誤字脱字のご報告・お気に入り・ご評価・ご感想・読んで下さっておられる方々、いつも本当にありがとうございます!
長くなってしまった為、レース前とレースシーンで分けさせて頂いております。
今回はアヤベさん世代の【皐月賞レースシーン】となっております。
※ウマ娘3期・9話に影響され、今回は発走前に流れるPVの描写を入れております。
より一層読み辛いと感じられましたら申し訳ございません。
『そぼ降る雨の中での、生涯たった一度の晴れ舞台。生憎の空模様ながらこの場に集まって下さった熱きファンの人数は何と90万人との発表もあった中、今年もこの季節がやって来ました。人気の上では“三強”構成、しかし難関に次ぐ難関を潜り抜けた優駿たちは皆侮りがたし。さあ、その選ばれし18名をご紹介して参りましょう。クラシック三冠に向けての第一関門、【GⅠ・皐月賞】の本バ場入場です!』
『──母はかつて一際輝いたティアラ二冠ウマ娘。その娘が時を経て、このクラシック三冠舞台で再び輝く“一等星”となるか! その身に流れる約束された輝きの血を証明すべく、キャリア不足の不安を一蹴し、僅か3戦目での皐月戴冠を誓います。1枠2番・アドマイヤベガ! 3番人気です!』
『解説の山広さん、三強の一角と目されてるアドマイヤベガの登場ですが、今日の彼女は如何でしょうか?』
『そうですね、彼女にとっては今日が初めてのGⅠの舞台になりますが、仕上がりも良く非常に落ち着いていて素晴らしいですね。後はここ2走のデビュー戦・共同通信杯ともに後ろからの極端なレースしか経験していませんから、仮に今回苦しい展開になった時に、彼女がどんな底力を見せてくれるのかに注目したいです』
『確かに彼女は未だレース経験は2戦しかありません。昨年は同じキャリア数でスペシャルウィークがこのレースを制しましたが、果たしてここを勝って偉大なチームの先輩である彼女に続けるでしょうか?』
『──ここまで4戦4勝、無敗街道を直走る昨年の最優秀ジュニア級ウマ娘が堂々入場です。彼女の走法からしても決して得意とは言えないこの中山の舞台、されどホープフル・弥生とこのコース2戦2勝。積み上げてきた努力は裏切らない。その王道の走りで、ライバル達の挑戦を受けて立つ! 世代を牽引する“ザ・キャプテン”! 4枠8番・ナリタトップロード! 1番人気です!』
『山広さん、無敗のジュニア王者が無事にこの舞台に出走してくれましたが、今日のナリタトップロードはどの様に映っておられますか?』
『いやぁ、もう一言──素晴らしいですね。ここまでの臨戦過程も踏まえて完璧な仕上がりだと思います。このコースを二度も経験して尚且つ勝ち切っている訳ですから、経験値のアドバンテージが今回一番大きいのは間違いなく彼女でしょう』
『同コースのホープフルS、弥生賞では共に脚を余しながらの完勝。しかし彼女を担当しておられる沖田トレーナーからは、彼女本来の走りを崩す事なくコース経験を積ませる事が出来た。と、非常に頼もしいお言葉も聞こえています。そして今回が初対決となる、二人との戦いにも注目が集まります』
『──さあ、こちらも現在4戦4勝。無敗で朝日杯を制したもう一人のジュニア王者が登場です! 彼女もここまで未だ底を見せずの完勝続き。疑いなきその強さには、既に未来の“覇王”たる風格も纏っている様に思えます。この皐月の舞台すらも、このウマ娘にとっては序曲に過ぎないか! 6枠12番・テイエムオペラオー! 2番人気です!』
『三強と目される最後の一人、未だ無敗のテイエムオペラオーも登場しましたが、山広さんの現時点での彼女の評価を教えて下さい』
『はい、もう間違いなくトゥインクル・シリーズのトップになれるポテンシャルを秘めたウマ娘だと思いますね。歴史に名を残すウマ娘達が揃う《チームリギル》に所属していますが、彼女のポテンシャルも決して見劣る部分などありません。個人的にも今回の皐月賞で本命に推している娘なので、どんな走りを見せてくれるのか本当に楽しみです』
