ライラのアトリエ ~ブルネン家の錬金術師と秘密の石碑~ 作:ベレット
「アガーテ姉さーん!」
「む……? ライザじゃないか。 どうしたんだ、いきなり」
対岸に向かうため港に行くと、お母さんとお父さん達が永年お世話になっている島を守る戦士。
護り手のアガーテお姉さんが、部下の少年を叱っている所だった。
「ありゃりゃ、もしかしてお邪魔だった?」
「いや、そんな事はないぞ。 今しがた説教が終わったところだ。 だろう、アルト」
「頭を撫でるなよ、母さん! ライラが見てるだろ!?」
アガーテお姉さんの息子にしてわたしの幼馴染みのアルトが、恥ずかしそうに手を振り払う。
そんなに恥ずかしがらなくて良いのに。
親と仲良いのは良いことだと思うけど。
年頃だなぁ、アルトってば。
「フッ、何をいっちょ前に格好つけてるんだお前は。 昔から格好悪いところばかり見られている癖に」
「なっ!」
「なぁ、ライラ」
「うん、そうだねー。 今更かなぁ。 でさっ、アルト。 そんな事より今度はなにしたの? また魔物と腕試しでもして負けた? それともお母さんの邪魔でもしたの?」
「そ、そんな事って……」
何故かアルトは肩を落とし、アガーテお姉さんはクスクス笑っている。
お母さんもだ。
「それで今日は家族総出でどうしたんだ?」
「うん、ちょっと採取に出掛けようと思って」
「……ライザ、お前という奴は本当に昔から。 折角久しぶりに娘と会ったというのに、わざわざ採取に行くなんてどうかしているぞ。 もう少し家族サービスをだな……」
「ち、違うんだってアガーテ姉さん! 今日はライラの為の採取なの! ライラが本格的に錬金術を学びたいっていうから! ねっ、ライラ!」
相変わらずお母さん、アガーテお姉さん苦手なんだなぁ。
仕方ない、ここはこのライラさんが助け船を出してあげるとしますか。
「うん、お母さんが採取を教えてくれるんだ」
「そうか、よかったな。 色々教えてもらうと良い」
「はーい」
「な、なんか釈然としない……」
自分と娘との扱いの差にお母さんは苦笑いを浮かべる。
そこへ船の調達をしていたボオスお父さんが帰ってきた。
フェデリーカさんと一緒に。
「おい、船を確保しておいたぞ。 フェデリーカに頼んだら快諾してくれた」
「あ、フェデリーカさんだ。 こんにちはー」
「こんにちは、ライラさん。 お久しぶりですね。 お母さんと仲良くしてますか?」
こくりと頷くとフェデリーカさんは頭を撫でてくれた。
仕事になると厳しいけど、普段は優しいから好き。
「してるよー。 今から採取に行くんだー」
「ふふ、よかったですね」
「フェデリーカさん、またよろしくね」
「はい、お任せください」
また、ってことは、やっぱりお母さんを送ってきてくれたのはフェデリーカさんだったんだ。
そういえばお母さんの前回のお仕事って、フェデリーカさんが工匠組合長をやってる工芸都市。
サルドニカで魔石派とガラス派の新世代御披露目会のお手伝い、だったっけ。
だからフェデリーカさんが島に居るんだぁ。
「では、早速参りましょうか? 船の準備は完了してますので」
「ありがとう、フェデリーカさん。 じゃあ……」
と、大きな木造の船に向かおうとした刹那。
アガーテお姉さんがアルトの背中を叩いて、こんな事を────
「すまない、お前たち。 悪いがうちの愚息も連れていってくれないか? まだまだこの子は半人前でな。 少しでも鍛練を積ませたいんだ。 代わりに好きなだけこき使ってくれて構わないから」
「い、嫌だぞ母さん! ライザおばさんが人使い荒いの知ってるだろ!? だから行きたく……!」
「はーい、わっかりましたー! じゃあよろしくね、アルト?」
「ぐ……うぅ…………くそぉ……」
可哀想に。