悪役令嬢転生かと思ったらゾンビパニックかい!   作:レッドアリーマー

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計滅!

 ゲーム『愛されるが故に死して』の攻略対象はエスタ、イジス、モーモン、パリスの四騎士、魔王、オスカル王子、『旅路の旗』のリーダーの三強存在、さらに隠しキャラのクランパネリテの計八人。内四騎士たちは初めからパーティにいるからどのルート開拓もやりやすいけれど、他の四人は四騎士のルートから派生するルートなので難しい設定だった。

 オスカル王子ならイジスルート派生終盤分岐、魔王ならエスタルート且つ他三人の好感度が一定以下、『旅路の旗』という義勇軍のリーダーは四騎士のどのルートでも構わないけれど、四騎士全員の好感度が均一に高い状態を作らないといけない、など……ちゃんと面倒臭いというか、ちゃんとゲームしているというか。

 そして隠しキャラのクランパネリテの好感度については、「フィールド操作時、低確率で遭遇するクランパネリテとの会話イベントで適切な選択肢を選び、且つ彼の店の商品をすべて買うごとに一パーセント上昇」というもので、なんというか……それで上がってるの本当に好感度なの? っていう条件でルートが開拓される不思議なキャラクターだった。

 

 さらに隠しキャラのルートなだけあってそのシナリオは他とは隔絶したトリッキーなそれになる。

 まず世界を救わない。まず倫理観がない。どこまでも自由奔放に世界を引っ掻き回す"道化"。それに恋をするルートなわけだから、そのルートの時のリベルタもまた調子がおかしい。

 ぶっちゃけ普通にプレイをしていたら"時々遭遇するなんかヘンな物を売っている商店を開いている辻商人"でしかなく、その彼を深掘りしようとも思わない。まさに隠しキャラ。

 

 ……ただし、彼もまた他の攻略対象に劣らぬ"腹に秘めるもの"を持っている。彼のトゥルーエンドにおいては、当時のプレイヤーたちがこぞって「え、これが最良?」とモニターを確かめたほどのビターエンドが待っている。ああいや、メリーバッドエンド……ギリメリーハッピーエンドかな? 

 

「*ボクの顔をじっと見ているようだけど、まるで遠くの海を眺めているかのような目だ。お嬢さん、ボクにそこまでの感傷を抱くだなんて、変わった人だね」

 

 そんな彼が、目の前にいた。いましたのよ。

 

 

 推定サハギンではないだろう魔族の子供……の足取りを追うこと一時間ちょっと。

 全く姿が見えず、流石に死んでいませんことこれ、となっていた私。いつもの諦めの悪さはどうしたと魔王に聞かれましたけれど、それは恐らく存在を確かめていないからでしょうね、と思いますの。

 結局のところ私は魔王から「そういう存在の痕跡があった」と聞いただけ。掴む先が靄では根拠も失っていきますのよ。

 

 ただ……魔王が信号弾を視認して、警戒ついでに私の方へ道草を食って、そこから痕跡発見、追跡開始から一時間。

 この間に件の子供がどこまで移動できるんですのって話ですわ。飛行能力のある魔族であれば、信号弾を発する前に飛んで魔王城に来ていたでしょうし。

 また、飛行能力でないにせよ、遠くまで移動できるような種族特性を有していたのなら、道中に痕跡が残るはずですの。それさえなくて見つからない……足跡さえないというのならそれは。

 

 そんな風にあきらめかけた時でした。

 

「──*おや? 珍しい食べ合わせだ。蒼耀の魔王様に……人間のお嬢さん。はは、まさか魔王領でボク以外の人間に出会うとは思っていなかったよ」

「……貴様は、以前……私がアクトミラ霊峰へ向かった時に出会った商人、か?」

「*覚えていてくれたのかい? それは嬉しいな」

 

 エメラルドグリーンの髪色に涼やかな青のインナーカラー、前髪から左側頭部にかけてまでを覆う紫のメッシュ。右目の下には同じ紫の泣きぼくろがあって、デフォルトで歪んだ口角が余裕と不気味さを感じさせる。

 彼は【道化、あるいは銀、世界との心中を目論む者】という大層な肩書き……二つ名? を付けられた青年、クランパネリテ。

 フィールド扱いされる場所であれば世界じゅうのどんなところであっても出現する、謎の道化師商人なお兄さんである。

 

 そうして冒頭に戻りますの。

 

