誤字脱字のご報告・お気に入り・ご評価・ご感想・読んで下さっている方々、いつも本当にありがとうございます!
今回②のお話は、宝塚記念に向けたライバル陣営の準備回・スペちゃん陣営の最終調整までを描いております。
この拙作で描かれている【トレーニングやレースに関する事柄】は、全て筆者の妄想が入っておりますのでご了承下さい。
府中5週連続GⅠレース【安田記念】が終了し、中央トゥインクル・シリーズ上半期に行われるGⅠレースは【宝塚記念】を残すのみとなった6月某日の朝方……
生徒たちが一般教育授業や、それぞれのカリキュラムに合わせた座学などに励んでいる最中である、ここトレセン学園の片隅に現在、
何やらテレビカメラを抱えたスタッフに自身を映されながら芸人さんと話す男性トレーナーの姿が……
放送圏である西日本エリアで大人気を誇る《ウマ娘レース・バラエティー番組》の密着レポートを受ける、〈チーム・アスケラ〉を率いる“福坂トレーナー”の姿があった。何を隠そう彼こそ先日の安田記念を見事に制した“キングヘイロー”の担当トレーナーである。
「いや〜、福坂さん。先ずは先日の安田記念、愛バであられますキングヘイローさんと一緒に見事な勝利! 本当におめでとうございます!」
「いえいえ、本当……ありがとうございます」
「ほんと何度見ても毎回興奮してしまう様な凄いレースを見せて頂きましたけども、もう素晴らしい走りでしたね!」
「はい、もうキングが本当に頑張ってくれて、素晴らしい走りをしてくれて、そしてそれが最高の形で報われたので本当に嬉しく思ってます」
「これでチーム〈アスケラ〉は今年、【高松宮記念・桜花賞・安田記念】とGⅠ・3勝……福坂さんがチームを率いて初めてのGⅠ制覇を達成してから勢いが凄いですね?」
「いやいや今年にGⅠを獲るまで三年掛かりましたからね? 何とか自分を信じて付いて来てくれた娘たちと、このチームを継がせてくれた父さんに、ようやく少しだけ示しがつく結果を出す事ができましたけど大切なのはここからですし、今の結果に浮かれずチーム一丸となって精進を重ねていきたいです」
これまでに何度も取材を受けている番組と芸人さんによるインタビューのため、仲間同士で談笑するような明るい雰囲気に包まれながら福坂トレーナーも受け答えをしていく。
「──先日の安田記念では同期の“グラスワンダー”さんを相手に勝利を収めた形でしたけれども、改めてシニア級に入ったキングヘイローさんの成長ぶりというのは如何でしょうか?」
「いや、とにかく“スピードの質”が飛躍的に伸びましたね。純粋な速さは勿論、その速さをコントロールできる技術であったり、脚を使うべきタイミングで使える感性だったり……それらがちゃんと噛み合わさるようになったのが、最後の末脚などにも良い影響を及ぼしていると思います」
「確かに最後は凄い脚で上がり3Fもメンバー最速でしたもんね。あのスピードというのは普段のトレーニングで培われたモノ?」
「そうですね。今年の年明けぐらいにキングと、今年の上半期は【高松宮記念→安田記念→宝塚記念】のローテでいこう。と予定を立てていたので、そこからは“ショットガンタッチ”や苦手としていた“砂地でのランニング”を取り入れたりと……とにかくスピードの強化に適したトレーニングを中心に行ってきたことは一つの要因だと思います」
福坂トレーナーの言う通り、キングヘイローは今年に入ってからトモの筋肉がより強靭かつしなやかになり、スピード能力に磨きがかかっていた。
その成長ぶりは『純粋なスピード能力は現トゥインクル・シリーズでも三本の指に入る』と世間で評価されるようになったことからも素晴らしさが分かる。
「──次は宝塚記念ということになりますけれども、まあ距離だったり相手関係だったりが大きく変化すると思いますが、福坂さんはどう感じておられますか?」
「まあ先ず距離は全く問題ないですね。阪神内回りの2200mはキングの適性内だと思いますから心配はしてないです。ただ相手関係ですよね……まだ出走予定の段階ですけど凄いメンバーが出揃いそうなので、本当に一秒たりとも無駄にできないな。という緊張感はいつも以上に感じています」
「いや〜、仰る通りキングヘイローさんを始めファンからすれば今の時点でワクワクが止まらない超豪華メンバーになりそうですもんね……そんな豪華な顔ぶれとなりそうな今回、福坂さんが特に警戒しているライバルなどはいらっしゃいますか?」
「いやもう全員ですよ。全員が最大限に警戒しなくてはいけないメンバーですから。まあただ、キングの同期である“黄金世代”の娘たち……その中でも──やっぱり“スペシャルウィーク”に対するライバル意識というのは、僕もキングも昨年からずっと待ち続けて糧にしてきましたから、この気持ちは大切に今回にも活かしたいですね」
全員が強敵である……だが、そんな中でも強いて名を挙げるならば彼女しかいないだろうという感じで、福坂トレーナーは“スペシャルウィーク”の名を口にした。
「正直……福坂さんは、その“スペシャルウィーク”というウマ娘について率直にどんな印象を持たれていますか?」
「いやもう──【今トゥインクル・シリーズで一番強いウマ娘】という評価を受けるに相応しい娘ですよね。実績は勿論ですし、それこそ前走の天皇賞(春)の勝ち方は、ちょっと異次元でしたから……」
「確かにスペシャルウィークの前走は衝撃でしたね……」
「はい。悔しいですけど“あのレースに限って”は、仮にキングが出走していたとしても勝てなかった……今トゥインクル・シリーズで走っている世界中のウマ娘、その誰が相手であっても『天皇賞(春)で勝つのはスペシャルウィーク』だと断言できる走りだったと思いましたね」
福坂トレーナーが発する賞賛の言葉。だがインタビューを行っていた芸人さんは、その言葉の裏に秘められた闘志と『あのレースに限っては……』という一言を見逃さない。
「あのレースに限っては……といいますと、今回のレースは違うと?」
「いや間違いなく厳しいレースになるとは思っています。ただキングの強さが何も劣っていない事は僕が一番分かっていますし、次の宝塚記念──『一流かつ最強はウチのキングなんだ』と、皆さんに証明できるような結果を示したいという気持ちは強いですね」
その後もしばらく……『例え相手が誰であっても自分の愛バが勝利することを信じている』その気持ちを決して隠すことなくインタビューに応じる福坂トレーナーに、芸人さんの取材は続いた。
更にその日の夕方には──
「──すみません、“キングヘイロー”さん。トレーニング終わりでお疲れのところに……何せファンの方々から、安田記念前に取材させてもらった際に行った【教えて! キング先生】の再要望が凄くてですね……」
