人間、自分の力だけでは、何も出来ない事がある。まさに、今の状態がそうである。
なぜ、自分の体が首から下が地面に埋まっているのか。ランニングついでに多摩川の河川敷に立ち寄ったのだが、昨日は普通に過ごしていたはずだ、普段やることのない親からのお使いまでした。善意によっておつりが来るレベルのはずである。
「…なんで、埋まってるの?って顔してる」
この何考えているわからない、小動物のような生き物を紹介しよう。こいつは佐々「佐々木真理だよ」入ってくるな。この様に、時々エスパーのような思考盗聴を仕掛けてくる。っていうか助けろよ、なぜ人が埋まっているのをまじまじと見てられるのだこいつは。
「ここで埋めてたらずっと見てられるね」
…いいだろう、その喧嘩買ってやろうではないか。いい度胸だ。男の恐ろしさとやらを見せてやろう。俺は相手が女だろうと手加減はしない、男女平等の恐ろしさを思い知るがいい。
「おい、チビスケ。人を煽るとどのようになるのか教えてやろう」
「今の君になにができるの?」
「……一時休戦といこうか、人間は社会性持つことで成功した。手を取り合うのは今だと思うんだ」
「………………………それだけ?」
「………」
「じゃあねバイバイ」
「すまん、本当にすまん。ごめんなさい、助けてください。何でもしますから、親の命も賭けよう。そうだ、あの、あれだ、あいつも、田中も賭けるから」
ごめん母さん、あと田中、人は時に犠牲も必要だ。人類の進歩は殆ど犠牲が関わってくる、医学だってそうだ。何万何千人の犠牲の命の上に成り立っているのだ。とにかく助けてもらおう、それからありったけぶちのめすのだ。
「フフッ………いやだよ、埋めたの私だもん。あんなに簡単に落とし穴にはまるの初めて見た。」
よし、潰す。今、俺の気持ちが確信に変わった。少し許してあげようかなぁとか思ってたが、その考えは今完全に消え去った。…………だめだ、抑えろ。よく考えるんだ川上心信。今切れたら相手の思う壺だ。冷静に対処することが、一番の解決策へと導く素晴らしい一歩だ。
「分かった、分かった。落とし穴にはめたことは水に流すよ、俺は優しいからな。しかしな、なぜ落とし穴にはめた?理由を詳しく聞かせてくれ」
「気分が悪かった」
「恐ろしいほど簡潔に言ってくれてありがとう、切れていいかな?」
「ダメ」
「わかった」
くそっ、なんて分の悪い交渉だ。ずるい、あまりにもずる過ぎる。人を埋めるというものがこんなにも強い交渉材料だなんて、考えたことも、思いもしなかった。俺の文章検定準2級の力を持ってしても、解決策を考えられずに泣き寝入りだ。畜生、これは完全に自分の落ち度だ。負けを認めざる負えない。とにかく、今できることをしよう。今動かせるのは頭と口だけである。考えられる手段は今のところ交渉しかない。使えるものを最大限使って解決に向かわせてもらおう。
「なにをしたら出してくれる。金か?金なのか?」
今月はマジでキツイ、後先を考えずに最新型のゲーム機を買ったせいで、俺の文章検定準2級の力をもってしても、自分の財布事情は火の車で「文検準2ってそんな高くないよね」それだけは言うなよ、頼むから。唯一自慢できるんだ許してくれよ。
「人の心を読むのやめろ、天才も程々にしてくれ」
「顔に出すぎ」
そんなに顔に出ていたのか?俺の顔に文章検定準2級の顔が?……ってアブない本題からずれている。高度な作戦ときたもんだ。誉めてやろう。
「自分の非を認めないところ最高にキモイね、……好きだよ」
………決して自分はドキドキしていない、可愛い女子から好きとか言われてドキドキなんかしていない、この状況でドキドキする方がおかしい。…もしかして、自分はMなのか?いやいやいやいやこいつの顔が憎たらしいほど可愛いせいだ。
「キモいぐらいが人生丁度いいんだよ。お前も俺と一緒に埋まってみるか?ひんやりしてて気持ちがいいぞ」
………あれ?あいつの顔が真っ赤だ。やばい、怒らせたか?相当まずい、すぐ交渉に移らないと帰られてしまう。そしたら終わりだ。地面から首だけ出して一夜を過ごしたら、黒歴史も引いてしまうほどの人生の汚点である。すぐに行動に移そう。
「わかったよ、100円でどうだ?」
「……」
「に、2百円でどうだ?」
「………」
「わかったよ!1000円やるよ!もってけドロボー!!」
「…………」
「…ま、まさかこれ以上ですか?」
「……………」
終わりである。享年17歳、あまりにも早すぎる。月末だからと安心していたのが、ここに来て大きな重しとして、自身にはだかることは知る由もなかった。やっと学校生活に慣れ始め、これからやっと俺の青春が始まるというのに。許してくれ、神よ、アーメン。
「…はっ!、きゅ急に、へ、へんなこと考えるな」
もう、ぶちのめすとか考えません。反省してます。
「頼む、許してくれ、お願いだ。」
神様、もう何も賭けません。……やっぱり、どうしてもというのであれば、田中は少しだけ賭けてもいいです。もう、男の子の尊厳は消え去った。命が最優先である。
「…機嫌よくなったから出してあげる。」
ああ、神は存在した。仏教徒だったけど、今日限りでキリスト教になります。アーメン。イエス様最高、大好き愛してる。………あれ?なんかあいつの機嫌悪い?
「イエス様って、誰?」
「イエス!マム!!あなたが一番です!佐々木真理最強!!!」
………………………………………….
「よいしょっっと、……ふぅ。かたづける方が大変だね。びっくりしちゃった。」
びっくりしたのはどう考えてもこちら側である。埋められて、比較的に冷静だった自分を褒めて欲しい。大半の人が埋められた時点で脱落しているであろう。何はともあれ助かった、今日も生き延びることができた。
「ありがとう……って、なんでお前にお礼してんだよ俺」
「お礼がいえる人はいい人だよ?」
「よくそのセリフが吐けるなお前」
天才は一味違うのである。やはり、どこかが破綻している。こんなことを考えながら作業をしていたら、いつの間にか日が落ちていた。河川敷の上の方の土手で、佐々木が遠くで呼んでいる。もう帰る準備をしていたようだ。
「帰るよー、まってるから早くしてーじゃあねー」
「おい、穴埋めるの少しぐらい手伝えや」
必死に埋め直して30分位経った頃だろうか、大きな穴をやっと埋め直すことが出来た。疲れたので空でも見て休憩しようと思ったその時、土手の上の方にあいつがまだ自分を見ていたことに気が付いた。帰らずにずっと穴を埋める姿を見ていたらしい、………見てるなら手伝え。
………………
「ほかの女としゃべるあいつが悪いんだから、き、急にドキドキさせること考えるな」
この女、エスパーという恋愛において最強の物を持っていながらこのありさまである。この調子で大丈夫か、信心に伝わるのか、頑張れ真理。
これは、ひねくれエスパー少女と不器用男が手を取り合う物語。
ひねくれたヤンデレが無くて自分で書き始めました。直接的な好意を伝えることはできないけど、大きい愛がある状態が好きなんですね。就活中なので、次回はかなり遅くなります。許してください。次回はヒロインの過去回を書きたいと考えています。ここでヤンデレ要素入れていく予定です。面白いと思っていただけると幸いです。
最後まで見てくれてありがとうございました。見てくれた人により良い幸せが訪れますように。