スペちゃんとチート持ち転生者の幼馴染   作:成田 きよつぐ

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 誤字脱字報告・評価・お気に入り・ご感想をくださった方々、本当にありがとうございます!


 この拙作のスペちゃんは、スズカさんに対して、アニメ版ほどの“憧れ” の情は抱かない。という設定でいこうと思います。

 もちろんルームメイト設定はそのままにさせて頂いておりますので、アプリ版の様な“親友同士” という関係性を目指して、書いていこうと思います。

 同時に、【沖野トレーナー】・【チームスピカのメンバーたち】との交友も、アニメ版とは全く違う形になりますのでご了承頂けたらと思います。


初めてのレース観戦/いざ!トレセン学園入学

 

 

 

 

 

 突然ではありますが、皆さまはこの世界での“ウマ娘”の影響力はどれぐらいだと思いますか?

 

 

 俺自身は…と申しますと、ここ5年近くの間にその影響力の大きさに、いかに自分の想像力が足りなかったか。と痛感した次第でございます。…というか、さっきまでそれを改めて痛感させられてたんだけどね…

 

 

 レースに関しては、数あるスポーツの中でも飛び抜けた人気を誇る国民的スポーツエンターテイメントであり、レースが行われる毎週 土・日曜日になると、収容人数・約20万人以上を誇る各所レース場でさえ、開催レース場は常に満員状態…

 

 

 モニター運営だけの非開催レース場も半数は埋まる…テレビの視聴率は50パーセント越えもザラ…しかも、GⅠ開催になると上記よりも更に盛り上がる。ときている…

 

 

 ファンの人達の間でも、レース場の収容人数をもっと増やしてほしい! と、URAの方に結構な頻度で懇願が届けられている。らしい…

 

 

 20万人以上で足りないとかヤバすぎない? てか下手すると、仮に50万人が入る様に増設されても足りない気がするのですが?

 

 

 …とまあ、この世界での“ウマ娘”の影響力というのはこれ程の物なのである。

 

 

 となると、本日 日曜日。レースが開催される東京レース場へと向かう交通機関は、果たしてどうなるでしょう?

 

 答え・大渋滞でございます。

 

 

 何を隠そう本日は、スペちゃんが見事トレセン学園の編入試験に無事合格し、大都会・東京の街に上京しに来る大変おめでたい日である。

 

 

 昨日スペちゃんから、「迷っても大丈夫な様に、早めに向かいます」と教えてもらい、それならついでに「東京レース場で観戦をしてみない?」と提案した所、是非に!と言ってくれたので、

 

 

 スペちゃんが到着するであろう時間帯を見計らい、それより早めに着く様にトレセン学園が貸し出ししてくれている、軽自動車を借りて意気揚々とレース場に向かったのだが…

 

 

 何度も言う様に本日はレース開催日…此処、東京レース場に向かうまでの道は大渋滞だった為、俺はただいま絶賛運転疲れ中である…渋滞に捕まった時って、身体はジッとしている筈なのに何であんなに疲れるんだろうね…?

 

 

 チートなんて物を持ってる俺がこんなに疲れるって事は、世の中のドライバーさん達はもっと疲れるって事でしょう? 本当に尊敬の念しかないよ…世の日々運転されておられる皆様、本当にお疲れ様です。

 

 

 あまりの疲労にそんなアホな現実逃避をかましながら、何とか東京レース場へとたどり着いた俺は腕時計で時間を確認する。…うん、何とかスペちゃんが着くであろう時間帯よりも、早めに着く事が出来た。

 

 

 …あとは人が多いとは言っても、この入り口付近に立っておけば目立ちやすいだろう。俺は知り合いが立っていれば見つけやすいだろう入り口付近で、気長にスペちゃんを待つ事にした。

 

 

 そして、それから15分ほどが経った頃───

 

 

 