「まったく仕方ないわね、これも一流の務めってところかしら……応じてあげるから感謝しなさい。また、この可憐で聡明で崇高なキングの教えを受ける権利をあげるわ!」
「ありがとうございます! よっ! 流石は誰もが憧れる一流のウマ娘! キング先生〜!」
「当然よ! おーっほっほっほっほ!!」
チームアスケラのチーム部屋にて、先程まで併走・タイヤ引き・坂路ダッシュとハードなトレーニングを続けていたにも関わらず、一切疲れた立ち振る舞いを見せることなく、同じ様に取材に応じるキングヘイローの姿もあった。
現時点で既にGⅠを2勝。学業面においてもレース座学にあたる科目は全て高得点。おまけに全距離区分のGⅠで3着圏内を確保。レース解説をしてくれるウマ娘という括りでは最高と言っていい肩書きを持つキングヘイロー。
しかし取材陣やファンたちにとってそんな肩書きはさして重要ではなく、教えてくれるのが“キングヘイロー”だからこそ解説を聞きたい! と心から思っているだけである。
今や世間は知っているのだ。普段から勝ち気で高飛車ともとれる態度を崩さない彼女が、決して比類なき“才能”に恵まれた訳ではない彼女が、それでも諦めずにもがき続けた結果、下を向かずに努力し続けた結果、今の彼女があるのだということを。
どんなレースにも、どんな相手にも、どんな展開にも奇策を講じず真っ向勝負で立ち向かう……“才能”無き者には茨の道となる“一流たる走り”で勝つ。
そんな縛りを自らに課してなお、今や誰もが認めるトップウマ娘の領域に昇り詰めた“キングヘイロー”というウマ娘の凄さを。
「──では、キング先生。今回は宝塚記念が行われます《阪神・芝・内回り2200m》のコース解説をお願いしたいのですが、キング先生もこのコースは初めてになりますけど、先生はどんな印象を持っているコースでしょうか?」
「そうね……先ずスタート地点が正面スタンド前直線の右端からで、最初のコーナーまでが500m以上あるの。だからどんな枠でも、どんな脚質でも各々がやりたいと思うレースがしやすいコースね。例えば先行したい娘が仮にスタートで後手を踏んでしまっても、しばらく直線なのだから後からでもポジションを取りには行きやすいわ」
「なるほど、ではあまりトリッキーなコースではない感じですか?」
「そうとも言い切れないわね。阪神・内回りコースで行われる中距離GⅠレースが、他のレース場で行われる中距離GⅠレースと違う点が一つあるの。それが基本的に“道中が平坦”であるということよ」
「道中が平坦……ですか?」
阪神・芝・内回りはコース形態上、最後のゴール手前の上り坂・3コーナー辺りから始まる下り坂の区間以外は平坦な道中を走ることになる。
他の芝・中長距離GⅠレースでは道中で多少の坂を上ったり下ったりをしなくてはいけないことを考えると、道中の坂という部分に注目すれば阪神・内回りコースは珍しい部類に入る。
「そう、特に“上り坂”に関してはゴール手前にしかないわ。やっぱり走っている側の心理状況からすると、全員ではないけれど道中にある“上り坂”の区間ではペースを落としたくなるし、逆に“下り坂”ではペースを上げたくなる娘が多いのよ」
「確かに……自然に考えればそんな気はしますね」
「他のレースではそういった道中の坂でペースが自然と落ち着いたりするのだけれど、今回の宝塚記念はスタートから“下り坂”なのよね。しかもさっき話したように暫く直線コースを走る影響で、逃げ・先行の娘たちのポジション争いが激しくなりやすいの。だから前半が速くなりやすいのよね……スタートしてから迎える“上り坂”でペースを落とすなんて先ず出来ないわ。そんなの自分からポジションを譲るようなものだもの」
「なるほど、道中にある唯一の“上り坂”であまりペースが落ちないんですね」
「ええ、そうよ。そんな速くなったペースのまま1、2コーナーを回って、向こう正面の直線に入っても道中は平坦……追走力の高い娘が出揃うGⅠレースで、そんな“直線平坦”区間を緩めて走ったりしたら大逃げでもない限りすぐ後ろに追い付かれるわ。だから向こう正面に入っても厳しいペースで流れ続ける事が多いの」
「ペースが緩まないまま最後まで流れやすいと……なるほど、宝塚記念がよくタフなレースと言われる理由が分かった気がします」
タフなレース・上がりがかかるレース。とも称されやすい宝塚記念。その理由を考えてみれば、梅雨の時期でバ場が荒れやすい・ペースが緩みにくく消耗戦になりやすい・内回りのため上がり600mのうち凡そ半分がコーナー区間となりスピードを出しにくい。などの理由が挙げられやすい。
残り600m全てが直線の新潟外回りコースや、526mの直線を有する東京レース場で計測される上がりタイムより、内回りコースの上がりタイムが掛かりやすいのはコース形態的に仕方ない部分である。
逆に言えば、そんな内回りコースで上記の長い直線を有するレース場と同じぐらいの上がり3Fを計測し、更にその上でしっかり勝ち切るという走りができるウマ娘は、その時点で“異次元”の存在だと断言できるだろう。
そんな“異次元”が可能だと世間に目されるウマ娘が複数人出走する予定である事も、今回の宝塚記念が例年以上に盛り上がっている要因の一つである。
「そんな脚が溜まりにくい流れの中で、勝つ為にはそれでも力を振り絞ってスパートしないといけないわ。直線まで溜め込んだ末脚を爆発させる瞬発力よりも、苦しさを耐え忍んで脚を前に出し続ける“根性”と、その苦しいと分かっている状況でもラストスパートに踏み切れる“勇気”。宝塚記念というレースで一番求められるモノは、そういった心の強さだと私は考えているわ」
「確かに内回りで直線も360mぐらいですから末脚の瞬発力だけでは勝つのは難しそうですね。苦しい状況に自ら飛び込んで耐えないといけない……宝塚記念は、色んな意味が重なってタフなレースになっているんですね」
「そうね。……さ、この前のように展開分析なんかもしてあげたいところだけれど、今日はもうお終いよ。キングの時間は貴重なの。まだトレーニングを続けるわ」
「──え!? 先程あれだけハードトレーニングを行っていたのに、まだ終わりじゃないんですか!?」
「当然よ。一日の最後まで努力する……一流を背負うウマ娘は、その積み重ねを決して怠らないの」
キングヘイローは椅子から立ち上がると、左手を右手の肘に添え、その支えられた右手を自身の顎に当てながらそう口にすると、最後に取材陣に向けてウインクを一つ残して優雅に部屋を後にした。
(……追走力を求められるレースは望むところよ! 次の宝塚記念──最高の舞台で、“勝利”という名の証明を必ず得てみせるわ!)