『そうでした、山広さんは今回テイエムオペラオーが本命でしたね。あの《チームリギル》に入っても見劣らないそのポテンシャル。その表現が決して過言ではない事はここまでの走りで既に証明済みです。次はこの皐月の舞台を制し、その強さも見劣らない事を証明できるでしょうか?』
『──さあ、各ウマ娘が思い思いに臨戦態勢を整えておりますが、最後に8枠18番・リュンヌプラチナムのご紹介も終わりまして、皐月賞に臨む全員の本バ場入場は完了しております。中山レース場メインレース【GⅠ・皐月賞】の発走まで、もう暫くお待ち下さい』
♢♢♢
『──中山の空から降り頻る雨粒が、磨き抜かれた…同じ時に相見えし原石達を濡らしています。誠に残念ながら①のドラグーンスピアが、先ほど左脚の違和感により大事をとって発走除外。それにより今年は17名で行われますGⅠ・皐月賞。【中山レース場・第11レース・内回りコース・芝の2000m・バ場状態は良】の発表です』
『解説の山広さん、いよいよ皐月賞の発走が近づいて参りましたが、展開のカギを握ると予想されていた①のドラグーンスピアが大事をとっての発走除外。こうなると道中の展開はどうなるでしょうね?』
『そうですね、ドラグーンスピアの発走除外は非常に残念ですが…今回は⑦のプチフォークロアも逃げ宣言をしていたんですよね。なのでこうなると順当にプチフォークロアがハナに立てるのかな? とは思っています』
『なるほど、確かに⑦プチフォークロアにとっては宣言通りの逃げに持ち込み易くなりましたもんね。ただこのメンバーで楽々と一人旅をさせて貰えるのか? 他のウマ娘達の動きは果たしてどうでしょうか? ……さあ、そして今スターターがゆっくりとスタンドカーに歩みを進め始めました。間も無くクラシック三冠の第一関門、【GⅠ・皐月賞】のファンファーレが鳴り響きます──』
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“最も速いウマ娘が勝つ”
それは、選ばれし者のみが走る事を許される
生涯たった一度の
世代最速決定戦。
『────真ん中からミスターシービーが出たッ! ミスターシービーだッ! ミスターシービー、リード身体半分! 春霖の中──勝ったのはミスターシービーだぁぁぁッ!!』
〜〜【天衣無縫】《ミスターシービー》〜〜
『────外からシンボリルドルフ! ルドルフ出たッ! ルドルフ出たッ! ゴールまで後僅か! ここからが強いッ!ここからが強いッ! シンボリルドルフ──無敗のまま! 皐月賞を制しましたぁぁぁ〜ッ!!』
〜〜【皇帝君臨】《シンボリルドルフ》〜〜
『────さあここで先頭はナリタ!ナリタ!ナリタ! ナリタブライアン抜けたッ! ナリタブライアン抜けたッ! 完全に突き抜けたッ! これは強い強い! 誰も追いつけないッ! やはり! やはり強かった──ナリタブライアン! 圧勝ぉぉぉ〜ッ!!』
〜〜【怪物無双】《ナリタブライアン》〜〜
『────試練の坂を登り切って残り150m! これはスペシャルウィークだッ!スペシャルウィークだッ! 中山のターフに彗星が横切ったッ! スペシャルウィーク! 3バ身!4バ身! 今突き放して──ゴォーールインッ!!』
〜〜【彗星来降】《スペシャルウィーク》〜〜
今日、この場に集いし強き者達よ
偉大な先輩達が
君達のゴールを待っている。
【GⅠ・皐月賞】
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『──三冠ロードの幕開けを告げる音色が響き渡りました。スタンドからも大きな拍手と共に、傘の花が閉じられていきます。来場して下さったファンの皆様も、テレビの前の皆様も、夢を信じる2分間です。さあ枠入りも始まりました。奇数番号のウマ娘達が続々とゲートに向かいます』
『──枠入りはここまで非常に順調です。そして今、6枠12番。2番人気のテイエムオペラオーも堂々とゲートに収まりました。1番人気こそ譲りましたが、勝利まで譲る気など微塵もありません』
(これよりボクらが奏でるは時代を紡ぐ偉大なる交響曲──その最中で最も輝くボクを! このテイエムオペラオーを! しかとお見せしようじゃないか!)