「お兄さ〜〜〜〜ん!!」と、今も昔も変わらない元気いっぱいの声が耳に届く。

 

 

 俺が声の方に顔を向けると、向こうの方から割と速度は抑えめ…それでも、都心の車と並走出来るぐらいの速度でこちらに駆け寄ってくるスペちゃんの姿が目に入った。

 

 

「はあっ、はあっ……ふぅ…お兄さん! すみません、お待たせしました!」と、軽く息を調えながら俺の前にやって来たスペちゃん。

 

 

 この感じだと、結構な距離を走って来たのかな?最寄り駅から東京レース場はそんなに離れていないから、もしかして降りる駅を間違えちゃったのだろうか? …スペちゃんなら割とやっちゃいそう。と思ってしまうのは本当に心苦しいが…

 

 

 ま、まあ、無事に着いてくれたしそこは突っ込まないでおこう。

 

 

「いやいや、さっき着いたばっかりだから大丈夫だよ。何よりスペちゃんが無事に来てくれてホッとしたよ」

 

「あはは…実は降りる駅を間違えちゃいまして…胸を張って、無事に着きました。とは言い辛いですね…」

 

 

 苦笑いを浮かべながら、恥ずかしそうにそう自白するスペちゃん。

 

 

 やっぱり間違えちゃってたのか…俺の方も、もっとちゃんと道を教えてあげてたら良かったな…

 

 

「でもでも! 今日は本っ当に楽しみにしてたんですよ! レースを見られるのは勿論ですけど、これからはお兄さんと同じ場所に通えるので!」

 

 

 少し落ち込んでいた俺に、スペちゃんは屈託のない笑みを浮かべると、そんな嬉しい事を言ってくれる。

 

 

「それは俺も同じ気持ちだよ。やっと…やっとスペちゃんの夢を応援する為に、堂々と一緒に頑張れる立場になれたからね」

 

「お兄さん…えへへ……そうだ! お兄さん! 改めて、トレーナー資格合格おめでとうございます!」

 

「…ありがとう! スペちゃんも、改めてトレセン学園入学おめでとう」

 

「はい! ありがとうございます! お兄さん!」

 

 

 ようやく此処まで…いや、これでやっとスペちゃんも俺もスタートラインに立てたのだ。

 

 

 スペちゃんの。2人のお母ちゃんの。そして俺の。それぞれの夢を叶える為のスタートラインに、俺たちは今この瞬間に立つ事が出来た。

 

 

 未来への不安や恐怖よりも、これからの未来にワクワクが止まらない…そんな全身が滾るような高揚感に、俺たち2人は包まれていた。

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

 久方ぶりの再会の為、挨拶や近況報告が捗り、当初の目的であったレース観戦をしばし忘れていた俺たちだったが、お互いに話していた場所がレース場の入り口だった事もあって、何とか思い出す。今は2人でレース観戦をするべく、ちょうどレース場内に入ったところだ。

 

 

「うわぁ〜〜〜! 凄いですね、お兄さん! こんなに人が一杯なの、故郷とは大違い!」

 

 

 スペちゃんは中に入るや否や、こっちまで嬉しくなるぐらい大はしゃぎしてくれている。

 

 

 特に、【GⅠたこ焼き】・【GⅠフランクフルト】・【たい焼き】の食べ物屋台を見つけた時は目を輝かせていた。

 

 

 食いしん坊なところは変わっていない事に逆に安心した俺は、それぞれの屋台の食べ物を購入し、先ずはスペちゃんと腹ごしらえを済ませる。お互いにシェアをしながら食べたため、それほど時間も掛からずに平らげていった。

 

 

 時間的には、これからメインレースのパドックが始まるぐらいの時間だから丁度よかったかもしれない。そうして、いざターフが見えるひらけた場所まで来ると…

 

 

「──フワァ────」

 

 

 スペちゃんが言葉を失い、目の前の景色に圧倒されている。分かるなぁ…俺も初めて来た時は全く同じリアクションしたもん…にしても、この景色は本当にいつ来ても圧巻だな…

 