先程までハードトレーニングを行っていたとは思えないほど、キングヘイローは再び坂路コースを力強く駆け上がっていく。磨いたスピード能力を落とさないまま、更なるスタミナを身に付けるために……
そんな彼女を見守る福坂トレーナーの、そして坂路を駆け上がるキングヘイロー自身の表情もお互い気合いに満ち溢れており、次の宝塚記念……キングヘイロー陣営が非常に順調な形でレースに臨めるであろうことは誰の目から見ても明らかであった。
♢♢♢
時を同じく此処トレセン学園内のとある一室……黄金世代トップの一角である“セイウンスカイ”が所属する〈チーム・デネブ〉。
そのチームデネブを率いる横田トレーナーの自室にて現在、横田トレーナーと愛バであるセイウンスカイの二人が、本日のトレーニングや片付けを終え、机にパソコンを開きミーティングを行っている最中であった。
「──次の宝塚記念、逃げてレースを作る作戦は避けたほうがいいかもね。この前の安田記念で手遅れちゃったハンエイパレードが出走予定らしいし、この娘が出てくるなら今度は是が非でもハナを取りにくるはず。阪神の2200mでハナの奪い合いはちょっとね……」
「にゃはは、確かに最初の直線区間でそれは考えただけでもヤダな〜。でもトレーナーさん、どうします? 次の宝塚記念、間違いなく──スペちゃんはロケットスタートを切ってくるよ?」
「……やっぱり、セイちゃんもそう思う?」
宝塚記念の出走予定ウマ娘・各ウマ娘のデータ・走るコースの分析など……それらをまとめた資料を映し出していたパソコン画面から目を離し、隣に座るセイウンスカイへ苦笑しながら目を向けた横田トレーナー。
そんな横田トレーナーを、頭の後ろで手を組みながら飄々とした笑みを浮かべ見つめ返すセイウンスカイ。
「そりゃあね〜、全員がスピードに乗りやすい最初の直線で脚を使わずにポジションを取れる手札を切らない理由がないもん。まあ逃げる事はないだろうけど……スタートの段階で好位のポジションを確定させて、後は早々に脚を溜める運びをしてくるんじゃない?」
「そうなのよね……こっちがポジション争いで後手を踏んで、スペシャルウィークの後ろからレースを運ぶなんて事になったら目も当てられない。長い直線コースならともかく、内回りの直線をセイちゃんの末脚でまとめて差し切るのは無理がある……」
「うーん……。事実だから何も言い返せない。前走の天皇賞(春)ですら、とんでもなく早仕掛けして来たスペちゃんの事を差し返せなかったからね〜」
お手上げポーズを取りながら肩をすくめ、目も細め、まるで『コメくいてー』とでも言いそうな表情と仕草で気の抜けた声を出すセイウンスカイ。
そんな彼女とは裏腹に、横田トレーナーは真剣な面持ちで再びパソコン画面に向き直り、まるで独り言のようなトーンで口を開く。
「……そう、確かに彼女の走りは凄い。追走力・加速力・持続力・スタミナ・トップスピード。どれをとっても超一流……おまけに、小さい頃から広大な田舎町で動物たちと競争していたらしい影響なのか、周りの空気や動きを機敏に感じ取れる、研ぎ澄まされた野生の獣のような独特の勝負勘まで持っている……」
「ありゃ? トレーナーさ〜ん?」
「そんな──レースで求められるであろう能力を全て、あれほどの次元で見事に融合させているというのは同時に……スペシャルウィークの走法は、非常に“繊細なバランス”で保たれているという裏返しでもあるはず……」
「もしも〜し? 聞こえてます〜? トレーナーさん?」
「疲労、調子、環境、レース状況……何でもいい。何かしらの要因で、ほんの僅かなバランスの崩れが生じてしまったら、たったそれだけで最大限の能力を発揮できなくなる弱点もあるということ……」
「あちゃ〜、こうなると長いんだよね、この人……」
「過去のレースでスペシャルウィークが唯一綻びを見せたのは、やっぱりあの【日本ダービー】よね……着差は広げたけど明らかに末脚の爆発力が他のレースより鮮烈には感じなかった。その要因として考えられるのはやっぱり……」
「やれやれ、考えがまとまるまでセイちゃんは一眠りでもしようかな〜。……ちゃんと待っててあげますから、代わりに大物釣らせて下さいよ? トレーナーさん♪」
「そこを突くならスペシャルウィークがロケットスタートを切ってくれるのは好都合。後は枠順ね……隣とまでは言わないけど、何とかセイちゃんがスペシャルウィークよりも外枠に入ることが出来れば組み立てやすい……仮に内枠だとしたら他の娘たちの枠順を見て──」
セイウンスカイが『ふわぁ〜』と欠伸をしながら立ち上がり、デスクの前に設置されているソファで薄手の毛布をお供に『スヤスヤ』と寝息を立てはじめた事に気が付かないまま、
横田トレーナーはそれからも暫くの間、パソコンで何度もスペシャルウィークを始めとしたライバルたちの過去レースを見直しながら、自身の愛バが勝つための最善策を練り続けるのであった。
♢♢♢
時は少し遡り【安田記念】が行われる6月13日の日曜日。現在、メジロ家が所有するトレーニング用の敷地を駆け抜けるウマ娘が四名……
同じ《チーム・プロキオン》に所属する“メジロドーベル”・“メジロブライト”・“メジロライアン”の三人に、《チーム・ノヴァ》所属の“メジロマックイーン”を加えたメジロのご令嬢たちが、併走による合同トレーニングを行っている最中であった。
「──はっ、はっ、はっ……ここッ! はぁああああああっ!!」
「──ッ! 来ましたわね、ドーベルッ! ですが、抜かせませんわ──フッ!!」
「(二人がスピードを上げたッ! ……でも、今日あたしがやらないといけない事は併走で一着を獲ることじゃないッ。ブライトにコーナーで加速していく感覚を掴んでもらうため──)ブライトッ! ここからだよッ!!」
「──! はいっ、ライアンお姉さま! ここから──急ぎます……ッ!」
先頭を走っていたメジロマックイーンを追い抜くべく、後方から全身を躍動させて末脚を伸ばすメジロドーベル。
そんな迫り来るメジロドーベルにあわや差される寸前、まるでリンクするように同じ脚色でもう一伸びするメジロマックイーン。
そんな二人の競り合いを後ろから見ていたメジロライアンは、自身がコーナー区間に入る手前で更に後ろを走っていたメジロブライトに合図を送った。
そしてその合図がしっかりと耳に届いたメジロブライトは、ある程度コーナー区間での距離ロスは度外視し、とにかくスピードに乗りながら大外を周り、直線に向いた時点でトップスピードへと至っている状態を作って懸命に前を追う。
激しい競り合いを続けるメジロマックイーンとメジロドーベル。その二人をまとめて後方から撫で斬らんとする勢いで上がって来たメジロブライト。自らの役目は終えても決して脚色を鈍らせる事なく最後まで全力で走るメジロライアン。
そんなメジロ四名による豪華な併走は、最後まで後続の猛追を凌ぎ切ったメジロマックイーンが僅かに先頭の状態でゴール地点を駆け抜けたのだった。
「はぁっ、はぁっ、はぁ……っ。凄いね、マックイーン……差せると思った瞬間から、アタシとおんなじスピードで伸び返すなんて……」
「ふぅっ……ふぅっ……最近、トレーナーさんから教えて頂いた直線での押し切り方ですわ。先行から早めに抜け出し、脚を溜められる限界のスピードを維持したまま待ち構え、後続の方が並ぼうと迫って来た瞬間に二の脚を合わせて押し切るのです。……ですが、まだまだ未熟ですわね……ドーベルやブライト、ライアンに今回の併走での“制限”がなければ、わたくしは並ぶ間もなく交わされていた筈ですもの」
