「・・・どうして分かった?」
オレが違和感を覚えた相手の正体は、なんと・・・元生徒会長の堀北学だった。(いまさら)
「あんただけ、身のこなしが違ったからな」
やはり空手と合気道の有段者、という肩書きは伊達ではなかったようだ。しかし、確かいまは文部科学省の若手エリート官僚であるはずの彼が、どうしてこんなところに・・・?
「・・・べ、別に全然心配などしていないのだが・・・その・・・鈴音と琴音の様子はどうだ?ちゃんとシャワーは浴びているのか?替えの下着はちゃんと管理しているのか?虫に刺されたりしていないか?まさかとは思うが、悪い虫などは付いていないだろうな。ふたりに万一のことがあったりしたら、男として責任を取ってもらうぞ、綾小路!」
一転、畳み掛けながら鋭い殺気を放つ堀北学。やはりただ者ではない。残念ながら、態度と言葉の内容があまりに噛み合っていないのが致命的だが・・・(-_-;) シスコンもここまで来ると、もはや手遅れだな。将来、あのふたりが誰かと結婚でもしようものなら、コイツはいったいどうなってしまうのやら・・・
なぜかどっと疲れを感じたオレは、踵を返そうとした。これ以上は時間のムダである。
「ま、待て!どうか鈴音と琴音にだけは、内密にしてくれないか・・・身内の恥を晒すようだが、ふたりはまだ、兄離れができていないんだ!俺が島に来ていることを知れば、あいつらはまたダメになってしまう!」
「ダメになってしまうのは、妹離れ出来ないあんたの方だろ?」
「ぐ、ぐはぁ?!」(図星)
膝から崩れ落ちる残念な兄貴を捨て置き、今度こそオレはその場を後にした。
「あ、おかえりなさい、綾小路君」
色んな意味でぐったりしたオレを出迎えてくれたのは、テントの中で寛ぐ椎名だった。ジャージの胸元を開け、少しだらしない雰囲気だが、それもまた絵になる。美人は何をしても許されるのだ。
「あ?あぁ、ただいm・・・待て待て待て!!なんでお前がここにいる?」
危うく受け入れそうになり、慌てて現実を直視する。まだ夕方とはいえ、男性教諭のテントに若い女性教諭がひとり。完全に通報案件だ。Dクラスの生徒たちに気付かれたら、オレの無人島試験が終わる。
「Bクラスは平和すぎるので・・・お日さまポカポカばかりでは眠くなります。たまには嵐も良いものです」
それって暗に、これから騒ぎを起こすつもりだと言ってないか??
「いますぐBクラスの拠点に戻れ!これは職場放棄だぞ?!」
「そんな!?高校入学初日から続く私と綾小路君の愛情は、ここで終わりなのですか?」
「それ、愛情じゃなくて友情な。あと、入学初日には出会ってないだろ」
「いえ、最近の二次創作界隈では、例のバスの中で出会うパターンが結構多いみたいですよ」
そう言いながら、スマートフォンを掲げる椎名。お前は南の島まで来ておいて、いったい何を読んでいるんだ??(ハーメルン)
渋る椎名をやっと追い出し、ほっと一息つく暇もなく・・・テントの入り口が開いた。今度は堀北だ。こいつら、仕事する気があるのか?
「いまのはどういうことかしら?このテントから、着衣の乱れた椎名さんが出て行ったように見えたのだけれど」
「たぶん、自分のテントと間違えたんだろ。あと着衣に乱れはなかったぞ」
オレの雑な返しに頬を膨らませながら、当たり前のように入って来る
「迂闊な行動は慎んでくれ、堀北。いまは特別試験中なんだ。どこに生徒の目があるか、分かったものではない」
「つまり、見られさえしなければ問題ない、ということね。さっきの椎名さんみたいに」
ジト目で不機嫌さをアピールしつつ、なぜかそのままオレの簡易ベッドで横になる堀北。学校指定のジャージ姿だが、不意に身体のラインが強調され、正直、目のやり場に困る状態である。そして、一度めんどくさいモードに入った彼女は、もはや制御不能だ。間違いが起こらないうちに、何とかお引き取り願いたいところなんだが・・・仕方ない。最終手段だ。これで彼女はリタイア確定だろうが、どうか恨まないでくれ。
「そう言えばさっき、お前の兄貴に会ったぞ」
「あら、兄さんも大変ね。たぶん文科省のお仕事なんでしょう」
なん・・・だと?!
あっさりと答える堀北。「に、兄さんがっ!!?」と叫んで飛び出してゆく光景を予想していたオレは、呆然とするしかない。朗報だぞ。喜べ、学。少なくとも鈴音は、とっくに兄離れ出来ているみたいだ。いや、あいつにとっては悲報か・・・(大混乱)
「変わったな、堀北・・・」
「ええ、私も琴音も兄さんから独り立ちしたの。
そんな彼女の独白を聞きながら、オレは思う。ひとは常に成長できる生き物だ。兄の存在に縛られていたあの頃の堀北鈴音は、もういない。これは、彼女に対する認識をさらに改める必要がありそうだ・・・ん?
ふと、凄まじいプレッシャーを感じて顔を上げた。視線の先では、いつの間にか堀北がジャージの上下を脱ぎ捨て、体操着とショートパンツになっていた。しかも整ったその顔は上気し、瞳がわずかに潤んでいる・・・
「私の大事なものが何なのか、気にならない?」
男女間の機微には疎いオレだが、さすがにこれはわかった。いわゆる
「綾小路先生。体操着の中に虫が入ってしまったの。いますぐ取って貰えませんか」
その時、またもテントの入り口が開いた。入ってきたのは堀北琴音だ。ご丁寧に体操着を捲り上げながら。最悪のタイミングである。てか、コイツらは姉妹揃ってデリカシーというものが無いのか?もしオレが着替え中だったりしたら、どうするつもりだったんだ?
しかしいまは、それよりも更に深刻なシチュエーションである・・・
「なっ?!ね、姉さん・・・」
「なっ?!こ、琴音・・・」
愕然として言葉を失う、
「「ふ、不潔だわ!この変態!痴女!泥棒猫!」」
衝撃から立ち直り、ふたり仲良く同じセリフを口走る。声だけ綺麗で、言ってる中身は最悪な女性二部合唱だ。需要はそれなりに・・・あるのかも知れない。(錯乱)そしてこの騒ぎを聞き付け、Dクラスの生徒たちが集まって来た。ヲワタ・・・
「どうしたの・・・?えっ?!堀北さんと・・・堀北先生も?!きゃー !( ☆∀☆) みんな、リアル姉妹丼よっ!!」
「きよぽん先生・・・さすが大人だわ・・・♥️」
「ふははははっ!なかなかやるじゃないか、きよぽんティーチャー!これは実に素晴らしい保健体育の授業だ!こんな生々しい現場をみせつけられたら、
「クソッ!俺らが禁欲生活を強いられてるすぐ隣で、女子高生&女教師と・・・うらやまけしからん!手持ちのポイント全額払いますから、どうか俺も混ぜて下さいっ!!」
それらの阿鼻叫喚を聞きながら、ぼんやりとオレは考えていた。担任教師がリタイアしたら、ペナルティーはあるのだろうか、と。
次回予告:激闘続く、無人島サバイバル試験。そんな戦場に再び現れたのは・・・え???