悪役令嬢転生かと思ったらゾンビパニックかい!   作:レッドアリーマー

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実滅!

 何度も述べるようだけど、『愛されるが故に死して』はあくまで乙女ゲームだ。まぁここで「であるから」を使うとすべての乙女ゲーム、ひいては恋愛ゲームに喧嘩を売りかねないんだけど、それでも言わせてもらうとこのゲームにゲームバランスなどというものは存在しない。

 とりあえずこれ撃っときゃ解決、みたいな魔法が当然のように存在し、とりあえずこれつけときゃ正解、という装備が割合序盤で手に入る。誰かと競い合うゲーム性でもなければ一強魔法があることに対して文句が出るわけでもない買い切りゲームだからこその潔さ。

 

 今回はそれに頼る。

 

「ほ……ほんとにすり抜けてる……? なんで……?」

「そういう魔法と装備だからですわ。てい」

 

 私に攻撃をするもそれを空振らせ、全身隙になったアンデッドの首をショベルで断つ。

 もうこれを七回は繰り返している。

 

 いっちょまえにシンボルエンカウントシステムだった『愛されるが故に死して』。

 このゲームにおける戦闘はアイテム集めの側面しか無く、レベル上げみたいな要素は存在しない。そもそもレベルシステムじゃない。必要なのは適切な魔法選びと装備選びなのだけど、上記の「これつけときゃオッケー☆」があるせいでその辺が崩壊している。

 今リベルタに使わせている魔法はまさにそれ。光魔法インヴィジブルスプリット。効果は「不可視なもう一つを作り出す魔法。味方単体の回避率を大幅に上昇させる」というもの。パリスの扱う精霊術にも似たような効果を持ち、且つ全体効果であるものがあるけれど、そちらのテキストは「回避を上昇させる」になっている。

 そう、実は違う計算式が使われている……つまり別の事象なのだ。

 

 風属性における回避上昇はあくまで機動力を底上げするというもの。対象の機動力を上げて回避させる。

 光属性における回避率上昇は言い換えれば命中率低下に等しいもの。対象が攻撃・効果対象になった際、対象を狙っているものすべての命中率を低下させる。

 そこへ装備アイテム『揺蕩う幻惑のブレスレット』というものを装着。これもまた「緑色が美しいブレスレット。どこか揺らめいているようにも見える。装備者の回避率を大幅に上昇させる」という効果を有していて、インヴィジブルスプリットと『揺蕩う幻惑のブレスレット』が合わさると最強になる。……もとい、回避率が百パーセントを超える。

 それは対象を狙う者の命中率がゼロパーセントを下回っているということでもあるため、マップ上のパーティリーダーがこの二つを併用していると、無駄な戦闘の全てを回避することができる、と。レベリングの必要ないゲームなので通常戦闘がダルい場合はこの二つがあればすべてなんとかなるのである。

 さらに光属性には「とりあえずこれ撃っときゃ正解」という強力魔法もあるので本当にズルい。対象指定の魔法には成す術ないから本当にこれだけでいいわけじゃないのだけは救い……救い? ですわ~。

 

「これ……これ、しておけば、もう誰もアンデッドに襲われないんじゃ……?」

「それがそうでもないのですわ。こういう狭所であればそれでいいのですけれど、開所だと別の法則(計算式)が手を出してきて……」

 

 私だって光属性使えなくとも装備だけで回避率爆上げで無双ですわ~とか考えたけど、どうにも無理らしかった。二体までなら問題ないっぽいけどそれ以上になると普通に当たる。

 多分命中率を下げる、及びテキストの感じからして、幻惑とか分身を作り出すことで本体に当たらなくさせる、みたいな効果があるのだろう。で、どれほど分身を作ったところで全方位から一点狙いで横薙ぎとかされたらどうやったって当たる。三で回避率が関係なくなるのは三方向から見たらどう頑張っても当たるからなんじゃないかなって思ってる。あ、思っていますわ。

 

 加えてアンデッドは視覚聴覚に関わらない知覚を有しているため、メイビー二体でもキツいと思う。危ないから試してませんけど。

 