「はぁっ、はぁーっ……確かに次の宝塚記念に向けてドーベルには“早仕掛け”の、ブライトには“距離のロス”を前提にした制限はあったよ。でも、それならマックイーンだって“本格化”を終えてないっていうハンデがあるのに勝っちゃうんだから、やっぱりマックイーンも凄いよ!」
「ふぅっ……ふぅ〜っ……。うふふ♪ マックイーンさまもドーベルも、そしてライアンお姉さまも、こうして皆さまの輝きを分けて頂けると〜、わたくしも身を粉にして励む活力が湧いてきますわ〜」
普段とは少しズレた走法で走っていたが故にメジロドーベルもメジロブライトもパフォーマンスダウンはしていたとはいえ、そんな二人の猛追を展開利をしっかりと活かして凌ぎ切ったメジロマックイーン。同じく未だデビュー前かつ展開利を全く受けずに三人とあまり離れずにゴールしてみせたメジロライアン。
改めてポテンシャルの高さを示した四人は、全力の併走後にも関わらず素早く息を整えると、それからしばらくの間お互いが感じた反省点などを出し合っていくのだった。
「──そういえばマックイーン。今更だけど……本当に良かったの? 今日一日、あたし達の合同トレーニングに付き合ってくれて。そっちのチームでの予定とかは大丈夫なのかなって……」
「ええ、ご心配には及びませんわ。きちんと許可は頂いておりますし、本日トレーナーさんはスペシャルウィークさんとレース観戦をされるご予定でしたから。……あまり、あのお二人のお邪魔をするのは忍びないですもの」
少し心配そうに問いかけたメジロライアンの言葉に、上品に手を口に添えながら少し苦笑い寄りの笑みを浮かべて答えるメジロマックイーン。
「前から聞いてたけど本当に仲が良いんだね、あのトレーナーとスペシャルウィークって。でも、それにしたって……その、随分と余裕というか……今日だってマックイーンが持って来てくれたノートに、アタシたちの分析まで惜しげもなく書かれててビックリしたよ……こんなの、敵に塩を送るようなものじゃない?」
「そうですわね〜、わたくし達の走りの長所や短所、癖や対処方法など……他にも様々なことを事細かに書いて下さっておられましたものね〜。わたくし達のトレーナーさまも、先程からずっと楽しそうにノートと睨めっこされておられますし〜♪」
メジロマックイーンからメジロ家での合同トレーニングに参加したい意向を聞いたチート野郎が持たせた、自分の愛バ以外のウマ娘たちに感じた事を書き殴っている分析ノートシリーズの一部……
それを先程から丁寧に読み込んでいるチーム〈プロキオン〉のトレーナーは、『なるほど、そういう視点もあるのか』・『そこを見抜かれてるとは思わなかったな』・『ここはお互いの視点が違うね。でも君の言いたい事も凄く分かるな〜』など……まるでノートを書いた本人と面と向かって対話をする様に、楽しそうに読んでは呟き、読んでは呟きを繰り返している。
「余裕がある……という訳ではなく、トレーナーさんは“ウマ娘を支える”という事に対して常に全力を出しているだけなのだと思いますわ。そしてそれは、“自分の担当か否か?”という垣根もあまり関係ないのでしょう」
「確かにマックイーンのトレーナーさんって、担当してない娘からも色々アドバイスを聞かれてるところをよく目にするかも。あたしも前に学園内のジムの機材を整備してくれたり、増設してくれてるのを見てお礼を伝えたことがあるよ」
人によってはお節介だと捉える者もいるだろうが、どれだけ余裕が無くなろうともあのチート野郎にとってはそれが平常運転……そういう闘い方しか出来ないため仕方がない。
「もちろん、ある程度の線引きはしっかりなさっているのでしょうが、己が成すべきだと思っている事を貫く……その上で競い合う事を望まれる方なのです。トレーナーさんも、そして──そのトレーナーさんを心から信じておられるスペシャルウィークさんも。……勿論わたくしも、その一人ですわ」
「そっか、それなら変に遠慮するほうが失礼か……マックイーン、直接伝えるのは難しいから、そっちのトレーナーに伝えておいてくれる? その…… 『ありがとう』って。あと──『負けないから』って。去年、エアグルーヴ先輩が届かなかった舞台……アタシにも勝ちたい理由があるから」
「それは、わたくしもですわ〜。天皇賞(春)での悔しさを糧に磨いた力で、メジロに相応しい走りで──再び挑ませて頂きます〜」
「ドーベル、ブライト……ええ、必ずお伝えしておきます」
「えへへ、二人とも気合十分だね!」
阪神JF・オークス・秋華賞・エリザベス女王杯・ヴィクトリアマイルと……
正直、クラシック・シニア王道路線と比べて同じ敷居とは言えないものの、ティアラ・シニア級クイーン路線で既にGⅠを5勝しているメジロドーベル。
そして、ホープフルS・昨年の天皇賞(春)のGⅠを2勝。破格のレコード決着となった今年の天皇賞(春)でも3着と大健闘し、現トゥインクル・シリーズでもトップクラスに位置するメジロブライト。
そんなメジロ家が生んだ優駿二人も、次の宝塚記念に向けて意欲を燃やすのであった。
♢♢♢
場所はトレセン学園のトレーニングコース。そんなターフを力強く駆け抜けるウマ娘と、その娘の様子を見守るトレーナー、そしてそのトレーナーに集まる取材陣……
そんな注目度の高さが伺える──《チーム・カノープス》の練習風景に、次の宝塚記念に出走予定である“ツルマルツヨシ”に、先程から熱い視線が注がれていた。
「──うおぉぉぉぉぉぉ〜ッ!! まだまだ〜ッ! ここからぁぁぁぁぁ〜ッ!!!」
「──ぐっ……は、速っや……でも──ッ!!」
「……淀みないハイペースから末脚をジワジワと伸ばし続ける走り込みを何度も……次の宝塚記念に向けて気合いが入ってますね」
「ああ、今年に入って既にGⅡを三勝……“遅れてきた秘密兵器”とはよく言ったもんだ。同期の怪物たちと比べても、そのポテンシャルは何ら引けを取っちゃいない」
今年に入ってツルマルツヨシの戦績は【AJCC・1着】→【金鯱賞・1着】→【大阪杯・2着】→【目黒記念・1着】と、体質の弱さからクラシック級を棒に振ってしまった事を取り戻すかの如く、まさに破竹の勢いでトップ争いへと加わってきた。
未だGⅠレースの勝利はないものの、次の宝塚記念ファン投票でトップ《10位》に選ばれている事からも、彼女が世間から高く評価されていることが伺える。
「──すみません、南坂トレーナー。見ている限り問題はなさそうですが……ツルマルツヨシさんは元々かなり体質が弱かったと認識しています。昨年デビューしてから今日まで、かなりハードなローテーションでレースに出走していますが、疲労などは大丈夫なのでしょうか?」
「はい、現状ツヨシさんの体質はかなり改善されておりまして問題はありません。もちろん疲労が溜まらない訳ではないので細心の注意は払っておりますが……今はとにかく“実戦でしか得られない経験値”を積むことが何より大切な時期だと思っています。周りから出遅れてしまった分を、出来るだけ早く取り戻さないといけませんからね」
本番に対する“慣れ”や、駆け引きを行いながら追走する“感覚”、想定外の事が起こった際の“対応力”、レースにおける自分の“個性”や走るスタイルの確立など……
トレーニングだけでは決して得ることが出来ない実戦の経験値を、とにかくレースに出走しまくって上手く積ませ、かつ疲労が蓄積し過ぎないように管理する技術において、南坂トレーナーの指導能力は超一流と言っていいだろう。
「……初めてのGⅠ挑戦となった2走前の大阪杯では、2着とはいえ勝ったスペシャルウィークには完敗。次の宝塚記念では彼女に加え他の黄金世代や、一つ上の先輩ウマ娘たちとも争う事となりますが、何か対策を講じる予定はあるのでしょうか?」