『続いて1枠2番。3番人気のアドマイヤベガも、今静かにゲートに収まりました。キャリアは僅か2戦…しかしその2戦とも圧巻の勝利劇。今日のこのメンバーに入っても、その輝きは決して霞んではいません』
(負けられない相手──そんなのは……当たり前のこと。捧げるに相応しいだけの栄光を得るためには、負ける事など許されない。……それだけの…こと……)
『さあそして、4枠8番! 1番人気のナリタトップロードもゲート前で息を整えて…今収まりました。ホープフルSではゲート前で少し気負う様なところも見受けられたんですが、今日の彼女の雰囲気は非常に良い感じに思えます』
(──ふぅ…やっぱりGⅠの舞台は空気がピリピリする…けど皆んなの期待に応える為にも、トレーナーさんの為にも、ライバルの皆さん…オペラオーちゃんやアヤベさんにだって、私は──勝ちたいッ)
『──そして最後に、8枠18番。リュンヌプラチナムがゆっくりとゲートに収まりました。次なる時代のヒーローへ、我先にと名乗りをあげるのは果たして誰だ? 三冠に挑める挑戦者が今日、たった一人に絞られます』
『──さあ、行こう! 栄えある一冠掴み取って! 約束の“あの場所”へ! GⅠ・皐月賞──ゲートが開いて今スタートしましたッ!』
『おっと? ②のアドマイヤベガが少し後手を踏んでしまった。そして反対に好スタートを切ったのは⑧のナリタトップロード! 動き出しが早い! 前目のポジションを果敢に取りに行きます。しかしそんな中、彼女も行くでしょう。⑦プチフォークロア! …ん? しかし行かないか? 行けないか!? おーっ!? インコースから⑥トロピカルスカイと③アクアオーシャン早めに行こうとしている!』
(……──っ、しまったッ!? スタート前に考え事なんてッ──まだ立て直せる…後手になるのは仕方がない、これ以上のロスは致命的…このまま内で進むしかないッ)
(──よしっ! スタートは切れた! 後は練習通りのポジションに…私の走りが発揮出来る、囲まれにくい前目のポジションにッ)
『内③アクアオーシャンが先頭に立ちそうだ。⑥トロピカルスカイが2番手か? そして⑦プチフォークロアは控えた!? プチフォークロアは控えました。そのまま各ウマ娘が第1コーナーから第2コーナーに入っていきます。そして三強の一角である⑫テイエムオペラオーは現在、後ろから5番手辺りを追走しています』
(…ほう? アヤベさんが後ろからなのは兎も角、トップロードさんが随分と前に…ここは早めに──いや、それではトレーニングの時の二の舞だ。勝ちたいからこそ、ボクはボクの走りに徹さねばッ)
『間も無く第2コーナーを周って向こう正面。さあ先頭から見ていきましょう。③のアクアオーシャンが先手を取り切りました、リード身体半分ほど。2番手に⑥トロピカルスカイ。その1バ身ほど後ろに内⑤リュンヌシアター。外には⑯リュンヌタンゴ、リュンヌ2騎が並んで追走しています』
『そしてこの2騎のすぐ後ろ、内を少しだけ開けて進路を確保しながら⑧のナリタトップロードが5番手追走です。流石このコース2戦2勝。早めの動き出しから地の利を活かして、いつでも動ける絶好のポジションに収まりました』
(コーナーでの消耗も殆ど無い…前の人達の動きも、後ろの人達の動きも感じ取れる良いポジションに入れた。後はとにかく追走をスムーズに。ここで油断して脚を使ってしまっては元も子もありません!)
