スペちゃんとチート持ち転生者の幼馴染   作:成田 きよつぐ

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 誤字脱字のご報告・お気に入り・ご評価・ご感想・読んで下さっておられる方々、いつも本当にありがとうございます!

 今回もレース前・レースシーンを分けて書かせて頂いております。このお話は入学式がメインとなります。

 レースに関する事柄や、トレーニング方法などは作者の妄想が入っております。


 ※それに加えてこの拙作では、トレセン学園の学年設定・ジュニア級→クラシック級→シニア級の分け方など・ウマ娘たちの成長曲線など……
 これらの部分に対し、かなり無理矢理な解釈・設定を入れておりますので、ご容赦頂けたらと思います。

(アニメ・ゲームの設定に合わせてしまうと色々とおかしな事になりそうでしたので……特に学年に関しては調べれば調べるほど混乱してしまいました…)




入学式/一等星の挑戦①

 

 

 

 

 

 

 

 スペちゃんが今年の始動戦である大阪杯を怪我やダメージも無く無事に、おまけに圧巻の勝利で飾るという最高の形で走り終えてくれた日から早くも2日が経った本日は4月6日のお昼時。

 

 

 ここトレセン学園も春休み期間が終了し、本日は本校の入学式・始業式が執り行われる日である。

 スペちゃんもアヤベさんもマックイーンさんも学年が一つ上がり、マックイーンさんに限ってはレース座学での必要単位を無事に取得し、一般学年とは別のレース座学クラスがジュニアクラスを卒業となった為、これからは自身の好きなタイミングでレースデビューをする事ができるようになった。

 

 

 ただレースデビューのタイミングに関してはしっかり考えないといけない。

 というのも、URAに《レースデビューの申請を行ったその年》から、その娘は《ジュニア級ウマ娘》として扱われる為だ。

 仮に申請したその年に一度もレースで走らなかったとしても、年が明けた瞬間からその娘は問答無用で《クラシック級ウマ娘》として扱われ、その次の年には《シニア級ウマ娘》として扱われてしまう。

 

 

 そのため殆どの娘とそのトレーナーさんは『今年…遅くとも来年にはデビューをして、このままトレーニングを積めばクラシック級でもちゃんと闘える』と判断出来るまではデビュー申請は行わない…というのが一般的である。

 

 

 もちろんスペちゃんのような編入で入学した娘や、先日に初対決となった“ツルマルツヨシ”さんのような例外のパターンも存在する。

 彼女は『クラスメイトの娘たちとクラシック級で一緒に走りたい』という想いを自身の体調よりも優先し、南坂さんもそんな彼女の想いを尊重して周りの娘たちと同じタイミングでデビュー申請を行ったのだろう。

 

 

 結果的にはクラシック級で一緒に走る事は叶わなかったものの、彼女と南坂さんチームは挫けずに努力を重ね続け…遂に先日の大阪杯でスペちゃんと鎬を削り、これからは他の皆さんともGⅠの舞台で走れる事を叶えられたのだ。

 ツルマルツヨシさん、南坂さんチームのそんなお姿に俺は一人の人間として尊敬の念しか抱けない。本当に凄い事だと思う。

 

 

 そしてアレか…改めて思うと、学年が上がるという事はスペちゃん達は今日から高等部なんだな……

 そっか…あんなに小さかったスペちゃんも、もう高等部なのか…そう思うと何だか感慨深いものがあるなぁ……

 いやまぁ言って俺も今年でまだ19歳の若輩野郎なので、そんな世のお父さん視点でスペちゃんの事を見るのは可笑しな話なんだけどもね。歳も3歳しか変わらないし、スペちゃん自身も高等部になったからといって中等部時代と比べると劇的に見た目が変化している…なんてことも無い。

 

 

 ウマ娘の娘たちは俺たち人間とは違った独特な成長曲線を描き、大体12歳〜13歳辺りで身体的な急成長を遂げて、人間でいう所の高校生から大学生あたりの見た目まで成長する娘が多い。

 そして急成長を遂げた後は30代ぐらいまでその姿のまま…というケースが殆どである。

 

 