「ついでに言うと、常に使うには魔力が食われ過ぎますの。補助魔法のクセに魔力持っていきすぎでしょう、その魔法」

「あ……う、うん。そうかも……。でもラファ、よくわかるね。他の属性魔法の魔力事情なんて、使ってみないとわかんないことがほとんどなのに……」

「……まー、その辺は聡いんですのよ色々あって」

 

 散々リベルタトップにして歩き回ったからですの~……とは言えない。苦味とエグ味が凄いらしい魔力回復ポーションガブ飲みでマップの隅々まで走らせまくった賜物ですの~……とも言えない。

 ……レベル概念のある世界なら闇魔法無双できましたのに。相変わらず不遇ですわ~。

 

 ところで私達は既に王城の中にいたりする。狭所ですわ。

 そも、区境というのは何か結界なんかで仕切られているもの、ということはないため、第二区でエスタらが暴れていれば、第一区のアンデッド方々もそちらへ寄っていくのだ。今回はその隙をついた形になる。

 

「……生活感は、欠片も残っていませんわね」

「うん……酷い荒らされ方……」

 

 リベルタと共に一階を歩いているけれど、人の気配はない。バリケードを張った様子もなければ魔法戦闘が起きた痕跡もない。

 これは……生存は望み薄、ですわね。

 見張りの方々が見たという生存者の影は、結局ゾンビだった、ということでしょうか。

 

「声は変わらず地下から?」

「少なくとも上じゃないと思う……」

 

 本当は上に行きたい。が、咄嗟のことでリベルタの意識が消えるなどあったら面倒オブ面倒なので、先に憂いを断っておきたい。

 ただ王城の地下には件の燧石があるわけだけど……うーん。

 

 大ぶりな動作で掴みかかってきたアンデッドをすり抜け、その頭蓋をショベルで叩き潰して。

 あ、私の回避率を上げてもらった上でブラックネットを使っていますの。だからリベルタへ攻撃がいくことはありませんわ。

 

「……ん?」

「わぷ……ど、どうしたの?」

 

 ふと、今しがた殺したアンデッドを見る。

 何も気にしていなかったけど……この服……。

 

 振り返って見得る限りのアンデッド、そしてこの先の道中にいるアンデッド。その服装を見る。

 

「ラファ?」

「おかしい……ですわね。なんでこのアンデッドたち、平民の恰好をしていますの?」

「え」

 

 ここは王城。一般開放されていたわけじゃないから、王城内に平民がいることは……まぁ働いていたらあるけど、少なくとも私服であることはない。

 王城に入ってから掃除したアンデッド。記憶を掘り返してみれば、全員私服の平民だった……ような。侍女や料理番、近衛兵や騎士の恰好をしたゾンビはいなかった。

 ……そんなことある? 貴族の恰好もいない……煩わしくて脱いだとか?

 

「リベルタ。あなたが編入してきた日……日付は覚えていますの?」

「収穫の月の四日、だよ。私、日記……つけてるから。覚えてる」

 

 私も第二区の自室に戻れば自作カレンダーくらいは出てくる。けど、そうか。あのゲームのセーブ画面は確かに日記帳風だった。

 製紙がまだまだ発展途上なこの世界に日記やらノートやら手帳やらは無いものだと勝手に思い込んでいた──実際生まれてから羊皮紙の古書くらいしかみたことがなかった──けど、彼女はそれを持っていたと。……いけない、話が大分逸れましたわ。

 

 収穫の月の四日。

 それは……確か、王城の雇用会? それこそ王城で働く平民を一斉に募ることを目的とした会合が開かれる日……だった、ような?

 だからこんなに平民がいる……? う、大丈夫かしら。これ、信じたい結果を先に出して、それ以外の可能性を除去した無理矢理な考察になっていませんこと?

 

 信じたい結果。

 ……ハ、笑えますのね。今私、身内に膿がいると……それを信じたいなんて思いましたの?