「娘、どうした。貴様もこの商人に出会ったことがあるのか?」

「*それはないかな。ボクの記憶している限りでは初対面だ。初めまして、お嬢さん。名前を教えてくれるかな」

「……相手を名前で呼ぶ気のない方に名乗る趣味はありませんわ」

「へぇ? *……おっとそれは手厳しい。けど、キミの言う通りだ。ボクはキミ達を名前で呼ぶ気がない。だから……そうだね、このまま蒼耀の魔王様とお嬢さんで行こう」

「ええ、初めましてですの、商人さん」

 

 シナリオにおいて彼が名前を呼んで相手に呼び掛けるのは、最期の最後だけ。

 

 *ねえ、クランパネリテ。あなたは結局……誰だったの?

 *ボクはボクだよ、リベルタ。キミがそうであるようにね。

 *そう……最後まで哀しい人ね、あなたは。

 

 という……学園の時のリベルタしか知らない人が聞けばまず誰だコイツ状態になるであろう成長後リベルタと共に、どう考えてもトゥルーでもグッドでもないようなエンドを迎える……その時しか相手を名前呼びしない筋金入り。

 そして台詞からわかるように、彼は本来別人だった。名前も顔も肩書きも捨てて、すべてを巻き込んだ心中を行おうとしていた仮面の誰か。それが彼、クランパネリテである。 

 ちなみに彼のルートに入らなければ彼が心中を企てることはないし、そもそもシナリオに関わってこない。リベルタとの恋に落ちることがトリガーなので、多分この世界は大丈夫だろう。

 

「*それで、何かお探しかな。ボクの商店は他とは違う品揃えだけど、充実していることだけは保障するよ」

「……私達は子供を探している。見かけなかったか、商人」

「*流石に人は扱っていないね。……ああ、怒らないで怒らないで。見ていないよ。でも、ボクは魔王城から来たわけではないからね。ただ遭遇していないだけという可能性は大きいだろう」

「商人さん。商品を見せてくださる?」

「*勿論だとも。何か買ってくれたら嬉しいな」

「おい娘、貴様、諦めるのはまだ早いと──」

 

 そんなクランパネリテですけれど、低確率遭遇の店なだけあって、一応特別なところがありますの。

 

 それは。

 

「『アイテム探しのお香』。これ一ついくらですの?」

「*この世界となってはもはやお金に意味はない。そうだろう? だから、魔力による支払い方式に変えたんだ」

「魔力による……支払い方式? ですの?」

「*魔力回復ポーションには二通りの製法がある。一つは霊薬と呼ばれる薬草類を煎じて作るもの。そしてもう一つは、『受容液(レセプター)』という特殊な液体に魔力を流し、それを貯蔵するというもの。これを用い、ボクの店での売り買いにおいて発生する金銭の全てを魔力で代替することにしているんだ」

 

 ほへー、ですの。魔力回復ポーションの作り方が二通りあることにも驚きましたけれど、そういえばエリクシールを作る時にその材料必要になりますわね。あれそういうことでしたのね。

 

 あ、で、クランパネリテの商店で特別なところは、「その時最も欲しているもの」が必ずラインナップにあることなんですの。

 ゲーム中であれば魔力が尽きかけている時に魔力回復ポーション、体力が限界なら体力回復ポーション、状態異常ならそれぞれに対応したもの。そういう風に、パーティの状態を全快時と比較した時、最も足りていない部分を補うものを売ってくれますのよ。

 なお、じゃあ所持金ゼロで遭遇したらどうなるの、ということは既に試されていて、その時は『闇の黒網石』というのを無料で渡してくれますわ。そう、その名の通り、ブラックネットに似た効果を持つ消耗品で、一定時間画面外からも敵が反応して寄ってくる……否応にも所持金を増やされる状況になりますの。

 

 とはいえゲームにおいては人探し用のアイテムなどありませんでしたから、少し視点を変えてみましたの。

 レベルシステムがない故にアイテム探しゲーな一面を持つ『愛されるが故に死して』。当然そのための救済アイテムが存在し、それが『アイテム探しのお香』になる。あ、なりましてよ。

 お香と言いつつ香炉までついているこれでお香を炊くと、欲しているアイテムのある方向へ煙が伸びますの。まぁ国を跨いで海を跨いで「どこにあるか」を示してくれるだけなので、あまりにも離れていると「方向が分かるだけ」になるのですけれど。芳香だけに。おーっほっほっほ。

 

 けど、今この状況では願ってもないアイテムですのよ。なんせ。

 

