この拙作でのトレーナー試験の受験資格は、下記の条件をクリアしないと受けられない。という設定になっております。
①大卒資格を持っている者
②千葉にある、専門学校に3年間通う
(現実世界での騎手学校みたいな感じ)
③中央ライセンスの場合、“一般家系”の人は上記の2つとは別に、2年間学校で実習訓練を積まないといけない
※③の条件に関しては秋川やよい理事長など、一部の関係者は「トレーナー志望者が減るため無くしても良いのでは?」と、無くす方向に動いている。
専門学校に関しては20歳未満であれば誰でも入学試験を受ける事が出来、合格しないと入学は出来ない。
(入試難易度は偏差値65を超える難関)
専門学校は【トレーナー】志望…というよりも【トレセン学園スタッフ】・【レース場の整備士】・【蹄鉄職人】などの、スタッフ採用を目指す人が多く集まる感じです。
(主人公とスペちゃんの作中での年齢を合わせる為に、でっち上げた条件なので何卒ご勘弁を…)
スペちゃんと出逢い、【日本一のウマ娘】になる為に自身のお母さんと頑張っていたスペちゃんを手助けしたい! と、自身の我儘を押し通す事を決めたあの日から、早いもので6年ほどが経過した。
俺は早生まれのためついこの間13歳に。
スペちゃんは10歳になった。
今日も今日とて、スペちゃんに“英才教育”《チート》を施すため2人でトレーニングに励んでいる。
まだ6歳だった俺の「将来は、トレセン学園のトレーナーになりたい!」という突然の夢報告を受けた我が両親とスペちゃんのお母さんは、最初は戸惑いつつも俺の心意気を買ってくれ、今ではトレーニングに同行する様になった俺の事を優しく見守ってくれている。
そして何よりあれこれ口出しをする俺の言う事を真摯に、かつ楽しそうに頑張ってくれる天使スペちゃんのお陰で、俺はチート能力を最大限に発揮してスペちゃんの成長を促す事が出来た。
本当に感謝してもし足りないよ…
なぜかと言えばチート能力を最大限に使っての俺のトレーニングは…側から見ると…なんと言うか…すっっっっっごい地味なんだよな…
何せ俺がスペちゃんに今日まで施してきたトレーニングは、“自分の身体を上手に使う” という事を無意識に出来るレベルまでとにかくやる! その事に全てを注いだトレーニングだった為である。
ある日は俺とスペちゃんの手足を先端に輪っかをつけた長い棒で繋げ、武術のトレーニングの様にひたすら俺の動きにスペちゃんが合わせたり…
またある日は筋肉の動かし方・体内時計の強化を常に意識しながら、ゆったりとしたペースでひたすら一緒にジョギングしたり…
またまたある日は俺の生体電気を増幅させ、スペちゃんが今まで使えなかったであろう眠った筋肉を呼び覚まし、ひたすら身体に慣らしていったり…
またまたまたある日は大食漢のスペちゃんが体調を崩さないための、低カロリー・高栄養素・沢山食べられる・お財布にも優しい・デザート付きを追求した食事メニューを作る為、ひたすら鍋を振るったり…
…あれ? これは俺のトレーニングでは…? ま、まあ、スペちゃんが幸せそうに次々と完食してくれたから良しとしよう!
