二人は前にいる凛を追ってアーチャーの待つ場所へと向かう。それにしても魔術師はなぜ一般人より速いのだろうと走る中、考えていたひろしだったが直ぐにどうでもよくなった。この世界に召喚されてから驚く事ばかりだからこんな事でいちいち考えていられない。恐らく魔術の他類で身体強化しているのだろうと脳内で納得したひろしだった。
町には一切の異変がないかのごとく静かで冷たい風が吹いていた。
ついさっきまで戦おうとしていた相手と共に一時的とはいいながらも停戦関係になれたのは奇跡といっていいだろう。そうこうしているうちに凛は足を止めた。
凛「アーチャー、大丈夫?あのサーバントはどうなったの?見失った?ならひとまず追いかけられてた人の安否確認をとらなきゃ駄目ね。後々面倒な事になるのはごめんだし。」
凛はアーチャーに会うなり質問責めだが、アーチャーは冷静に応答していく。
アーチャー「まず凛。あのサーバントに追いついた時には逃げた奴は刺し殺されてた。そこに横たわっている奴だ。血がかなり出ていて普通の人間なら出血多量でもうじき死ぬ事だろう。どうする?奴を助けるか?それとも仕方なかったと割りきって見殺しにするか?凛次第だぞ。俺は手を出さないからな。」
凛「そんなこともっと早く伝えなさいよ!このままじゃ死ぬのは必然的だし、今の手持ちで治療出来そうなのはこの宝石位か…。でもかなり高価な物だし……。いや、そうは言ってられない、早く治療しなきゃ!」
そう凛が言うと宝石を取り出し、横たわる男に治療を施した。具体的には宝石の含む魔力を使い、傷を塞いでゆく。
凛「これでひとまずは安心ね。アーチャー!一応周りを警戒しといてね。またあのサーバントが来るかもしれないし。」
アーチャー「しかし、それほどまでにその男に対してするのは何か思い入れがあるのか?」
凛「前に学校で見かけただけ。だけど目の前で死なれてもらっちゃ気分が悪いわ。それにアーチャーこそずいぶん辛辣な扱い方だったけど何か関係あるの?」
凛は軽く笑うような顔でアーチャーを見る。
アーチャー「私はあそこで動かずに見ている様な愚か者なのは確かだからな。一般人なら恐怖で動けなくなるのは当然だが、コイツは違う。まだまだ力はないとはいえ魔術師なんだからな。」
アーチャーは横たわる男を見て苦笑いをする。
凛「確かになんか一般人にしては回復力が桁違いだと思ったけれどまさか魔術師だったなんてね。これからどうしようか?アーチャー?」
アーチャー「ひとまず君は後ろの二人を気にした方がいいんじゃないか?」
凛「えっ…とあー…ごめん。アーチャーとずっと喋ってて。どこまで聞いてた?」
イリヤ「その人が魔術師だって所までは聞いてたわよ。
ひろしも聞いてたよね?」
ひろし「ええ、聞かせてもらいました。一旦はその人が目覚めるのを待った方が良いのでは?いえ、もちろん決定権はサーバントである私にはありませんのでマスター達で決めてください。」
ひろしは流れる様に話したが今の話でサーバントであることがバレて、そのマスターがいることもバレてしまった。
イリヤ「ちょっとひろし!何ばらしてんのよ。」
ひろし「そうでしたね。すいません。」
イリヤ「全く、マスターとそのサーバントが一夜にしてバレるなんてあっちゃダメなんだからね。」
イリヤは怒っているがひろしは思った。
そもそもここに来る前に既にバレているのでは?と。
凛「ちょっといきなりもめないでほしいのだけど。
いくつか尋ねたいことができたし。答えてくれるわよね?ひろし。」
ひろし「ええ。問題ありませんが。ですがマスターの指示がなければなんとも言えません。」
凛「ねぇ、そこのマスターは許可してくれるわよね?」
イリヤ「そんなの許可するわけないでしょ!…って言いたいけど認めてあげる。ひろし、話してあげなさい。ちょうどいいハンデになるわ。私のサーバントは誰にも負けないんだから!」
イリヤは声を張り自信に溢れている。
アーチャー「ひとまず私は下がっておこう、マスター同士の会話には今度こそ口は挟まないつもりだからな。」
そういうとアーチャーはゆっくりと霊体化して消えた。
凛「アーチャーの奴、勝手に下がるなんて。まあこの場には今は必要なさそうだし。問題ないわよね?」
イリヤ「そうね。その方が私は喋りやすいし。遠坂のサーバントなんて何するのか分からないしね。」
凛「ちょっと!私のサーバントをあんまり馬鹿にしないでもらえる?確かにこの聖杯戦争において私は敵マスターだし近くには敵サーバントがいるかもしれないけどそんな野蛮な事はしないわ。少なくともこの場でわね。」
イリヤ「あんまりまだ信じられないけど、隣にひろしがいるなら私は問題ないわ。さっさと始めましょう。」
そうイリヤが言うとひろしは凛に話し始めた。だがこれを密かに見ていたサーバントがいた。
???「おいおい、まさかマスターがこんな場所に二人も揃うとはな。それにサーバントが一人か……いや、そこの黒髪のマスターなら近くにアイツがいるか。」
凛「もうここに戻ってきたの!このサーバント。」
???「戻っちゃ悪いか?そこの男を確かに殺したと思ったんだがな。まさか生きながなえているとはな。こうなっちゃこの槍が泣くからな。今度こそ殺す為にここに来たのさ。」
イリヤ「待って、このサーバントは恐らくランサーよ。遠坂のマスターだったらとっくに気づいてるでしょうけど。」
凛「当たり前じゃない。そんなこと。」
凛はこう言ったが、出会った当初はまだ確証がなかった。
凛「とにかく!アイツをどうにか追い払わないと!」
イリヤ「なんで追い払うの?今ここで倒せば良いじゃない?」
凛「アイツは見つけたマスターやサーバントと重症を負わない程度に戦って情報が得られたらマスターの元へ逃げるからそれは余程の事がない限り無理よ。」
イリヤ「そうなんだ…。じゃあ、貴方のサーバントを呼んで遠くまで引き付けたら良いじゃない?そうすればひとまずはこの人も私とひろしが守っていれば問題ないしね。お願いできる?」
凛「なんなのよこのマスターは図々しいわね。じゃあ頼まれてあげるからそいつしっかり守っときなさいよ!」
そう言うと凛はアーチャーを呼び出した。アーチャーは面倒な仕事を任されたと苦笑いした即座に両手に剣を構える。
アーチャー「そこのサーバント、こっちに来い。また相手してやる。」
ランサー「けっ!またコイツと戦うのかよ。俺はあっちのサーバントと戦いてえのによ!」
アーチャー「この私を圧倒できないようでは新たな敵となど貴様には戦えんぞ。かかってこい。」
ランサー「うるせぇ!やってやろうじゃねぇか。」
ランサーは槍を構えアーチャーめがけて一目散に突っ込んでいく。
アーチャー「相変わらず、戦い方を変えない奴だな。少々足の速さを競おうじゃないか。」
ランサー「この俺にスピードで競おうってか?つくづく馬鹿な奴だな。でもつきやってやるよ。もちろん俺が勝つけどな。スピードでもこの勝負でも。」
二人は距離をとりながら徐々に遠くへ行った。姿は見えないが、音が後から聞こえてくる。
ひとまずここで今回の話は終わりです。
次回をお待ちください。