「ゲートと出脚の速さを活かして、とにかく前目の好位から押し切るレースをしたいですね。と、ツヨシさんとも話しています。現状で至れる末脚のトップスピードでは……正直に言って後方から全員を差し切るのは無理がありますから」
「失礼、そのレーススタイルですと……前回スペシャルウィークに逃げ切られてしまった大阪杯の二の舞になってしまうのでは? と思ってしまったのですが」
「確かにそうですね。しかしスペシャルウィークさんのロケットスタートは、こちらが気を付けているからといって防げるモノでもありません。周りの介入を受けずに行えるスタートの技術ですからね」
「では、同じ戦法で今回どのように勝利を目指されるんでしょうか?」
「先ほど話した経験値を積んだ事によるツヨシさんの“成長力”、ここを信じるほかありません。決して無鉄砲になっていると言う訳ではなく、成長力を信じる選択を取るに値した経験を──大阪杯で“厳しいペース”を追走した上で2着に粘った事による成長を私は信じています」
「大阪杯からの成長……なるほど」
南坂トレーナーの言う通り、ツルマルツヨシは大阪杯を走ってから明らかに成長速度が更に加速していた。
それは前走の目黒記念での圧勝でライバルたちをはじめとした業界人や有識者たちも確信しており、ツルマルツヨシ本人も手応えを感じていることであった。
「仮にスペシャルウィークさんが今回も逃げようと逃げまいと、他のライバルたちが凄まじい走りをしてこようと、今のツヨシさんなら必ず渡り合えます。後はとにかくトレーナーである私が、彼女を最大限仕上げる事に尽力するだけですね」
そう言って南坂トレーナーは、全力の走り込みを終えるや否や休憩を挟むことなく、当たり前のようにもう一本走り込む準備に入るツルマルツヨシと、
そんな彼女の走り込みにずっと付き合って息も絶え絶えながら、こちらも決して根を上げずにスタートラインに向かう“ナイスネイチャ”の姿を確認すると、取材陣に断りを入れ再びストップウォッチ片手に愛バたちのトレーニングを真剣な眼差しで見守ることに徹するのだった。
♢♢♢
先日の安田記念で惜しくもキングヘイローの2着となってしまった“グラスワンダー”。
確かに力強い踏み込みと回転の速いピッチ走法で走る彼女は、スピードに乗り切ってからストライドを伸ばし長く良い脚を使える娘に比べ、慣性に頼らず自らの脚力だけで走り続けるタイプのため、
府中のような“複合コーナーで大回り”かつ“長い直線”を有するコースで行われるGⅠでは、末脚を最後の最後まで伸ばし続けることは難しく決してベストなコースとは言えなかっただろう。
彼女の真骨頂は内回りのコーナーでもグングン捲っていける抜群の“機動力”とコーナー区間での“消耗の少なさ”、そして直線の短いコースならば登坂を苦にしない“脚力”と、その登坂後ですら更にもう一伸びする“瞬発力”である。
つまり彼女のベストコースは、コーナーでの機動力を求められる“内回り・小回り”かつ“直線が短め”のコースと言える。
……まあ、だからと言って作戦ミスも調整ミスも無かった前走の安田記念を『ベストコースでは無かったので負けました』と割り切れるほど、彼女を担当する東条トレーナーもグラスワンダー自身も冷めた性格ではないわけで……
安田記念での敗退後、反省会もそこそこに次の宝塚記念を見据えていたグラスワンダー陣営は、“あるウマ娘”の助けを借りるべく相手陣営への申し入れと、学園に短期遠征を行う許可を得た後、
東条トレーナーから遠征先での宿泊ホテルやトレーニングメニューが記載された《旅のしおり》を携えて、許可を得たその日のうちに単身でグラスワンダーは、その“あるウマ娘”の元へと向かったのだった。
グラスワンダー陣営が助けを借りた“あるウマ娘”とは──
「──はっ……はぁっ……ふぅっ……ふふっ……! やっぱり、強敵が後ろにいる中で走るのも心地良いわね……」
「──はっ……はっ……はっ……ふぅ……後半は付いて行くことに精一杯だった……改めて、流石ですね──“スズカさん”」
「ありがとう、グラスさん。でも、こんなにピリピリとした緊張感を受けて走る事は、アメリカに来てからはまだ経験がなかったわ。あの時のスペちゃん以上のプレッシャー…………こっちでレースを走る前に、この感覚をしっかりと身体に覚えさせておかなくっちゃ……!」
そう、現在ここアメリカのトレーニングコース(芝)にてグラスワンダーを1バ身離し、一本目の併走トレーニングを勝利で飾った──アメリカに長期遠征を行っている“サイレンススズカ”である。
彼女の昨年トゥインクル・シリーズでの戦績は《8戦7勝》(OP戦 1勝・GⅢ 1勝・GⅡ 3勝・GⅠ 2勝・レコード勝ち3回)
唯一の一敗も“ジャパンカップ”での2着であり、昨年は“スペシャルウィーク”以外に誰一人として彼女の影を踏むことが出来なかった……
現にグラスワンダー自身も昨年の“毎日王冠”で競った際は、怪我明けの復帰戦だったとはいえ、追っても追ってもまるで追いつける気がしない3バ身差の完敗を喫している。
現時点でグラスワンダーの戦績は《9戦6勝》。敗れたレースは“毎日王冠”・“有馬記念”・“安田記念”の3レースで、いずれも2着。
先日、キングヘイローに敗れた安田記念は、少なくともマイル区分において今の自分ではキングヘイローに太刀打ちするのは難しいだろう……と、グラスワンダー自身も痛感したレースであった。
だがそれでも、決して『彼女には追いつけないかもしれない……』という、あの絶望にも近い感覚までには至らなかったのも事実である。
グラスワンダーが、一瞬とはいえその感覚に襲われる走りで敗北を喫したのは二人……そう、次の“宝塚記念”で二度目の対決となる“スペシャルウィーク”と、今まさに故郷であるアメリカで共に汗を流している“サイレンススズカ”の二人だけである。
だからこそ、グラスワンダーは宝塚記念まで残り一月ほどしかないスケジュールの中でも、遥々アメリカまでサイレンススズカと併走トレーニングを行うためだけに足を運んだ。
自分の心の奥底で渦巻く弱さを断ち切るために。
今の自分にやれる事は全てやったという事実を得るために。
次にライバル達と──スペシャルウィークと競い合う時に『負けるはずがない』と言える確信をもってレースに臨むために。
「スズカさん……併走、もう一本お願いしてもよろしいですか?」
「……ええ、大丈夫よ。スタート地点に行きましょうか」
グラスワンダーの申し出を快く承諾するサイレンススズカ。そのままスタート地点で並び立った二人は、いつの間にか『とんでもなく速いウマ娘が二人、あっちの芝コースで併走してるらしい』という噂を聞きつけ集まった、大人数の地元ギャラリーから熱い視線を受けながら再び先ほどと同じ内容で併走トレーニングを開始する。
抜群のスタートセンスと出脚の速さ、そして異次元とも称される圧倒的スピードで並のウマ娘ならついて行く事すら許されないハイペースを、涼しい表情でマイペースに駆け抜けるサイレンススズカ。
そんな彼女が刻むペースを、先ほどの併走では少し苦しそうについて行っていたのが嘘のように……たった一度の併走でハイペースの追走リズムを身体で覚えたグラスワンダーが、サイレンススズカの1バ身ほど後ろをずっとキープしながら道中を進んで行く。
(──っ……さっきと同じ──いえ、さっきよりも背中越しから感じるグラスさんのプレッシャーが凄い……ゴールが近づくのに比例してどんどん強く……っ……思わず振り返ってしまいそうになる……彼女のプレッシャーに──呑まれちゃうッ……!)
(……退かず、屈せず、進み続けると誓った己が道……あの時、超えることの出来なかった眼前の背を超えて……今度こそ──スペちゃん、貴女の先を行くためにッ……もっと、もっと、もっと、もっと──ッ!!)