そんなひたすら基礎を固める様な地味なトレーニングに、スペちゃんは文句一つ言わずについて来てくれたのだ。集中力を高める為、ひたすら勉強するなんて日もあったし…
だがその確かな努力の積み重ねの結果、今のスペちゃんは見違える様な成長を遂げていた。身体の使い方もチート持ちの俺と大差ないレベルにまでなって来ている。
そして、今まさに行っているレースに見立てた実践トレーニングでは…
縮地法による、最大集中コンセントレーションなロケットスタートをかます。
マエストロでプロフェッサーな、鎧袖一触のコーナリングを実現。
心臓2つあんの? と言いたくなるぐらいの無尽蔵のスタミナ。
ラストの直線に向かうまでの洗練された道中の追走力によって、ハイペースだろうが、外をぶん回してロスを被ろうが、坂道であろうが、ラストの末脚に何の影響もない。
その末脚も様々な筋肉をグラデーションの様に連動させる事によって、猛烈なピッチで一気にトップスピードに乗る→トップスピードに乗り切ったらストライドを伸ばしてそのスピードを維持。
結果・宇宙の彼方まで飛んでいきそうな彗星の如し末脚を発揮する。という状態にまでなっている…
何を言っているのか分からないって? 大丈夫。俺も自分で言っててよく分からんから。
これでまだ成長途中というのが嬉しい反面何とも恐ろし過ぎるよスペちゃん…
ま、まあ、これだけ身体を上手く使う事が出来る様になってるのなら、俺がトレーナー試験に落ちたとしても、他のトレーナーさんの元でしっかりと実力を出し切る事が出来るはずだ。
勿論何としてでも合格するつもりではあるのだが、面接などで落とされてしまう可能性があるからな…
「お兄さん! 今日の目標タイム達成しましたよ! 次は何をしますか?」
スペちゃんの末恐ろしさと将来の事に若干の不安を抱いていると、実践トレーニングを終えたスペちゃんが元気よく駆け寄って来た。…うん、俺のストップウォッチのタイムもしっかりと今日の目標タイムを達成している。
スペちゃん自身も達成している。という確信を持っていた事から、体内時計が正確に働いている証拠だな。
「流石だねスペちゃん。スタートから道中の走りも、ラストの末脚も、体内時計の正確さも文句なし…本当にどんどん速くなっていくなぁ」
「えへへ〜 ありがとうございます! これも全部お兄さんのお陰です!」
「いやいや、全部スペちゃんが頑張ってるからだよ。俺がやった事は、ただキッカケを与えただけに過ぎないからね。そこから頑張って来たのは間違いなくスペちゃん自身の力だから、自分で自分の事を褒めてあげてね」
「そっ、そっかな〜? そう言ってもらえると、何だか照れますね〜
けど、お兄さんにすっっっごく感謝してるのは本当なんですよ?」
「あはは、ありがとう。俺の方こそ、いつも頑張ってくれるスペちゃんの姿に元気を貰ってるから、感謝したいのは俺の方だよ」
「ふふ、じゃあお互い様って事で!」
「そうだね、お互い様って事で」
そうして2人で笑い合う穏やかな時間が流れる。本当にどれだけ成長しても慢心せず、常に高みを目指しているスペちゃんの姿には頭が上がらない思いである。
「…さて、いつもより少し早いけど…今日のトレーニングはこれで終わろうか」
「え!? も、もうお終いなんですか?……あ、そっか…お兄さん明日から…」
「うん。明日から5年間、トレーナーになる為に千葉の専門学校に通う事になるからね。朝も早いし、今日は早く寝ないと行けないから」
そうなのだ。俺は明日からトレーナー試験を最短で受ける為に、URAが運営する専門学校に入学するのである。先日無事に合格通知が届き、ようやく自分の夢への第一歩を踏み出せる事になった。
学費に関しては問題なかった。
と言うのも、我が家の畑仕事を手伝っている際に、俺が調子に乗って作物にチート能力を駆使していた結果…
我が家で取れる作物は軒並み…特にニンジンに関しては【G1 ニンジン】たる高級ブランドのニンジンとして認められる程になってしまった。
その影響で取り引き価格は上昇、我が家の家計は何処ぞの化粧品CMの宣伝かの如く、潤いに潤いまくっている状態なのである。
それよりも、両親共に自分の子がいくら男の子とは言え、まだ13歳の息子が今から地元・北海道の街を離れる… という事のほうが問題だったらしく、そこに若干の難色を示された。特に母さんが…
それでも、俺の「いち早く中央のトレーナーになって、スペちゃんを少しでも支えてあげたい!」という我儘を汲んでくれ、最終的には「やるからにはしっかりやっておいで!」と、力強く背中を押してくれた。
本当に、父さんと母さんには感謝してもし足りないな…これは何としても合格して、いい報告が出来るように頑張らなければなるまい。
その為にも、初日から遅刻しました…などという事が無いように、今日は早めに寝床につくつもりだった。スペちゃんもそこは分かってくれている様で、少し渋りながらも了承してくれた。
俺たちはその日のトレーニングを早めに切り上げ、まるで初めて会った日のように、颯爽と軽トラで迎えに来てくれたスペちゃんのお母さんに連れられ、その日も一緒に帰路についた。
帰りの車内では、いつも以上に俺に話しかけてくれるスペちゃんと、「明日から学校だべなあ…頑張るべ!でも、都会は危ないから気をつけなよ」と、俺の頭を撫でながら優しく応援してくれたお母ちゃんに囲まれ、
俺はそんな2人のためにも、絶対に中央トレーナーになってみせる!とより一層の決意を固めた。
そして、いざ出発の朝になり───
♢♢♢
朝、駅には父さん・母さん・スペちゃん・お母ちゃんらがお見送りに来てくれたのだが…
「う"あ"ああああああ〜〜ん" お"に"い"ざ〜〜〜〜ん"ん" やっぱり行っちゃやだあ"あ"あ"〜〜〜!! わだじも一緒に行く"〜〜〜!!」
俺はただ今、俺に抱きついて離さないスペちゃんからの泣き落としに遭っている最中である…
こ、心が……心が痛い!!