『ナリタトップロードの背後には⑮のキヌヴァルキリー。そしてその内に並んでいるのが⑦のプチフォークロア、ここまで下がりました。更に最内を通って⑭シシジマアルデルもこの2人に並び掛ける。その1バ身半ほど後ろの外目から⑱リュンヌプラチナム。その1バ身後ろに真ん中から⑪オーバードレイン。その外に並んで⑰アユクラッシャー。ここまでが比較的一団、固まっての追走です』
『間も無く1000mを通過──60.1。60.1のペースで通過しました。前のアユクラッシャーから4バ身ほど後ろ、バ場の真ん中を通りながら⑨タゴウブリット。そしてその半バ身後ろの外に⑫テイエムオペラオーが付けています。2番人気のテイエムオペラオーはやや後ろからのレースを選択。未だ負け知らずの疑いなきそのポテンシャル、さあいつ動くのか? テイエムオペラオー』
(さて、前の様子からするとそろそろ流れが速くなりそうだ…ボクはそろそろ進撃の狼煙を上げるけれど、君はまだ動かないのかい? アヤベさん。もしこのまま動かないのであれば──今日の交響曲はトリオではなくデュオで終わってしまうよ?)
『そのテイエムオペラオーの1バ身後ろ、最内を通って追走しているのが②のアドマイヤベガ。その外に④タスキヘラクレス。そして⑬ワイバーンブリットも更にその外から並んでいる。そしてこの三人に少し遅れる格好で最後方を追走するのが⑩ウェストドラゴン。こんな隊列で残り800mを通過いきます。第3コーナーをカーブ。さあ、このあたりで各ウマ娘の動きがより一層激しくなってきたぞ!』
(そろそろ距離を詰めないと…でも、あの人から教わった自分の余力を図る感覚が告げてくる…これまでの様に外を周ったら──届かないっ……だからって…負けられないっ! 外が駄目なら、内からッ)
『先頭がここで⑥トロピカルスカイに変わった! トロピカルスカイが早めに行った! アクアオーシャンは苦しいか? ズルズルと後退。これに合わせる様に後続勢が続々と上がってくる! アクアオーシャンを交わしながら⑤リュンヌシアター、⑯リュンヌタンゴ、更に⑱リュンヌプラチナム、リュンヌ3騎に加えて⑰アユクラッシャーも上がっていく!』
『残り600を通過──お〜ッ!! そしてここで! ナリタトップロードが動いたぁぁ〜ッ!! 3、4コーナー中間でナリタトップロードがあっという間に前を捉えていくッ!! コーナーで膨らんだリュンヌ達の間を通って! これは早くも先頭に立つ勢いだぞぉぉ〜ッ!!』
(後ろの人たちがグングンと差を詰めてきているのが分かる…脚は残ってる、コーナーも沢山練習してきた…ここで──突き放すッ!』
『早め先頭ナリタトップロードッ! しかし彼女が切り拓いたこの道を! 狙っていたか⑪オーバードレインッ! 真後ろから差を詰めに掛かる! 残り400mを通過! 後方からは大外を捲って来る⑫テイエムオペラオーッ!! そして更にもう一人ッ! 進出してきたオーバードレインの背後から! 内内を通って②のアドマイヤベガも前に上がってくるッ! さあ、第4コーナーをカーブして! 栄えある一冠に向けて! 横いっぱいに広がりながら! 最後の直線に出て参りましたぁぁ〜ッ!!』
(──ッ! 前の人たちがコーナーで少し膨らんだッ。直線の内側が荒れていようと構わないッ! ここで一気に…距離を詰めるッ!)