二人が最後の直線に差し掛かった頃には、周りのギャラリー達は冷や汗を流して息を呑み、前を行くサイレンススズカは余裕があった状態から一転して少し苦しそうに呼吸を乱していた……全てはグラスワンダーが放つ鬼気迫るプレッシャーによる影響である。
そして、この場に居る者全てを呑み込むほどのプレッシャーは、信じられない事にゴール手前で更に研ぎ澄まされたモノへと昇華する。
ライバルたちが全員侮れない相手である事は分かっている。しかしそれでも、次の宝塚記念でグラスワンダーが見据える背中は、己の闘志を誰よりも昂らせてくれる存在は、標的だと定めるウマ娘は──同期の“日本総大将”ただ一人であった……
♢♢♢
「────ッ!? ……はぁっ、はぁっ、はぁっ……くっ……ッ!」
「……ん?」
……なんだ? 今一瞬、スペちゃんが向こう正面で何かを気にする素振りを見せたような……後ろを振り返ろうした? ……俺の気のせいか? それとも何かを感じ取ったのか……理由は何にせよ、その影響で一瞬だけど上半身がブレて力が分散してしまった。これは更なる成長に繋げられる改善点だ。
すっかり辺りも暗くなり、学園内の外灯とトレーニングコースに設置されたLED照明、そして上空から降り注ぐ月明かりに照らされながら、周りに誰もいなくなったコースで一人ひたすらエンドレス周回の自主トレを行うスペちゃんを、俺はボールペンとノートを手に見守っていた。
既に走り始めてから3時間以上。コースの周回数は100周を超えている……だが、それでも未だ出来る限り身体のバランスを崩さず、スピードも落とさずに、気力を振り絞って彼女は懸命に走り続けている。
そんなスペちゃんの頑張りに応えないなど許されない。彼女が納得できるまで何度でも、何時間でも付き添い、チートや幼馴染という立場に甘えず常にスペちゃんに対する情報をアップデートし続け、一緒に最良の選択を選べるように出来る心構えでいる事が当たり前となる。
幼い頃から直向きで頑張り屋さんで、今も心技体の全てが成長を続けているスペちゃんに、こっちは置いて行かれないように──これからも一緒に歩んでいけるように必死だ。
これだけ長い時間、ひたすら走り続けていると当然ながらスペちゃんの身体や走りに様々な反応や影響が起こる。
俺はそれらを一つ一つ全てノートに書き起こし、その改善策を出来る限り挙げていく。
42周目の1600m地点、バ群を割る想定で走っていたけど普段より数十センチも右に身体が流れてしまった。この時の各筋肉はこう働いていて──この部分に少し余計な力が入っていて──左脚だけに重りを付けて走るなどの案が──
67周目のラスト400m地点、末脚のトップスピードに至るまでがコンマ2秒ほど普段より遅くなってしまった。これに関しては──
114周目の1200m地点、後ろを気にする素振りの影響で身体のブレが、各箇所このように生じ──
……そうやってその後も見守り続け、本日5冊目のノートを使い切って新しいモノに交換しようと思った矢先──
「──はぁっ、はぁっ……ぁ……ぅ……ッ……」
ちょうど150周目の第4コーナーに差し掛かる手前で、スペちゃんが突然ガクッとスピードダウンしたかと思うと、そのまま脚がもつれて躓く様な走りで数メートル進んだ後、ドサッっと音をたて、まるで糸の切れたマリオネットの如く前のめりに倒れ込んでしまう……
「あっ、スペちゃ──ッ……!!」
駄目だッ、耐えろッ──耐えろッ! 彼女のためにッ。
倒れたまま荒い呼吸を繰り返し、ここまでの周回で既に満身創痍のスペちゃんに、俺は思わず手を差し伸べそうになるのを血が滲むほど拳を強く握って何とか押し止める。
「……うぅっ、ぐっ……っ……ま、だ……ッ!」
俺が懸命に自分を押さえ込んでいると、やがてスペちゃんが苦しそうに絞り出すような呻き声をあげながらも、腕立て伏せをする様な格好でゆっくりと身体を起こし始めた。
そう、そうだよ、スペちゃん。頑張れ……頑張ってッ。君なら必ず……必ず立ち上がれるからッ。
そして──
「────ふんぐぅぅぅ……ッ……ぅぁあああッ!!」
膝はガクガクと震え、汗で髪は張り付き、倒れた事で頬に泥を付けながらも──その眼には、美しく、力強く、ただ少しゾッとする様な光を宿しながら立ち上がったスペちゃんは、息も絶え絶えになりながらも再び前に進み始める。
そして、恐らく既に殆ど意識は飛んでいるだろう状況にも関わらず、迎えた最後の直線ではギアを上げて、左右に全くブレる事もなく力強いスパートで150周目のゴールを終える。
しかし、その勢いのままスペちゃんが前のめりに倒れそうになったのを、俺は全力で地面を蹴り出し今度は迷わず抱き止める形でスペちゃんの転倒を防いだ。
もう立っている事も出来ないのだろう。抱き止めた俺の身体に力無く全体重を預け肩で息をするスペちゃんに、俺は『よく頑張ったね』と何度も口に出し、彼女が少しでも呼吸をしやすい体制を維持しながら、暫くターフの上で抱き合ったまま静止していたのであった。
スペちゃんのような“超一流”と誰もが認めるアスリートは、何度もライバル達と“頂点”を競い合う経験をしている者は、既に高い次元で能力が完成されている事が確定している。
トレーニングをすれば、能力が『1→10』へと一気にレベルアップする……という段階はとっくに卒業してしまっているのだ。
どんなにキツいトレーニングを行っても、どんなに素晴らしい理論を用いても、どんなに新しい技術を取り入れても、超一流の者たちは、たった『0.1』だけしか能力が伸びない……
いや、むしろ『0.1』伸びる事すら奇跡であるかの状態で、自分は本当に強くなっているんだろうか? という恐怖が常に心を支配する中で、それでも努力をし続けなくてはならないという次元で戦っている。
頂点を勝ち取るためには、このたった『0.1』の上回りを積み重ねていくしか道はない。
スペちゃんは今日、普通なら誰もが根をあげてしまう様なハードトレーニングで、見事に自分の“限界”をまた一つ乗り越えてくれた。
それが出来たからといって、今よりも別人の如く劇的に強くなれる訳ではない……ただ、間違いなく今日の経験はスペちゃんの糧となってくれるはずだ。
やれる事はやった。後は本番を最高のコンディションで迎えられるように全力でサポートする。
本番である【宝塚記念】は、もう直ぐそこまで迫っていた──
♢♢♢
ついに迎えた“宝塚記念”当日の控え室……
俺は、先ほど超満員のファンが見守る中パドックでのお披露目を終え、一緒にストレッチで身体をほぐした後、現在は目を閉じて前屈み気味に俯き、両手を祈る様に組み合わせた状態で椅子に腰掛け、静かに集中力を研ぎ澄ますスペちゃんの様子を見守っていた。
お互い無言ゆえに地下にある控え室とはいえ、スタンドで待つファンの皆様の盛り上がりが微かな地響きの様に伝わってきて、時計の針が進む音と、スペちゃんが時折り深呼吸する音がやけに大きく聞こえる。
……さっきから緊張感が凄い。パドックを終えて戻って来たあたりから、スペちゃんの集中力が高まっているのは良いことなんだけど……表情があまりにも硬い気がする。