あとなんか身体もミシミシ言ってて痛い!!
最近は走りの成長もそうだが、精神的にも本当に大きくなっていたスペちゃんだったのだが…そうだよね……まだスペちゃん 10歳の女の子だもんね…ちび○る子ちゃんと1歳しか変わらないもんね…
…いや今何となく頭に浮かんだけど、誰だよちび○る子ちゃんって……またまた前世の記憶か何かだろうか?
そんな風に軽い現実逃避をしていると、少し困った様子で、だけどそれと同時に凄く嬉しそうに笑っていた我が母さんと、スペちゃんのお母さんが助け船を出してくれる。
「こら! スペ! いい加減にしな。昨日、2人で笑って見送ってあげよう。って約束したっしょ?」
「スペちゃん。ウチの子も凄く寂しがっていたけど、これらからもスペちゃんと一緒に頑張る為にお勉強しに行くんだよ? だからスペちゃんも応援してあげて欲しいな?」
「う"〜〜〜…ぐすっ…ぐすっ……うん…」
2人から諭され、スペちゃんはゆっくりとだが俺の身体から離れる。助かった…このままじゃ、危うく出発を断念する所だった。スペちゃんの泣き落とし恐るべし…多分勝てる日は来ないだろう。
「ハッハッハッ! ウチの息子はモテモテだべな! 漢として、スペちゃんの為にしっかりやって来いよ! …だけど、無理だけはすんな?お前が帰ってくる場所は、いつでもここにあるからな」
「…ありがとう父さん。母さんも、スペちゃんのお母さんも本当にありがとう!」
本当に、こんな温かい人達に出会えて良かった。と心から思う。そして最後に、俺は目の前のスペちゃんへと向き合った。
「スペちゃん?」
「ぐすっ…なに?…」
「俺、これからもスペちゃんと一緒に頑張りたい。これからも、スペちゃんの走りを1番近くで見ていたい。少しでもスペちゃんの事を支えてあげたい。全部、俺の我儘だけど……ううん、だからこそ絶対にトレーナー試験に合格してみせる!」
「ぐすっ…うん」
「だからここで約束するよ。スペちゃんの夢、【日本一のウマ娘】を叶える為に、俺も日本一の…いや、【世界一のトレーナー】にでもなってみせるって!」
俺は指切りげんまんをする様に、スペちゃんに小指を差し出しそう宣言した。
「──うん! 私も約束! もっともっと けっぱって、私もお兄さんと一緒に日本一の…ううん、【世界一のウマ娘】にもなってみせる!」
涙を拭い、力強い眼差しと宣言を俺に向けて、俺の差し出した小指に小指を絡ませてくれるスペちゃん。そんな俺たちを、両親とスペちゃんのお母さんは優しく見守ってくれていた。
「──よし、じゃあ行ってきます!」
「うん! お兄さん、行ってらっしゃい!」
「行ってらっしゃい! 寂しくなったら、いつでも連絡してきていいのよ?」
「さっきも言ったが、お前が帰ってくる場所はちゃんと此処にある。だから、思う存分やって来い!」
「何か困った事があったら、私にもいつでも連絡くれて構わないからね。スペと同じ、あんたも私の息子みたいなもんだべな!」
4人それぞれの言葉から背中を押され、俺は電車に乗り込んだ。発車し始めた電車の車窓から、此処にきて涙で少し視界が滲みながら、俺は皆んなの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
改めてここから、俺の夢への第一歩が始まる──
♢♢♢
さて、自分の夢の為にいざ専門学校に通った俺だったが、専門学校での5年間は大変でもあり、けれど楽しくもあり、とても刺激的な5年間だった。
最初の自己紹介で「トレーナーを目指してます!」って言ったせいで、周囲から浮いた存在になるとは思わなかったけど…
