寒かったでしょ? 手洗いうがいをしたら、とにかく温まるから座って座って。そして細かい事は気にしない様にして。色んなモノを創ってたら最近一部から『アイツ発明家とかのほうが向いてんじゃね?』とか言われてるらしいから…

 

 

 俺のそんな願いが通じたのか、はたまたもう諦めているのか、北海道育ち故か防寒具はコート1枚のみだったスペちゃんが、鼻唄を口ずさみながらハンガーにコートを掛けるのを見て、アヤベさんとマックイーンさんも上着を掛けて三人で洗面所へと向かって行く。

 ……にしてもアヤベさんの服装…耳当て・手袋・ブーツに至るまでモッコモコだったな…寒いのは得意って言ってた気がするし、体調が悪そうでも無かったけど…流石にあの格好で人混みは辛いだろうから初詣は後日にしよう。

 

 

 ──程なくして戻って来た三人が席に着いたのを確認して、改めて新年の挨拶と共に人参ジュースで乾杯を行った俺たちは、各々で食べたい物からおせち料理に手を伸ばしていく。

 

 

「ん〜っ! 美味しい〜! お兄さん、凄く美味しいです! お店で買うおせち料理って、冷たかったり味付けが甘すぎたりして、ちょっと味にトゲがあるな…って感じる事が多いんですけど、お兄さんのおせち料理は温かくて、味付けも和風出汁とお醤油の風味が食材とマッチする様に味付けされていて、ご飯と一緒に食べても美味しいんだろうなぁって思うぐらい味の統一感が凄いです! やっぱりお兄さんの料理はどれも美味しいなぁ〜」

 

「──ッ! …確かに、凄く美味しい。家の弟たちもおせち料理は苦手であまり食べたがらなかったけど、貴方のおせち料理なら小さい子でも美味しく食べられそうな……その…優しい味がして…とても美味しい……と思うわ」

 

「おせち料理も大変美味しいですけれど、この祝い鯛が焼いている物では無く、活き造りになっているのもとても食べ易いですわね。普通はにらみ鯛のために姿焼きに致しますが…味が少し淡白になってしまいますものね。ですがこのお造りは旨みと甘みも然る事ながら、歯応えがしっかりしているのに残り過ぎない…本当に、メジロ家でお雇いしたいぐらいですわ。これ程のお料理の腕前を持つお方は中々いらっしゃらないと思いますし…」

 

 

 やだな〜、この娘たちは〜。そんな褒められても何にも出ないよ〜? でも取り敢えず今は懐がとても暖かいから、欲しい物があったら遠慮なく俺に言ってごらん? 今の俺なら思わず何でも買ってあげちゃうかもしれない! …まあ三人ともそんな事を言う娘達じゃ無いけども。

 

 

 そうやって俺たちは終始和やかに会話を楽しみつつ、おせち料理を平らげていった。

 流石に体が資本でもある彼女たちに『しばらく食事はおせち料理のみ』なんて事は言えないので、今日一日で食べ切れる量を作ったのだが、この感じだと無事に食べきれそうなので一安心だ。

 

 

 ──おせち料理を平らげ、食後の抹茶ロールケーキを皆んなで楽しんでいると、丁度【ウィンタードリームトロフィー】の発走時刻となった。

 ウィンターとサマー問わず、短距離・マイル・中距離・クラシックディスタンス・長距離・ダートの6部門に、かつてトゥインクル・シリーズを沸かせたスターウマ娘たちが集うまさに夢のレース。また、今年は東京レース場での開催である。

 

 

 果たして誰が勝つのやら…ふと周りを見てみると、スペちゃんもアヤベさんもマックイーンさんも、ジッとレースの発走を見守っていた。

 ……いずれ皆んな、必ずこの舞台に立てる力を持っている娘達だ。今日のレースから刺激を貰って、この後のトレーニングでオーバーワークし過ぎない様に注意しないと…なんて事を思いながら、俺もテレビの向こうのレースへと意識を向けた。

 

 

「──今日のウィンタードリームトロフィー、どの距離のレースも凄かったですね。私も…もっともっとけっぱらないと!」

 

(一流の人達のぶつかり合い、学べる事も多かったわね)

 

「メジロのウマ娘として…わたくしも必ずこの舞台に立ってみせませんと!」

 

