ようこそきよぽん先生の教室へ   作:いろはす@

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第7話:やはりこの学校の特別試験はまちがっている。

「1年生のみを対象にした特別試験、ですか?」

 

 

坂柳理事長の言葉に、思わずオレは問い返した。ずいぶんとまた、急な話だな・・・

 

 

母校に赴任してから約半月。ようやく一通り、仕事内容も掴めてきた4月の下旬。1年生を担当するオレたち新任教師は、朝から理事長室に集められていた。

 

 

「はい、かつて君たちも散々苦しめられた・・・ゴホン!大いに楽しんだ()()です」

 

 

高育卒業生にとって、トラウマの代名詞でもある特別試験。しかし、まだ新入生気分が抜け切らない1年生たちに、いきなり無理難題を吹っ掛けて大丈夫なのだろうか?

 

 

「安心して下さい。今回、試験の主役は生徒ではありません。その名もズバリ『教員対抗告白対決 ✨』です」

 

 

・・・その名前の時点で、すでに安心出来る要素が全くない。あと、どうでもいいが、その絵文字は必要なのか?

 

 

名称からして不穏すぎる特別試験。その内容は・・・

 

 

 

 

①各クラスの担任教師が、他クラスの生徒へ告白し、OKをもらうまでの時間の速さを競う。但し、3分間の制限時間内にOKを引き出せなかった場合は失格となる。

 

②順位に応じてクラスポイント、プライベートポイントが付与される。

 

③教師から生徒への身体的接触は禁止。(逆は可能)

 

④告白を受ける生徒は、クラス内から1名を任意で選出する。

 

⑤対戦カードは以下の通りとする。

 

◎堀北 → Cクラス男子

 

◎椎名 → Aクラス男子

 

◎龍園 → Dクラス女子

 

◎綾小路 → Bクラス女子

 

 

 

 

・・・やはりこの学校の特別試験はまちがっている。(他作品)常識人の坂柳理事長が作ったとは思えない内容だが、発案者はいったい誰なんだ?(ふふふ・・・わたくしです)ボソッ

 

 

「ククク・・・こりゃ、俺の独り勝ちだな。本や右手が恋人のひよりと鈴音には、100年早い試験だぜ」

 

 

自信満々に下卑た笑いを見せる龍園。これでも結構、生徒受けは良いみたいだが・・・なぜだ?(高育七不思議)

 

 

「それに、軽井沢を『お道具』扱いしてたお前にも勝ち目はねえぜ?綾小路」

 

 

否定はしないが、変なところに『お』を付けないでくれ。

 

 

「デリカシーに欠ける発言は止めなさい。そんな気構えだと、足元を掬われるわよ」

 

 

すっかり先生らしくなった堀北が諌めるも、火を噴くドラゴンには効き目なし・・・

 

 

「へっ!色恋沙汰も百戦錬磨の俺が、そんなヘマするかよ」

 

 

「でも、それって百戦全敗ですよね?」

 

 

「ぐはあっ?!」

 

 

またも椎名の天然砲が炸裂し、前哨戦はヤツの完敗に終わった。もう、優勝は椎名でいいのでは・・・?

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「・・・概要は以上だ。試験の開始は1時間後。あとは君たちで、告白を受ける生徒を決めてくれ」

 

 

急遽、1時間目の授業を潰して開かれたHR。試験のアウトラインを説明すると、オレは進行を生徒たちに任せた。さて、龍園相手に誰を出す?

 

 

「ねえ、これって、きよぽん先生が私たちDクラス女子に告るっていうパターンはダメなのかな?」

 

 

早速、余計な爆弾を投下する櫛田すみれ。誘爆の責任はとってもらうぞ。

 

 

「なっ?!ふ、不潔だわ!特別試験などという()()()()に紛れて、現役女子高生と不純異性交遊しようだなんて!私に無断でそんな勝手は許さないわよ?!綾小路先生!」

 

 

いきなりどうした、堀北・・・

 

 

「えっと・・・琴音ちゃん・・・冗談だよ?」

 

 

突然の大演説に、さすがの櫛田も気圧されている。

 

 

「てか堀北さんって、あんなに喋れるんだ・・・」

 

 

「うん、ちょっとびっくりした・・・」

 

 

