私、性格悪いんですよね   作:Midoriさん

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22.彼女の仕掛けは既に始まっている

 とあるアパートの部屋の扉を開けるとそこには南国風景の領域が広がっている。

 この領域は偽夏油──羂索が手を組む特級呪霊の一体である陀艮の領域。

 

「確かに獄門疆だ」

 

「まさか本当にあんな小娘が持っているとはな」

 

 翌日、本当に段ボール箱に緩衝材とともに入れられた獄門疆が送られてきたことに羂索は苦笑いを浮かべた。

 

「ん? 獄門疆の他に何か入ってるね」

 

 獄門疆の下に何かが置かれている。

 取り出してみると、それはスケッチブックとクレヨンと細長い便箋だった。

 

「えーっと……《五条さんの絵が上層部に提出するにはあまりにもアレなのでうまい具合に修正してください》」

 

 便箋に書かれていたのは仕事の指示。

 あまりにもアレ、とはどういうことなのか。

 とりあえず羂索はスケッチブックを捲ってみる。

 

「プッ」

 

「この絵がワシだと……!?」

 

「人間の感性は理解できませんね」

 

 スケッチブックを見た羂索は思わず吹き出し、漏瑚は憤然として額に青筋を走らせ、花御は首を傾げていた。

 そこに描かれていたのは小学生の落書きのような漏瑚と花御の姿。

 確かにこれを上層部に提出すれば、ふざけているのかと突っ返されるかもしれない。

 

「漏瑚、花御、座りなよ」

 

「キサマ、絵心はあるのだろうな?」

 

「少なくともこの絵よりはマシに描けるさ」

 

 それぞれビーチチェアに座って向かい合うと羂索はスケッチブックにクレヨンを走らせる。

 何せ生きてきた時間が違うのだ。

 絵を描くことに熱中した時期などなかったが、どう転んでもあの絵より劣るなんてことはないだろう。

 すると書き始めて数分後、暇になったのか漏瑚が「おい」と羂索に声をかけた。

 

「わざわざあの娘をこちらに引き入れる価値はあるのか?  五条悟の監視ならもう一人の協力者で十分だろう」

 

「五条悟には六眼があるからね。万が一、呪骸の呪力に気付かれたらアウト。それに五条悟のスケジュールを管理しているのは彼女だ。彼女なら五条悟の動きをコントロールすることもできる。うっかり任務中の五条悟と出くわすなんてのは嫌だろう?」

 

 五条悟や高専関係者に顔を見られるわけにはいかない身としては、そういう不測の事態はなるべく避けたい。

 夏油傑の肉体は手に入れた。そして獄門疆も。

 必要なピースは着々と揃いつつある。

 ここで五条悟と邂逅するなんてミスはあってはならないのだ。

 

「加えて上層部が色々操作できないようなシステムを作ったのも彼女だし……彼女なしでは不都合なことが多すぎてね」

 

 呪術界はアナログな人間が多い。

 パソコンをまともに使えないような人間が下手に情報を引き出そうとして色々バレてしまうことも十分ありえる。

 ならシステムの設計者である禰々自身に操作させるのが一番いい。というよりそうするしかない。

 

「ふん。それならいいが」

 

 漏瑚はつまらなそうに一息吐くと、それ以上は何も言わなかった。

 羂索も再びスケッチブックに目を落として似顔絵を描き進めていく。

 彼女は必要な人材だ。それは間違いない。

 しかし、ただ一つ懸念があるとすれば──彼女がこちらの戦力を理解した上で何かを仕掛けてきた場合。

 夏油傑の肉体を乗っ取ったときに流れ込んできた記憶。

 彼女はあの五条悟に様々な悪戯を仕掛けて、その上で無限による鉄壁の防御を攻略してみせた。

 最初に理解したときには思わず言葉を失ったものだ。

 あの五条悟が。現代最強の呪術師が。六眼と無下限呪術の抱き合わせが。

 あんなふざけたトラップで出し抜かれるなんて誰が想像しただろう。

 もし、彼女が妨害工作をするために裏切ったふりをしたならば──そこまで考えて羂索は一つ息を吐いた。

 たとえ妨害工作のためだったとしても何ができるというのか。

 粘着テープ、バナナの皮、ワイヤー、胡椒……そんなものでどうにかなるほど羂索は甘い計画を立てていない。

 何を恐れることがある。

 所詮彼女は少々小細工が得意なだけのサポート役に過ぎないのだから。

 しかし、その考えが間違っていたと羂索が理解するのは十月三十一日(ハロウィン)のこと。




 私、性格悪いんですよね。二十二話の読了ありがとうございました。
 本当は順平のところまで書きたかったんですが、今回のストックはここまでです。続きはまた書き溜めてから投稿します。
 順平のところまでたどり着けなかったのは色々理由があるんですが、書いているときに読み返した原作の25話でメロンパンが「少年院の指はすぐに虎杖悠仁が取り込んでしまったからね。吉野順平の家に仕掛けたほうは高専に回収させたい」と言っているのが気になりまして……。
 本来は少年院の指を高専に回収させて忌庫までの道標にするつもりだったなら、もう甚爾が回収しているので順平の家に指を仕掛ける必要ないんですよね。もし追加で回収させるにしても内通者の禰々に渡せばいいだけですし。
 つまり順平編を丸々飛ばしても問題ないと言えば問題ないんですが……順平のいじめが解決しないので、ちゃんと救いたい気持ちもあって悩んでいます。
 何とか理由をつけて禰々を関わらせたいんですが、難産になりそうなので次話は早くても一ヶ月くらいかかるんじゃないかなと思っています。
 のんびりとお待ちください。
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