「子供とはいえ食料を保存しておくくらいの知識は持っているでしょう。まだ焼き魚くらい持っている可能性が高いですわ」

「……すまぬ。諦めたわけではなかったのだな」

「ええ。これで行軍を緩めて、道中で子供の死体を発見するなど……普通に嫌ですからね」

「それは私もそうだ。よし、商人。魔力の支払いは私が行おう」

「*ありがとう。魔力そのものに変わりはないけれど、魔王の魔力というだけで好事家が喜びそうだよ」

 

 確かに。そんな好事家が存命であるかどうかはともかく。

 ちなみにちゃんと個人差は出るらしいですわ? だから魔王産ポーションと私産ポーションでは絶妙な違いがあるはずですのよ。

 

「*……しかし、不思議なものだね」

「何がですの?」

「*恐らく。そちらの魔王様はともかくとして、お嬢さんとボクは交じり合う運命になかったはずだ。なにせボクはこうして"外"にいて、キミは"中"に居続ける存在だっただろうから」

 

 確かに。生涯を通じてフィールドにでることはほとんどないと思っていましたわね。そのほとんどない中で低確率を引く可能性は、低かったかもしれません。

 正直言って王国民の誰もがそうだと思いますわ。王国は自国内で完結していますから、他国との貿易をほとんど行っていませんし。

 

「*けれど、アンデッドによって世が荒廃したことで、こうして巡り合う機会に恵まれた。アンデッドは世界をめちゃくちゃにしてしまったけれど、人と人とが交流を育む場を生み出したんだ。それはとってもロマンチックなことだと思わないかい?」

「あなたが"中"に来れば済む話では?」

「*おっと、存外夢の無いお嬢さんだったらしい。そして残念ながら、ボクには移ろわねばならない理由があるんだよ」

「そうですの。まぁ知りませんわ。それよりも魔王、早い所魔族の子供を見つけてしまいましょう。流石にお腹が空いてきましたわ。商人さんのお店には食品がありませんでしたし」

「*流石にね、保存が必要なものは置けないよ」

 

 まぁ、そうか。魔法で……というと語弊があるけれど、なんでもできる力で商品を生み出しているわけではないのなら、食料は置いていられないのも理解できる。

 ちなみに彼がフィールドにしか現れない理由も知っている……けれど、私ではどうにもならない話ですの。今取引された魔力量を見た感じ、彼の好感度上げの一つたる買い占めもそうそうにできなそうですし……この世界線の彼にはいろいろ諦めてもらうしかないですわ~。

 

「*またのご利用を待っているよ」

「ええ、ごきげんよう」

「世話になった」

 

 さぁて、見つけましょうか。

 

 

「──娘、前方右方、窪みの中の大岩の上だ!」

「あなたは上空から安全の確保ののち、子供の保護を! 私は──周囲のゾンビ、全部やりますわ!」

 

 見つけた。見つけたけれど……囲まれている。

 ほぼほぼ突起物でしかない岩の頂点でへばっているケモっぽい魔族の子供。それと、その周囲に群がっている数十を超えるゾンビ。人型は六体。それ以外はすべて魔物。

 

 クレーターのようになっているそこを滑り降りながらグラヴィティパルスを設置。それを待機させながらすれ違いざまの魔物へ打撃を行う。

 その打撃によって加速した身体。跳躍後、落下と元の勢いを利用して、猪や鹿の形をした魔物の後頭部をガンガン殴りまくり、減速。ひときわ大きい魔物の頭を蹴って後方宙返りをキメた辺りでブラックネットを使う。

 

「シャ──」

「あ」

 

 しまった。ですわ。

 魔王がレジストできると聞いて、そのやり方に慣れていましたけれど……そういえば子供、魔族でしたわね。

 

「莫迦者め。……大丈夫だ、離すことはない」

「ナイスですわクソ魔王! たまには役立ちますのね!」

 

 そんな明らかにこちらへ敵意マシマシになった子供を空へと連れていく魔王。あぶねー、ですわ!