 

 そんな風に2人で惚けていると、向こうの方で軽い歓声が上がったのがお互いの耳に入ってきた。そうだ、今は丁度メインレースのパドックがやっている頃だろう。

 

 

「スペちゃん、丁度良いや。あっちも行ってみようか」

 

「あ、はい! 何かやっているんですか?」

 

 

 興味津々! と、俺について来てくれるスペちゃんをパドック場まで案内すると──

 

 

『東京第11レース。続いてパドックに登場するのはこのウマ娘!8枠・12番── “サイレンススズカ” !!』

 

 

 そうアナウンスが響くと同時に、羽織っていたジャージを勢いよく脱ぎ捨てるパフォーマンスを行い、綺麗な栗毛を靡かせた…儚げな雰囲気を纏うウマ娘がステージの中央に登場した。

 

 

「わぁ…綺麗な人…」

 

 

 ふと隣を見ると、スペちゃんは目の前のウマ娘──サイレンススズカさんに思わず見惚れている様だ。

 

 

『ファン投票、1番人気です!』

 

 

 サイレンススズカさん……確かあの【チームリギル】の所属じゃなかったっけ…? どんな走りをするんだろう? これは俺もワクワクして来たな。

 

 

───

──

 

 

 

 パドック場を後にし、俺たちはレース開始まで比較的人の少ない場所で待つ事にした。…さて、そろそろレースが始まるし移動するか? と思っていると…

 

 

「お兄さん、さっきの人…1番人気なんですね…何だか雰囲気もありましたし、やっぱり1番人気になる様な人は凄いなぁ…」

 

 

 不意に、少し不安げな声でスペちゃんがそう呟いた。

 

 

「…確かにそうだったね。けど、スペちゃんもこれから沢山の人に応援されるウマ娘になれるよ」

 

「え!? わ、わたしが…? な、なれますかね? 私も…1番人気に…」

 

「うん。スペちゃんなら、GⅠの大舞台でも1番人気を背負えるウマ娘に必ずなれるよ」

 

「え、えへへ〜〜 そ、そうですか〜?」

 

「もちろん! 俺も、スペちゃんのお母さんも、絶対にそうなる! って信じてる。何たってスペちゃんはこれから【日本一のウマ娘】になる娘なんだから!」

 

「お兄さんも、お母ちゃんも……そっか…お兄さん! ありがとうございます! 私、必ず【日本一のウマ娘】になってみせます!」

 

 

 レース場の、パドックの、テレビからは感じ取ることが難しい“本物”の雰囲気にあてられ、少しだけ不安げな表情を浮かべていたスペちゃんだったが、俺やスペちゃんのお母さんの気持ちを伝えると、さっきまでの表情が嘘の様に明るい表情に変わってくれた。

 

 

「よーし! 改めて【日本一のウマ娘】になる為に、今まで以上にけっぱるぞ〜!!」と、意気込む姿にほっこりしていると─

 

 

「えっと……だからその……改めて…ですね…その…お兄さんにはこれからもずっと……私の事を近くで見ててもらいたいなぁ…なんて…思っているんですけど…」

 

 

 今度は少し恥ずかしそうな表情を浮かべて、スペちゃんはそう言葉を紡ぐ。

 

 

 …本来、その言葉は俺の方から言わなきゃいけなかった言葉だ。スペちゃんにここまで言わせて何も応えられませんでした。なんて、そんなもの漢が廃るってモノだろう。

 

 

「…それは俺の方こそお願いしたい事だよ。俺もスペちゃんの事を、その走りをこれからもずっと近くで見ていたい」

 

「──お兄さん…」

 

「──俺は初めて会った時から君と──スペちゃんと! 一緒に頑張っていけたら嬉しいな。って思っていました」

 

「──はい!」

 

