「ふぅ・・・」
最後のひとりを送り出し、私はようやくひと息ついた。まだ試験初日だと言うのに、リタイアを希望する男子が長蛇の列を作ったのだ。どうやら、ただ単に私の診察を受けたかっただけらしい。もちろん、全員仮病だったけど。(苦笑い)
本部テントを出ると、辺りに人影は無い。これはチャンスだ。
私を絶望の底から救い上げてくれた恩人。あの時、勇気を奮った告白は実らなかった。でも、巡りめぐって、いまは手の届く場所に彼がいる。さっきは堀北さん姉妹に横取りされたと聞いて、また絶望しそうになった。だからこそ、もう躊躇わない。いま行くから待っててね。
白衣を脱ぐと、私は歩き出した。
読書仲間。彼との関係は、そんな月並みな言葉では言い表すことが出来ません。堀北さん姉妹なんかに、先を越されるわけにはいかないのです。先ほどは上手くいきませんでしたが、今夜こそ・・・待っていて下さいね。
私はゆっくりと歩き出しました。
腐れ縁。思えば入学式に向かうバスが出逢いの場だった。3年間、すぐ隣で同じ時間を過ごしておきながら、意地を張って自分の気持ちから目を背けているうちに、全ては終わってしまった。けれど、今度はもう間違えない。さっきは思わぬ邪魔が入ったけれど・・・逃がさないわ。おとなしく待っていなさい。
私は歩き出した。
やっとこの時が来ました。ホワイトルームでの出逢いから15年3ヶ月と11日。先ほどは、彼が堀北姉妹の毒牙にかかったとの誤報に取り乱してしまいました。心身ともに万全となったいま、わたくしがひとの温もりというものを教えて差し上げましょう。待っていて下さいね。
私は歩き出しました。
全く話にもならねぇ。
すっかり闇に包まれた森の中を歩きながら、俺は悪態をついていた。受け持ちのCクラスは雑魚ばかりだ。一気に他を出し抜くチャンスだってぇのに、ポイント欲しさにちまちまと、キャンプの真似事を始めやがった。大胆な戦術も、先を見通す慧眼もない。ヤン・ウェンリーもラインハルトも居ねえ。せいぜいが、柄の悪くなったフレーゲル男爵レベルだ。こりゃ、Aクラス争いは詰んだな。
この試験、教師は一切関わることが出来ない。あの日、最後の大逆転を狙ってこの森に潜伏した俺が、いまじゃ運営側の一員だ。こりゃ、笑えねえ冗談だぜ・・・
気付くとDクラスのベースキャンプに辿り着いていた。担任専用のテントを覗くが、空っぽだ。ククク・・・あの野郎、こんな夜遅くまで律儀に時間外労働かよ。やっぱし気に食わねえヤツだ。仕方ねえな。ちょっとばかし仮眠させて貰うぜ。
ヤツのテントに潜り込むと、俺は簡易ベッドに横たわった。
~ side椎名ひより ~
どうして皆さん、私と彼の仲を邪魔するのでしょう・・・月明かりの中、目の前には3人の敵がいました。ここ
「みんな、目的は同じ・・・なのかな?」
「どうやらそのようね・・・」
「ふふふ・・・学校行事の最中に泥棒猫とは。全く、油断も隙もあったものではありませんね」
暫し睨み合いが続きましたが、いつまでもこうしてはいられません。もし綾小路君に気取られたら、私たちはおしまいなのです。
程なく、坂柳さんが折衷案を出しました。
「ひとまず対立は棚上げして、欲望・・・ケホケホ!目的を果たしませんか?いわば、かりそめの同盟です」
「わかった。一時休戦、というわけだね」
真っ先に一之瀬さんが同調します。
「ええ、ようこそ実力至上主義の[
そう答える坂柳さんは、とっても悪い微笑みを浮かべていました。他の皆さんも、似たり寄ったりの見るに堪えない表情です。(私は除く)やはり、美人の悪巧みは華がありますね。(私を含む)
「不本意だけれど仕方ないわ」
「うん、まずはみんなで力を合わせようよ」
「ふふふ・・・ご理解頂けたようで何よりです」
「でも、かりそめと言ってる時点で裏切りは確定ですよね?」
「「「椎名さん・・・( 。゚Д゚。)」」」
それぞれの思惑を胸に、私たちは動き始めました。
「まずは3方向から、半包囲態勢で近付きましょう。左翼は堀北さん、右翼は一之瀬さんにお願いします。中央は椎名さんとわたくしが」
「この布陣・・・アスターテ会戦ですね」
このままでは、時計回りに各個撃破されて終了です。
「あすたーて?何のことかよく分からないのだけれど、とにかくこれで綾小路君は絶体絶命ね」(ハイライトオフ)
