“奥さん、催眠にかかってたよ?”
Dからその言葉を受けた時まず最初に思ったことは純粋なる疑問。
何故なら私の妻に限って催眠にかかるなどと言う事は限りなくあり得ないと思っていたからである。
何せ姫の二つ名は“傾国の魔女”。
そう言われるまでいろいろあったがその道中で
それは当然催眠術に詳しいと言う事に他ならない。
しかし、その姫が催眠術にかかった。
確かにDやそのほかの序列持ち……特に真祖序列第七席のように催眠術に特化した吸血鬼であるならば私とて納得がいく話だ。
しかし、七席は今はノルウェーに住居を構えそこで暮らしている。
その為ここ新横浜に来ることはない。
それにDの話によればドラウス……確かDの倅の友人がこの騒動の発端だという。
……アイツ……何を考えてる?
Dの倅の友人と言う事は精々高等吸血鬼程度の技量しか持ち合わせていない。
そんな輩に催眠術に長けた姫が術中にはまるとは考えにくい。
まさか自分から受け入れた?
嫌な予感がする。
それはもうとびっきり嫌な予感だ。
D、少し席を外させてもらってもよろしいかな?
「迎えに、行くの?」
ああ、迎えに行く。窓は閉めといてくれ。
言うが早いか窓からベランダに出る。
普段こういう時は先ず姫を探すことから始めるのだが今回は違う。
もう既に催眠術にかかっている状態であることと術にかかったらしきものを見る限りではそれほど危険な術でもないのだろう。
もしこれが他傷や自傷の類を誘発するものであったならば一目散に姫を助けに行ったところだが……まぁ、ちょっとしたいたずら心だ。
磨いたばかりで乾かしていた鎧を身にまといベランダから身を投げ出す。
50階建てくらいのマンションではあるが怖気ずくことはない。
来い、我が脚よ。
地震の陰から出て来る騎馬。
いつもながらに俊足馬である。
手綱を取り騎馬の脇に足を掛ける。
あと30階位か……跳べ!!
騎馬がマンションの壁を踏みしめ下に向かって跳躍する。
真下には色々と人間が集まっているため普通なら降りることなどしない。
しかし、コイツの技量とセンスなら別だ。
僅かに隙間が開いているところに降り立ち道路に出る。
その際にクラクションを盛大にならされるが気にしない。
今は緊急事態なのだから。
ふと、上を見上げればDが何処かに向かうのが見える。
あの風来坊の事だ。
またどこかに遊び相手でも探しに行ったに違いない。
そんなことを考えているともう既に前方にハンターズギルドが見えてきた。
流石は俺の愛馬だ。
指示しなくとも俺の行きたいところが分かったらしい。
ギルドの前にはこの前居たハンターに加えてこの前見かけなかったものまで居る。
あ、Dの孫まで居るじゃないか。
余程大事になっているらしいな。
それにしても……。
また、そろいもそろってこっぴどくやられているなハンター達よ。
「巨乳なおっぱいのお姉さんにむにゅっておっぱいに手のひらを押し付けられたい」
???????????
え?なんて?
今なんて言った?
もしかしてこれが催眠の効果?
こんなんに姫もかかっちゃったの?
しかも催眠ってかなり難しい方の部類なのにこんなことに使うなんて。
新横浜怖すぎだろ。
困惑している俺を見てかDの孫が話しかけてきた。
「ああ、第一席。申し訳ありませんねうちのロナルド君がお下品なことを……」
「巨乳なおっぱいのお姉さんにむにゅっておっぱいに手のひらを押し付けられたい!!!」
うわぁ……。
めっちゃDの孫に殺意むき出しにしてるけど。
めっちゃ言ってることがやばすぎる。
と言うかどういう催眠だこれ?
「いえ、違いますよ。ロナルド君は今Y談しか喋れない身体にされているのです」
本ッッ当にどういう催眠だそれ!?
そう言えばY談おじさんってかなり催眠術に長けてるんだよなぁ。