「スペちゃんの夢を一緒に叶えたい…いや、必ず叶えられる様に頑張ります! だからスペちゃん、俺の──担当ウマ娘になってもらえませんか?」

 

 

 俺はそう言ってスペちゃんに右手を差し出す。

 

 

「──私も、夢を叶えるならお兄さんと一緒が良い。って、ずっと思っていました…お兄さん! こちらこそ、よろしくお願いします!」

 

 

 少し目に涙を浮かべ、しかしそれ以上に輝く笑顔を浮かべて、スペちゃんは力強く俺の差し出した手を握り返してくれた。

 

 

 こうしてその日、俺たちは名実共に一緒に歩んで行く。という誓いを立てたのだった。

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

 さて、共に頑張って行く事を改めて誓い、“スペちゃん初めてのレース観戦”も終えた俺たちは、ただいま帰りの車の中である。

 

 

 レースに関しては、あのパドックで見掛けたサイレンススズカさんの圧勝であった。それも前半の1000m を《57.8》というハイペースでそのまま逃げ切る…なかなか類を見ない逃亡劇での勝利である。

 

 

 スペちゃんはそんなレースに興奮しながらも、「私だったらこのレース、2番手か3番手辺りにつけて最後の最後で差し切る。って形をとるかな…」と、しっかりとイメージトレーニングを行っていた。

 

 

 うん。身内贔屓に思うかもしれないが、俺もスペちゃんならあのペースでも差し切れる豪脚を披露できると思う。

 

 

 どうせならウイニングライブも観せてあげたかったのだが、流石に寮の門限を過ぎてしまいそうだったので、諦めて帰路に着く事にした。

 

 

 初日から門限を破らせた。なんて、たづなさんあたりに知れたらこっぴどく叱られそうだし…いつもニコニコしててまだ怒られた事はないけど、あの人の事は絶対に怒らせちゃいけない気がするんだよな…

 

 

 無事にスペちゃんを寮へと送り届けた俺は、そのまま理事長室へと向かう。そう、スペちゃんとの担当契約の件を報告する為である。

 

 

 ちなみにこの世界でのウマ娘たちが、トゥインクル・シリーズに出場する為の条件は基本的にはこの2つしかない。

 

 

 ① 優秀なトレーナーが率いている【チーム】に所属する

 

 ②チームを持たないトレーナーと【専属契約】を結ぶ

 

 

 このどちらかの条件をクリアする事で、ウマ娘たちはトゥインクル・シリーズへの出場を認めてもらう事が出来る。というルールになっている。

 

 

 …あとこれはグレーゾーンなやり方だが、名義だけ貸しているトレーナーに頼る。 という方法もあるにはあるらしい。

 

 

 ただ当然名義を貸すだけの為、真摯なトレーニングなどは受けられず、あまり活躍出来ずに終わってしまう…というケースが殆どだそうだが…こう言ったやり方が出てきてしまうぐらい、今のトレセン学園内でのトレーナー不足は割と悩みのタネなのである。

 

 

 かと言って、トレーナーはウマ娘の人生を背負う存在。試験難易度を下げた結果、トレーナーの質が著しく低下しました。なんて事の方が洒落にならない為、今のところ改善したくても出来ない。というのが本音なのだそうだ。

 

 

 トレセン学園の運営は大変だなぁ…と呑気に考えながら歩いていると、向こうから理事長秘書を務めておられる、たづなさんの姿が目に入った。

 

 

「お疲れ様です。たづなさん」

 

「あらっ、トレーナーさん。お疲れ様です♪」

 

 

 俺が挨拶すると、朗らかな笑みを浮かべながら挨拶を返してくれた。

 

 

「すみませんたづなさん、秋川理事長は今、理事長室に在中でしょうか?」

 

「え? はい。秋川理事長でしたら、ただいま理事長室に居られると思いますよ。何かお話があるんですか?」

 