 

 どの距離部門も白熱したレースで幕を閉じた今年のウィンタードリームトロフィー。

 そんな熱いレースを観て気持ちが昂らない訳が無く、三人共が闘志を昂らせている事を感じ、改めて今日のトレーニングの監修を気を付けねばと俺は気持ちを入れ直す。

 

 

 因みに各部門の優勝者は、

 

 短距離(1200m)→バンブーメモリーさん。マイル(1600m)→タイキシャトルさん。中距離(2000m)→オグリキャップさん。クラシックディスタンス(2400m)→ルドルフさん。長距離(3400m)→スーパークリークさん。ダート(2100m)→イナリワンさん。という結果である。

 

 

 皆さん凄かったけど…その中でもやっぱりルドルフさんの走りは圧巻の一言であった。今日のレースも含めて、ドリームトロフィーリーグに参戦してからここまで負け無し。

 今日のレースでは、同じくリギルのブライアンさん、先輩であるミスターシービーさんお二人の三冠ウマ娘の猛追を寄せ付けない…まさに完勝と言える内容での勝利だった。

 てかルドルフさん、何か年々強くなっていってるんだよね……ルドルフさんは勿論だけど、彼女を支えてる東条さんもヤバ過ぎでは無いだろうか?

 

 

 今度お会いした時にちゃんとお祝いのお言葉を伝えるとして、取り敢えず今はメールで『マイル部門・クラシックディスタンス部門での優勝、本当におめでとうございます』と伝えさせて頂いた。

 後日、東条さんから『ありがとう。近い将来、貴方達とあの舞台でも走れる事を楽しみにしているわ』と、笑顔で言われた事はまた別の話である。

 

 

 ──さて、ウィンタードリームトロフィーのウイニングライブも閉幕し、俺たちも後片付けを終わらせて本日のトレーニング──の前に、俺は皆んなに用意させてもらったあるモノたちを渡すべく、皆んなに声を掛けた。

 

 

「そうだ皆んな、トレーニング前に一人ずつ渡したいモノがあってさ。ちょっと待っててね……よ、っと……先ずはアヤベさんにはコレを。アヤベさんとマックイーンさんのは、ちょっと嵩張っちゃって申し訳ないけど」

 

「えっと…これは…? ……キャンプ用のテントと…ベッド…?」

 

「うん、お年玉──の代わりのプレゼントと言うか…まあ正直、折角作ったモノだから使い心地の感想を聞きたかった…と言うのがあるんだけどね。片手で持てるぐらいの大分コンパクトに折り畳める様には作ったんだけど、もし良かったらキャンプする時に使ってみてよ」

 

 

 そう、俺が皆んなに用意させて貰ったのはお年玉代わりのプレゼントである。

 こういったモノは気持ちが一番大切なので、普通にポチ袋で渡そうかとも思ったのだが…最悪受け取りを断られた時に『俺が持っていても仕方がないから』と、そのまま押し付けちゃう事が出来る悪魔の作戦である!

 

 

 アヤベさんには普段キャンプをされるとの事だったので、折り畳めて収納にも困らないソロ用テントと、コチラも折り畳めるフワフワ簡易ベッドである。

 チートフル活用で、二つ揃っても片手で持てるぐらいのコンパクトさになっちゃったのはご愛嬌である。

 

 

「作ったって…また? いえ、それ以前に貰えないわよ。普段から貴方には貰ってばかりなのだし、バランスがおかしくなるでしょ。だから…」

 

「まあでも俺が持ってても使わないし、言った通り使い心地の感想も聞けたらと思ってるから、気にせず使ってくれたら嬉しいな」

 

「いやだから……はぁ……全く…分かったわ。これ以上言っても貴方は譲らなそうだし…丁度テントは買い替えようと思っていた所だから、使わせてもらうわ。……その……ありがとう…」

 

 

 そう言って渋々ながも、アヤベさんは俺が用意したプレゼントを受け取ってくれた。ごめんね押し付けちゃって。

 使い心地が少しでも悪かったらすぐに手直しするからさ? それで許してアヤベさん。

 

 

「次にマックイーンさんには…はいどうぞ。ある程度日にちは保つ様に作ってるんだけど、スイーツだからあんまり長持ちはしないのが申し訳ない。でも結構自信作だから、マックイーンさんも感想を聞かせてくれたら嬉しいな」