 しっかりとケアをしていれば筋肉なども衰えないどころか寧ろ成長する場合もある為、非常に息長く一線級のレースで活躍される方もいらっしゃるのも納得である。

 ただし! 幾らウマ娘の娘たちが見た目も相まって年齢不詳とはいっても、不用意に彼女たちの年齢を聞こうとするのは絶対に止めましょう。

 皆さんのナイスガイなお顔にペガサスジャンプキックを叩き込まれたくなければ絶対に止めましょう。世の中には知らなくて良い事もあるのです。

 

 

 たづなさんが帽子を外すとどうなるか? とか、たづなさんはどうしてあんなに脚が速いのだろう? とか、今なお伝説として語られるウマ娘であるトキノ〇ノルさんの正体は一体誰なのか? とかね……

 おっと、『その謎って全部同じなんじゃ?』とか考えたそこの貴方、それ以上はいけない。消されちゃうぞ⭐︎

 

 

 そんなこの世で生きる為の悟りを開きつつ、俺は現在学園内の賑わいを感じながらチームノヴァのチーム部屋へと向かっていた。

 なお入学式・始業式は既に終了しており、新入生・在校生の皆さんの新しい教室への移動やクラス替え、本日から本校に就任となられた新人トレーナーさんや学園スタッフさん方のご紹介なども特に問題なく終わっている。

 

 

 この後は新入生に向けたチーム説明会に加え選抜レースなども行われる関係もあり、普段から使わせてもらっているトレーニングコースは流石に使えない。

 そのため一旦チーム部屋に全員集まってから、今日のトレーニングメニューの調整をしようという事になっている。

 

 

 ウチのチームは今年新メンバーの募集に消極的なので、新メンバー募集に積極的なチームの皆さんにコースは使って頂きたいからね。

 因みに今年は新メンバーの募集に消極的…という意向を秋川理事長とたづなさんにお伝えしたところ、お二人とも『残念ッ!』と割と本気で落ち込んでしまい、そんなお二人の姿に俺の心が結構なダメージを負った。

 

 

 お二人が俺の事を評価して下さっているのは本当に嬉しいのですが、今はスペちゃん・マックイーンさん・アヤベさんの為に人事を尽くしたいので、新しい娘をお迎えする余裕がですね…と、必死にお伝えして納得して頂いた。

 だがやはり、そう思うとトレセン学園のトレーナー不足は中々に深刻なようだ…

 

 

 今年もトレーナー試験を突破されたのは僅かお二人だけ。俺の代も合格者は俺を含めて三人だったし、トレーナー不足問題の改善は中々に難航しておられる様である。

 

 

 まあでも、この問題に関しては難しいよね…ウマ娘である彼女たちの人生を預かる身となるトレーナーを選別する試験。

 その難易度を下手に下げる訳にもいかないだろうし……そんな事をしてしまうと大袈裟ではなくトレセン学園やURA全体の信用問題に関わってしまう。

 

 

 逆に考えればそんな難関試験を突破された人だからこそ、最初から高めの信頼を寄せる事も出来るだろうからね。

 俺なんかはチートフル稼働でズルして合格したようなものだけど、他の方々は純粋に弛まぬ努力をされてトレーナー試験を合格されている方々なので、本当に尊敬の念しか抱けない。

 

 

 だから今年合格されたお二人にも敬意を持って接さねばな。そう心に決めながら、ふと今年合格されたお二人の事を思い返す。

 お一人はモデルさんの様な高身長に恵まれた女性の方。もうお一人は何故かメイド服に身を包んでいらっしゃる女性の方である。

 

 

 俺も含め、割と皆さんメイドさんのご登場には驚いたのだが、その女性の紹介がされると全員が納得した。

 あの女性は今や[メジロ家]に次ぐ第二の名家と称されるあの[サトノ家]お抱えのトレーナーさんだったのである。

 

 

 それにしても…サトノ家に認められるトレーナーになるにはメイドや執事の嗜みも必要になるのだろうか? まさか名家ゆえの拘り? だとしたら俺もマックイーンさんをお預かりしている身として身に付けなくてはいけないのでは!? …後でマックイーンさんに確認しとこう。

 

 