 リリーガおば様、私、全く以て純粋で無垢なる魂ではなかったようですわよ。

 

 ──この王都を設計し、アンデッドの暴走を企てた何者かが……万一自身に被害を及ばせないために、肉の盾を用意したのかもしれない、などと。

 妄言ですわね。

 

「グラヴィティパルス」

 

 ()()()が前後から聞こえた瞬間、魔法を使っていた。破砕の魔法。突然のことに悲鳴を上げるリベルタの手を引いて、未だ破砕の終わっていない壁へ体当たりをするようにして倒れ込む。倒れ込み、壁の中……そこにあった部屋へとなだれ込む。

 一秒後、キュィィィという甲高い音が接近してきて、それ同士が廊下で正面衝突をして……爆発した。

 揺れる王城。まぁその程度じゃ流石に壊れない。

 

「な、なに!?」

「挟み撃ちですわ。この程度でやられると思われているのは癪ですけど、それより挟み撃ちをする程度の脳がある者が相手であることが透けましたわね。私達が少しもたついたせいで準備をする時間を与えてしまったのは痛手ですが……ふむ」

 

 今の今まで手を出してこなかったのは、私達に気付いていなかったからだと思う。それで、ここにきてようやく気付いて、とりあえず、といった具合にボムゾンビを差し向けたか。

 

 ……ゾンビも操れるのか。たかだか悪意ある魔族の一体、なんて考えていたけど……ゾンビパニックの黒幕である可能性もミリは出てきたか? あ、出てきましたわ。……きましたの?

 

 しばらく息を殺して待ってみる。

 王城内にいるアンデッドの呻き声はずっと響いているけれど、それ以外は聞こえない。

 追加でゾンビが入ってきた様子もなければ、クラフトゾンビやスピードゾンビといった特異種が湧いた様子も無し。

 

 否。

 リベルタの足を払って左腕だけで横抱きにし、大きく開脚。ショベルを握る手を支点に地を滑るような回転蹴りをお見舞いする。

 ある意味でゾンビ物のお約束……床から突き出てきた腕をそれで折っていく。腕は六本。回避率は意味を成さない。まさかからくりに気付かれた?

 

 考えている時間は無い。結構限界だった左腕でリベルタを降ろし、感知全開で走り出す。今しがた入った部屋を出て、廊下へと。廊下の先へと。

 

 インヴィジブルスプリットは一度に対象一体へしかかけることができない。『揺蕩う幻惑のブレスレット』も一つしかない。

 リベルタへ回避率を集中させる……ことも考えたけど、先程突き出してきた腕はリベルタをも狙っていた。つまり、ヘイト管理が意味を成さない相手……アンデッドではないということ。

 大広間へ出る。当然のように存在する十数体のアンデッド。五秒間、それらが私達を視認する前に削る……いや。

 

 大丈夫だ。この大広間の下に地下空間はない。廊下の下には地下廊下があるけれど、建築上の都合で大広間の下はしっかり土台であるはず。ゾンビが土の中だけでなく固められた土台の中まで泳げるとかならもう知りませんわ。

 

「リベルタ。最低限、自分の身は自分で守れますのね」

「はっ……はっ……う、うん……大丈夫だよ……!」

 

 よろしいですわ。

 ならば、その手を離し……ショベルを正眼に構える。五秒。アンデッドたちが此方を向いた。

 

「いいですのねリベルタ。私達の()()()()は、王族の安全確保。わかっていまして?」

「え……」

「わかっていますわよね、リベルタ?」

「……うん。わかってるよ。三階以降にいるはずの王族のみんなを助けなきゃ、なんだよね」

 

 子供だましではありますけれど、その程度の知能であることを願うばかりですわ。

 

 

 倒しても倒しても色んな扉から侵入してくるアンデッドたち。

 恐らく三十数体目となるソレの首を潰した……そんな時だった。

 

 ふ、と……目から光を失うリベルタ。

 

「──みーっけ、ですわ!」

 

 そんな彼女の手を引いて、すべてのアンデッドを無視して駆け出すは地下への階段、及び上階への階段がある方向の真逆。

 不自然にゾンビの集まりが低かった方。

 

「グラヴィティプレス!」

 

 アンデッドに無効であるためにいつもは使わない闇属性の重力魔法で引き起こす事象は床の陥没。走るに不便だと意識の無いリベルタを背負い直し、その先に見遣るは──少しばかり扇情的な恰好をした赤紫肌の女性。あれだ。あれなるが此度の黒幕。リベルタの意識を持っていっていた魔族ですわ。

