夏の木陰のような、温かくも涼しく、涼しくも暑い雰囲となっています。
過激な表現を抑えていますが、性的描写があるためご注意下さい。(問題があればR指定を変更いたします)
肌の焼けるような日差しから、森の入り口にある木陰に入ると一気に涼しくなった。
8月の暑さも、目が眩む海面のまぶしさもなく、ただ腰を下ろすだけで気持ちが良い。
なによりほんの少しの薄暗さに埋もれているのは、なんだか安心する。
「……あ、こんなところにいたんだ」
優しく囁かれて顔を上げる。
小麦色のハリのある肌が、そこにあった。
見るからに柔らかな少女の四肢。水着は黒と藍色のワンピース。
短めな黒髪からはちょこんと上に二つフサフサとした耳が生え、その下には丸い目元があった。
「わ、涼しいね……座ってもいい?」
そう言いながら、勿論僕が頷くのを知っているから、すっと横に座った。
少しの間、二人は黙る。
みんなの声が遠い。森のさざめきが安らかに眠気を誘う。
海の側と森の木陰には、ほんの少しの距離だというのに別空間だ。
ここには二人しかいない。
「今日はさ、楽しめてる?」
朝から来ていた浜辺も、午後を回り始めて帰り始める人たちがちらほら見える。
皆が盛り上がっている中で、僕はこうやって一人休んでいる時間が長いから心配されたのかもしれない。
ちゃんと、楽しんではいるのだ。
ここに座って遠くの笑い声を聞き、日常を忘れるのだってかなり癒される。
「フフ、木陰に二人でいると……ドキドキもするし安心もする。不思議な気分」
彼女はそう言って僕の肩に手を伸ばし、体重をかけた。
そのまま二人はばたんと倒れ、横向きに顔を見合わせた。
「こんなに顔の距離だって近いのに、さ。すっごく落ち着くの」
少しだけ弾んだ声で、彼女は僕の上にまたがる。
午後の微睡みを味わう中で、彼女の姿は太陽を背に、夏空へシルエットを作り出した。
彼女と僕の太ももがこすれ合う。
しっとりした柔らかさに、小さな熱を感じる。
「この後……ううん、今がいいな」
僕は上半身を起こして、彼女に近づく。
もっとその小さな音色がしっかりと聞こえるように。
「これから、さ……一緒に盛っちゃう?」
ケモミミをつけた少女らしい言葉選びに、僕は少し笑った。
ベッドに入り、時間も忘れてキスをゆったりと楽しんだ後。
抱き合う姿勢で、互いの身体を撫でまわす。
二の腕は自分の腕と比べると随分やわらかく、けれどぎゅっと押せば筋肉の硬さが感じられる。
背中を伝い脇腹をなでる。産毛がくすぐったい。腰の凹凸が女性らしい。
小ぶりな尻から伸びた太ももに指を沈めると、羽毛のようにどこまでも潜ってしまいそうだった。
「君って、こういうときにも色々と考えているよね。興奮してるのに、全然荒々しくなんない」
そうかな。
君のことをしっかりと感じたいと思うのは変だろうか。
「うーん? ……そのままで良いよ。しっかり愛してくれてるんだって伝わってくるし」
彼女はご機嫌そうに、頬をすりすりと合わせた。
「それに、こういうときって女の子のほうは色々と考えてるものだよ。ちゃんと避妊してるかとか、安全日だっけ、とか。このまま恋人になるか、結婚するのか。好きだけど、身体の相性が悪いからやめようかな、とかさ」
彼女の顔を見る。
丸くて幼い顔だと思っていたけれど、近くでみるとその瞳の奥がしっかりと見えた。
多分僕なんかよりもずっと、色んなことを考えて、それでいて明るく振舞えている女の子なんだろう。
「ゆっくり……ね?」
彼女の中に、時間をかけて入っていく。
温かく、ぎゅっと握りしめられる感覚。
自分のものが、彼女のものになった感覚。
「はぁ~、ちょっと休むね」
くたびれたように息を吐く、その顔は火照っていた。
汗がじわりと溢れて、匂いが充満する。
彼女のうなじからつうっと流れたそれを、俺は舌で舐め取った。
しょっぱい、だけではない。
酒なんかよりも芳醇で頭をくらくらさせる。
「ふふっ……ねえ」
僕は横を向く。
今更驚くことはないけれど、唇が触れ合いそうな距離。
その艶やかな口元が言葉を作った。
「結婚、しちゃおっか……」
僕は返答するのに10秒はかかった。
けれど彼女は許してくれた。
言葉より先に、俺の身体はぎゅっと彼女のことを抱きしめていたお陰だろう。
僕も彼女も、自分たちの思う以上に、本能に従順だったのだ。
涼しくも温かな木陰の風が、重なり合う僕たちへ今も吹いていた。