私、性格悪いんですよね   作:Midoriさん

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13.彼女は仲間を頼ることにした

「な、何あれ……!?」

 

「産土様、産土神、単に産土とも呼びますが……要するに土地神ですよ」

 

「土地神は一級では……!?」

 

 なんてことのない二級呪霊の討伐任務のはずでしたが、いざ現場に着いてみれば出てきたのは一級案件の土地神。

 私達の敵う相手ではありません。

 七海君と灰原君は入学して数ヶ月で二級まで等級を上げましたが、まだ呪術を使った戦闘の経験は浅い。

 対して私は生まれたときから呪術に関するものに囲まれて育ってきましたが、できることと言えば小細工くらい。二人を庇いながら一級呪霊を祓えるような火力はありません。

 

「このままでは追い付かれますね……」

 

 慣れない土地に足場の悪い山道。私達は全力で走れませんが、相手は木々をへし折りながら最短距離で突き進んできます。

 先頭を走っていた灰原君が強張った顔で振り向きました。

 

「僕が囮になるからその間に二人は──」

 

「逃げろと? 灰原君、それ本気で言ってます?」

 

「でも! このままじゃ……」

 

 灰原君の意見はもっともです。このままではジリ貧は確実。なら、一人を犠牲に二人が生き残ったほうがいい。

 ですが、そんなことは受け入れられませんね。

 

「アナタを犠牲にして生き残ると恐らく五条先輩が《は? 何で灰原が死んでオマエが生き残ってんの? そこは一番弱いオマエが死んどけよ》とか何とか言ってくるんですよ」

 

「確かに五条さんなら言いかねませんね……って、まさかアナタが犠牲になるつもりですか!?」

 

「そんなつもりは欠片もありませんよ。あの人が喜ぶのは癪ですし」

 

 そう言うと灰原君も七海君もホッとした表情を浮かべます。

 

「策はあります」

 

 私の十八番は対人トラップですが、曲がりなりにも呪術師を名乗っている以上、呪霊に対処する手段は持っています。

 もっとも、いつも通りの小細工ですが。

 術式を使って作り出したのは発煙弾。

 

「普通の煙幕では呪力感知されてほとんど意味はないですが、これに私の呪力の大部分を注いでぶちまければ目眩ましにはなるでしょう。その間に逃げますよ」

 

 そう言って私はありったけの呪力を籠めた発煙弾を背後に放り投げました。

 

◆ ◆ ◆

 

「何とか……逃げ切れましたね」

 

 そして数分後。私達は何とか山を下って補助監督さんが運転する車の中でぐったりとシートにもたれかかっていました。

 

「二人ともケガはありませんか?」

 

「はい、問題ありません。灰原は?」

 

「僕も大丈夫!」

 

 二人とも手足に枝に掠った程度の細かい傷はあるものの、大きな傷はないようで何よりです。

 

「禰々こそ鼻血が……」

 

「ああ……構築術式は術者への負担が大きいですからね。普段使うぶんには大丈夫なんですが……しかし、三人分の命に比べればこれくらい安いものでしょう。文字通りの出血大サービスですよ」

 

「笑えませんよそれ……」

 

 呆れた顔の七海君が渡してくれたティッシュで鼻血を拭います。

 禪院家では肋骨にヒビが入っていても問答無用で働かされたんですが。

 まあ、それは言わなくてもいいでしょう。さすがにこれ以上余計な心配をさせたくないです。

 

「ただ、毎回あれで逃げていては私の体が壊れますから二人とも強くなってください」

 

「うん! 頑張るよ!」

 

 呪術界は常に悪意が犇めいているところですから術師は基本的に人を疑うことが癖付いています。

 正直、灰原君の真っ直ぐさは私にとっては中々毒なんですよね……絆されそうで。

 高専に帰るとちょうど五条先輩が補助監督の車に乗り込むところでした。

 そう言えば私達の任務は五条先輩に引き継がれたんでしたっけ。

 

「たかが一級相手に鼻血まで流して逃げ帰ってくるとかザコにも程があんだろ」

 

「死ななかっただけ上出来と言ってくださいよ」

 

 五条さんの乗った車が出ていくのを見ながら次は何を仕掛けようかと考えていると、不意に七海君が私の横に立ちました。

 

「禰々さん。次に五条さんに何か仕掛けるときは私も呼んでください」

 

「おや、珍しいですね。七海君が共犯になりたがるなんて」

 

「あの人相手に怒りを我慢するのもバカらしくなってきました。壊れないサンドバッグがあるなら利用したほうがいいでしょう?」

 

 横から見上げれば七海君の額にはくっきりと青筋が浮かび上がっていました。

 真面目な七海君のことですから《禰々さんがどれほど無茶をして私達を助けてくれたのか知らないくせに……》なんて思っているのでしょうね。

 

「二人がやるなら僕も混ぜてよ!」

 

 おや、共犯者がもう一人。

 

「そうですね。では──」

 

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