今も組み合わせた両手を解かず、むしろより力を込めて握り込んで必死に自分を押さえ込んでいるスペちゃんに釣られてしまうように、俺も心拍数が早くなり胃が逆流してしまいそうな感覚に襲われるのを何とか堪える。
緊張は伝達してしまうと言うけれど、まさに今の状況がそれなのだろうな……
本番のレースで、しかも今日の様な大舞台で緊張するのは当然の事ではある。かつてのデビュー戦や有馬記念の時と比べると、スペちゃんも『このままいくとレースにならないかもしれない……』と感じるほどの過度な緊張まではしていない。
だが、パドックで感じた今日のライバル皆さんの仕上がり具合と漲っていた闘志。誇張でも何でもなく全員が『絶対にスペちゃんを倒す!』という気迫をぶつけてきた事を考えると、今回はほんの少しの乱れや迷いが致命的になってしまう。
以前よりトモの筋肉が逞しく、それでいて無駄肉が一切ついていない仕上がりだったキングヘイローさん。
全てを見透かす様な視線で他のライバル達を流し見ていたセイウンスカイさん。
GⅠの舞台でも一切気後れせず、肌ツヤも毛艶もピカピカで元気いっぱいだったツルマルツヨシさん。
顔は微笑んでいたものの、周りの娘やファンが思わず一歩引いてしまうほどの威圧感を放っていたグラスワンダーさん。
他にも気合の入った表情と素晴らしい仕上がり具合でスペちゃんを一瞥してきたメジロドーベルさんに、メジロブライトさんに、マチカネフクキタルさんに、ステイゴールドさんに──と、
さっきのパドックで次々とぶつけられた気迫も、今スペちゃんが必死に自分を押さえ込まなくてはいけなくなった要因の一つだろう。
もうすぐ本バ場入場が始まる……今ここで何か声を掛けるにしても、下手な励ましは集中力を高める妨げになって逆効果だっ……くっそ、何とかしたい、何とか助けになりたいのにっ……何か出来ないか? 何か、何か──
トレーナーが最も無力さを感じてしまう瞬間の一つである“レース直前”……レースで闘う限り決して緊張をゼロには出来ない。レースに向かうまでの間でトレーナーの役目は殆ど終わっている。だからレース当日は自分の愛バを信じて送り出すしかない。
そうとは分かっていても、たとえもう出来る事がなかったとしても、最後まで『自分にやれる事はないか?』と己に問いただし続ける……先日、改めてスペちゃんの支えになると誓ったのだから……
そんな葛藤にかられる俺の耳に、コンコンと扉をノックする音が届いた矢先、ガチャリとスタッフさんが控え室へと入り、『間も無く本バ場入場ですのでターフまでお願いします』という呼び出しを受ける。
そして呼び出しに返事をしながら立ち上がったスペちゃんに、スタッフさんが──
「──あの、スペシャルウィークさん! 史上初のGⅠ・8勝という大記録……その記録を今日の宝塚記念で達成するのを、いちファンとして自分は楽しみにしてますから!」
そんな応援の言葉を掛けて下さったのを、俺は心臓をキュッと握られる様な感覚で聞いていた。
分かってる。この方は本当に純粋な気持ちで応援して下さっているのだろう。心からスペちゃんの勝利を楽しみにして下さっているのだろう。
だけど今は、本来なら喜ぶべきなのであろうその期待が、俺たち二人に重くのしかかってくる……
「……は、はい! ありがとうございます。か、必ず、そのご期待に応えてみせますっ!」
「応援してます! 頑張って下さい!」
グッと右手で握り拳を作り、笑顔で答えるスペちゃんだが……スタッフさんからは見えない様に尻尾を少し下げている。
表情や言葉とは裏腹に緊張度合いは明らかに増してしまった……
「お、お兄さん。それじゃあ、い、行って来ますねっ──」
「え、いや、スペちゃん、ちょっと待っ──」
────パキンッ!
「──え?」
「──あっ……」
俺の呼び止めが間に合わず、スペちゃんが本バ場入場に向かおうと一歩踏み出した瞬間、部屋に金属の割れる様な音が響き渡ったかと思うと、スペちゃんが踏み出した右足の蹄鉄が見事に真っ二つに割れて外れているのが目に入る。
この場にいる三人ともが一瞬何が起こったのか分からず固まってしまったが、俺はすぐに頭を切り替え予備の蹄鉄と打ち直すための用具もちゃんと持っていきていることを思い出し、
スタッフさんに『蹄鉄を打ち直すので本バ場入場が少し遅れてしまう事を関係者の方に伝えて下さい』とお願いする。
その言葉で我に返ったスタッフさんが『わ、分かりました!』と慌てて部屋を後にする中、俺もすぐさまカバンから蹄鉄と用具を準備して、今だに割れた蹄鉄を見下ろして固まってしまっているスペちゃんに声を掛ける。
「スペちゃん、大丈夫? 蹄鉄を打ち直すから、こっちに座ろう」
だが俺の声が聞こえていないのか、スペちゃんからの反応がない。
「──スペちゃん?」
「──っ!?」
反応がなかったため、今度はスペちゃんの肩に手を置いて呼び掛けると、スパちゃんはビクッと身体を揺らし、ゆっくりと振り返り──目に薄らと涙を浮かべ、今にも泣き出してしまいそうな表情で俺と目が合う。
「──ぁ……あのっ、お兄さんっ……あの……っ!」
「大丈夫。大丈夫だよ、スペちゃん? ちゃんと予備の蹄鉄もある。ちゃんと打ち直してレースを走れる。だから大丈夫、安心して」
「──て、蹄鉄が、わ、割れちゃってっ、そ、そのっ……」
レース前の極限ともいえる緊張状態も重なってしまい、軽いパニック状態を引き起こしているスペちゃんを落ち着けるべく、俺は冷たくなっているスペちゃんの手を包み、できる限り優しく声を掛けながら、蹄鉄を打ち直すべく彼女をゆっくり椅子へと誘導し、靴を脱いでもらう。
椅子に座り少し落ち着いたものの、まだ不安そうにぼんやりと白いソックスだけになった自らの脚を見つめるスペちゃんを、俺は見上げる様な格好で隣にしゃがみ込んで、予備の蹄鉄を打ち直し始めた。
そして、“カンカンッ”という音だけが静かな部屋に響き渡る中、俺は独り言を呟くように口を開いた。
「……“幼馴染である娘の夢を一緒に叶えるためにトレーナーを目指しました”。俺が養成学校やトレセン学園でそう言った時、最初は随分と周りの人たちから笑われたんだ」
「……へ?」
「中には『そんなくだらない動機でトレーナーが務まるものか』とバカにする人や、『お前みたいな奴が担当ウマ娘の足を引っ張るんだ』と怒る人もいた。けど全然凹まなかった。スペちゃんと一緒に頑張りたいという気持ちが揺らぐことは無かった」
斜め横からスペちゃんの視線を感じつつ、俺は続ける。
「それから幼い頃からの約束通り、スペちゃんとトゥインクル・シリーズを一緒に頑張る事が決まって、デビュー戦を迎えて、弥生賞を勝って、皐月賞でGⅠ制覇を成し遂げて、そして遂には──あの日本ダービーで誰もが憧れる夢の一つを掴んで……その頃には、もう笑われる事は無くなってた」
「……あのダービーは私にとっても特別なレースです。お兄さんが見守ってくれている事を強く感じて、お兄さんと一緒に頑張ってきた事が間違ってなかったんだと証明できたレースですから」
スペちゃんは、左襟のブローチに手を添えてクスッと笑みをこぼした。
「……その後も三冠を達成して、ジャパンカップと有馬記念も制して、シニア級に上がってからも大阪杯・天皇賞(春)を連勝。ここまで無敗のまま、今日の宝塚記念で史上初のGⅠ・8勝に挑む“最強ウマ娘のトレーナー”……気付いたら今度は、周りからそんな評価を受けている自分がいた」