 というか[メジロ家]と[サトノ家]って交友が深いって聞いてるし、マックイーンさんがあの新人トレーナーさんと顔見知りの可能性も十分にありそうである。

 現にあの新人トレーナーさんは暫くの間、メジロ家が御贔屓にされているチーム〈プロキオン〉のサブトレーナーとして経験を積むみたいだったし。

 

 

 現状そのチーム〈プロキオン〉にはGⅠ 4勝を誇る“メジロドーベル”さん。昨年の天皇賞(春)を制した“メジロブライト”さん。マックイーンさんと同じくメジロ家の未来を担う者として期待を寄せられている“メジロライアン”さんら俊英揃いのチームの為、新人のトレーナーが経験を積む環境としてはこれ以上無いぐらいの環境だろう。

 

 

 因みにウチのマックイーンさんと同じく、メジロ家ながらチーム〈プロキオン〉に所属されていない“メジロパーマー”さんを担当しているのが何を隠そう俺の同期さんである。

 更にそのメジロパーマーさんと仲が良い“ダイタクヘリオス”さんの担当がもう一人の同期さんという事も付け加えておこう。

 

 

 同期のお二人ともトレーナー家系のご出身ながら体育会系でノリが良いし、性格がとても明るい愛バ達ともフィーリングが合うのだろう。

 実際にトレーニング風景を見せてもらった時も、愛バの能力や適性に合わせたメニューをお互いが凄く楽しそうに熟していて『俺も負けてられないな』と力を貰えたものである。

 まあ偶にエアグルーヴさんに四人まとめて追いかけられてはお説教をくらう姿を目撃するんだけどね…この前はトレーニングコースにDJプレイヤーとスピーカーを持ち込もうとして怒られていたな…アレを持ち込んで何をするつもりだったんだろうか?

 

 

 いや、今はその事を考えてもしょうがないな。アレ? さっきまで何考えてたんだっけ?

 …ああそうそう今年合格されたお二人の事だった。もう一人の女性トレーナーさんはサブトレーナー配属の発表は無かったんだよな…その為あの方は始めから専属契約を目指す形を取られるのだろう。

 

 

 俺の時もそうだったけど、新人トレーナーは最初にフリーで専属契約を目指すか、先ずはサブトレーナーとして土台を固めるか。基本的にはこの二択となる。

 

 

 俺の場合はスペちゃんを担当したい一心だったので迷わずフリーを選択したが、しっかりと土台を固めたい人や、名門チームとの交友がある場合などはサブトレーナーとして経験を積んでおけば後に自分のチームを持った際に大きな糧となるため其方を選ぶほうがいいかもしれない。

 

 

 フリーでの専属契約を目指したはいいが、誰とも専属契約を結べなかった場合は中々に悲惨な事になる。そのまま何も実績を積めなければ普通に解雇なども覚悟しなくてはいけないし。

 ……そう思うと俺はスペちゃんにマジで100万回のありがとうを言わないといけないよな…仮に断られてたら俺どうなってたんだろ?

 …うわ考えただけで涙が出ちゃう。多分俺は断られた瞬間に泣いて転がり回ってただろうな。そして白い目で見られて無事に解雇ルートである。ハハっ、なんて情けなくて虚しいifルートだろうか…

 

 

 まあ、あの女性トレーナーさんはそんな事にはならないだろうけども。一目見た感じだけど人当たりが良さそうな雰囲気と、確かな熱意の様なモノを感じたあのトレーナーさんのスカウトなら、受けたい! と思うウマ娘さんは必ずいらっしゃると思う。

 

 

 たかが二年目の俺が何知った様な事を言ってんだって話だけども、今年合格されたお二人とはいずれGⅠレースの大舞台で、強力なライバルとして競い合うかもしれない。なんて事も直感で思ったな…と、色々と思い返しながら俺はチーム部屋に向けて校舎内を進んでいく。

 

 

 しかしこうして歩いていると学園中には至るところに『新入生歓迎!』の装飾がなされ、新メンバー勧誘に積極的なチームは勧誘の張り紙がビッシリ。

 更にはチラシ配りの準備やチーム紹介のプレゼンの復習、パフォーマンスレースや選抜レース開催の最終確認など…本当に学園中は大変賑やかな雰囲気に包まれている。

 

 