入学してしばらくしてから気がついたのだが、同期の人達をはじめ、クラスの中にトレーナーを志望している人間が、俺ぐらいしか居なかったのである。
周りの人達は皆んな、大抵はレース場の整備士・蹄鉄職人・衣装職人などを希望する人達がほとんどだった。
と言うのも、トレーナーになる人達は基本的に“トレーナー家系”から英才教育を受けて目指す人が殆どらしく、一般家系からトレーナーを目指す人は、あまりにも厚いノウハウや知識不足の壁・トレーナー試験の難易度の壁を痛感して、泣く泣く諦めるというケースが当たり前らしいのだ。
そんな茨の道を俺は歩むんだ! なんて事を周りに堂々と宣言し、自分で言うのもなんだが、朝から晩までイかれた様にトレーナー知識・蹄鉄の知識・衣装の知識・医学の知識・ウイニングライブの知識などなど…
それらの勉学に励んでいた俺は、そりゃあ浮くよね…って話なのだ。いくらチートがあると言っても、あの時の俺は自分から見ても流石に頭のネジがぶっ飛んでいたと思う。
それでも有難い事に同期の人達には恵まれ、そんな俺を少しずつ応援してくれる人、一緒に頑張ろう! と切磋琢磨させてくれる人など、友人と呼べる人達が出来たことは素直に嬉しかった。
そんな最終的にはとても充実した5年間を思い返しながら、俺は現在寮の自室でソワソワしまくっている。そう、先日受けたトレーナー試験の合否が本日届くためである…
大丈夫……大丈夫なはずだ…
まず筆記試験の方は、自己採点してみても十分例年の合格ラインに届いていたはずだ。
問題の面接の方は、「故郷の幼馴染である子の夢を一緒に叶える為に、トレーナーを目指しました!」と答えた時に、若干面接官の方々が困惑していたのが心配だが…
それ以外の質疑応答での反応はそれほど悪くない感じだった気がするので、何とか悪くない印象を抱いてくれた事を祈ろう。
と言うか最初面接室に入った時、真ん中の席に座る、帽子に猫を乗せて扇子を持った小さな女の子が目に入ったときは、思いっきり「?」だったが、
【トレセン学園・理事長】という立て札が目に入った瞬間、俺はかなり驚いた。しかもすぐ後ろ隣に、緑の服を着て優しく微笑む……だが覇気の様な凄みをヒシヒシと感じる秘書の様な方を連れてたし…
面接を終えた際は、『期待ッ!』と書かれた扇子を広げ笑顔で見送ってくれたので、理事長さまから好印象を持ってもらえていたら嬉しいのだが、
まあ、全員に同じ対応をしている。と言う可能性も大いにある為、あまりこちらは、その『期待ッ!』を出来ないのが悲しい所である。
〜♪〜♪〜♪
そんな回想をしながら、未だ合否の電話がかかってくるのを寮の部屋で待っていると、軽快な着信音が部屋に響き渡った。ドキンッ! と、心臓が跳ねるのを感じながら、携帯の画面を確認すると…うん、この番号はトレセン学園からの電話だな。
…ふぅ
軽く息を吐き気持ちを調える…
…──よし!
覚悟を決め、通話ボタンを押した俺の耳に、まるで澄み渡る様な綺麗な女性の声が入ってきた…
はたしてその合否は───
♢♢♢
●東京・京王線 電車内
スペちゃん視点
「うわあ! うわあはぁ! わあぁ〜〜〜!」
お母ちゃん、お兄さん都会です! 窓いっぱい! 信号いっぱい!
……ん?
そこで私は、隣に座る女の子と、そのお母さん。…いや、同じ電車に乗っている周りの人たち皆さんが、身を乗り出して車窓からの景色を眺めてはしゃいでいた私の事を、不思議そうに見ている事に気づきました。
…私はそっと座り直します………
ぜ、絶対っ田舎の人って思われたっ! は、恥ずかしい〜っ!!
