ライラのアトリエ ~ブルネン家の錬金術師と秘密の石碑~ 作:ベレット
おじいちゃんから依頼されたのは、腰痛を和らげる薬。
癒しの軟膏!
なんだけど、軟膏を作る前に、まずあれを作らないといけないんだよね。
「はい、ライラちゃん。 癒しの軟膏を作る前に、まず何をするんだったかな?」
「はい、先生! 中和剤・赤を作ります!」
そう、癒しの軟膏には必ず入れなくちゃならない調合品がある。
それが中和剤。
という訳で、中和剤の素材となるきれいな水を瓶ごと、七色に光る液体で満たされた釜へポイッ。
続けて、トーンをぶちこみ、調合スプーンでぐーるぐる。
これを一時間続ける。
速すぎず、遅すぎず、一定のスピードで。
「そうそう、良い調子。 たまに煮詰めないといけないから、少ししたら休憩しよっか」
「はーい」
ぐーるぐる。
ぐーるぐるのぐーるぐる。
腕と腰が痛くなってきた。
「ライラ、そろそろ休もっか。 クッキー用意したよ」
「俺がな」
振り向くと、テーブルに紅茶とクッキーが綺麗に置かれていた。
あんまり混ぜすぎてもいけないみたいだし、ここはお言葉に甘えて休憩しようかな。
決して甘い匂いに誘われた訳じゃないよ。
違うんだよ。
食いしん坊じゃないもん。
「んぐんぐ」
「はは、すごい食べっぷり。 そんなに美味しい?」
「うん、美味しい。 このクッキー、どこで買ったの? また食べたい」
「ああ、それはクラウディアの商会が港で経営しているバレンツ洋菓子支店で買ってきた物だ。 あそこの菓子類は絶品だからな。 ライラなら気に入ると思った」
クラウディアお姉ちゃんと言えば、お母さんの親友にして、バレンツ商会の現商会長さん。
若い頃からお姉ちゃんの手腕は前商会長のお父さんに負けず劣らずで、商会を譲り受けてからというもの、更に業績を上げているやり手の人だってお父さんはよく言っている。
「ライザ、そういえば今回は珍しくクラウディアを引っ張ってこなかったんだな。 商談があったんだが」
「そうなの? ごめんごめん。 アスラ・アム・バートに用事があるらしくて、途中で別れたんだよ。 なんでもようやく錬金術師を一人見つけたんだとか。 そうだ、良かったら手紙出しておこうか? わたしも後で手紙出すつもりだったし、ついでに」
「ああ、じゃあ頼むとするか。 急ぎではないが、今後の貿易に関わる重要な……」
またお仕事のお話が始まった。
本当にお母さん達は仕事の話ばかりなんだから。
つまんない。
「あっ、ライラ。 そろそろ混ぜておいで。 焦げちゃうから」
見ると、錬金釜がグツグツ煮えたぎっていた。
「はーい、んぐぐ……ご馳走様ー」
わたしは紅茶とクッキーを流し込み、錬金釜へ。
調合の作業を再開する事にした。
ぐーるぐる、と。