 そうしていると…初めてのホームルームが終わったのだろう。鮮やかな満開の桜と熱烈な先輩方やトレーナーさん達に迎えられながら、期待・喜び・熱意・少しの不安など…

 様々な想いや大志を抱かれているであろう新入生の皆さんが、続々と自身に合ったチームを探すためチーム説明会へとやって来る。

 

 

 そんな新入生の娘たちをチラッと確認してみると、流石はトレセン学園に入学された娘たち…どの娘も十人十色で磨けば磨くほど輝きを放つ、そんな素晴らしいポテンシャルを秘めた娘たちばかりで感服してしまう。

 そんな中でも特に…あのグループの娘たちと、あの娘……おっ! 中庭に居るあの娘にも目を惹かれちゃうな。

 

 

「バクシン!バクシン!バクシーーン! 新入生代表! そしてつい先ほど学級委員長にも選ばれたこの私が! 皆の模範となれる様! 誰よりも早くチーム所属をしてみせましょうッ! そう思うと、何だか身体も熱く燃えてきましたよッ!」

 

「いえ、バクシンオーさん。見たところ貴女の体温は至って平熱かと思います」

 

「むん? ブルボンちゃん、今のはモノの例えじゃないかなっ? 実際に身体がブォーッ! って燃えてるって意味で言ったんじゃないと思うよ?」

 

「──わあ、素敵なお姉さんばっかりだ…この場所で頑張って、私も皆さんの様な素敵なお姉さんウマ娘になりたいな」

 

「あぅぅぅ…!! 間違って上履きのまま来ちゃった……はぁ…ほんとに駄目な子だなぁ、私……。 ううんっ、でも頑張らなきゃ! この場所で…ちゃんと頑張るって決めたんだもん。がんばれライス、がんばれー……おー!」

 

 

 個人的にあの娘たちには注目しておきたいな…なんて事を思いつつ、チーム勧誘やスカウトで更に賑わいを増していく様を感じながら、チームメンバーを待たせていたら申し訳ないと思い、俺はそこから少し急ぎ足でチーム部屋へと向かった。

 

 

 

 

───

──

 

 

 

 

 さてチーム部屋へと向かう最中、アヤベさんとマックイーンさんお二人からLANEが届き、

 アヤベさんからは『総務委員会での業務対応のため遅れます』と、マックイーンさんからは『メジロ家繋がりの方々へご挨拶をさせて頂きたいので少し到着が遅くなるかと思います』とのご連絡があった。

 

 

 チームノヴァのグループLANEでの通達に加え、俺個人にも同じメッセージを送ってくれたお二人の律儀さにほっこりしつつ両方に了解のお返事を返し、

 そんな中スペちゃんからのリアクションが無いため『スペちゃんも何か用事が出来たのかな?』等と思いつつ、今し方チーム部屋の前へと到着したのだが……何だか10名ぐらいの人だかり──もといウマだかり? が出来ているのだがこれは一体?

 

 

「──じゃ、じゃあチームノヴァは今年…新メンバーを募集していないんですか…」

 

「あ、あの! どうして新メンバーを募集していないんですか!? 私…去年のスペシャルウィークさんの走りに憧れて、第一所属志望にチームノヴァを挙げたんです! せ、せめて理由を聞かせてもらえませんか!?」

 

「わ、私もです! 選抜レースでも何でも…走りを見てもらえる機会だけでも作って頂けませんか!?」

 

「スペシャルウィークさん、チームノヴァのトレーナーさんとは幼馴染のご関係なんですよね!? ス、スペシャルウィークさんからも…トレーナーさんにお願いして頂けませんか!? お、お願いします!」

 

「あ、あはは……え、え〜っと……」

 

 

 そしてそんなウマだかり? の中心でスペちゃんが少し困り顔で揉まれちゃってるんだけど…え? チラッと会話を拾うかぎり、この娘たち皆さんウチのチームに入りたくて来て下さった娘たちなの? これだけの人数の娘たちが? この短時間で? マ、マジで?