 

「す、スイーツっ…こ、コホンっ…何だか申し訳ございません。トレーナーさんにはいつも頂いてばかりで…後日必ず何かお返しをさせて頂きますわ。…それにしても…少し大きいのですね? ケーキか何か……これは…め、メロン?───って!? こっ、このメロンは──ッ!?」

 

 

 そう言って驚愕の表情を浮かべるマックイーンさん。流石メジロ家のご令嬢、一目見てそのメロンに気づくなんて。

 そう、そのメロンは何を隠そう……一年に5玉程度しか市場に流通しない幻のクラウンメロン! 嘘か誠か、このメロンの皮を標本にすればどんな絵画よりも価値があるとか無いとか…

 

 

 ……ん? 何でそんな貴重なメロンをお前が持ってんのかって? だって…ね? このメロンの産地……俺の実家なんだもん…

 まさか子供の頃に、はっちゃけチート品種改良しちゃったやつがこんな事になるとは思わなくてさ…まあでもやっちゃったもんは仕方ないべ!

 

 

 そして今回マックイーンさんに贈らせてもらったのは、そんな我が実家のメロンを1玉丸ごと使って作った、外からの見た目はメロンそのままだが…

 中身はメロンの果肉をくり抜いてスポンジケーキを詰め込み、そこにメロンの生クリーム・果肉・苺をミルフィーユ状に重ねて作りあげた、ウマスタ映え必至のそのままメロンケーキである。

 

 

 幻のメロンと言われてるぐらいなので普通に食べても美味しいのだが、ぶっちゃけ俺はいつでも手に入るので何か一手間加えたくなっちゃったんだよね…貴族の遊びをしてるみたいで世間の皆さまにはちょっと申し訳ないんだけど。

 

 

「と、トレーナーさんッ! ほ、本当にッ、本当にコチラを頂いてもよろしいんですのッ!? い、いえッ、そ、そもそもッ! トレーナーさんはこのメロンをどちらでッ!? どちらで手に入れられたのですかッ!?」

 

「ま、マックイーンさん? お、落ち着いて落ち着いて…」

 

「落ち着いてなどいられませんわッ!! トレーナーさんはこのメロンを価値をご存知無い訳では無いのでしょうッ!?」

 

 

 圧が凄いッ!? ちょっと怖いッ怖いよ? マックイーンさん? 普段のお淑やかなマックイーンさんからは考えられないほどの勢いと熱量に圧倒される俺…

 

 

「…そのメロンが一体なに? そんなに大騒ぎする程の事なの?」

 

「騒ぐなと言うほうが無理なお話ですッ…わたくしも含めて一体どれほどの方々がこのメロンを求めて、そして諦めていかれたかッ! 市場には先ず出回らない、栽培方法も不明、産地すらも不明…どれだけ調べても一切の手掛かりすら見つからない…そんな幻のメロンがッ! 今わたくし達の目の前にあるんですのよッ!?」

 

「そ、そうだったの…そんな貴重なメロンだとは知らなかったわ…その、ご、ごめんなさい」

 

 

 す、凄い…あのアヤベさんすらマックイーンさんの勢いに負けた!? てかどうしよう…軽い気持ちで用意しちゃったけど、まさか家のメロンがそれ程までに噂になってるとは思ってなかったよ…

 俺もスペちゃんも小さい頃から家族と一緒にバクバク食べちゃってたんだけど……そんな事を今のマックイーンさんに伝えたら更なる火種になりそうだから暫くは黙っておかないと…

 

 

「…? あれ? でもそれってお兄さんのお家で採れるメロn──」

 

「さあ〜てッ!! 最後はスペちゃんへのプレゼントだよ! のんびりしてたら、この後トレーニング出来なくなっちゃうからね! マックイーンさんも、あんまり細かい事を気にしちゃったら美味しく食べられないよ?」

 

 

 ポソっとスペちゃんがとんでもない燃料を投下しかけたのを、俺は強引に遮ってこの話を終わらせる。

 未だ釈然としていないマックイーンさんには申し訳ないけど、いずれ俺の実家で採れる事も伝えるから許してください。また定期的に差し入れもするから。

 

 