「はい。実は担当契約をさせて頂いた娘がいまして…そのご報告を、秋川理事長にさせて頂きたいんです」

 

「まあ♪ そうだったんですか! ふふっ♪ トレーナーさんも、ついに担当ウマ娘さんを持たれるんですね! おめでとうございます♪」

 

「ありがとうございます! たづなさんにそう言って頂けると、とても嬉しいです!」

 

 

 たづなさんにスペちゃんの専属トレーナーになれた事をお祝いして貰い、ついでにと、たづなさんと共に理事長室へと向かった俺たちは、秋川理事長にご報告を行った。

 

 

 報告を受けた秋川理事長は、『吉報ッ!!』と書かれた扇子を広げ、「君と担当ウマ娘との活躍を心から楽しみにしておるぞ!」と、お言葉を掛けて下さった。

 

 

 ありがとうございます! 秋川理事長。俺、ご期待に添える様に頑張りますからね。あと、出来たらその猫さんを撫でさせては頂けないでしょうか!? 駄目ですか?そうですか…しょんぼり。

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

 ●翌日・朝・栗東寮

 

 

 スペちゃん視点

 

 

 

「スズカさん、お待たせしました! さあ学園に行きましょう!」

 

「…スペちゃん、少し寝癖が残ってるわ」

 

「え!? 嘘!? ど、どこですか!?」

 

「ふふっ、こっちに来て。直してあげるから」

 

「う〜、す、すみませんスズカさん…お願いします」

 

 

 

 私ったら…今日から学園生活が始まるのに恥ずかしい…

 

 

 そんな私の寝癖をブラシで優しく とかしてくれる、ルームメイトのスズカさん。

 

 

 昨日顔を合わせた時に、レース場で見た人だったのでとても驚いてしまっだが、話してみるととても優しくて、芯が強くて、そして素敵な人だった。最初は物静かな印象を受けていたのだが、凄く茶目っ気もある所とか…

 

 

「はい。これで大丈夫よ」

 

「本当にすみません…ありがとうございます!」

 

 

 スズカさんに寝癖を直してもらい、改めていざ学園へ!

 

 

 学園内に着くと、スズカさんは自分のクラスへ。私は、“駿川たづなさん”という方に教室まで案内して頂いた。

 

 

 教室の前に到着し、私はたづなさんにお礼を言って、ふぅ…と息を調える。日本一になる為にも、最初の挨拶はバッチリ決めなきゃ!

 

 

 ──ガララッ! ドンッ!

 

 

 勢いよく扉を開け、これからクラスメイトになる人たちを見渡す。教室に居た皆んなが、「何事だ?」と静かにこちらを見ている…

 

 

 よーし…見てて、お母ちゃん! お兄さん!

 

 

「あ、あの〜わたし今日からこのクラスに入るスペシャルウィークって言いま──」 ガッ!

 

「アッ!?」 ドサーッ! 「あぐっ!?」 シーン…

 

 

 だうぁ〜〜ん!! 緊張し過ぎた〜〜!

 お母ちゃん〜〜! お兄さん〜〜!

 

 

「だいじょーぶー!?」

 

 

 盛大に転んでしまい、意気消沈する私の頭上から、そんな明るい声が聞こえた。思わず顔を上げると、そこにはとても綺麗なピンクの髪を後ろに纏めた、小柄な可愛らしい人がこちらを覗き込んでいた。

 

 

「きみ、てんにゅーせー?」

 

 

 そう言って私に手を差し伸べてくれる。

 

 

「あ、はい! ありがとうございます」

 

「アタシ、“ハルウララ”って言うの!」

 

「こっちはね! “セイウンスカイ”!」

 

「よろしく〜」

 

 

 ハルウララさんが紹介してくれた人…セイウンスカイさんは芦毛の綺麗な朗らかな雰囲気を持つ人だった。

 

 

「あ、よ、よろしく──」

 

「ハァーイ!」

 