 ……って、驚いてる場合じゃないな。今はとにかくスペちゃんを救出せねば。俺はそう思いスペちゃん救出の為にその場から一歩を踏み出そうとした瞬間──

 

 

「──あっ! お、お兄さぁ〜んッ! よ、良かったぁ〜!」

 

 

 俺が声をかけるよりも早く、まるで小さい頃に故郷の北海道の森で、ちょっとした迷子になっちゃったスペちゃんを見つけた時の様に、顔をほころばせながらコチラに駆け寄り俺の腕を抱き寄せ密着する形でしがみ付くスペちゃん。

 

 

 いや、うん…良いんだよ? スペちゃん。お姫様抱っこした事もあるし、尻尾ハグも頻繁に受けてるし、ほぼ毎回レース後にハグしたりしてるから俺は全然良いんだけどね?

 ただお兄さんね? コレが本日から高等部…所謂JKデビューを果たした娘が男にかまして良い距離感の取り方じゃ無いと思うんだ?

 

 

 ほら、さっきまで君に詰め寄っていた新入生の娘たちもポカーンとして……あれ? そうでもない?

 一瞬は驚いていた様だけど今は皆さん何やら目をキラキラさせながら俺たちを見ている? ……あと何だろう…何だか向こうの方にある木の陰からも皆さんと同じ…いやそれよりも更に大きな波長の視線を感じるんだけど…

 

 

「──はっ!? ス、スペシャルウィークさんが『お兄さん』呼び、しかも腕に抱きついた!? ま、まさかッ…あの人が噂のお兄さんッ!」

 

「ま、間違いないッ…日本ダービーを観に行った時に、レース後スペシャルウィークさんと抱き合っていたトレーナーさんその人ッ!」

 

「わ、私は何て浅はかな事を…いくら憧れているとは言っても、こんなッ…こんな聖域に! 軽い気持ちで足を踏み入れようとしていたなんてッ」

 

「レースではあんなに強いスペシャルウィークさんが、今はあんなに安心した表情に!? スペシャルウィークさんのあんな表情を引き出すなんて…やっぱりお二人は幼馴染の域を超えた唯ならぬご関係ッ!?」

 

『──ああ…天よ、感謝します! 数多の女神と同じ世界に生を受けた事にッ! 同じ空気を吸う事も恐れ多いほど推しだらけのトレセン学園に入学出来た事にッ! そしてッ! そんな記念すべき日の初日にッ! これ程までに尊い萌えの供給を頂ける場に巡り合わせて下さった事に〜ッ!! もう何なんですか〜〜ッ!? さっきまでの困り顔から一転ッ! 新聞でも度々目にしておりました噂のお兄さんを見つけた瞬間のあのご尊顔〜ッ!! 安堵からの密着からのッ あの幸せイオン溢れるホワホワ笑顔〜ッ!! 絶ッッ対にお兄さんが側に居る時にしか見せないであろうあの表情〜ッ!! ああ……よきみッ! 尊みッ! 我らが女神〜〜〜〜ッ!! ハァ〜〜〜ッ!! た ま ら んッッ!!』

 

 

 

「──ぅきゅっ!? あ、あぅ、あぅ……わ、私と…お、お兄さんはっ…ま、まだ! まだ幼馴染の関係ですっ! まだ! 幼馴染の関係ですからねっ!? で、ですよね!? お兄さんっ!」

 

「ス、スペちゃん、大丈夫だから…一旦落ち着いて、ね?」

 

「は、はひっ!…う、うぅ〜〜っ…」

 

 

 何だか色々と聞き捨てならない言葉が聞こえてくるんだけど…特に向こうの木の陰に居るピンク髪のあの娘から。

 そしてそんな言葉を聞いてしまったからか、一瞬で顔を真っ赤に染めて俺の腕を抱き寄せる力を更に強めながら、混乱気味にこちらへと必死の呼び掛けを行うスペちゃん…

 

 

 うん、とにかく一旦この娘を落ち着けなくてはマズい。と思った俺は出来る限り平常心を保った状態で、スペちゃんの頭を撫でながら落ち着く様に言葉を掛けていく。

 小さい頃からやっているスペちゃん落ち着かせ方法の一つである。

 

 

 まだ顔を赤く染めながらも少しずつ落ち着いていくスペちゃん……その様子を見て何だか周りの娘たちから『キャ〜〜ッ!!』という黄色い歓声が聞こえている気がしないでもないけど今は気にしない。気にしないったら気にしない。

 

 

 あと先ほど混乱したスペちゃんから何やら爆弾発言が飛び出ていた気もするけど、そっちに関しては俺も今後しっかりと向き合う所存なので今はあの発言にツッコミを入れる事はご勘弁頂きたい! 本ッ当にご勘弁を頂きたいッ! フリじゃないですよ? フリじゃないですからね!?

