ようこそきよぽん先生の教室へ   作:いろはす@

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第3話:新入生

桜舞う4月。走り去るバスを背に、私は目の前にそびえ立つ校門を見上げた。周囲は、期待に満ちた表情で校内へと吸い込まれてゆく新入生たちで溢れ返っている。

 

 

「はぁ・・・」

 

 

まだ慣れない制服の着心地にため息をついてから、ゆっくりと歩き出す。今日から華の女子高生になった私が、こんなにも意気消沈しているのには理由があった。

 

 

最寄駅からのバスには、お年寄りに優先席を譲らない傲慢な金髪男子や、やけにツンツンした黒髪ロング女子など、朝から濃すぎる面々が乗り合わせていたのだ。まさか、あんなのと同じ学年だなんて・・・

 

 

だけど、いつまでも立ち止まっていることは許されない。私はもう一度、立派な校門を見上げた。ここを潜れば、これから3年間、外部との接触は出来なくなる。でも、そのデメリットを補って余りあるメリットが、この学校には存在していた。しかも私は知っているのだ。パンフレットには書かれていない、隠された真実の数々を。

 

 

卒業時にAクラスなら、希望進路は100%叶えてもらえるし、クラス対抗戦に勝って電子マネーを貯めれば、贅沢三昧の毎日が送れる。一方で、生徒たちは監視カメラで厳しく見張られ、退学処分も有り得る特別試験が目白押し。楽しみだなぁ・・・(白目)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?原作知識持ちの転生者チートストーリーは、いい加減読み飽きた、ですって?いいえ、どうか慌てないで下さい・・・そもそも、そんなライトノベルみたいな出来事、現実にはあり得ないですよ。二次小説の読みすぎじゃないですか?(大爆発)

 

 

で、私には今年社会人になった姉が居るんですが・・・あ、もうお分かりですね。そう、彼女はここ(高育)をAクラスで卒業したOGなんです。というわけで私、全部聞いちゃいました。ホントは絶対漏らしてはダメらしいんですが、私たち美人姉妹の間には、ウソや隠し事は一切無いんです。ウソですけど。(真顔)

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

私のお姉ちゃんは、周囲から天使のような善人だと思われていた。いつも明るくて優しい、私にとって自慢のお姉ちゃん。ところがある日、小学校から帰って来た私は偶然見てしまったのだ。日頃のストレスを発散する、裏のお姉ちゃんを。

 

 

「あーウザい!ほんとウザいんだよ!あの黒髪ロング!ちょっと美人で頭が良いぐらいで調子に乗りやがって!レズレイプしてやろうか?!」

 

 

あまりの衝撃に固まってしまった私は、隠れる暇もなく見つかってしまった。

 

 

「あんた・・・見たの?」

 

 

いつもとは別人のような声と口調で迫って来るお姉ちゃんに、私はただ、カクカク頷くことしか出来なかった。

 

 

「チッ・・・いい?いま見聞きしたことは、絶対誰にも言わないこと。もちろんお母さんにも。それを守れるなら、ひとつだけあんたの質問に答えてあげる」

 

 

たぶんあの時の彼女は、私を口止めしようと、敢えて譲歩してみせたのだろう。でも、まだ小学校低学年だった私には、そこまで深読みすることなど出来る筈もなく・・・

 

 

結局、感じたままを口にした。

 

 

「お姉ちゃん、()()()()()ってなに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらば純真無垢な日々。思わぬ黒歴史を発掘してしまった私は、改めて気を取り直すと校舎に向かって歩き始め・・・

 

 

「ねぇ、貴女。ちょっといいかしら」

 

 

不機嫌な声に振り向けば、先ほどのツンツン黒髪ロングさんがこちらを睨んでいた。え?私、なんかした?

 

 

「さっき、バスの中で私のことを見ていたわよね?いったい、どういうつもりなのかしら?」

 

 

はぁ・・・どうか彼女とは同じクラスになりませんように・・・(フラグ)そして私は、今日何度目かのため息をついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昇降口の掲示板でクラス分けを確認した私は、重い足取りで1年Dクラスの教室に辿り着いた。ここに配属されたということは、つまりそういうこと(不良品扱い)なんだろうなぁ。入試は上手くやったつもりだったのに、何がいけなかったんだろう・・・?