 

 セイウンスカイさんに挨拶しようとしていたら、横から元気いっぱいの声と共に2人のウマ娘さんもやって来る。

 

 

「で、こっちが“エルコンドルパサー”と“グラスワンダー” !」

 

「アターシは、アメリカ生まれの帰国子女デェェス!」

 

「初めまして〜」

 

 

 マスクを被った天真爛漫な人、栗毛のお淑やかな雰囲気を持つ人が、共に挨拶をしてくれる。

 

 

「アナタ、何処から来たノ?」

 

「あ、ほっ、北海道から」

 

「ふ〜〜ん、田舎者さんなんダ〜?」 ドシュッ! 「アウッ!?」

 

「…うふふっ」

 

 

 …え? いま何か……エルコンドルパサーさんの脇腹辺りに何かがぶつかった様な……でもその横には、優しく微笑むグラスワンダーさんしか居ないし…き、気のせいかな? きっと…

 

 

「ねぇねぇ! スペちゃん!」

 

 

 苦笑いを浮かべるしかない私に、ハルウララさんは手を差し伸べながら──

 

 

「これからよろしくね! スペちゃん!」

 

 

 そう、明るい笑顔を浮かべながら言ってくれた。

 

 

「──はい! こちらこそよろしくお願いします!」

 

 

 お母ちゃん、お兄さん。どうやら私のクラスは、素敵な人たちが集まるクラスの様です!

 

 

 ウララさんと握手を交わしていると─

 

 

 ──キーンコーン カーンコーン

 

 

 初めての授業の始まりを告げる予鈴が鳴り響いた。

 

 

「あっ! じゃあ、後でもっと話し聞かせてね〜」 ガララッ ドンッ!

 

 

 …え!? ウララさん!? 同じクラスじゃ無かったんですか!?

 

 

 

───

──

 

 

 

 初めての授業は緊張しましたが、お兄さんが残してくれていった勉強ノートのお陰で、今の所は問題なく授業についていけそうです!

 

 

 さてあの後、セイウンスカイさん・エルコンドルパサーさん・グラスワンダーさんと仲良くなれた私は、ただいま4人で一緒に学園の食堂までやって来ました!

 

 

「ふ、ふ〜ん。今までずっと田舎で1人でネ〜…」

 

「…苦労人なんだね〜」

 

「いえ! お母ちゃんも、近所の人もモースケも、それにお兄さんも!皆んな優しくて、苦労なんて全然!」

 

 

(((だ、誰かこの山盛りのご飯にツッコんで〜〜!!!)))

 

 

 …あれ? 何だか皆さん冷や汗をかいている様な…?どうかしたんでしょうか? そう思っていると、セイウンスカイさんが空気を変える様に私に質問を投げかけた。

 

 

「ねぇ、何でこの時期に編入して来たの?」

 

「うん! 私、小さい頃からトゥインクル・シリーズに憧れてたの!そしたらお母ちゃんが願書出してくれてて!」

 

 お母ちゃんも、『あの子トレーナー試験に合格した。って言ってたから、これで安心してスペを行かせてあげられる』って嬉しそうに言ってたっけ…

 

 

「良いお母様ですね〜」

 

「ところで、入るチーム か 専属のトレーナーさんはもう決まってるの?」

 

「あ、はい! お兄さん──幼馴染のお兄さんが、この学園でトレーナーさんを務めているので、私はお兄さんに担当して頂こうと思っているんです!」

 

「へぇ〜! 幼馴染の方がトレーナーさんを! 中央のトレーナーさんは、なるのが凄く難しいですから、とても優秀なお人なんですね〜」

 

「はい! お兄さんは本当に凄いんです! 小さい頃から私にトレーニングをつけてくれて…勉強も出来るし、お料理も凄く上手なんですよ!」

 

「小さい頃から? それは凄いね〜そりゃあそれだけ息がピッタリなら、その人に担当してもらうのが1番良いだろうからね〜」

 

