ライラのアトリエ ~ブルネン家の錬金術師と秘密の石碑~ 作:ベレット
お母さん達が帰ってきたのは深夜前。
わたしが寝付く直前だった。
帰ってきたお母さん達の顔色は、顔面蒼白。
とまではいかなくても、それくらい焦りを顔に滲ませていた。
翌日になると、お母さんとお父さんは大忙し。
お父さんは書斎にこもり、手紙を何枚もしたため。
お母さんはアトリエと記念碑のあるトレッペの高台を行ったり来たりしている。
一体朝から何をしているのだろう。
とても気になる。
そこでわたしは、アトリエで思案に耽るお母さんに、勇気を出して尋ねてみる事にした。
「ねえねえお母さん、朝から忙しそうだけどどうしたの? 何かあったの? わたしに何か手伝えること無い? なんでもするよ?」
「ライラ……」
お母さんは一瞬嬉しそうにはにかんだけど、すぐにまた……。
「ありがとう……でも、ごめんね。 後で絶対に話すから、今は大人しく待っててくれるかな。 お願い」
「う、うん……」
それから3日が経ったある日の事。
「ふふふんふーん。 うにうに入れてまーぜ混ぜー。 もう一時間はかっき回してるよー。 つっかれたな、休みたっいな。 そっろそっろでっきるかなー。 ふふふふん」
「フィッフィフィ、フィッフィフィー」
「ふふーん……お、出来た出来た! フィーちゃん見て! 爆弾うにが完成したよー」
「フィー!」
貰ったレシピを参考にして、ノリノリで錬金術に勤しんでいた最中。
「えーと、これをコアにかざして……うん、登録完了! これでいつでも呼び出せる! よーし、じゃあ次は何か素材アイテムでも……」
いきなり────バンッ!
「ライラ!」
「うわぁ! ビックリしたぁ!」
突然お母さんがアトリエにやってきた。
それはもう扉を壊さんが如く勢いで。
「な、なんだお母さんか……もうビックリしたなぁ」
なにやら嬉しい事でもあったのか、お母さんは久しぶりに満面の笑みを浮かべている。
「ごめんごめん、つい……ってそんな事は良いから、今すぐ出掛ける準備して! ほらほら!」
「え? 今から? なんで?」
「良いから、はやく!」
まず理由を説明して欲しいんですけど。
お母さんに無理矢理連れてこられたのは港だった。
わたしはそこで、とある人達と邂逅する事となる。
「ライザ、久しぶり! 元気してた?」
「あはは、久しぶりだなんて大袈裟だなぁ、クラウディアは。 この間別れたばっかりじゃん」
「この間って、もう一週間も前だもん。 十分久しぶりだよ」
この、親友を越えて最早お母さんラブなお姉さんの名前は、クラウディア。
バレンツ商会のトップにして、自ら隊商を率いるやり手の商人。
クラウディア・バレンツお姉ちゃんだ。
そして、その隣で見守る身体の大きいお兄ちゃんこそが、アルトのお父さんでもあり腕利きの傭兵さんのレントお兄ちゃん。
「よっ、ライラ久しぶりだな! 元気にしてたか?」
「レントお兄ちゃん、久しぶりー。 今回のお仕事どうだった? 稼げた?」
「いや、それがよ。 依頼が一つ終わった頃に、ボオスから召集の手紙が来ちまってさ。 あんまし稼げない内に帰る羽目になっちまって、今から嫁に会うのが怖いのなんの」
あー、アガーテお姉ちゃん家、家計が火の車だもんなぁ。
男性陣の食事量がハンパなさ過ぎて。
今晩くらいにまたアガーテお姉ちゃんの怒号が村中に響きそうだ。
近隣の人達、可哀想に。