 心の中でマックイーンさんに謝りつつ、最後に俺は一連の流れに不思議そうな顔を浮かべているスペちゃんへのプレゼントが入った封筒を取り出す。このままだとこの娘も俺もボロを出しちゃうかもしれないからね。

 

 

「──じゃあ最後に…はい、どうぞスペちゃん。開けてみて。お二人のプレゼントに比べたらかなり小ぶりだけど…結構悩んだ挙句に選んだ物だから、喜んで貰えたら嬉しいな」

 

「そんな、お兄さんのお気持ちだけでも私は凄く嬉しいです! …って言いつつも、プレゼントの中身も楽しみなんですけど…でも本当に嬉しいなぁ〜、何だろ〜?」

 

 

 そう言ってワクワクした様子で封筒を開封するスペちゃん。喜んでくれると良いんだけどな…ちょっとドキドキする…

 

 

「──これ…っ…わああぁ〜! お兄さん、もしかしてこれ! シャイニーランドの年間パスポートですか!? うわぁ〜! 小さい頃、私が行ってみたいって言ってた事を覚えててくれたんですね! やったぁ〜!」

 

 

 そう、俺がスペちゃんへのプレゼントとして選んだのは…

 5カ国・6箇所ものテーマパークが存在し、世界中の人々へ笑顔を届けている夢と魔法の国──【シャイニーランド・シャイニーランドシー】共通の年間パスポートである。

 

 

 小さい頃にスペちゃんが『行ってみたいな』と言っていた事を覚えていた為、今回のプレゼントに選ばせてもらった訳だ。

 それにしても…年間パスポートを両手で天に掲げる様に持ちながら、ピョンピョンと身体全体で喜びを表現してくれるスペちゃんの様子に俺は一安心する。

 フッフッフッ、さあ、これを機会にお友達と存分にシャイニーランドを満喫してくるが良い! スペちゃん!

 

 

「本当にありがとうございます、お兄さん! 絶対今度一緒に行きましょうね!」

 

「うん、そうだね〜、今度一緒に───って…へ? 一緒に? ……え? 一緒に? い、いや、す、スペちゃん? あ、あの…い、行くならお友達と行った方が──」

 

「ふんふん〜♪ 楽しみだな〜♪ どこから回ろっかなぁ〜♪ パレードも観たいし、乗りたいアトラクションも沢山あるし、食べ歩きとかもしてみたし──どうしよう? 迷っちゃうな〜♪」

 

「えっと…す、スペちゃ──」

 

「1日じゃ全部回り切れないだろうから…お兄さん、何日かに分けて行きましょうね♪」

 

「…ソ、ソウダネ〜…オ、オレモ〜、ソ、ソウオモウナ〜…ハ、ハハッ…」

 

 

 拝啓、我が尊敬する自慢のお父上。貴方が教えてくれた『女性の笑顔と涙に男は勝てない』という教えを、貴方の愚息は今改めて痛感しているところでございます…

 

 

 説得を試みるも、ひまわりの様な笑顔ではしゃいでいるスペちゃんの姿にコンマ2秒で俺は陥落である…天より授かりしこのチートをフル稼働させても一切意味を為さなかったよ……スペちゃん、恐ろしい娘ッ!

 

 

 いや全然一緒に行くのは良いんだよ? でも、ああいう場所って男と行くよりも女の子同士で行くほうが楽しい感じしない? それにほら、男の人が行くのは何か恥ずかしいじゃん? あの場所?

 ぶっちゃけ俺の中ではURA賞受賞式よりも緊張するかもしれない……いや行くよ? 行きますとも。スペちゃんからのお誘いを断る事なんてしませんよ? 

 

 

 だからアヤベさんもマックイーンさんも…俺たちのやり取りを見て、先程から俺に対して呆れた目線を向けるのは止めてお願いッ! めちゃくちゃ心にグサグサ刺さってるから! めちゃくちゃ心が痛いから! だから止めてくださいお願いしますッ!