 もう…本当にこの、なまらめんこいどさん娘めっ。真っ赤な顔であんな事言われたら深い意味が無かったとしても照れが感染るでしょ? 気を付けなきゃ駄目だよスペちゃん?

 

 

 幾分落ち着いてきたとはいえ、未だ顔を桜色に染めながらしがみ付いているスペちゃんを宥めつつ、俺はチームノヴァに興味を持ってこの場に集まってくれた娘たちに今年は新メンバーの募集を行っていない事を説明した後に、

 せっかく来てくれたのだからとお一人お一人の能力やポテンシャルを分析し、将来の目標を聞いた上でその娘にとって今後の手助けになり得るであろうトレーニングメニュー・各自の身体バランス・現状の筋肉の付き方・故障しやすい部位の特定と改善する為のメニューなどを記載したノートをお渡しして解散をして頂いた。

 

 

 何だか皆さんから物凄く感謝を頂けたのだが、こちらとしては折角来て下さったのに申し訳ない。という気持ちが強い……気持ちを変えるつもりは無いけれど、俺の我儘で新メンバーの募集を見送った訳だからね。

 代わりと言ってはおかしいけれど、お渡ししたノートがこれから少しでも役に立って貰えれば俺としては嬉しい限りである。皆さんなら他のチームから勧誘を受ける事もあるだろうから。

 

 

 何なら早速? と言っていいのか分からないけど、木の陰からこちらを見られていたピンク髪のウマ娘さんが、何故かグラサンをかけたゴルシさん・ウオッカさん・スカーレットさんにズタ袋に入れられてドナドナされてたし…まあアレが果たしてチーム勧誘なのか、ただの拉致事件なのかはチームスピカのみぞ知る事なのだけれども……

 沖野さんは今年の新メンバー加入に関しては乗り気じゃなかったから、ただの拉致事件である可能性も……いや、うん。ナイナイ、流石に無い、きっと無い、心配無い…

 

 

 そうして新学期早々なかなかに濃い時間を過ごし、やや疲弊した俺たちの下へ所用を完遂されたマックイーンさんとアヤベさんが到達した。二人とも俺たちの様子に『な、何かあったの?』と首を傾げていたが、俺は軽く事の経緯を説明しつつ、いそいそと本日のトレーニング調整の準備に取り掛かる。

 さあ! 色々あったけど今はとにかく今日のトレーニングの事だ! 皆んな座って座って! 選抜レースが行われている関係でトレーニングコースが使えないけど、そんな時だからこそ出来るトレーニングもあるからね!

 

 

 そんな俺の呼び掛けに『よ、よーし! きょ、今日もけっぱりまちょう! はうっ!?』と、先程の恥ずかしさからか思いっきり噛んじゃうスペちゃん…

 そんな俺たちの様子に苦笑を浮かべつつも、何も言わずに席に着いてくれるマックイーンさんとアヤベさんに心から感謝しつつ、俺たちは本日のトレーニングをどうするか? という話し合いを行っていくのであった。

 

 

 この何とも言えない空気を忘れてしまうぐらい、今日のトレーニングで能力を開花させてみせるから三人とも覚悟するが良い。フッフッフッ…現実逃避とか言わないで。フッフッフッ…

 

 

 そんな俺のお婆ちゃん家の煎餅ぐらいには硬い決意のもと、チート脳から湯水の様に溢れるトレーニングメニューを選別し全員で話し合った結果、本日のトレーニングは【プールでのゴザ走り】に決定した。

 

 

 ゴザ走りとは、茣蓙(ござ)=畳などに使われる“い草”のカーペットを水の上に浮かべて、そのカーペット上を走る事である。

 一歩ごとに足が沈む状態で前に進まないといけない為、単純な脚の筋力強化は勿論、体幹の強化、疲れた状態から更にスパートできる技術の習得、そして全身の筋肉を使っての脚に掛かる重さの処理技術向上など。

