私、性格悪いんですよね   作:Midoriさん

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32.彼女は過去に何かとんでもないことをやったらしい

「まったくあの人は……」

 

 京都姉妹校交流会──今日はその当日だというのに、相変わらず五条さんは遅刻のようですね。

 しかし、そのあたりは皆さん既に慣れていますから、各々で雑談しながら待つことにしたようです。

 高専に来て日が浅い吉野君だけが所在なさげにキョロキョロと周りを見回していますが。

 そんな吉野君にパンダ君がノシノシと近付いてきました。

 

「順平は今回の交流会は見学だろ? そわそわしすぎじゃねぇか?」

 

「そ、そうなんですけど……いや、別に交流会のことで落ち着かないってわけじゃなくて……」

 

「なら何だよ。誰か探してんのか?」

 

「えっと……」

 

 虎杖君のことってどこまで言っていいんでしたっけ? と吉野君がこちらに視線を向けてくるので、唇に指を当てるジェスチャーで、何も言わないように、と伝えます。

 これから五条さんによるサプライズ……何をしても大スベり間違いなしの虎杖君のお披露目が始まるんですから。

 事の始まりは今朝のこと──

 

◆ ◆ ◆

 

「虎杖君。それでは皆さんのところにいきましょうか」

 

「俺、二年の先輩達と会ったことねぇからさ。めちゃくちゃ楽しみなんだよなー」

 

「はい、ストーップ!」

 

 虎杖君と一緒に集合場所に向かおうとしたそのとき、五条さんが突然立ち塞がります。

 

「悠仁……もしかしてここまで引っ張って普通に登場するつもり?」

 

「え?」

 

「また余計なことを……」

 

 なぜこの人は常々私の仕事を増やすのでしょう。

 ため息を吐く私をよそに五条さんは話を進めていきます。

 

「やるでしょ──サプライズ」

 

「サプライズ……」

 

「一年はもう悠仁が生きてること知ってるけど、二年はまだ悠仁が死んでると思ってるからね。せっかくのお披露目だし派手にいこう! 二年は仰天し、京都校のメンバーも腰を抜かし、学長以下諸々も泡を吹いて、最終的には地球温暖化も解決する!」

 

 とんでもない大嘘吐きがここにいますね。

 学長達が泡を吹くのは本当かもしれませんが。

 しかも──

 

「いいね! 何したらいい!? 先生、俺何したらいい!?」

 

 それに乗ってしまうのが虎杖なんですよね……。

 本当にノリがいいというか……何も考えていないというか……。

 

「何もしてなくていい! 僕の言う通りにしろ!」

 

「だから何したらいい!?」

 

 テンション高く騒ぎ出す二人を尻目に、素知らぬ顔でソファで新聞を読んでいた七海君に視線を向けます。

 

「どうにかなりませんか、この二人」

 

 しかし、七海君は小さくため息を吐いて力なく首を横に振りました。

 

「私が何か言ったところでやめるような人達ではありませんから。もう諦めましたよ」

 

「ですよね……」

 

「あ、禰々。順平達にはサプライズのこと内緒ね」

 

「はい……」

 

◆ ◆ ◆

 

「お待たー!」

 

 そして、本来の集合時間から遅れること数分。ようやく五条さんが到着します。

 人一人が入りそうなケースを台車に乗せて。

 

「ああ……」

 

 それを見てこれから起こることを察した伏黒君と釘崎さんが呆れた顔で私のほうを見てきますが、もうどうすることもできません。

 

「そして、東京校のみんなにはこちら!」

 

 京都校のメンバーに海外出張のお土産と言ってよくわからない人形を配り終え、続いてこちらを振り向いた五条さんがビシッとケースを指します。

 そして、ケースの蓋が開くと──

 

「故人の虎杖悠仁君でぇーっす!」

 

「はい! オッパッピー!」

 

 古のギャグと共に飛び出してきた虎杖君。

 それに対して二年生の反応は──

 

「よし、全員揃ったな」

 

「しゃけ」

 

「なあ、順平。オマエ──巨乳派? 微乳派?」

 

「今!?」

 

 虎杖君を一瞥したきり、さっさと雑談を再開してしまいました。

 

「えっ……えぇぇぇー!?」

 

 想定外の反応に虎杖君の絶叫が響きます。

 京都校のメンバーは五条さんのお土産に夢中でこちらを見てもいませんし、残っている人で驚いてくれるのは──

 

