私、性格悪いんですよね   作:Midoriさん

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15.彼女の置き土産

 五年生の三月──簡素な卒業式を終えて私達は最後に三人で高専の中を歩いていました。

 

「七海君は証券会社に就職ですか。おめでとうございます」

 

「ありがとうございます……と言っていいのでしょうか。逃げたも同然だというのに」

 

 随分悩んだようですが、結局七海君は術師の道を辞めることにしたそうです。

 他人のために命を投げ出す覚悟をときとして仲間に強要しなければならない──そんな呪術師に嫌気が差したと。

 そして、灰原君も同じく術師を辞めて妹さんのいる故郷に帰ると。

 灰原君は夏油先輩の件から随分と塞ぎ込んでしまって、印象的だった笑顔を浮かべることも少なくなってしまいました。

 彼は一際夏油先輩に懐いていましたから仕方のないことだとは思いますが。

 

「呪術師はクソだ、とアナタは常々言っていましたがその通りでした」

 

 高専でもまだ上澄みに過ぎません、と言ったらどうするのでしょう。

 御三家はもっとクソな連中がうじゃうじゃいるのですよ。

 

「離れて正解ですよ。こんなところに好き好んでいる必要はありません。逃げたなんて思わずに、むしろ英断だと誇ってください」

 

「そう言ってもらえると少しは気が楽になりますね。ところで……禰々さんはこれからどうするんです?」

 

「禪院家に戻って相変わらずの雑用係です」

 

「禰々はそれでいいの?」

 

「いいも悪いもないですよ。禪院家からは逃げられませんし、術師として身を立てられるほど強くもないですから、そうするしかなかったんです」

 

 色々と手は打ちましたが、どれも不発に終わってしまいましたし。

 そうして思い出話を語っているうちに校門にたどり着いてしまいました。

 

「ここでお別れですね。どうかお元気で」

 

「ええ」

 

「うん」

 

 二人を見送った後、私は踵を返して校舎に戻ります。

 さて、五条先輩に最後の嫌がらせといきましょうか。

 卒業式ということで通常授業もないですから……いるとすれば談話室でしょうか。

 そう当たりをつけて談話室に向かえば、やはりそこにはソファで寛ぐ五条先輩がいました。

 

「お、禪院じゃん。君の顔見るのも今日が最後だねー。いやー、悲しくて悲しくて涙が止まんないよ」

 

「笑いすぎて涙が止まらないだけでしょう」

 

 夏油先輩の事件の後、どういう心境の変化か五条先輩は一人称を《俺》から《僕》に変え、荒っぽかった態度は軽薄が極まったものに。

 そして、呪術界の改革をすると言って高専の教師として勤め始めたのです。

 それを聞いたとき私も含めて周りが《生徒が哀れだ……》と嘆いたのは言うまでもありません。

 一人称を変えたのは教師という立場ゆえかもしれませんが、態度のほうは見ていると非常にイラッとくるんですよね。

 受け持ちの生徒達も《本当に大丈夫なのかコイツは》というような視線をかなりの頻度で向けていましたし。

 

「それにしても君がわざわざ挨拶に来るとは思わなかったんだけど」

 

「前に言ってましたよね? 《強く聡い仲間を育てることにした》って。だから、一人紹介してあげようと思いまして。私なりの置き土産です」

 

「置き土産?」

 

「入っていいですよ」

 

 私が後ろに声をかけるとドアを開けて小さな影が入ってきます。

 その姿を見た途端、五条先輩は私の狙い通りにポカンと口を開けて固まりました。

 まあ、驚くでしょうね。ここまでそっくりなんですから。

 

「禪院甚爾──今は名字が変わって伏黒甚爾と名乗っていますが、その息子の伏黒恵君です」

 

「伏黒恵……です」

 

「ちなみに宿す術式は禪院家相伝の十種影法術です」

 

「……マジで?」

 

「呪力操作の基礎は私がみっちり教え込みました。どうせ五条先輩はそのあたりいい加減でしょうから。体術は甚爾さんが軽く仕込んだそうです」

 

「あー……うん。ちょっと待とうか。さすがに僕の最強の脳も悲鳴あげてる」

 

 五条先輩は額を押さえながら「ええ……?」や「アイツ、子供いたの?」などと困惑した様子で呟いています。

 私も最初に会ったときは驚いたものです。

 

「えーっと? まず何だ……そう、いつの間に禪院甚爾、いや、伏黒甚爾とつながってたの? 僕、聞いてないんだけど」

 

「聞かれませんでしたからね。甚爾さんのことですが、別に探し出して接触したわけじゃないですよ。私が五年生になってすぐ──」

 

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