そんな風に私が顔を赤くしていると、隣のお母さんが話しかけて来てくれた。
「トレセン学園へ行かれるんですか?」
「あっ、はい!明日から通える事になって」
「わあ〜、凄いですね!」
「? すごいの?」
「お姉ちゃんは、選ばれたウマ娘さんなんだって。とっても速いのよ」
「へぇ〜〜!」
「お兄さんのお陰で、小さい頃から走るのは大好きなんです!速いかどうかはよく分からないですけど…」
『まもなく〜 東府中〜 東府中です。扉付近のお客様は〜』
そう話しているうちに、車掌さんの声が聞こえ私は少し慌てて電車を降りる準備をする。
降りる際に、女の子から名前を聞かれたり、「可愛かったね!」なんて言って貰えたり! ……それに気を取られて閉まる扉に尻尾を挟まれそうになったり……
けど、ようやく着いたのだ!
ここが私の──お兄さんとの夢を叶える所!
「〜♪ 夢のゲートひらいて〜♪」
気分が上がってきて、鼻歌を交えながら駅を出ようとすると───
──バタンッ!! 「うぐっ!?」
げ、ゲート閉まっちゃった…
「お嬢ちゃん。タッチ、タッチ」
突然ゲートが閉まり、悶絶するわたしに駅員さんがそう口にする。タッチ? ……ヘ!?
「ど!? どどどっ、何処を触られるんですか!? …はっ! そう言えばお母ちゃんが、『都会は痴漢が多いから気を付けて』って…」
「いやいや違う違う。そこにICカードをタッチして」
…え? …あ…そ、そう言えばそうだった…
トレセン学園に編入が決まった時に、お兄さんから「慣れない土地で切符を買って行くのは大変だろうから」って、アイシーカード? って呼ばれてるカードを貰ったんだった…
お兄さんの方でオートチャージ?って言うのをしてくれるから、「心配せずに使ってね」って言われたけど、未だに意味はよく分かっていない…
お兄さんのお陰で、参考書とかの問題は割と解けるので、勉強は昔より出来る様になっているはずなのに…お兄さんからの贈り物ってだけで、そこは凄く嬉しかったけど。
駅員さんに謝りつつ、お兄さんから貰ったアイシーカードが入った、お母ちゃん特製の手作り革ケースを取り出す。えへへ、お母ちゃんからこのケースを貰った時も嬉しかったなぁ。
思い出に浸り、少しニヤつきながら、青く光っている場所にケースごとタッチする。するとピッピッ! という音と共に改札の扉が開いた。…都会って凄いなぁ…
さて目的地はどっちだろう? と、駅の周辺地図を眺めていると先程の駅員さんが再び声を掛けてくれた。
「お嬢ちゃん、編入生かい? トレセン学園の最寄りは次の駅だよ?」
「あ、はい! ですけど…あの〜、わたし先に学園ではなくて東京レース場の方に行きたいんですけど、どちらに向かえば良いんでしょうか?」
そう、実は昨日お兄さんから家に電話があり、「スペちゃん、明日は早めに着くだろうから、良かったら一緒に東京レース場でレースを見て行かない?」と、お誘いがあったのだ。
トレセン学園の門限が夕方の6時までらしく、余裕がありそうだったのと、わたしもお兄さんと初めてのレース観戦をしてみたい! と思ったので、二つ返事で了承した。
「東京レース場? それも最寄りは次の駅になっちゃうね」
「え!? あれ? もしかして間違えちゃった? …とほほ……け、けど大丈夫です! 走って行きますから!」
「地図だと東京レース場は此処だけど…大丈夫かい? 結構距離はあるよ?」
「ありがとうございます!大丈夫です!私、走るの大好きですから〜!」
お兄さんとの待ち合わせ時間まではまだ余裕があるし、走って行っても間に合いそうだ。私は初めて本物のレースが見られる事と、久しぶりにお兄さんに会える喜びで、早る気持ちを極力抑えながら、東京レース場を目指して駆け出した。
ここまで読んで下さって本当にありがとうございます!
この拙作でのスペちゃんの学力は、主人公が旅立つ際に残していった『スペちゃん・けっぱりノート』たる、T大生もビックリこきまろ! な『賢さUG 量産ノート』を残して行った為、かなり強化されている設定です。
しかしそんな主人公のチート能力を駆使してもスペちゃんが持つ天然・ドジっ子属性は治せなかった為、そこはそのままの設定でいかせて頂きます!
(天然なスペちゃん可愛──ゴホンッ……なんでもございません…)
次はレース観戦→トレセン入学になります。
少しでも読みやすくなる様に頑張って書いていこうと思います!