「はっ?!はぅぅ・・・」プシュー

 

 

真っ赤になって轟沈する堀北琴音。こんなところも、姉にそっくりだ・・・

 

 

「あ!でもきよぽん先生なら私、速攻でOKしちゃう!」

 

 

「ズルい!なら、告られる役は私がやる!」

 

 

「俺だって、ひより先生が告ってくれるなら即OKだぜ!」

 

 

「バカ野郎!お前なんか相手にされる訳ないだろ?」

 

 

どうも、議論がおかしな方向へ逸れているな・・・

 

 

「ふははははは!実に愚かだねぇ。告白相手は他クラスの生徒、と明記されているじゃないか。それに、容易くOKしたら負けてしまうことも分からないのかね?ぼんくらボーイ」

 

 

「なんだと?!じゃあ、お前が出ろよ!」

 

 

「話にならないねぇ。なぜこの私が、ドラゴンティーチャーの告白を受けなければならないのかな?その手の腐向けストーリーは、他でやってくれたまえ」

 

 

唯一使えそうな高円寺は、全くやる気なし。このクラスに、もっと先読みできる原作知識持ちの転生者は居ないのか・・・あ、あと、オレのあだ名については触れないでほしい・・・(自業自得)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後。体育館を舞台に特別試験が始まった。ていうか、なんで他学年の先生方や来賓まで居るんだろう?それと頼むから、白衣にハチマキという格好で応援するのは止めてくれ、一之瀬。

 

 

「では、まず椎名先生からお願いします 」

 

 

危険な空気を纏った坂柳が、マイクを手に仕切る。絶対楽しんでるだろ、あれ。

 

 

指名を受け、普段通りの微笑を湛えて登場するひより先生。そのふんわりとした穏やかな性格と、長い銀髪を肩に流した佇まいから、すでに男子生徒からの人気は絶大なものがあるらしい。まさかオレの洗濯物を嗅いで悶えていた痴女さんだなんて、誰ひとりとして夢にも思うまい。

 

 

対するAクラス代表の男子は、先日の小テストで学年トップに立った秀才だ。外見は、あの堀北学だと思ってくれ。これはまた、生真面目タイプの難敵を出してきたな・・・

 

 

「こんばんは。月が綺麗ですね?」

 

 

まだ2時間目だが?

 

 

オレが心の中でツッコミを入れるよりも早く、あり得ないスピードで男子生徒へ肉薄する椎名。ていうか近い近い近い!?!まさか衆人環視の中で()()を犯すつもりなのか?!(驚愕)

 

 

「お、俺、死んでもいいです・・・」

 

 

そして、唇が触れ合わんばかりに急接近した椎名の勢いに呑み込まれ、堀北学モドキは呆気なく陥落した。まぁ、アレに耐えられるのは、ホモおじさんぐらいのものだろう。

 

 

「ただいまの記録、10秒・・・」

 

 

「「「おぉぉ・・・」」」

 

 

どよめくギャラリー。まさかあの椎名が、こんな体当たりの作戦で来るとは・・・

 

 

「面白いわね。受けて立つわよ」

 

 

「ククク・・・やってくれるじゃねえか、ひより先生よぉ」

 

 

それを目の当たりにして、早速戦闘モードに入る堀北と龍園。面倒なことにならなければいいが・・・

 

 

「では続いて、堀北先生です」

 

 

堀北も、いまや学校中で椎名や一之瀬と一番人気を争う存在だ。大学時代に再び伸ばしたらしい黒髪に、裏表のない理知的な言動、その凛とした佇まい。まさか半裸でオレの部屋に乱入を試みる変態さんだとは、誰ひとり予想すら出来まい。

 

 

一方、相手役のCクラス男子は、入学以来素行の悪さが目立つ問題児だ。外見は、龍園と須藤を足して宝泉で割ったような感じだと思ってくれたらいい。(想像不能)堀北が一番苦手とするタイプだ。さて、どうする鈴音?