「にゃははははっ!」(小声)
「ふふふ・・・どれだけこの時を待ち侘びたことか・・・」(ケダモノ)
些か様子のおかしい皆さんを尻目に、私は機先を制しました。
「では、行きましょう」
「ええ」
「うん」
「かしこまりました」
抜き足、差し足、忍び足。サバイバル試験真っ最中の無人島に暗躍する、怪しい・・・ケホケホ!美しい4人の華。しかし・・・あと少し、というタイミングでテントの中に人の気配が。気付かれた?!もはや一刻の猶予もありません。
次の瞬間、テントの入り口が開きました。ひょっこり顔を出したのは・・・
「ふぅ・・・仮眠のつもりが、ひと寝入りしちまったぜ。しっかし暑くて寝苦しいな・・・あ?どうしたんだ、お前ら・・・」
上半身裸で、寝ぼけ眼の龍園君でした・・・私はミステリーだけでなく、恋愛ジャンルの本も嗜みますが、さすがにBLはまだ読んだことがありません。
「にゃにゃん?!まさか先を越された・・・?」
「私を差し置いて、
「ふふふ・・・ごきげんよう、ドラゴンボーイ。どんな最期をお望みですか?」
「へ・・・?た、たわばっ?!」
間抜けな彼の断末魔は、夏の夜空に吸い込まれてゆきました。
明けて2日目。
昨夜は最悪だった。あのあと、オレが堀北姉妹をテントに連れ込んだとの噂話が島中を駆け巡り、居場所が無かったのである。(濡れ衣)やむなく客船内で一夜を過ごし、夜明け前ギリギリにDクラスのベースキャンプへ戻ることにした。例のGPS付き腕時計があるので、どこに居ても生徒たちの動向は把握できるのだ。あれ?じゃあ、わざわざ担任教師がテント生活する必要なんて無いのでは・・・?(白目)
しかし翌朝、予定通りキャンプに戻ったオレが見たのは、なぜか大破した自分のテントだった。もちろん、自前のポイントで再購入する羽目に。(泣)あと龍園がリタイアしたと聞いたが、いったい何があったんだろう?(他人事)
「で・・・なにしてるんだ?」
食材集めに勤しむ堀北琴音たちを遠くから見守りつつ、オレは傍らの木に向かって話しかけた。いや、疲れのあまり現実逃避している訳ではないからな?
「・・・どうして分かった?」
木が答える。いや、正確には木のコスプレをした堀北学が。(意味不明)頭に枝を取り付け、股間から太い幹を生やし、全身に葉っぱを纏っている。妹たちには決して見せられない姿だ。(笑w)
「くっ・・・!兄が妹の心配をして何が悪い?!」
開き直る堀北兄。もはや、残念エリートの成れの果てである。
「はぁ・・・琴音のことは任せろ。これでも一応、担任なんだ」
「む?なら鈴音はどうする?」
「気には留めておこう。むろん、同僚としてだがな、
いい加減面倒になってきたオレは、適当にあしらった。こちらも勤務中なのである。拗らせた変態に付き合っている暇など、ない。
「ほぅ・・・では頼んだぞ。だが、俺を
オレは黙ってスマートフォンを取り出した。試験本部へ、変質者の出没情報を提供するためだ。明日の『Yahoo!ニュース』は、コメント欄がパンクすることになるだろう。
「ま、待て綾小路!ここで鈴音たちと引き離されたら、俺はダメになってしまう!俺はまだ、妹離れが出来ていないんだ!」
少なくとも、樹木のコスプレをしながらドヤ顔で発するセリフではない。それに、昨日と言ってることが真逆だぞ?
そこでふと、昨夜の騒ぎからずっと頭の隅に引っ掛かっていた言葉を思い出す。ちょうどいい。ここは博識な元生徒会長を頼ってみるか。オレは、疑問を疑問のまま終わらせない主義なのである。(by 茶柱佐枝)
「なぁ、ひとつ聞きたいんだが・・・」
「なんだ?妹たちのことなら、何でも答えてやれるぞ。それこそ、スリーサイズから使っているシャンプーの銘柄、愛読しているレディコミやラノベ、それに下着の色までな。あと好みのタイプはふたりとも、スリムで筋肉質の無表情な茶髪イケメンだそうだ」
淀みなく捲し立てるシスコン。改めて試験本部への通報を決意したオレは、最後に疑問を口にした。
「単刀直入に聞く。
「ぐはぁ?!」(失神)
無人島試験、おわり
「ところで、試験結果ってどうなったんですか?」(櫛田すみれ)
「
次回予告:衝撃の試験結果。そしてオレはハーメルンに・・・??