(──最内とは驚いた…アヤベさん、君もまた前を征くあの勇者を捉えるため、自らが信じる道を切り拓くのだね! …ああ、最高だ! 待ち焦がれていた共演は──やはりこうでなくてはねッ!)
『さあ、先頭はナリタトップロードッ!! ナリタトップロードッ! 抜けるもんなら抜いてみろとッ! 更に突き放しにかかるッ! リード2バ身ッ! このまま押し切れるかッ!? 2番手からは進路を内に変えてオーバードレインッ! オーバードレインッ! そしてその更に内からアドマイヤァァ〜ッ!! アドマイヤベガが! 間隙を縫って最内から差し込んで来るぞぉぉぉ〜ッ!!』
(負けないッ! 皆んなの期待と、トレーナーさんの夢をッ! 必ず応えてみせるッ! このままッ 私が────ッ!?)
(──くっ! トップロードさんとの差が…中々縮まらないッ! 追いつかないとッ…もっと…もっと速く────ッ!?)
『アドマイヤベガ届くかッ!? 必死に追うッ! しかしッ! ここに来てもトップロードの脚色が衰えないッ!! オーバードレインは下がってしまったッ! トップロードこれは強いかッ!? このままねじ伏せるのかナリタトップロード──』
『──いやッ!? 大外から誰か一人突っ込んで来るぞぉぉぉ〜ッ!? ─────テイエムオペラオーだぁぁぁ〜ッ!!』
(──オペラオーちゃんッ!?)
(──オペラオーッ!?)
(主役の座は自らの手で掴み取るッ! 運命の好敵手【リヴァル】達よ…勝つのはこのボク──テイエムオペラオー以外にないッ!)
『大外からテイエムオペラオーが来たぁぁ〜ッ!! 纏めて薙ぎ倒すかッ! オペラオーッ!! 先頭を走るナリタトップロードに一気に並び掛けるッ! このまま捉え切るかッ!? 最内からは少し遅れてアドマイヤベガッ!! 完全にこの三強が抜けているッ! しかし先頭争いはトップロードとオペラオーかッ!?』
「必ず勝つ、私が、必ずッ──」
「さあ輝いてみせようッ──」
「もっと前にッ、この二人にッ、私、だって…っ…私だってッ──」
『試練の坂を乗り越えて乗り100──何とここでアドマイヤベガがもう一度加速したッ!? 前の二人に並ぶ!並ぶ!並ぶ! 最内からアドマイヤベガッ!! 外はテイエムオペラオーッ!! 真ん中からトップロードも盛り返すッ!! ナリタトップロードもう一度盛り返すッ!!』
「──はぁああああ"あ"あ"あ"あ"〜〜〜ッ!!」
「──ふん"ん"んんぁあああ"あ"〜〜〜ッ!!」
「──ぁあああああ"あ"あ"あ"あ"〜〜〜ッ!!」
『三人が並ぶッ! お互いに全く譲らないッ! 全く譲らないッ! 内かッ!? 中かッ!? 外かッ!? 依然三人全く並んで──ゴォーールイーーンッ!!』
『勝ったのは誰だぁぁ〜〜ッ!? 全く分かりませんッ! 三強各々の! プライドをかけた大熱戦ッ!! 場内騒然ッ! これは大変なレースとなりました! 今年の皐月賞〜ッ!!』
「はあっ…はあっ…はあっ…はあっ…」(1着は…写真、判定……最後、内からアヤベさんも…オペラオーちゃんも凄い気迫だった…)
「くはっ…はあっ…はあっ…ふうっ…」(写真判定か…流石はトップロードさんとアヤベさんだ…最後、差し切れると思ったのだが…)
「はっ…はっ…はっ…はっ…はっ…」(写真…判定──っ…これまでと比べ物にならないほどっ…喉も胸も、熱いっ……二人の背中と、ゴールが見えた…最後の瞬間なんて特に──特…に…?)
