初期機体≠初心者   作:バショウ科バショウ属

56 / 78
ヴィクセン=難敵

 相棒を見上げるゾエは、手を振って無事を伝えてくる。

 ノーヘッドが崖上を掃射した時、本気で心配した。

 お説教とか全部後回しでいい。

 本当に良かった。

 

≪悪い! 2人は大丈夫か!?≫

「なんとかな…」

≪そうか…良かった……≫

 

 ダンに落ち度は一つもない。

 俺が押し付けたノーヘッドをレーザーキャノンでぶち抜き、2機目を仕留めていた。

 むしろ、よくやったと思う。

 

≪終わりだ≫

 

 ジョンさんの爽やかな声が通信越しに響く。

 荒野にて、最後のノーヘッドがレーザーブレイドで胴体を刺し貫かれた。

 

「狙撃が止んだ?」

 

 相棒を立ち上がらせ、地平線を睨む。

 乱戦中()喧しかった狙撃が止んでる。

 

 好き勝手撃ちやがって──覚悟しろよ?

 

≪ふぅ…終わりか≫

≪いや、この程度でフラグシップは諦めないさ≫

 

 そう言って、ジョンさんは荒野に転がるスクラップからライフルを拾う。

 セーフティとか無いんだ。

 

≪フラグシップって……マジかよ…≫

「心配すんなよ」

 

 狙撃の精度は良いが、ゾエほどじゃない。

 これで頭を出してくるなら、3人で袋叩きにするだけだ。

 右腕を上げて、ゾエとアルに挨拶してから崖下へ降りる。

 

≪そうだね。ダン君も武器を調達して備えよう!≫

≪ま、まだ戦うんですか…≫

 

 渋々、スクラップに近づくトリコロールカラーの巨人は、弾痕と擦過痕で傷だらけ。

 かっこいいぞ、ダン君。

 そのうち体が逃走じゃなく、闘争を求めるようにしてやるからな。

 

「右腕はいいのか?」

 

 ダンは右腕のフレイムロックは棄てず、やや銃身の長いライフルを左腕に持つ。

 

≪まだ1発残ってる≫

「そっか」

 

 最後の1発ってロマンあるよな。

 期待してるぜ。

 

「さて」

 

 3機のティタンが並び、地平線の砂煙へ頭部カメラを向ける。

 

≪もう一仕事、行こうか≫

 

 砂煙の正体は、1機のティタンだ。

 水没都市で遭遇したマッド・ドッグに似た鋭利なフォルム。

 両腕の武器が異様に大きく、ひどくアンバランスな印象を受ける。

 火力支援じゃなく最初から来ればいいものを。

 

≪おい、あれって──≫

 

 跳躍の予備動作に移る。

 左腕のレールキャノンと思しき長砲身に青い光が宿り、眩しいくらいの光量を放つ。

 ロックオン警報──

 

≪ヴィクセンかよ!≫

 

 ペダルを蹴って、スラスターを噴射。

 舞い上がった砂塵を青い光線が真っ二つにする。

 しかし、そこに俺たちはいない。

 

≪一斉に仕掛けよう!≫

「うっす!」

≪くそっ! どうにでもなれ!≫

 

 俺は左、ダンは上、ジョンさんは右から、それぞれ突っ込む。

 照準の中心に捉えたヴィクセンの右腕が動く。

 給弾ベルトが肩部に伸びた武器のデザインには見覚えがある。

 

「チェーンガンか!」

 

 回答は、視界を覆う緑の弾幕だった。

 スティックを倒して加速し、弾幕を潜る。

 

≪当たれぇ!≫

 

 ダンが吠える。

 弾幕を展開しながら、ヴィクセンはスラスターを右へ噴射。

 その残像をレーザーキャノンの光線が焦がす。

 

≪エネルギー残10%≫

 

 トリガーを引きながら、スラスターをカット。

 滑走する機体を傾けた瞬間、緑の曳光弾が右脚を()()()

 跳弾でも衝撃が重い!

 

≪機体損傷≫

 

 視界内で踊るダメージの警告。

 キックを連続で繰り出していた脚部は、限界が近い。

 

≪だめだ! 貫通しねぇぞ!≫

 

 対するヴィクセンは、俺とダンの放ったAP弾を軽々と弾く。

 その上──

 

「図体の割に速い!」

 

 右肩のマガジン、やっぱり簡単には狙わせてくれねぇな!

 チェーンガンの弾幕が空中を走り、ダンの左腕を吹き飛ばす。

 

≪がぁっ…くそっ≫

≪私が足を止める!≫

 

 ジョンさんがスラスターを噴射し、彼我の距離を縮める。

 同時に俺もペダルを蹴って、反対から突っ込む。

 

 ヴィクセンが急制動、前傾姿勢となり──ジョンさんへ吶喊。

 

 チェーンガンが猛烈な速度でAP弾を吐き出す。

 それを飛び越え、灰色の巨人はライフルを()()()()

 

≪V君!≫

「もらった!」

 

 投擲物に照準を合わせ、ライフルを連射。

 給弾ベルトの近くで、ぶち抜く!

 

 閃光が瞬き──刹那、ヴィクセンの右側面を爆発が襲う。

 

 黒煙から突き出るレールキャノンの長大な砲身が光を宿す。

 その射線上で、アリーナ1位は()()()()()()

 

≪行け、2人とも──≫

 

 光と光が激突し、焔に包まれる灰色の巨人。

 

 舞い上がる砂塵と黒煙──その渦中より異形のティタンが飛び出す。

 

 レールキャノンの砲身は半分に、給弾ベルトが繋がるマガジンは装甲がない。

 捨て身の一太刀、見届けた!

 

「ダン!」

 

 頭上を通り越したダンが、旋回と同時にフレイムロックを突き出す。

 俺はライフルのAP弾をヴィクセンの右肩へぶち込む。

 

≪見えてる!≫

 

 ()()()1()()が背面のスラスターを吹き飛ばした。

 それでもヴィクセンは機体を振って、チェーンガンで水平方向を薙ぎ払ってくる。

 ペダルを蹴り、緑の絨毯を越える──

 

≪喰らえ!≫

 

 異形のティタンに一筋の光線が直撃し、火花のように飛び散った。

 右肩のマガジンが溶融して爆ぜ、黒煙が視界を覆う。

 

≪こいつ、まだ生きてやがる!≫

 

 ペダルを踏み込む。

 

「いや──」

 

 渦巻く黒煙を突っ切り、黒く焼け焦げたヴィクセンへと肉薄。

 相棒を見る無機質な眼には、驚愕が浮かぶ。

 

「これでっ」

 

 装甲が溶融した胸部にライフルを捻じ込む。

 ダメージの警告は無視、トリガーを引く!

 

「終わりだ!」

 

 砲声が鳴り響き、ティタンの巨体が震える。

 連続でAP弾を撃ち込み、内部を引き裂く。

 

 レールキャノンの砲身が荒野へ落ち──ヴィクセンは停止した。

 

 相棒を睨む眼から光が消える。

 

≪やったか…?≫

 

 異様な静寂に包まれ、荒野を砂塵が舞う。

 ライフルを引き抜けば、異形のティタンは無抵抗で崩れ落ちた。

 ぴくりともしない。

 

≪やった……やったぞ、V!≫

 

 通信越しに伝わってくる歓喜の声。

 

「おう、やったぜ!」

 

 俺も揃って勝鬨を上げる。 

 借りたライフルは完全に壊れたし、相棒は悲鳴を上げてるけど、勝ちは勝ちだ。

 今は、それを噛み締める。




 何をみてヨシ!って言ったんですか?(電話猫)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。