ライラのアトリエ ~ブルネン家の錬金術師と秘密の石碑~ 作:ベレット
悩んでいるわたしを見かねて、お母さんはこう言った。
────錬金術師足る者、己の直感を信じるべし!
正直なところ、まったくアドバイスになってないと思う。
けれどお母さんはそれ以上教えてくれそうになかった。
だからわたしは仕方なくお母さんのアドバイス通り、自分の直感を信じて、そこら辺に自生している雑草にしか見えない薬草。
トーンを抜きまくり、かごに入れていく事にした。
「おいしょ、おいしょ! ポイポイのポイっと! ……ふぅ、結構集まったかも!」
「終わったのか、ライラ! ならさっさと離れろ! 危ないぞ!」
襲ってきた妖精と戦うお父さん達に護られながら。
「はーい」
一通り採取が終わったわたしはかごを背負い、スタコラサッサと距離を空け、お父さん達に声をかけた。
「お父さーん! みんなー! 避難したよー!」
「よし、俺達も魔物から距離を取るぞ! アルト!」
「はい! せやぁぁぁあっ!」
アルトが槍で、お父さんは剣で妖精を弾きスタンさせる。
そこへ、フェデリーカさんが続け様に。
「フェデリーカ、頼む!」
「お任せを! はあっ!」
おおぉ、フェデリーカさんの扇子凄い。
振った鉄扇から竜巻が発生して、妖精を一所に集めたのだ。
「ライザさん、今です!」
バックステップでフェデリーカさんが魔物から距離を取る。
「うん、わかったよ!」
すると、お母さんは綺麗な宝石が嵌められたペンダントを取り出し────
「みんな、吹き飛ばされないように気をつけてね! コアドライブ! テラフラム!」
あれはもしかして錬金術の道具なのかな。
お母さんが叫ぶと、前に付き出したペンダントからまん丸の玉が魔物に向かって飛んでいき。
そして、魔物にぶつかる寸前、大爆発。
「うわあっ!」
「きゃっ!」
魔物が木っ端微塵になっちゃった。
地面も抉れてる。
とんでもない威力だ。
これがわたしのお母さん、ライザリン・ブルネン。
ううん、これが世界に名を轟かせる偉大な錬金術師、ライザリン・シュタウト、なんだ。
壁は高いな。
「どう、ライラ。 素材そろそろ集まった?」
最後の素材。
きれいな水を瓶に汲んでかごにしまっていると、お母さんが様子を見に来てくれた。
「うん、これで最後だよ」
「そっか、お疲れ様」
「んーん、わたしは戦ってないから大丈夫。 ……ねぇ、お母さん」
「なに? どうしたの?」
「えっとね、さっきのコアドライブ……? だったっけ。 あの宝石も、もしかしてお母さんが作ったの?」
「コアドライブ……? ああ、これのこと!」
お母さんは先程の綺麗なペンダントを見せてくれた。
本当に綺麗。
それだけじゃなくて、宝石から妙な感覚が流れてくる。
錬金術を行う際にいつも感じる、血液の流れとはまた違う、得たいの知れないあの……。
「これはね、コアドライブじゃなくてコアクリスタルっていう、錬金術の道具を収納しておける特殊な道具なの」
へえ、そんな道具まであるんだ。
便利そう。
「前に話した古式秘具って覚えてるかな」
確かそれって、大昔、錬金術によって栄えたっていう、クリント王国時代の強力な道具、だっけ。
「覚えてる。 お母さん特製のグランツオルゲンを複製した複製釜が、その古式秘具なんだよね?」
「そう! よく覚えてたね! 偉いぞ、ライラ!」
「エヘヘ」
錬金術について特に厳しいお母さんに誉められたのが嬉しくて、堪らずニマニマ頬を緩ませていると。
「このコアクリスタルも古式秘具の一つなの。 まぁ度重なる冒険でコアクリスタルが破損しちゃったから、これはコアクリスタル改って感じだけど。 お母さんが錬金術で修復と複製した代物なんだよ」
「ふーん」
多分凄い事をしたんだと思うけど、古式秘具がどう凄いのかよくわからないから、今一ピンと来ない。
そんな私を見て、お母さんは微笑みながらポシェットからコアクリスタルをもう一つ取り出し、わたしに差し出してきた。
「ライラにこれ、プレゼントするね。 初めての採取記念として」
「良いの? こんな凄いの貰っちゃって」
「うん、もちろん。 これからライラは錬金術師として、色んな場所に冒険に行くと思う。 そこには魔物も居れば、神代やクリント王国時代に造られた機械が徘徊してるかもしれない。 そうなった時、身を守る物が必要でしょ? だからあげる」
きっとこれから先、錬金術師として活動する以上、わたし自身が魔物と戦う機会も増えるのだろう。
本音を言えばとても怖い。
戦うことが。
でもわたしは幼い頃から決めている。
お母さんみたいな錬金術師になる、って。
だからわたしはここで足踏みしたりは絶対にしない。
「……ありがとう、お母さん。 大事にするね」
だからわたしは、コアクリスタルを受け取った。
お母さんみたいな、多くの人を笑顔にできる『良き錬金術師』となる為に。