 

 

 結局アヤベさんとマックイーンさんからの目線はトレーニングが始まるまで止むことは無く…身から出た錆なので一切同情の余地は無いのだが、俺の心が大根おろしの如くすり減っていくのを大いに感じながら、俺たちチームノヴァの新年は明けて行ったのだった……いや〜スペちゃんとのシャイニーランド楽しみダナ〜

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

 色々とあったお正月を昨日の出来事の様に感じる今日この頃だが…早いもので、もう既に年が明けてから一月以上が経過した本日・2月14日は世間も浮き足立っているバレンタインデー…ではなく、

 アヤベさんが初めての重賞へと挑む【GⅢ・共同通信杯】の当日であり、俺とアヤベさんは現在東京レース場の控え室にて待機中である。スペちゃんとマックイーンさんも応援に駆け付けており、先ほど一足先にゴール前のスペースを確保しに向かってくれた。

 

 

 アヤベさんの体調・調子は朝から確認している限り問題無さそうだ。身体のバランスなんかも崩れてないし、レースは生き物なので100%の断言は出来ないが、怪我のリスクもかなり低いだろう。後はトレーニングの成果を存分に発揮して来てくれる事を祈るのみである。

 

 

 年が明けてから今日までのトレーニングは、今まで鍛えてきた筋肉の連動・身体の完全制御。それによる負荷の少ない走り・スパート能力の強化・道中の追走力の強化などを改めて鍛え直す、いわゆる基礎固めの様なトレーニングを皆んなで行ってきた。

 

 

 基本的にウチは三人共が同じトレーニングを一緒にやる。という方式よりも、各々の適性や課題に合わせてトレーニング内容は別々である事が多かったのだが、

 今年は三人全員が本格的にレースに参加出来る年の為、一緒にトレーニングを行う機会が増える事が予想される。それに向けて年明けからこの約一月間は、三人一緒に基礎固めのトレーニングに費やす形を取らせてもらった。

 

 

 理由としては今後一緒にトレーニングする時の為に、お互いにトレーニングする際のリズムをこれを機に感じて欲しかったからである。

 というのも正直…これだけの期間、三人一緒に同じトレーニングを出来るのがこの時期しか無かったのだ。

 

 

 スペちゃんが今年シニア級、アヤベさんがクラシック級、マックイーンさんがジュニア級。

 それぞれのトゥインクル・シリーズでのクラスが違う為レーススケジュールがバラけやすい上に、スペちゃんとアヤベさんは春シーズン大忙しだから…出来るだけ早い方が良かったからね。

 まだ比較的気持ちにゆとりがある時期でもあったし、春シーズン以降はレース間隔的にどうしても少しピリピリするからな…

 

 

 とまあ、そう言った理由により今日まで基礎固めのみを行ってきた状態で初めての重賞に、本日の共同通信杯に挑むアヤベさんなのだが──

 

 

「……。(…脚は温まってる。コースのイメージも仕掛けどころも…日々のトレーニングのお陰で叩き込めてる)」

 

 

 念入りに身体をほぐしながら、静かに闘志を高めているアヤベさんに俺は感嘆するばかりである。

 初めての重賞の舞台…緊張でガチガチになっても不思議では無いんだろうけど、どうやらアヤベさんには要らぬ心配だった様だ。

 

 

 ──コンコンッ

 

『アドマイヤベガさん、そろそろお時間です。準備のほどよろしくお願いします!」

 

 

 アヤベさんの心の強さに改めて感心していると、ノックの音と共に扉の向こうからスタッフさんの声が聞こえてきた。

 

 

「──はい、お声掛けありがとうございます。アヤベさん、行けるかい?」

 

「ええ、問題ないわ」

 

「よし、それじゃあ俺もゴール前で二人と一緒に見守ってるから、思いっきり走っておいで」

 

「……心配ない、今日も…勝つだけ」

 

 

 決して大きな声では無かったけれど、はっきりと勝利宣言を残し、その言葉に裏付けされた揺るぎない覚悟を纏った足取りで…アヤベさんはターフへと向かって行った。

 

 

 そうして、アヤベさんの今後を占う上でも重要である…【GⅢ・共同通信杯】の幕が上がった──

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

『──東京レース場・第11レース。本日のメイン競走はGⅢ・共同通信杯です。【芝の1800m・天候は晴れ・バ場状態は良】の発表・出走ウマ娘15人で争われます』

 

 