 

 

 以上の様々な能力を強化する事が出来るトレーニングである! 特に重さの処理技術が向上すれば速く走れる上に怪我のリスクも下げられる。ただこのトレーニング…

 周りから好奇の目で見られる事が確定するのと、後片付けが大変なのはご愛嬌だけどね。

 しかし北海道に居た頃にスペちゃんもゴザ走りトレーニングは経験しており、現在の走りの土台作りに一役買っているので本当に有用性はあるのである。

 

 

 そうしてマックイーンさんとアヤベさんからは話し合いの際に困惑されたものの、ゴザ走りの有用性を熱弁し何とか納得して貰え、その日チームノヴァはスクール水着に身を包み、ひたすらプールに浮かんだ茣蓙の上を走りまくるという一日を過ごしていったのだった。

 

 

 ……こうして字面にしてみると中々にイかれた事をやってたんだと思わなくもない。マックイーンさんとアヤベさんも慣れるまではバッシャン!バッシャン! と転倒していたし、スペちゃんに関しては難易度をあげて、“末脚の持続力”と“疲労困憊になってもブレない体幹能力”に更なる磨きをかける為に、約2.5秒の間隔で延々ゴザ走りシャトルランを繰り返すという……

 側から見たら可愛いウマ娘を何度も水に沈めまくるわ、取り憑かれた様に走らせまくるわ…というまさに鬼畜の所業だよね。

 

 

 そのため周りからの反応も最初は困惑が多く決して良いものとは言えなかったものの、ゴザ走りに慣れてきてからはスペちゃんと同じくシャトルランを行ったマックイーンさん、トップスピードに至るまでの“加速力”も強化するため低周波装置付きトレーニングウェアを着込んで、ひたすら全力で一本を走り続けるアヤベさんたちの姿を、

 何より奇抜なトレーニングにも本気で向き合う三人の姿勢を感じてくれたのか、途中からは周りの方々も真剣にトレーニング風景を観察されていた。今後他のチームでもゴザ走りトレーニングを取り入れて下さったら嬉しい限りである。

 

 

 ただこのトレーニングに興味が湧いた方は必ず学園に許可を取る事を忘れない様にしましょう。特にエアグルーヴさんからの許可は絶対に忘れない様に。許可なく行った日には彼女から丸一週間くらい『たわけ』呼ばわりされちゃうからね。お兄さんとの約束だぞ?

 

 

 まあ少々ドタバタした出来事もあったものの、間違いなくトレセン学園にとっても、今後のウマ娘業界にとってもおめでたい日となった本日も過ぎ、それと同時にアヤベさんが三冠ウマ娘へと挑戦する第一関門【皐月賞】へのカウントダウンも始まっていた。

 

 

 

 

 




 ここまで読んで下さって本当にありがとうございます!


 注目の新入生たちはかなりお馴染みの娘たちだった気がしますが…今の段階での彼女たちが所属する予定チームは下記の通りでございます。


 サクラバクシンオーさん→トップロードさん所属の沖田さんチーム。(チーム委員長⭐︎ズが結成できますね!)

 ミホノブルボンさん→黒沼さんチーム
(アニメ原作通りで御座います)

 マチカネタンホイザさん→南坂さんのチームカノープス
(アニメ原作通りPart2)

 ニシノフラワーさん→セイウンスカイさん所属のチームデネブ
(お二人ともゲームで仲良さそうだったので。レース路線が違うので本編には絡まなそうですけども…)

 ライスシャワーさん→サトノ家メイドじゃない方の新人トレーナーさん
(アニメで出てきた女性トレーナーさんがモデルです)

 アグネスデジタルさん→沖野さんのチームスピカ?
(ただスピカでもデジたんは持て余しそう…)


 あとチーム《プロキオン》なんて勝手な設定を作りましたが、“メジロラモーヌ”さんと“メジロアルダン”さんは? というと別のチームを率いるベテラン女性トレーナーさんが担当しております。
 そしてマックイーンさんと同期の“ダイイチルビー”お嬢もこのチームに所属している設定です。

 まあ、本編では先ず絡まないため完全な裏設定なんですけどね⭐︎
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