「実は私もそう思って先日、自分から担当して欲しい! ってお願いしちゃいました。…ところで、皆さんはもう決まってるんですか?」

 

「アターシは、チームリギルに入ろうと思ってるんデェェス! だって、チームリギルは学園内最強のチームだかラ!」

 

「私は、既にそのチームリギルに所属していますよ〜」

 

「私は【アルビレオ】ってチームに所属してたんだけど、何だか合わなくてさ〜今は【デネブ】ってチームに所属してるんだ〜」

 

 

 へぇ〜…皆さん全員がチームに所属しているんだ……あれ? チームリギルって、確かスズカさんのチームだった様な…

 

 

「チームリギルって、もしかしてサイレンススズカさんの所属しているチームですか?」

 

「あれ? スズカさんの事知ってるの?」

 

「はい! 寮でのルームメイトさんなんです!」

 

「そうだったんですね〜。そうですよ、スズカさんはリギルでの先輩なんです」

 

「そして今日は、そのリギルでの入部テストがあるんデスよね! ワタシ、絶対合格してみせマァァス!」

 

「わあ! そうだったんですね! エルちゃん、頑張って下さいね!」

 

「ふふっ、エルならきっと合格出来ますよ〜」

 

「エル〜、ファイト〜」

 

「イエス! 皆んなありがとうございマァァス!」

 

 

 その後ウララさんも加わって、皆んなと楽しくお話ししながら、私たちは食事を楽しみました!

 

 

 

───

──

 

 

 

 私は今、エルちゃんのチームリギル入部テストを応援する為に、お兄さんと一緒に模擬レース場に来ています!

 

 

 エルちゃんと同じく、ウララさんも入部テストを受ける事にしたみたいで、気合十分のお真顔でエルちゃんと一緒に準備運動をしています。

 

 

「お兄さんは、どの人が合格すると思いますか?」

 

「ん? そうだな…エルコンドルパサーさんかな。勝てるとしたら、あそこに居るキングヘイローさんだけど…現時点での総合力ならエルコンドルパサーさんが一枚上手だと思う」

 

 

 おー! お兄さんはエルちゃんを推しているみたいです!

 

 

 私も今ターフに居る人たちの中では、エルちゃん と キングヘイローさんが怖いかな。という感じだったので、お兄さんの感覚と同じでした。

 

 

 そうして、チームリギルの選抜レースが始まり──見事エルちゃんが1着を取って、有言実行の合格をしました! エルちゃん! 本当におめでとうございます!

 

 

 ウララさんはかなり遅れてしまってのゴールになってしまいましたが…今日は調子が悪かったんでしょうか…? そんな風に、見事エルちゃんの勇姿を見届けていると、お兄さんが私の方を向いて──

 

 

「スペちゃん、明日から本格的にトレーニングを開始しようと思うから、授業が終わったらこの部屋に訪ねて来てくれるかな?」

 

 

 そう言うと、恐らくお兄さんのトレーナールームの場所が記されているであろう地図を受け取りました。

 

 

 ──そうだ。私も明日から、お兄さんと一緒にトレーニングが出来るんだ!

 

 

 皆んなに置いていかれない様に、【日本一のウマ娘】になる為に、私ももっと速く…もっと強くならないと!

 

 

 よーーし! これからけっぱるぞー!

 

 

 お兄さんとの久しぶりのトレーニングを楽しみにしながら、私は明日に備えて、その日は早めに寝床につきました。




 ここまで読んで下さって本当にありがとうございます!


 デビュー戦まで書きたかったのですが、少しグダグダと書きすぎてしまった為、ひとまずここで区切らせて頂きました。


 次の話はデビュー戦になっております。ずっと書いてみたかったレースシーンを書けるので、勝手にテンション上がっております!


 少しでも読みやすくなる様に、次も頑張って書いてまいります。
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