『いや〜解説の板垣さん、このレースからは過去にミスターシービー・ナリタブライアンの三冠ウマ娘二人を始め、一昨年のメジロブライト、昨年は降雪の影響でダート開催となりましたが、あのエルコンドルパサーもこのレースから羽ばたいていった…非常にここ近年では注目されている出世レースですね』

 

『そうですね。今挙げて頂いた四人以外にも沢山の名ウマ娘達を輩出しているレースですし、今年も楽しみなメンバーが揃っていますから、一ウマ娘ファンとしてもココは注目しております』

 

『その中で板垣さんは現在1番人気に推されております⑮のアドマイヤベガに注目されているとの事でしたね』

 

『はい、もうデビュー戦の勝ち方、そしてタイムがかなり次元が違う内容だったので、まあ人気通り皆さん注目されてるウマ娘ではあるんですけど、初の重賞の舞台でどんな走りを見せてくれるのか本当に楽しみですね』

 

『何と言ってもデビュー戦のタイムでいきなりシニア級・重賞クラスのタイムを叩き出しましたもんね。今日のレースは勿論、現クラシック級ウマ娘の中でもトップクラスの注目を誇っているウマ娘です。…さて、場内ではファンファーレが鳴り響いて枠入りも始まっておりますが…最後に板垣さん。今日の展開はどの様にみておられますか?』

 

『う〜ん、そうですね…まぁ⑤のプチフォークロアが逃げ宣言をしているので、行きっぷりがとても良い娘ですし彼女がペースを作ると思います。そうなると…この娘はスローに落としたいと思うんですけど…今回は先行勢も多いので、中々スローには落とせないかもしれませんね。なので道中は割と流れるんじゃないのかな? と思っております』

 

『…となると、追走に失敗してしまうと挽回が効きづらい、真に地力が試される様な紛れのないレースになりそうな予感がしますね』

 

『私もそう思いますね。しかもプチフォークロアはスローに落とせなかったとしても、逃げた時はかなり粘り強いですからね。後ろの娘たちはあんまり道中の追走で脚を使ってしまうと…最後に脚が上がってしまって差し届かない。という事も大いにあり得ると思いますよ』

 

『なるほど…そのあたり道中の各ウマ娘の動きにも注目です。──さて残す枠入りはあと一人。大外⑮アドマイヤベガが、今静かにゲートに向かいます。注目の1番人気です。果たして今日はどんな走りを見せてくれるんでしょうか?』

 

 

『───⑮アドマイヤベガも今ゲートに収まって…発走準備が整いました。数多くの名ウマ娘たちを輩出している注目の出世レースです。偉大な先輩たちに続けるか?』

 

『──さあ、ここから羽ばたいて行こう! GⅢ・共同通信杯───今飛び出しました〜!』

 

 

『大きな出遅れはありませんでした。さあ注目の先行争いですが、⑤のプチフォークロアがハナを主張して行きました! ここは宣言通り⑤プチフォークロアが先頭に立ちます。リードは1バ身ほど、その後ろに内から①のゾウシンウインダム。外から⑥のルッキーアース。この二人の間に③インファイトキッド。更に⑭ショカツパシオンも前に行って先団グループがやや固まった状態で向こう流しに入ります』

 

 

『この先団グループから2バ身ほど離れた6番手に②のイットウテガラ。⑨のイネステンオーが並んでいます。その半バ身後ろに内⑦リオナドシュチー。真ん中⑧のザプルフィールド。外に⑫ミュージックアース。中団グループも同じく固まっています』

 

 

『この中団グループを見る様に3バ身後ろから⑩のワカタケテルテル。少し後ろに⑬ジョッキグラード。そこから更に1バ身ほど切れまして⑪のワイバーンブリットが居る。その直後には④トウシュンが控えていて、一番人気⑮のアドマイヤベガは何と最後方追走です』

 

(…まだ…胸は熱くない…それに…トレーニングで予習していた通りのペース…焦る必要は無い…)

 

 

『各ウマ娘これから3コーナーに向かいます。⑤プチフォークロア変わらず先頭です。リードを2バ身に広げました。2番手には⑥のルッキーアースが上がって、今残り1000mの標識を通過。3番手は半バ身差で①ゾウシンウインダム。③インファイトキッド。外から⑭ショカツパシオンの3人が並んでいます。更に中団グループから②のイットウテガラ。⑨のイネステンオーが位置を上げて前のグループに取り付く構えか? ここから3、4コーナー中間に向かいます』