 

 

「いますぐ私と付き合いなさい」

 

 

はぁ・・・やはり発想力が足りないな。このシチュエーションで教師の立場を振りかざしても、むしろ逆効果だぞ。

 

 

「ククク・・・まさかふたりっきりで、エッチな個人授業でもしてくれんのか?すずのん先生よぅ」

 

 

龍園顔負けの下品な笑いを浮かべる、Cクラス代表の男子生徒。どこのおっさんだよ・・・

 

 

「ええ、空っぽになるまでしゃぶり尽くしてあげるから、覚悟なさい」

 

 

「えっ?!( ゚Д゚)!は、はい・・・宜しくお願いします・・・」

 

 

「ただいまの記録、8秒・・・」

 

 

「「「おおおぉぉ・・・」」」

 

 

ウソだろ・・・

 

 

「ククク・・・いい感じにぶっ壊れてんじゃねえか、鈴音。萌えて・・・ゲホゲホ!燃えてきたぜ」

 

 

食い付くような笑みを見せる龍園。さあ、頼むぞ、我らがエセ天使・・・

 

 

そう、Dクラスの代表は櫛田すみれなのだ。先ほどHRで交わした遣り取りが、頭を過る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい!じゃあ私が代表になります!」

 

 

元気よく挙手する櫛田。

 

 

「え?本当に良いの?すみれちゃん、ドラゴンのことウザいって言ってたじゃん」

 

 

そんなクラスメートからの心配を一蹴すると、あざとくガッツポーズを決めるDクラスのヒロイン。ていうか、龍園のあだ名はやっぱりそうなったのか・・・(笑)

 

 

「大丈夫だよ。だってクラスのためだもん。一生懸命頑張るから、応援して貰えたら嬉しいなっ」

 

 

天使の顔を前面に押し出して、得意の猿芝居を演じる櫛田妹。姉貴(桔梗)の時みたいに、どこかでストレスが暴発しなければいいのだが・・・(超巨大フラグ)

 

 

「く、櫛田ちゃん・・・俺ら全力で支えるぜっ!」

 

 

世代が変わっても、男子という生き物は不変らしい。

 

 

「みんな有り難う!だからきよぽん先生、ご褒美を下さい」

 

 

「へ ?」

 

 

突然話を振られ、間の抜けた返事をしてしまった。

 

 

「だ・か・ら!クラスのために戦う代表として、何かご褒美が欲しいかな、なんて」

 

 

いますぐその上目遣いを止めたらな。

 

 

「私たちからもお願いします、綾小路先生。すみれちゃん、いつもクラスのために頑張ってくれてるんです」

 

 

他の生徒たちも、櫛田の後押しをしてくる。妙なところで信頼が厚いな。みんな、目の前に居るのは堕天使だぞ?

 

 

「今回の試験に、そんな規定は無い」

 

 

ここは敢えて突き放し、彼女の成長を促してみるとしよう。

 

 

「じゃあ、新たな規定を設ける権利をポイントで購入します。いくらですか?」

 

 

こいつ・・・まだ4月だと言うのに、もうプライベートポイントの使い方を熟知しているな。まさか、チート持ちのオリキャラなのか・・・(大正解)

 

 

「それは必要ない。オレが個人的に報酬としてプライベートポイントを支払おう」

 

 

「ううん、ポイントは要りません。欲しいのは先生の心です♥️」

 

 

さらりと真顔で言わないでくれ。あとが怖い。(監視カメラ作動中)

 

 

「なっ?!わ、私に無断でそんな勝手は許さないわよ?!櫛田さん!」

 

 

「えっと・・・だから冗談だよ、琴音ちゃん・・・」

 

 

「は?!はぅぅ・・・」プシュー

 

 

もはや堀北は、単なる弄られキャラになりつつあるようだ。(冷静)

 

 

~回想シーンおわり~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では続いて龍園先生、お願いします」

 

 

坂柳のアナウンスで、オレは現実に復帰した。眼前では、斜に構えた龍園が告白タイムに突入しようとしている。見た目は完全に、やさぐれた遊び人だ。まさか、実は意外と仲間思いで義理人情に厚い好青年だなんて、誰ひとりとして思わないだろう。ん?どうしてオレはヤツの長所をアピールしているんだ?