「宿儺の器!? どういうことだ?」

 

 そこで夜蛾学長とともに現れたのは楽巌寺学長。

 

「楽巌寺学長!」

 

 目を見開いて固まっている楽巌寺学長に五条さんがニヤニヤと笑いながら近付いていきます。

 

「いやー、よかったよかった! びっくりして死んじゃったらどうしようかと思いましたよ」

 

「クソガキが……!」

 

 ああ、やはりこうなりましたか。

 本当にこの二人は会わせると面倒なんですよね。

 

「私から説明を」

 

 煽り続けている五条さんを押し退けて楽巌寺学長の前に出ます。

 このままでは話が進みません。

 釘も刺しておきたいですし。

 

「虎杖君は特級呪霊との戦闘の末に死亡したのですが、どうやら宿儺の力で蘇ったようです」

 

「宿儺だと?」

 

「ええ。仮にも呪いの王ですから。粉砕された心臓を再生し、蘇生させるくらいのことはできて当然かと」

 

「特級の火力を持ってしても殺しきれない……ということか」

 

 楽巌寺学長は忌々しげに顔を(しか)めますが、当然ハッタリです。

 とりあえず全部宿儺のせいということにしておけば上は黙りますし。

 ついでに報告が遅れたのは五条さんのせいにしておきましょう。

 

「だから、あんまり余計なことしないほうがいいんじゃない? 実質、宿儺を殺せるのは僕だけってわかったんだしさ。お爺ちゃんは引退して縁側でお茶でも飲んでれば?」

 

 私の後ろから顔を出した五条さんと楽巌寺学長の視線がぶつかって火花を散らします。

 確かに上の腐ったみかんの方々には早々に引退してもらいたいところですが、無駄に煽らないでほしいものですね。意固地になって死ぬまで引退しないと言い出しかねませんし。

 とはいえ、このままでは交流会が始められないので、チラリと夜蛾学長に目を向けます。

 パキパキと指を鳴らして準備万端のようですね。

 では、どうぞ──と私が一歩退くと、すかさず夜蛾学長が五条さんにコブラツイストをお見舞いします。

 無駄のない洗練された動きですね。お見事です。

 そのままの状態で夜蛾学長は競技のルールと注意事項の説明を始めました。

 

「あくまで君達は共に呪いに立ち向かう仲間だ。交流会は競い合いの中で仲間を知り、己を知るためのもの。相手を殺したり、再起不能のケガを負わせることのないように。くれぐれも……だ」

 

 なぜ最後に私のほうを見るのでしょうか。

 確かに昔、交流会で()()暴れましたが、殺す以外は何でもあり──というルールに則った上で行動しただけなのですが。

 

「以上、開始時刻の正午まで解散」

 

「では、待機部屋に案内しますから東京校のメンバーはついてきてください」

 

 京都校のメンバーは歌姫さんに案内を任せます。

 歌姫さんも元は東京校ですし、勝手は知っているでしょう。

 

「では歌姫さん、また後で」

 

「ええ」

 

 すると、集合場所から待機部屋に移動している途中、おもむろに虎杖君が「なぁ」と口を開きました。

 

「先輩達さ、何で全然驚かねぇの? 俺が死んだって聞いてたはずなんだけど……」

 

「あ? そりゃオマエ、禰々さんが面倒みてんのに一年生が特級案件に派遣されて死亡しましたなんてありえねぇからだよ」

 

「禰々さんの信用すげぇ……ってか、やっぱり五条先生適当なことしか言わねぇじゃん! 先輩達は俺が生きてること知らないって話だったのに!」

 

「バカ目隠しがまともなこと言うわけねぇだろ。まあ、マジでオマエがどうしようもねぇ役立たずだと判断されて切り捨てられた可能性はあったけどな」

 

「そうなの!?」

 

「禰々は性格悪いからなぁ。効率最優先だし」

 

「しゃけ」

 

 全く使い物にならないならそうしましたけどね。

 しかし、彼のおかげで七海君が命を拾った功績は大きいです。そもそも宿儺の指を飲み込んだのも伏黒君を助けるためだったと聞いていますし、それに免じて情状酌量の余地はあってもいいでしょう。

 

「生かし続けるかは保証しませんけどね。今後の虎杖君の行動次第です」

 

「さらっと怖いこと言うのやめて!?」

 

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