ライラのアトリエ ~ブルネン家の錬金術師と秘密の石碑~ 作:ベレット
「よーし、あとはきれいな水を入れてぇ……きゃああっ!」
あーあ、また失敗しちゃった。
初心者向けの調合なのに爆発するなんて、やっぱりわたしには錬金術師の才能が無いのかなぁ。
と、しょんぼりしていたら、お母さんのアトリエの扉が勢いよく開いた。
「──ライラ、どうした! 凄い音がしたが、大丈夫か!?」
入ってきたのはわたしのお父さん、ボオス・ブルネン。
ブルネン家の当主様だった。
先程の爆発を聞き付けられちゃったみたい。
お父さんの顔が焦りで満ちている。
「ケホッケホ。 あはは、大丈夫だよお父さん。 心配しすぎだって」
「はぁ……あのな、心配するに決まってるだろ。 お前は俺の大事な一人娘なんだから」
相変わらず過保護だなぁ、お父さんは。
心配してくれるのは嬉しいんだけど、この過保護さはたまにちょっと鬱陶しいかも。
「はーい。 ところでお父さん、その箱なに?」
「ん……? ああ、これか。 これはだな……」
お父さんの腕には段ボールらしき箱が収まっている。
宅配物か何かっぽいけど…………あっ、もしかして!
「もしかしてお母さんがまた何か送ってきたの!?」
「いやいや、違う違う。 送ってきた訳じゃなくて、無理矢理運ばされ……」
お父さんが疲れた様子で棚に段ボールを置いた次の瞬間。
元気溌剌な懐かしの声がわたしの耳に届いた。
「ライラただいまー!」
「え?」
この声は間違いない。
このテンション高い声色は間違いなくあの人。
わたしが最も尊敬する錬金術師にして母親のライザリン・シュタウト……ではなく、ライザリン・ブルネンのもの。
「ライラ、久しぶりね! 元気だった!? お母さんはとっても疲れたー!」
「お、お母さん……く、苦しい……」
お母さんはいつもテンションが高くて、オーバーリアクションだ。
わたしを見付けるなりお母さんは、茶色の綺麗な髪を揺らしながら、わたしを力の限り抱き締めてきた。
お陰で窒素しそう。
「おい、ライザ。 ライラが苦しんでる、離してやれ」
「おっとと、ごめんごめん」
お母さんは申し訳なさそうに苦笑いしながら離れていく。
すると交代に今度はあの子がわたしに抱きついてきた。
「フィー! フィフィー!」
「あっ、フィーちゃんもお帰りなさーい」
この変な生き物はフィー。
お母さんのお友達で、わたしのお姉ちゃん的な存在だ。
「ふぃー」
「……どうしてもお前はここが良いのか」
一通り触れあって満足したのか。
フィーちゃんはいつもの定位置。
お父さんの頭上に戻っていった。
「ははは、相変わらず二人とも仲良いねぇ」
「うるさい」
「フィ?」
「そのツンデレも相変わらずだなぁ。 ボオスのその顔を見るとクーケン島に帰ってきた気がするよ」
お母さんはとても高名な錬金術師で、いつも家を空けている。
おじいちゃんはそれが不満みたいだけど、実際にやっている事が凄いから口を出せないって言ってた。
お父さんが。
わたしもかれこれ1ヶ月ぶりの再会だったりする。
「今回はクラウディアお姉ちゃんは一緒に帰ってこなかったの?」
「うん、まあね。 なんでも商会の方で大事な取り引きがあるとかで、途中で別れたよ」
ふーん、そっかぁ。
クラウディアお姉ちゃん有能だからなぁ。
最近社長に就任したって聞いたし、当分は会えなさそう。