 

 

「よう、俺と付き合えよ、すみれ。昇天させてやるぜ?ククク・・・」

 

 

・・・やっぱりそれかよ!てか、まともな男女交際をしてきた人間のセリフじゃないな。さしずめ、修羅場で磨かれた独学の告白スタイル、といったところか。(半分正解)

 

 

一方、余裕のある笑顔で佇む櫛田は、ゆっくり龍園へ歩み寄ると・・・ヤツの右手を自らの左胸に押し当てた。マジか・・・(デジャブ)

 

 

「なっ?!」

 

 

「龍園先生、失格 」

 

 

「「「おおおおおぉぉ・・・」」」

 

 

「ば、馬鹿な・・・」

 

 

良くやった、櫛田・・・けやきモールでのパフェ食べ放題、必ず連れて行くと約束しよう。(ご褒美)

 

 

「では最後に綾小路先生、お願いします」

 

 

さあ、どうする・・・レールは敷いてもらったが、残念ながら全く勝ち筋が見えない。かつて、軽井沢や一之瀬を『恋愛の教科書』などと軽んじていたツケが、こんなところで回って来るとは・・・間違いなく、オレはいま窮地だな。

 

 

無策のまま、オレはBクラス代表の女子生徒と対峙した。たとえ試験とはいえ、オレなんかに告白されることが嫌なのだろう。彼女は顔を赤らめ、不快感をあらわにしている。そんな相手に3分以内で『イエス』と言わせるなんてリア充みたいな真似、絶対ムリだ・・・ついに、真剣勝負の場で初めての敗北を味わうことになるのか・・・

 

 

本番開始の合図を前に、呆然とオレは立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~side龍園翔~

 

 

新年度早々、いきなり始まった特別試験。Dクラスの櫛田すみれに嵌められた俺は、変態扱いされて失格となった。だが、勝負は最後まで何が起こるかわからねえもんだ。

 

 

綾小路清隆。俺にとって、絶対に越えなければならない壁。細身のスーツを隙無く着こなした姿は、いまどき流行りの軟弱イケメン野郎そのものだ。しかし、その実力たるや・・・

 

 

かつては不気味に見えたその無表情も、いまではヤツに年齢不相応な落ち着きを与えていやがる。女どもが騒ぐのも無理はねぇ。だが、本人がそれに気付いてないのが一番厄介だ。ちっ!いまどき、無自覚系主人公なんて流行らねえんだよ。

 

 

ククク・・・だがな、まさかあの野郎が『ドラえもん』すら満足に知らない半端者だなんて、誰ひとりとして夢にも思うまい・・・さあ、見せてくれよ綾小路。すかしたイケメンが、こっぴどく振られる無様な姿をよぉ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱりオレは、不良品だったんだな。告白ひとつ、まともに出来ないとは・・・あの男も、ホワイトルームなんて御大層な代物を作った割には、カリキュラムが全然ダメだったじゃないか。

 

 

追い詰められて頭が真っ白になったオレは、思わず()の陰キャ丸出しでキョドることになった。

 

 

「オ、オレと・・・」ボソッ

 

 

「はいっ!!不束者ですが、宜しくお願いします!♥️」

 

 

「え?!」

 

 

「た、ただいまの記録・・・1秒・・・」

 

 

「「「「うおおおおぉぉ?!」」」」

 

 

えっと・・・どうしてこうなった?

 

 

「なっ?!ふ、不潔だわ!特別試験などという()()()()に紛れて、現役女子高生と不純異性交遊しようだなんて!私に無断でそんな勝手は許さないわよ?!綾小路先生!」

 

 

図らずも、妹と全く同じセリフを口走るすずのん。やはり姉妹である。

 

 

「ふふふ・・・さすがです、綾小路先生。でも、そんな勝手は許しませんよ?」

 

 

「済まない綾小路君、あとは任せましたよ・・・」

 

 

こんな試験を作っておいて逆ギレする美人秘書と、あっさり逃げ出す理事長(お父様)。やはり親子である。

 

 

「こうなったらもう、強行手段で既成事実を・・・」ボソッ

 

 

衝撃の結末に、ハイライトが消えた目で呟くひより先生。やはり彼女もぶっ壊れている。

 

 

「クソッ!いまはせいぜい、勝利の優越感を味わえよ綾小路ぃ!だが最後は全部、俺が持っていってやるからな!」

 

 

そして、ハンカチを噛みしめながら悔しがる龍園。その姿は完全に、ごつい負けヒロインであった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは東京都高度育成高等学校。日本屈指のエリート進学校である・・・




次回:再びの無人島・・・
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