 

 

お姉ちゃんから色々聞いていた私は、Dクラス配属という事実にがっくりきていた。しかも、さっきはあのあと、なぜか黒髪さんに罵詈雑言を浴びせられ、私のメンタルはもうボロボロ。まだ入学式も始まっていないのに、どうしてこうなった?

 

 

中に入ると、座席は窓際のいちばん後ろ。これは大当たりだ。やっと私にも運が向いてきたらしい・・・

 

 

「はぁ・・・嫌な偶然ね」

 

 

しかし、その隣に座っていたのは、またしてもさっきの黒髪ロング。前言撤回。まだ運は向いてきていないようだ・・・

 

 

「うん!ほんとスゴい偶然・・・最初にできたお友達が、貴女みたいなひとで良かったなぁ。これから3年間、宜しくね?」

 

 

ああ、またこれだ。お姉ちゃんのダメなところを散々見てきたはずなのに、なんで私は彼女と同じことをしてるんだろう?

 

 

「・・・気は確かなの?いつ貴女と私が友達になったのかしら」

 

 

マジでこいつウザい・・・でも!

 

 

「え?そんな・・・私がお友達じゃ、ダメかな?」

 

 

少し悲しげに、上目遣いで迫る。そう、承認欲求を満たすためなら、私はどんな猿芝居だって厭わない。やっぱり私は、お姉ちゃんの妹なのだ。(あたりまえ)て言うか、もしいまさら血が繋がっていないとか言われた日には、ショックで1日8時間しか眠れなくなってしまうかも知れない。(極めて健康)

 

 

「理解に苦しむわ。だって貴女、私のことが嫌いなのでしょう?」

 

 

いきなり核心を突いてくるツンツン黒髪。これはなかなか手強いぞ。

 

 

「な、なんでそんな悲しいこと言うの?そ、そうだ!まずはお互い、自己紹介しない?」

 

 

「拒否しても構わないかしら」

 

 

ダメだこりゃ・・・そう結論付けて、一度その場を離れようとした私の背中に、固い声がぶつかってきた。

 

 

「堀北琴音」

 

 

「へ?」

 

 

思わず間の抜けた声を漏らした私に、彼女は不満そうな表情で続けた。

 

 

「自己紹介しろと言ったのは貴女よ。それとも、まさか単なる社交辞令だったの?」

 

 

一瞬、仮面を被るのを忘れてしまったけれど、すぐに取り繕って応じる。

 

 

「あ、有り難う、堀北さん!私の名前は・・・」

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

さて・・・中学校3年生の秋に、とある大問題を起こしてしまったお姉ちゃん。世間の目から逃げるように、全寮制の高度育成高等学校に進学したものの・・・

 

 

あろうことか、事情を知るオナ中の・・・ケホケホ!同じ中学出身の同級生とクラスメートになってしまったらしい。3年間クラス替えの無いこの学校で、いつ秘密を暴露されるか、怯えながらの毎日。そんな生活に、耐えられるはずもなく・・・

 

 

遂にお姉ちゃんは暴挙に出た。なんと、そのオナ中っ子を退学させようと、本来なら敵である他クラスと共謀したのだ。ところが見事に返り討ちに遇い、危うく自分自身が退学処分になりかけたとか・・・我が姉ながら、いったい何やってるんでしょうね?

 

 

「どうやってそのピンチを乗り切ったの?」

 

 

苦い顔で話すお姉ちゃんに尋ねると、彼女は一転、うっとりとした表情を浮かべて答えた。

 

 

「白馬に乗った無表情な茶髪の王子様に救われたの」

 

 

ひとの記憶とは、得てして美化されやすいものだ。でも、なんだか微妙な王子様だなぁ・・・

 

 

失礼なことを考えながら、適当に相づちを打つ。もちろん、それが誰なのかまでは教えてくれなかったけど、私には分かってしまった。いまでもお姉ちゃんは、そのひとのことが好きなのだろう、ということが。

 

 

高校を卒業し、3年ぶりにおうちへ帰ってきたお姉ちゃんは、どこか以前とは違って見えた。そして、彼女にその変化をもたらした高度育成高等学校。全国的にも有名な国立高校なのに、なぜか謎のベールに包まれた超エリート校。私がそれに興味を抱くのは、当然の流れだった・・・

 