「最強ウマ娘……のトレーナー、です、か……」
「そう、現役トゥインクル・シリーズ最強ウマ娘──【日本総大将・スペシャルウィーク】のトレーナー。レースを走る度に周りからそんな評価を強く受ける事が……いつしか俺は怖くなっていったよ」
右靴の蹄鉄を打ち直し終え、同じように左靴の作業に取り掛かりながら、俺は最後にフッと息を吐くように笑ってそう言った。
「……俺には【幼馴染のスペちゃん】を支えたい。という覚悟しかなかったんだ。【日本総大将・スペシャルウィーク】というウマ娘として接する覚悟を持てない、そんな肩書きを持つウマ娘のトレーナーとして振る舞う覚悟を持てない……そんな自信のなさが恐怖に繋がっていた」
自分もその気持ちに心当たりがあるのか……スペちゃんは、両手を心臓付近に当て、耳を萎らせ再び俯いてしまった。
「けど、そんな恐怖を先日──スペちゃん、君が取り払ってくれたんだ」
「──っ……!」
俯いていたスペちゃんが、萎れていた耳と顔をパッと上げてコチラに視線を向ける。
俺は蹄鉄を打ち直し終えた左靴を置き、いつの間にか自分が自然と笑顔になっている事を感じながらスペちゃんと目を合わせた。
「この前、車の中でお互いの気持ちを改めて伝え合う機会を君がくれた事で、いま俺は周りの評価を気にせず自信を持って誓える。君にどんな肩書きが付いたって、俺にとって掛け替えの無い──【幼馴染のスペちゃん】として、俺は君を支えたいって」
スペちゃんの身体の強張りが徐々に解かれていく。
「この先なにがあったってこの気持ちは変わらない。君と出逢えた事は、俺の人生で最高の宝物だから。……俺は何よりこれからもずっと──君が“スペちゃんとして走れる”事を、勝ち負けや記録の達成よりも大切にしたいと思ってる」
「私として、走れる事……?」
「とても真っ直ぐで、最後まで全力で、見てるこっちが元気を貰える、何よりも楽しそうに走り切る姿……俺が初めて君と出逢った時に一目惚れした、君にしか出来ない“スペちゃんの走り”だよ」
緊張で少し虚ろになっていたスペちゃんの瞳に光が宿る。
「スペちゃん、無事に走り切るだけでいい。君の走りをするだけでいいんだ。それで負けてしまったとしても、周りの評価が変わってしまったとしても、君に対する俺の気持ちは、これからもずっと変わる事はない」
「──お兄さん……」
「自分を見失いかけた時、もう苦しくて諦めてしまいそうになった時……君を信じ続ける男が一人、ここにいる事を忘れないでいてくれたら嬉しいかな」
そんな事を言いながら俺は、スペちゃんの右脚を壊れ物を扱う様に優しく少し持ち上げ、その足に蹄鉄を打ち直し終えた右靴を履かせた。
「……ふふっ、それは私にとって何より嬉しい気持ちですね。例えどんなに凄い神様から力を貰えるよりも、お兄さんが私を信じてくれるその気持ちが、私に一番の勇気と力をくれますから」
スペちゃんはそう言って、左靴も履かせようとしていた俺を制して自分でもう片方の靴を履き直す。
右靴は俺が履かせ、左靴はスペちゃん自身で。そんな行為が何だが……二人で一緒にレースを戦うのだ。という気持ちをより強く感じさせてくれる気がした。
「ありがとうございます、お兄さん。今日のレースも、そしてこれからも……お兄さんのお気持ちを力に変えて、私の走りを精一杯やってきます!」
「──ああ、無事に走っておいで。スペちゃん」
「──はいっ!」
そうして、白い歯を見せて笑うスペちゃんとお互いの手を包む様に重ねること暫く……
最後に一度大きく深呼吸を行ってから、スペちゃんは控え室から地下バ道をコチラに手を振りながら駆けて行った。
──────
────
──
過去に類を見ない、超豪華メンバーが集結した今年の宝塚記念。
「相手が誰であろうと関係ないわ! トレーナー、今日もまた──ウィナーズ・サークルで会いましょう」
「ああ、行ってこいッ、キング!」
「セイちゃん、作戦は伝えた通りよ。後は──思いっきり楽しんでおいで!」
「──うんっ、面白くしてくるよ。だからさ、まあ……期待して見守ってて下さいよ? トレーナーさん♪」
「さあ、ドーベル? 参りましょう〜。メジロ以外の──数々の素晴らしい輝きと相まみえるために」
「うん、行こう。必ずメジロを輝かせる……アタシがメジロを引っ張りたい──ブライトよりも、誰よりも前で!」
「体調は万全、トレーニングも順調にこなして来ました。ツヨシさん、後は自信を持って──今日のレースに臨んで下さい」
「すぅ〜っ……ふぅ〜っ……はいっ! ツルマルツヨシ、今日の宝塚記念を必ず勝ってみせる事をここに誓いますッ!!」
「今日の貴女に余計な言葉は必要ないわ────必ず勝ってこいッ、グラス!」
「──はいっ。時代を担う猛者たちもを、そして“日本総大将”を超えて、必ずや頂点に……!」
熱戦必至の夢舞台。
遂に、決戦の刻を迎える────
ここまで読んで下さって本当にありがとうございます!
次回はようやく“宝塚記念”のレースシーン……いつも以上にウキウキしながら書いております!(笑)
・下記にエルを除く黄金世代のライバルたち、現時点での戦績とレース指数を表記しております。本編にはあまり関係ありませんので興味のある方だけ覗いて下されば幸いです。
⚫︎キングヘイロー
・デビュー戦【86】:1着
・1勝クラス【88】:1着
・GⅢ 東スポジュニアステークス【93】:1着
・GⅡ 弥生賞【93】:3着
・GⅠ 皐月賞【101】:3着
・GⅠ 日本ダービー【89】:14着
・GⅡ 神戸新聞杯【106】:1着
・GⅠ 菊花賞【107】:3着
・GⅠ 有マ記念【112】:3着
・GⅠ 高松宮記念【123】:1着
・GⅠ 安田記念【131】:1着
《11戦6勝・GⅠ 2勝》
⚫︎セイウンスカイ
・デビュー戦【70】:1着
・オープン戦【86】:1着
・GⅡ 弥生賞【94】:2着
・GⅠ 皐月賞【102】:2着
・GⅠ 日本ダービー【104】:3着
・GⅡ 京都大賞典【109】:1着
・GⅠ 菊花賞【110】:2着
・GⅠ 有マ記念【111】:5着
・GⅠ ドバイシーマクラシック【131】:1着
・GⅠ 天皇賞(春)【127】:2着
《10戦4勝・GⅠ 1勝》
⚫︎ツルマルツヨシ
・デビュー戦【81】:1着
・1勝クラス【84】:1着
・2勝クラス【87】:1着
・GⅢ チャレンジカップ【92】:1着
・GⅡ AJCC【97】:1着
・GⅡ 金鯱賞【103】:1着
・GⅠ 大阪杯【110】:2着
・GⅡ 目黒記念【118】:1着
《8戦7勝》
⚫︎グラスワンダー
・デビュー戦【88】:1着
・アイビーS【98】:1着
・GⅡ 京王杯ジュニアステークス【99】:1着
・GⅠ 朝日杯FS【104】:1着
・GⅡ 毎日王冠【107】:2着
・GⅡ アルゼンチン共和国杯【109】:1着
・GⅠ 有マ記念【120】:2着
・GⅠ ドバイターフ【131】:1着
・GⅠ 安田記念【130】:2着
《9戦6勝・GⅠ 2勝》
この後書きまで読んでくださった方、改めまして本当にありがとうございました!