「どう思った?」
「あー……まあ、そこそこ使えんじゃねぇの。パンピー出身だから呪いに関する知識はこれから詰め込まなきゃいけねぇけど、呪力の量と術式はまあまあ良さげ」
三人で新入生を見にいった帰りに傑が聞いてきたので少し考えてそう返す。
無駄に元気な灰原とクソ真面目な七海。
順調にいけば二級は固いだろうというのが俺の見立てだった。
「何つーか今年の一年は対称的だったな。陽気なのと陰気なの」
「呪術師には灰原みたいな根明は珍しいからね。ああ、それと確か今年の一年はもう一人いたはずだよ。女子って聞いたけど」
「女子ィ?」
めんどくせぇ。
どこかの名家の娘とか言わねぇだろうな。
五条家とつながりを作りたい他の家が娘を潜り込ませた可能性は十分にある。
まあ、そんなヤツが近寄ってきたところで突っぱねるだけだがウザいものはウザい。
「あの子じゃない?」
硝子が指差すほうに目をやると、見覚えのない小柄な女が職員室から出てくるところだった。
俺達と同じ黒い布地の制服。硝子が着ているスタンダードな女子用とは違い、ロングスカートに改造されていて、袖口も大きく開いた作りに変わっている。袖の中に呪符や暗器を携帯する術師によくある改造だ。
「君が三人目の新入生かい?」
傑が声をかけるとゆっくりとその女は振り向いた。
最初に感じたのは何というか……無機質。
背中の半ばまで真っ直ぐ伸びた艶のある黒々とした髪と陶器のような真っ白な肌の対比が印象的だった。
「先輩……でしょうか?」
「ああ、いきなりすまないね。そうだよ。私は二年の夏油傑。隣の二人も同じく二年の五条悟と家入硝子だ。よろしく」
「禪院禰々です。よろしくお願いし──」
「は? 禪院?」
その名前に思わず低い声が出た。
禪院と言えば
そんなヤツがなぜここにいる。
「禪院筋が後輩とかマジありえねーんだけど。わざわざ
俺が東京校に通っていることを禪院のヤツらが知らないわけがない。
この女に俺をどうこうできる実力があるとは思えなかったが、六眼で一応術式の情報を覗いてみる。
「構築術式? 相伝ですらねぇじゃん。ザッコ」
ところがハズレもいいところだった。
自分の呪力を元に物体を生成する術式。
だが、呪力消費が激しいため燃費は非常に悪い上に、術者への負荷も大きいという欠陥術式だ。
「まあ、何かできるっつーならやってみれば? どうせオマエじゃ傷一つつけられねぇから」
手足の細さからして体術主体で戦うタイプでもない。呪力はそこそこあるがそれだけ。正真正銘のザコ。
「……やってみろというならお望み通りに」
「あ? 声が小さくて聞こえねぇよ」
だが、ソイツは俯いたまま何か呟くと、それ以上は何も言わずにさっさと俺達の横を通り過ぎていった。
言い返すこともできねぇのかよ。つまんねぇの。
「悟、言い過ぎだ」
「入学初日の後輩に圧かけるとかマジでクズだな」
「いいんだよ。禪院のヤツらは性格悪ィから。あれくらい圧かけとかねぇと何されるかわかったもんじゃねー」
傑と硝子が何か言ってきたが当時の俺は何とも思っていなかった。
今思えばこれがどれだけ愚かな行為だったのか。
自己紹介を最後まで聞いて普通に接していれば。
まさかこれをきっかけに次の日から彼女の猛攻が始まるなんて考えもしていなかったのだ。
星漿体の件が終わったところでストックがなくなるんですが、参考までにお聞きします。後の展開としてメロンパンをボコるために夏油の闇堕ちは──
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あり。メロンパンはボコろう。
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なし。夏油様の闇堕ちなど許さない。