ライラのアトリエ ~ブルネン家の錬金術師と秘密の石碑~   作:ベレット

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なんてことない島のなんてことない錬金術師 ──2──

「ライラ、もしかして調合してた?」

 

 お母さんに調合してた事がバレて、わたしの肩がビクッと震える。

 別にバレた事そのものに怯えた訳じゃない。

 失敗した事を知られなくなかったのだ。

 

「う、うん…………失敗しちゃったけど……」

 

「そっか、でもまあ最初は仕方ないよ。 お母さんだって初めの頃は上手くいかなかったし、誰だって最初から直ぐには出来ないからね。 ちょっとずつ出来るようになれば良いんじゃないかな」

 

 言うと、お母さんは優しく微笑みながらわたしの頭を撫で、錬金釜に向かい、手招きする。

 

「おいで、ライラ。 一緒にやってみよっか」

 

「……うん!」

 

 お母さん直々に教えてくれるなんて久々だ。

 わたしは嬉しくて嬉しくて、調合用の大きなスプーンを手に取ると、足取り軽くお母さんの元へと駆けていった。

 

「きれいな水に、苦いねっこ……それと、中和剤に花か。 てことは、癒しの軟膏かな?」

 

 素材だけでわかるんだ。

 凄いなぁ。

 

「そうだよ、初心者でも簡単に作れるやつ。 でもどうしても成功しないの。 なんでだろ……」

 

「うーん、ライラには基礎を叩き込んであるから失敗する筈が無いんだけどなぁ。 となると、素材に問題が? ……ちょっと調べてみますか」

 

 お母さんは素材を一通り並べると、にらめっこし始めた。

 それからほどなくして。

 

「わかった! 理由がわかったよ、ライラ!」

 

「ほんと!? なに? なんで成功しなかったの?」

 

「うん、その理由は間違いなくこれだと思う」

 

 お母さんが拾い上げたのは青色の液体の入ったスティック型の瓶。

 中和剤・赤だった。

 

「この中和剤ってさ、昔わたしが作ったのでしょ?」

 

「う、うん。 中和剤の作り方は知ってるけど、お母さんのが残ってたから……」

 

「だから失敗したんだろうね」

 

 ……?

 

「自分で言うのもなんなんだけどさ、これ……他の素材より品質が良すぎるんだよね。 だから上手いこと調合出来なかったんだと思う」

 

「んん……? でもお母さん前に言ってたよね。 調合する際は、素材の品質が高いほど良いって」

 

「うん、言ったね。 でも一つだけ突出してると、他の素材を殺してしまう事があるの。 お母さんやアンペルさんみたいな慣れている人なら問題無いんだけど、ライラにはまだ早いかな」

 

 つまりわたしの技術力不足が原因でお母さんの調合品を使いこなせてない、って事なのかな。

 

「そっかぁ、そういう事かぁ。 だから成功しなかったんだね。 なんとなく理解したよ。 じゃあどうしたら良い? 今から中和剤作れば大丈夫? わたしの作った中和剤なら問題ないんだよね?」

 

「うん、そうだね! 作っちゃおっか! と言いたいところだけど……素材がね」

 

 そういえばもう殆んど素材無くなってた気がする。

 

「お父さん、素材欲しいからお金ちょーだい」

 

「ああ、お父さんに任せろ。 可愛いライラの為だ、幾らでも出すぞ。 とりあえず一万コール……」

 

「ちょっとボオス」

 

 お母さんにジロッと見られたお父さんはたちまちバツが悪そうに頭を掻く。

 

「前に言ってたよね、なんでも買い与えないでって。 絶対守ってないでしょ、あんた」

 

「うぐっ……し、仕方ないだろ! 娘に頼まれたら誰だって!」

 

「はぁ……ほんとボオスってライラの事となると、途端に甘くなるんだから」

 

 あのお父さんを簡単に手玉に取ってる。

 流石はお母さん、錬金術だけじゃなくてお父さんの扱いも上手い。

 

「ライラもなんでもかんでもお金で解決しない。 わかった?」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 お金あるんだから使えば良いのに、と思うが、言ったらもっと怒られるから言わない方が懸命だろう。

 と、調合スプーンを握りながらモジモジしていた最中。

 お母さんがこんな事を言ってきた。

 

「……ライラ、そろそろ次のステップに進もっか。 お母さんがお金をかけずに素材を集める方法を伝授してあげる」

 

「へ?」

 

「はぁ!? お前まさか……!」

 

「ふっふっふ。 そのまさかよ! さあ行くわよ、二人とも! いざ、小妖精の森へ!」

 

「冗談だろ……」

 

 え……ええー!

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