 

 

『後は3バ身下がって⑦リオナドシュチー。⑧ザプルフィールド。この2人を外から交わして行ったのが⑫ミュージックアースと⑬ジョッキグラード。残り800mを通過。1000mのタイムは58.2。やはり流れています』

 

 

『後続勢、後は2バ身ほど離れて⑩のワカタケテルテル。⑪ワイバーンブリット。④のトウシュンがやや遅れて、そのトウシュンから更に1バ身後ろの最後方に未だ⑮アドマイヤベガが控えている。これは大丈夫でしょうか!? 先頭集団はもう間も無く第4コーナーのカーブに入りますが、1番人気アドマイヤベガは未だ最後方!? ここから届くんでしょうか!?』

 

(…余力は十分…ここまでの追走も、ラストスパートへの持っていき方も…驚くぐらい身体が覚えてる…仕掛けどころは……そろそろ…ッ)

 

 

『さあ残り600mを通過して、逃げる⑤プチフォークロアがリードを保ったまま、後続勢を引き連れて、第4コーナーのカーブから直線コースに入りました! プチフォークロア先頭です! リード2バ身、3バ身! 後ろは内から①のゾウシンウインダム、外目から⑭ショカツパシオンが必死に追っている! 更にバ場の真ん中から②のイットウテガラが追い上げて来る! そして⑮アドマイヤベガようやく今、後方5番手辺りまで上がってきましたが、まだ前までは10バ身以上あるぞ!? 果たして届くのか!? 残り400mを通過ッ!』

 

(──ッ! 胸が…熱い…ッ…もっと先へ、もっと速く、ここから──一気にッ!)

 

 

『先頭はまだプチフォークロア粘る粘る!! リードまだ2バ身! 後続勢なかなか差を詰められないッ! ⑭のショカツパシオンと②のイットウテガラが2番手争いから前に届くかどうか!? おっと!? そして大外から⑮アドマイヤベガがジワジワと迫って来た──いやッ!? ここで一気に加速したぁぁぁ〜ッ!! アドマイヤベガ外から一気に撫で斬るッ! 撫で斬るッ! とんでもない脚で逃げるプチフォークロアを捉えにかかるッ! 残り200mを通過ッ!』

 

「──勝つッ…っ、はああああああぁぁ〜ッ!!」

 

 

『プチフォークロア懸命に逃げるが──あっという間に交わしたぁぁぁ〜ッ!! アドマイヤベガ先頭ッ! アドマイヤベガ先頭ッ! まだ脚色は衰えないッ!? リード2バ身!3バ身! まだ突き放していくッ!? 2番手⑤のプチフォークロア! 3番手には②のイットウテガラが上がっているが! 前は既に5バ身以上の差が出来ているッ!! ⑮アドマイヤベガッ!! コレは脚が違うッ! 次元が違うッ! ここでは格が違ったッ! 今ッ、圧勝で───ゴォォールイン〜ッ!! …2着に⑤プチフォークロア! 3着に②のイットウテガラ!』

 

 

『──府中が響めくッ!! なんと勝ちタイムが“1分44秒0”〜!? レ、レコードですッ!! 共同通信杯のレースレコードどころかッ! 東京・芝1800mの日本レコード〜ッ!! とんでもない走りで府中を駆け抜けました! ⑮アドマイヤベガッ!!』

 

 

『いや〜…板垣さん……これはちょっと…とんでもない走りを見せてくれましたね。アドマイヤベガは…』

 

『いや空いた口が塞がらないですね…これは……道中はね〜、4コーナーに入るまで最後方でしたし…逃げたプチフォークロアも結構伸びてましたからね…これは流石に届かないだろうな〜と思って観てたんですが……最後はもう、一人だけまさに次元が違いすぎましたよね。あの位置から結局7バ身ぶっ千切ったわけですから…いや本当に、ただただアドマイヤベガが強過ぎたとしか言えないですね』

 

『道中は最後方から直線だけで前を纏めて撫で斬る。直線一気とはまさにこの事と言える走りでしたけど、今日の走りを見るとナリタトップロードやテイエムオペラオーら、無敗のジュニア王者たちを脅かす存在になるのではと期待してしまいますよね?』

