初期機体≠初心者   作:バショウ科バショウ属

50 / 78
アビス=深淵

 洞窟みたいな通路は薄暗く、方向感覚を失いそうになる。

 

「フレイムロックで動きを止めて、高火力で仕留めるってコンセプトだな」

「なるほど」

 

 そんな場所でダン君と愛機の談義をしている俺。

 

「まぁ…決まったのは、初めてなんだけどな」

「これから成功率を上げていけばいいじゃん」

「いや、キャノン系は射撃までが遅いから、別の武器を試したい」

 

 左肩のレーザーキャノン、必殺技みたいで良いと思うんだけどなぁ。

 でも、より強くなるための試行錯誤も大事だ。

 

「まだ手探りなんだな」

「そりゃそうだろ……まだ、始めたばっかりだぞ?」

 

 ダンの言う通りだ。

 俺も相棒のアセンブルに挑戦してみるべきなんだろうな。

 

「ところでよ」

「おん?」

「俺たち、迷子になってねぇか?」

 

 よく気付いたな、ダン君。

 俺たちは、現在、迷子になっているんだ。

 このトンネルを潜ったのは3()()()だぜ。

 

「ふむ…ルートは間違っていないはずなのですが」

 

 先導者を買って出たアルは、不思議そうに首を傾げる。

 セーフハウスまでの道順は覚えてたのにな。

 どうしてだろうな。

 

「アルはすごいです。ルートを変更しても、ここに辿り着いています…!」

「ありがとうございます」

「褒めてねぇよ…!」

 

 驚愕を浮かべるゾエ、ちょっと誇らしげなアル、そして天を仰ぐダン君。

 何やってんだろう、俺たち。

 

「まずは、ここから脱出しないとな」

「とにかく来た道を戻るか…」

 

 げんなりした表情を浮かべるダンの肩を叩く。

 ダンジョンの探索と思えば悪くねぇさ。

 

「ゾエは、まだ行っていないルートを試してみたいです!」

 

 スカイブルーの瞳を輝かせ、ゾエは通路の奥を見つめる。

 薄暗く先の見通せない道の先に一体何が?

 

「更なるアビスへ行こうというのか、ゾエ…!」

「おい、V…行くんじゃねぇ!」

 

 ダン、止めるな!

 その未知への憧れ、それは大人が忘れてしまった情熱!

 行くしかねぇ。

 

「怖気づいたのですか?」

「そういう話じゃねぇだろ!?」

 

 無表情で煽るという器用な芸当を見せるアル。

 お前は反省しような。

 まぁ、そんなことよりも──

 

「行ってみようぜ、な?」

「行きましょう、ダン!」

「……ああ、分かったよ!」

 

 段々と扱い方が分かってきたぜ、ダン君。

 ということで、ゾエ隊長を先頭に隊員3名は通路の奥へと一歩踏み出した。

 

 この通路、地肌の見える元坑道かと思えば──突然、コンクリート製の通路に変わる。

 

 再開発でもあったんだろうか?

 そして、ゾエ隊長の足が止まる。

 

「ここです!」

 

 細い指が示した通路は狭く、より闇が深い。

 確かに通った覚えがなかった。

 

「こんなとこ通れるのかよ…?」

「隠しルートってやつかもな」

 

 興味を惹かれても、足を踏み入れるのは躊躇する狭路だ。

 

「ゾエ様は後ろへ、私が先行します」

 

 さっと立ち位置を入れ替え、アルが先頭に立つ。

 右手に厳ついハンドガン、左手には鉤爪状のナイフが握られている。

 

「ゾエが一番乗りしたいです!」

「どうどう」

 

 不満げなゾエを捕まえ、アルに頷きを返す。

 ここは腕利きの傭兵に任せような。

 街中でも襲撃されるゲームで、こういう狭路は怖い。

 

 ハンドガンのライトが点灯──ゆっくりと前進を開始。

 

 足音が狭い空間を反響する。

 再開発で生まれた間隙というには整備され、メンテナンス用の通路みたいだ。

 

「…お前ら、()()()()()ばっかしてんのか?」

「いや、初めてだぜ」

 

 いつもは目的地が決まっているから探索パートはないのだ。

 次第に出口と思しき光が見えてくる。

 

「広い空間があるようです」

「換気設備の稼働する音が聞こえます…!」

 

 近づくにつれ、ガレージでよく聞く換気設備の唸る音が聞こえてきた。

 こんな場所に?

 闇より一歩踏み出して──

 

「ここは一体…」

 

 狭路を抜けた先には、円筒状の空間が広がっていた。

 天井は高く、()()まで続いているような気配があった。

 

「ここは、採掘場でしょうか」

 

 アルの視線の先には、削られた地肌が見えた。

 採掘場なら換気設備があるのも納得だ。

 ただ、ずいぶんと大きな縦穴を掘ったもんだな。

 

「B17って何を掘ってる街なんだ?」

「ティタンの装甲、弾丸に使用される鉱物資源が主って聞いたぜ」

 

 ダン君の解説を聞きながら、中央の巨大な吹き抜けへ近づく。

 強烈な光を放つ照明は、何を照らしてるんだろ?

 落下防止のパイプに手をつき、奈落を覗き込む。

 

「なんだ…あれ?」

「ティタン、のようですね」

 

 縦穴の底には、巨人の影があった。

 

 禍々しさを覚える鋭利なフォルム──マッド・ドッグに似ている?

 

 ただ、かなりの偉丈夫だ。

 縦穴の深さは分からないが、とても全高10mには見えない。

 

「大型機のようです…!」

「…ティタンにしては大きいよな」

「あの機体のペイロードならクローバーラインとHEKIUNが搭載できそうです!」

「ちょっと待った、ゾエ」

 

 きょとんとした表情で振り返るゾエは、首を傾げる。

 まさか、購入する気とは思わなかったぜ!

 

「どうかしましたか?」

 

 夢の計画を思い描く無垢な瞳が俺を貫く。

 だめだ、負けるな!

 直感だが、あれは()()()()()()()()()()な気がする。

 

「あれは非売品──」

()()…販売品だよ」

 

 突然、しゃがれた男の声が背後から響き、俺たちは一斉に振り返る。

 作業員の詰所と思しき建屋の前に、ゴーグルを着けた作業服姿のおじさんが立っていた。

 

「ようこそ…ファンタズマに…!」

 

 しゃがれた声で宣い、おじさんは口元を歪めた。

 また、濃い人が来たぜ。




 ???「いいか、俺は面倒が嫌いなんだ」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。