 

「どうしテ、ここガ」

「あなた、ゾンビや他者越しにはその術を使うことができないのではなくて?」

「!」

 

 パリスに気取られるからできなかったのではなく。

 単純に人が多すぎてできていなかっただけ、ですわ~。

 

「ァ──ぐ」

「っ!?」

 

 そのままの勢いで殺そうとした。なんの躊躇もなく。同じヒトガタであるそれを。

 けれど、できなかった。……気が引けたから、とかではない。

 

 リベルタが、私の首筋を、噛んだから。

 

「危なかっタ……危なかっタ。フフ、敵に魅了されタ仲間を背負うだなんテ、状態異常に理解のないコだったのねェ」

「いえ、ゾンビであるかどうかを確かめたかっただけですのよ」

 

 両手でショベルの柄を持ち、女性魔族の首へつきつける。ゾンビじゃないからその肌は脆くない。ショベルの刃が入っていかない。

 そんなの重々承知している。だから──さらに突進を重ねる。魔力で底上げされた身体能力はショベルの刃先にいる女性魔族と首筋左に噛みついているリベルタの双方を持ち上げ、部屋の壁まで突き進む。

 

「ぐ……な……んて、コ……! だけド……あなたの膂力じゃむリ……!」

「教えてくださってありがとうございますわ。──故、とくと味わってくださいまし」

 

 ショベルを左手に、そして逆手に持ち替え、五寸釘を打つような姿勢へ移行。

 そして持ち手である三角部分へ──渾身の掌底を放つ!!

 

「──カ──」

 

 ぞぶ、という感触があった。肉を断ち、喉を潰す感覚。けれど骨には達しない。充分な致命傷も、相手が魔族であれば油断にならない。だからこれは首を断つためではなく、呼吸器を潰すための行為!

 

「デル・メルタキシガル」

 

 ここで選択するは、以前も検証した会心率の低下デバフ。

 アンデッド以外には単なる会心率の低下でしかなかったはずの……目利きの低下でしかなかったはずの魔法。けれどそれを食らって、女性魔族は今度こそ、という風に苦しみ始めた。

 

「ま、これまた簡単な話ですわ。ゾンビではないあなたがこれだけの数のアンデッドの最中にいて襲われなかったその理由。──サッキュバスやヴァンパイアは、アンデッドの一種、ですものね?」

 

 アンデッドは同胞を襲わない。そしてアンデッドとゾンビはノットイコールだ。

 その中には、動く屍ではないものも存在する。

 けれど同時に、アンデッドの性質は有している、と。不便なことですわね。

 

「ク……ビ、ど……じ……デ……?」

「喉を断ち切られていて発声できるんですの? 意味が分かりませんわ。……ああ、で、首? まぁ噛まれましたけど、甘噛み程度でしたわよ。あなた程度の格で『勇者の魂』を有するリベルタを完全に操ろうなどと、思い上がりが過ぎましたわね」

 

 して。

 ようやく、今度こそものを言わなくなる女性魔族。だらんと垂れ下がる四肢。……ふぅ、生命力高すぎですわ~。

 ただまぁ、この程度が良からぬ気配? だとしたら拍子抜けもいいところですわね。

 

 と……ドタバタという音が響く。上階……というか今しがた私のぶち破った一階からだ。

 このよたよたしていない足音は。

 

「リベルタ! ラファ! 無事か!」

「良かった、無事みた……い……」

 

 駆けつけてきたのはエスタとイジス。モーモン、パリスはまだ第二区かな?

 

 二人はこの惨状を見て言葉を失っているらしかった。まぁゾンビじゃない相手を殺したから、血が凄い血が凄い。ゾンビはもうほとんど出血しませんからねー。

 

 イジスが水を操作し、私の近くで倒れているリベルタを持ち上げる。あれ、なぜか濡れないのですよね。不思議ですわ。

 

「気絶はしていますが、怪我などはしていないはずですわ」

「……」

「……ラファ」

 

 なにか。

 沈痛な面持ちで……私に剣を向ける二人。

 

 あら? またぞろ誰かに操られていますの?