 

『本当ですよ。むしろ末脚のキレは彼女たちよりも普通に勝ってると思うので…いや〜走った直後で失礼なのは重々承知なんですが、願わくばアドマイヤベガには皐月賞に出走して欲しいな…って思いますね。この3人の戦いは是非観てみたいです』

 

『確かにまだアドマイヤベガの次走は未定ですもんね。今日の勝利を得て今後のプランを決めると思うのですが、今日彼女が見せてくれた圧倒的な走りを見た方は、無敗のジュニア王者たちとクラシック三冠ウマ娘路線で争って欲しい。と願ってしまう様な、そんな期待が大いに膨らむ勝利を収めました⑮アドマイヤベガ。彼女の今後の走りに改めて注目です!』

 

 

 

 

───

──

 

 

 

 

 アヤベさんが圧巻の走りを披露した事で、未だ響めきと大歓声に東京レース場が包まれている中、

 一緒に応援していたスペちゃんとマックイーンさんにはこの後のウイニングライブ用のおめかしを手伝ってもらう為、先に控え室へと向かってもらい、俺はアヤベさんのレース後の疲労具合を真っ先に確認するべく地下バ道で待っていた。

 

 

 すると程なくして、アヤベさんが地下バ道へと戻って来る。こちらに気付き少し速足で来てくれる彼女の様子は……

 良かった。見る限り故障につながる様なダメージは見受けられない。勝ってくれた事は勿論嬉しいけど、無事に帰って来てくれた事が個人的には何よりだ。

 

 

「………ねえ、早速で悪いけど、次の目標レースをどこに見据えるかだけど……最高の栄誉を…クラシック三冠路線へ……だから次のレース…私は、【皐月賞】を目指したい」

 

 

 ──っ! レースを終えて早々、こちらをじっと見つめ、その様に告げるアヤベさんの目からはこの上無い意志の様なモノを俺は感じた。

 これは…彼女の中では既に頑固たる決意が固まっているのだろう。ならば…彼女の事を支えると誓った俺は、彼女が歩みたいと思ったその道を、ただ真っ直ぐに歩める様に頑張るのみだ。

 

 

「分かったよアヤベさん、行こう。クラシック三冠路線へ。──次のレースは【皐月賞】だ」

 

「なら、決まり。次は──【皐月賞】。GⅠのレースであっても必ず勝つ。…だから明日からは、その為のトレーニングをお願い。加減は必要無いから」

 

 

 その言葉には俺を…いや、アヤベさん自身を奮い立たせる重みが込められた言葉を残して、彼女は自身の控え室へと足を進めて行く。

 ……彼女がとてつもなく大きな何かを背負って走っている事は感じてはいたけど…これは皐月賞の前に、出来れば彼女の口から聞いておきたいな…

 

 

 このまま行くと…彼女は近い内に壊れてしまうかもしれない。そんな一抹の不安が俺を襲うも、そんな未来を絶対に選ばせてなるものかと、俺は前を行く彼女の背中を見ながら、自分自身にそう約束する。

 それが出来なきゃ…俺はアヤベさんのトレーナーを名乗る資格なんてない気がしたから。

 

 

 新たな目標・課題・そして不安が現れど、一先ずアヤベさんが初めての重賞へと挑戦した共同通信杯は、怪我なく無事に勝利。という形で幕を下ろしたのだった。

 

 

 

 

───

──

 

 

 

 

《レース後・???視点》

 

 

『───……GⅠレース。クラシック三冠。皐月賞、日本ダービー、菊花賞。お姉ちゃんと、一緒に。………楽しみ。楽しみ、楽しみ!………』




 ここまで読んで下さって本当にありがとうございます!


 書けることが楽しくて…凄く凄いです!(トプロさん語彙力)


 アヤベさんはクラシック三冠路線へ。妹さんイベントが少し不安ですが…次回はスペちゃんのシニア級始動戦【大阪杯】になると思います。


 最後に現時点でのスペちゃんの【獲得総賞金】を載せております。
 ※賞金額は2023年時点を参照しております。


 ⚫︎18億1150万円


 三冠達成ボーナス有↓


 ⚫︎21億1150万円


 これから、某海賊漫画の懸賞金かの如くドンドンと上がっていくと思いますです。ハイ。
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