 

 

 

 

そして・・・

 

 

 

 

 

「わかった。どうせあんたは私の劣化コピー版だけど、実の妹があっさり退学処分になるのは、さすがに見て見ぬふり出来ないしね」

 

 

「た、退学処分??!」

 

 

「そうだよ。でも、それでも聞きたいんでしょ?あくまで言い出したのはあんたの方だからね」

 

 

高育について教えて欲しい、と軽い気持ちで尋ねた私へ、お姉ちゃんは知り得る限りの機密情報を話してくれた。時に放送禁止用語まで織り交ぜながら。やっぱり、相当ストレスが溜まっていたんだろう・・・

 

 

そして、お姉ちゃんが3年分の鬱積した想いを吐き出したあとには、私という触れ得ざる者(βテスター)がひとり、爆誕していたのである。これって私は悪くないよね?

 

 

「これであんたは、絶大なアドバンテージを持ってあの高校に入学できる。たぶん、あたしがやれなかった事も、色々成し遂げられると思う。でも同時に、あんたに教えた情報は、取り扱いを間違えると身を滅ぼす。だからひとつだけアドバイスしてあげる」

 

 

そして彼女は、飛びっきりの笑顔で続けた。

 

 

「5月1日までは、何があってもおとなしくしてること。したり顔で職員室へ質問しに行ったりとか、賭け試合でプライベートポイントを増やしたりとか、余計な動きはしちゃダメ!絶対!それがあそこで生き延びるための、最初の秘訣だよ♪」

 

 

日本政府が作り上げた実力至上主義の教室へ、単身、誰にも知られてはならない秘密を抱えて乗り込む美少女戦士。なんだか萌えますねぇ・・・

 

 

少し中二病になりかけた私は、すぐに気を引き締め直すと、受験勉強に取り掛かった。これで不合格にでもなったりしたら、お姉ちゃんにレズレイプされちゃうかも・・・(ifルート)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭の中で回想シーンを再生しながら、私は早速友達作りに励んでいた。頑固な強敵、黒髪ロング改め堀北さんを堕としたあとでは、他のクラスメートたちと仲良くなることなんて、朝飯前だ。ホームルームまでにはまだ若干、時間がある。出来れば全員と、連絡先を交換しておきたいなぁ。

 

 

クラスのヒロイン枠を狙いつつ、人当たりの良いエセ天使を演じていると、予鈴が鳴り、入り口のガラスに大人の男性らしい影が映った。担任教師が来たのだろう。男の先生か・・・

 

 

自分の席に戻りながら、今後の動きをシミュレートする。相手が男性教師なら、手玉に取るのは容易いことだ。一気に距離を詰めて、丸め込んでしまえばいい。さあ、ヒョロガリ先生だろうがハゲでぶティーチャーだろうが、かかってきなさい!

 

 

そしてその2秒後、私は運命の出会いを果たすことになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな席に着いてくれ。HRを始めるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

細身のスーツを完璧に着こなした、若い男性教諭。入って来た彼を見た瞬間、私は悟った。これはクラス中、いや学年中の女子が敵になる、と。

 

 

「おはよう諸君。入学おめでとう。オレはクラス担任の綾小路清隆だ」

 

 

途中から、私にはもう彼の言葉が聞こえていなかった。クラスでの立ち位置も、連絡先集めもプライベートポイントも、一瞬で全部頭から消えてしまったのだ。そんなこと、もうどうでもいい。

 

 

知的さと精悍さを併せ持つ整った顔立ちに、指通りの良さそうなサラサラの茶髪。敢えてそうしているのか、やや翳りのある気だるげな無表情もまた、彼の魅力を一層引き立てている。僅かに闇を感じさせる瞳も堪らない。

 

 

そして、一見すらりとしているが、よくよく見れば明らかに鍛え上げられた細マッチョな身体。淡々とした、ややもすればぶっきらぼうなその口調も、落ち着いた声色とマッチしていて実に素晴らしい。ちょっとした仕草から、かなり育ちが良いことも感じられた。(べた褒め)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上、おバカな女子諸君の感想を代弁して、不肖わたくし()()()()()がお送りしました・・・え?お姉ちゃんの名前?櫛田桔梗だよ。




次回第4話:何も知らない新入生の中に、イレギュラーがひとり・・・
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