 

「なぜ……なぜ、俺達の到着を待てなかった。なぜ……」

「君が、彼らに対し、そうしているように。……僕も慈悲を以て、君に刃を向けるよ」

 

 これは錯乱状態ですわね。私が闇落ちしたみたいな幻覚を見ていますわこれは。

 まだ周囲にアンデッドがいる中での戦闘などしたくはないのですけれど、仕方ありませんわ。

 

 甘噛みだった、なんて……嘘だ。人間の顎の力を舐めちゃいけない。

 結構がっつりいかれている。だから早い所処置したいのですけれど、精神防御甘々伝説の四騎士さんは本当に困りますわね。

 

「俺は──」

「何をふざけているのか知りませんが、御三方、できれば常時真面目でお願いいたします。ラファ様、これを。包帯です。とりあえずの止血になるでしょう」

「あらミルグドリヒ。包帯ありがとうですの。それで……私、別にふざけてなんていませんのよ。ただエスタ様とイジス様が敵の魅了か何かでご錯乱なされているようでしたから、ショベルで殴って正気を取り戻させてあげようと思いまして」

「ええ、ですからそれは平和になってから演劇としてやってください。イジス様も、ふざけている暇がありましたら、まぁ問題ないかとは思いますがリベルタ様の口を水でゆすいであげてください」

「……口? ……な、血が……」

「ああそれは私の血ですの」

「なに? どういう……ことだ?」

「え? ですから、この傷の血ですのよ。今さっきリベルタに噛まれたので、結構な出血をしていて。だからリベルタが吐血したとか口を切ったとかではないですから安心してくださいな。……ただ、確かに、リベルタがそれを飲んでしまうのは危険ですわね。他人の血って基本毒にしかなりませんし」

「……」

「……?」

「……あのまさかとは思いますが、御三方とも阿呆……じゃなく、天然なのですか?」

 

 え……っと?

 もしかして私、なんかやっちゃいました? ですの?

 

 

 その後。

 結局第一区の奪還は無理だった……二階以上からの音沙汰もなく、まだまだゾンビがいるということで撤退の流れとなり、また途中で切り上げてきたために第二区の奪還もならずだった。

 とはいえ犠牲者無しでの撤退、且つ情報を取ってくることができたのと、魔族の横やりを排除できたのは喜ばしい結果であるとして納得することに。

 

「まあ確かに首筋を噛まれていたらそういう勘違いもしますのね。配慮が足りませんでしたわ」

「いや……こちらも早とちりをした。昨日反省したばかりだというのに、本当に学ばないな、俺は……」

「ミルグドリヒが来てくれて助かったよ。あのままだったら僕たちは本当に殺し合いをしていたかもしれない」

「足先であるならともかく、首筋などという場所を噛まれていたら、会話の余地なくアンデッド化していたでしょうに。失礼ながら四騎士の方々はそういう常識力に欠けがありますね」

「自分も部下がああなってから必死で勉強したクセに棚上げですわ~」

 

 そんな感じで誤解……というか私達の天然ボケも解消されて。

 

 で、である。

 

「……しかし、起きませんのねリベルタ」

「ああ……。……サッキュバスの魅了をかけられた、のだったか」

「ええ。一度は解除いたしましたが、二度目を放置していたばかりにこのザマですの」

「……消退病と上手くかみ合ってしまった可能性はあるな」

 

 ああ。そういえば。

 消退病。思念を散らせる光属性使いのその病と思念を捕らえる魅了が重なって……術者が死しても残り続けますのね、魅了って。

 

「パリス、精霊は何か言っているか?」

「いや、何も」

「信頼も信用も、ラファなら大丈夫だろー? 二人は全力で俺達が守るんだから、とっとと施術してもらおーぜ」

「……医術書で確実性を高めたかったが、仕方が無い、か」

 

 だからその書物存在しない可能性が高いので頼らない方が良いですわ。

 さっさと解消してしまいましょう。そしてその書物の存在を忘れ去ってしまいましょう。

 

「わかった。眠り続けていては体力も落ちるしな。……ラファ、これから消退病の治癒のための手順を教える。しっかり覚えてくれ」

「ええ、任せなさいな」

 

 さぁ、騎士に代わって悪役令嬢が眠り姫を起こしにいきますわよ~。

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