『勝ち時計は1分58秒5! 電光掲示板には4着⑪オーバードレイン、5着⑯リュンヌタンゴの数字はすんなり表示されているのですが、1〜3着には【写真】の文字。そして今、場内のターフビジョンにゴール瞬間のストップモーションが流れていますが────いや〜、これは分からないッ!! 場内からもどよめきが起きる! ストップモーションでも完全に並んでいる様に見えます! これはどうでしょうかぁ〜!?』
『…凄いレースになりましたね、本当に…4着のオーバードレインを6バ身離しての争いですからね。この三人が如何に抜けていたか…という事ですよ。こんな事、勝負の世界で言うのは間違っているかもしれませんが、今年の皐月賞ウマ娘は三人居た…そう言っても、決して過言では無いと私は思います』
『確かに、山広さんも私も今モニターを観ながらちょっと固まってしまう様な…本当に凄いレースになりました。誰が勝っても昨年同様、無敗の皐月賞ウマ娘の誕生となります』
『大外テイエムオペラオーの豪脚一気か? 真ん中ナリタトップロード最後の一伸び届いたか? 最内アドマイヤベガが斬って落としたか? ……おーっ! 今! 電光掲示板に全ての着順が点灯して場内から大歓声と拍手が巻き起こった! 今年の皐月賞ウマ娘は──』
『──アドマイヤベガだぁぁ〜ッ!! 1着は②アドマイヤベガ! アドマイヤベガです! 2着に⑫テイエムオペラオー! 3着に⑧ナリタトップロード! 今ターフビジョンに拡大画像も映っておりますが、何と1着→2着、2着→3着の差は…共に僅か1cm! 僅か1cmです! それほどの僅差! しかし、その僅かな差を制して! ②アドマイヤベガ! ティアラ二冠を制した母の輝きから時を経て、その娘が再び! 輝く一等星に! アドマイヤベガ!』
(勝った…? 勝て、た…二人に……よしっ、勝ったんだ…っ…勝ったんだ!……この喜びは、この熱は…今までと同じ、あなたの、もの……そう…なのよね? ねぇ──)
(………そうか……届かなかったか……今回に向けてやり残した事など何も無かった。ならば今は心からの祝福と共に、君にその王冠を預けておこう)
(………負け…た……もう…ちょっとだったな…獲りたかったな…私が……私が…もっと…もっと、強かったら…もっと上手く走れてたら…)
♢♢♢
皐月賞が終わり、俺は今レースを終えたアヤベさんを迎えるべく地下バ道で彼女がターフから戻って来るのを待っていた。
すると暫くして、コチラの姿を確認しつつ、自身の胸に手を当てながら…どこか戸惑っている様な表情を浮かべるアヤベさんがターフから戻って来る。
まさかどこか怪我を? ……いや、見る限り少し疲労の色は濃いけど、歩き方のバランスなどを見るに身体に異常は見られない。
彼女が皐月賞を制した事はもちろん嬉しいが、俺としてはこうして無事に帰って来てくれる事が何よりだ。そして怪我で無ければ、アヤベさんが戸惑っている原因であろう…あの最後の走りをしてくれた事も。
「おかえり、アヤベさん。凄い走りだったよ。皐月賞制覇、本当におめでとう」
「…ありがとう……ねぇ、レース前に貴方が私に言った事について──…いえ、やっぱり…何でもない……泥も落とさないといけないし、一旦控え室に戻るわ」
「…うん、分かった。俺はスペちゃんとマックイーンさんを呼んで来るよ。ウイニングライブの準備は二人にも手伝ってもらおう。アヤベさんは先に控え室で少し休んでおいて」
「ええ…分かった」
そう言ってアヤベさんは先に控え室へと向かって行く。恐らく今は一人で考えたい事もあるだろうからと思い、俺はスペちゃんとマックイーンさんと合流した後、少し時間をおいてアヤベさんの控え室へと三人で向かったのだった。
…今日の皐月賞、最後の最後で二人に並んだあの瞬間に彼女が見せたあれは…今まで粛々と、黙々と、自らに課した使命を果たそうとしてきた彼女が…彼女自身の心が──熱く燃え盛った瞬間だったのでは無いだろうか…
《皐月賞直後・ナリタトップロード陣営の控え室にて》
「すみません…っ…トレーナーさん…私…っ…皆んなの期待にも…トレーナーさんが鍛えて下さった事にも…っ…応えられなくて…」
「何言ってるんだ。お前さんは今日、誰かに謝る様な走りはしてないさ。練習でやってきた事をちゃんと出せたじゃないか。誇りある走りをしてみせたじゃないか。お前さんはよくやった。本当によく頑張ったな」
沖田トレーナーのその言葉を聞いて、更に涙が溢れるナリタトップロード。だが同時にその心には、確かな炎が灯った瞬間でもあった。
次の──【日本ダービー】こそは、必ず自分が勝ってみるのだと。
《皐月賞直後・とあるシャワールームにて》
(この悔しさ以外は全て洗い流さなくては。いくらボクが美しいとはいっても、泥人形のまま再び観客の前に姿を現す事は許されないからね)
「……いやはや…目に泥が入ってしまったかな…少し…っ…念入りに…っ…流さなくては…っ…」
そんな言葉と共に顔を上に向け、シャワーヘッドから溢れるお湯を顔で受け止め続けるテイエムオペラオー。悔しさ以外を…全て洗い流す為に。
そして、少し心配になり彼女の様子を確認しに来た東条トレーナーも又、グッと唇を噛み締め…愛バの為に気合を入れ直した。
次の【日本ダービー】こそは必ずと。
《皐月賞後・???視点》
『──本当に楽しかったね。お姉ちゃん…それに何より…お姉ちゃんが──』
ここまで読んで下さって本当にありがとうございます!
レースに関する事や勝ちタイムなどが史実とは全く異なりますがお許し下さい。
下記では今後のレース描写にて使う予定の【各ウマ娘の異名】と【名付けた理由】を載せております。
カッコつけすぎでイタい感じがするのですが…少しお付き合い頂けたら幸いです。
⚫︎スペシャルウィーク
・【日本総大将】→史実・原作通り
・【彗星】→レースでの走りを現すのと、編入生(彗星の如く現れた)という意味を込めて。
⚫︎エルコンドルパサー
・【怪鳥】→史実・原作通り
⚫︎グラスワンダー
・【不死鳥】→原作通り
・【怪物2世】→史実・原作通り
※【タンポポイーター】・【スペちゃん絶対倒すマン】・【激おこ薙刀ぶんぶん丸】──ごめんなさいグラスさん冗談です許してください。
⚫︎セイウンスカイ
・【トリックスター】→原作通り
⚫︎キングヘイロー
・【センパー・ファイ(Semper Fi)】→アメリカ海兵隊の標語である《Semper Fidelis》(常に忠実)を《Semper First》(常に一流)に変えたもの。
如何なる距離でも走れる事と、彼女の普段の立ち振る舞いに敬意を込めて。
⚫︎ツルマルツヨシ
・【黄金世代の秘密兵器】→原作通り
⚫︎アドマイヤベガ
・【一等星】→史実・原作通り
・【アズール・フラッシュ(青い閃光)】→勝負服の色合いと末脚の鋭さを合わせて。(ただボツにする可能性有り…)
・【星帝】→星の名を持つ事から。(ただアヤベさんっぽくないな…と思いボツにする可能性大です)
⚫︎ナリタトップロード
・【ザ・キャプテン】→世代を牽引する走りと存在であるという点と、学園では委員長を務めているという点を合わせて。
・【キャプテン・トップロード】→上記と同じ理由です
⚫︎テイエムオペラオー
・【覇王】→史実・原作通り
・【世紀末覇王】→史実・原作通り
⚫︎メジロブライト
・【シンデレラ】→走り方がいつも遅れて伸びてくる点と、実際にお嬢様であるという点を合わせて。
この後書きにもお付き合いくださった方々は、重ねて本当にありがとうございます!