 

 ──さて。

 魔力による身体強化を全身に行き渡らせる。呼吸。吸って吐いて、目を開けて。

 眼前にまで迫っていた腐爪の一撃を避け、相手の勢いを利用したショベルの斬撃を叩き込む。──水分もなければゴム皮質でもないゾンビなど、私の前には砂塵も同然ですわ。

 続く腐猪の追撃。顔面を横合いから殴り、逆手に持ち替えたショベルを背中から一突き。

 第十三胸椎と第一腰椎の継ぎ目へとクリーンヒットしたことを確認し、船の櫂を逆に漕ぐようにしてその身をシュート。向かってきていたゾンビ魔物にパッカーンとストライクですの。

 速度のある足音と背後からの抱擁。左前方向への例外的なスウェーでこれを躱し、振り抜いていたショベルを同じく漕ぐように戻して攻撃。

 ヒトガタ魔物の一体目ですわね。腕に骨で出来た翼らしきものがある魔族。その削げ落ちた腹の肉から見えた骨格構造から飛行能力がないことと脚力に特化していること、そして多少前傾姿勢であることを看破。ダチョウとかクジャク的な魔族とみましたわ。

 さらに足の前ばかりの肉がこそげ落ち、踵付近はすべて残っていることからこの仮説を正しいものと認定。自らとゾンビの接点を中心にぐるりと回転し、それの背後へ回る。

 急な動きによたよたとなるゾンビ。

 

「やっぱり。後ろに行けませんのね、アナタ」

 

 ショベルを突き刺すは肩口。どーせ首は超硬いのでしょうから、ここから──。

 

「一気に、ぶん投げますわ! だりゃぁぁあぁっ!」

 

 王都でもよくやっていた、刺してからの背負い投げ。

 持ち上げた魔族の落ちゆく先は──恐らく同種であろうヒトガタの二体目!

 

 ぶつけるのは首同士。ペンギンよろしく収納しているのか全く違うのかはわかりませんけれど、まるで金属同士がぶつかったかのような音を響かせた首同士がグシャっとなって両者沈黙しますの。

 立ったまま沈黙したその魔族の身体を後方宙返り気味に蹴り、私へと噛みつこうとしていた獅子の魔物ゾンビの背へと降り立つ。最初こそ私を見失っていたものの、自身の背中にいると気付いてからはあっちこっちにその身をぶつけ始めたゾンビを乗りこなし、周囲数多のゾンビの全てを潰していく。

 乗り心地はいいとは言えませんけれど、獅子を乗り物にしているのは気分が良いですわ。

 

 ──ヒュン、という風切り音。

 半ば本能的に行ったショベルによる防御と、それに突き刺さる蛇。

 

「蛇の魔物ゾンビ……? いえ」

 

 その根元を辿ると、こちらを見つめる獅子と目が合った。

 今乗りこなしているそれよりも四倍ほど大きな獅子。翼と蛇の尾をもつ獅子。

 

「キマイラ……の、ゾンビですの? それはまた」

 

 元々四属性がほとんど通らないのに、闇にまで耐性つけてるとかズルですわ~。

 

 なんて考えながら轟という咆哮と共に振り下ろされる前足を避ける。あ、乗り物が潰れましたわ。

 二撃、三撃四撃。前足前爪による攻撃でしかないから隙が大きくて楽ですわ。……そして、その間で今か今かと時を待っている蛇の尾による一撃も避けますのよ。ガードをしたらそこで仕留めようという気概が伝わってきますけれど、前足攻撃の時点でガードしたらお陀仏ですわ~。体格差考えてくださいまし。

 

「それと、足元がお留守ですのよ」

 

 発動させるは設置してあったグラヴィティパルス。

 当然闇属性魔法としての効果はないけれど、足場を崩せば体勢も崩れる。

 瞬間跳躍してキマイラの背後へ回り込み、地面にほど近いところで揺れる尾のその首を──断つ!

 

 断ったあとすぐバックステップで退避。油断はしない。敵はゾンビなのだから、痛みは覚えない。案の定振り返りざまの爪撃を繰り出してきたキマイラゾンビに、しかし肉薄する。爪を振り下ろした後が一番大きな隙ですもの、狙わない手はありませんわ。

 

 前足とうなじを蹴って舞い上がり、落下と共に打撃するは翼の付け根。まだ飛んではいませんけれど、HPが減ったら別の行動パターンになることなんてザラですの。なら今の内に対処しておきたい。ですわ。

 渾身の力で割り砕いた右の翼。同じ要領で左もとやろうとして、人間でいう裏拳気味に放たれた爪撃をガードし、ぶっ飛ばされる。

 

 着地したのは先程まで魔族の子供がいた岩。立ち上がってみれば、たらりと液体が頬を伝う。

 

「……全く、風圧だけでカマイタチとか、流石は魔物ですわね」

 

 王都の人間だけのゾンビには無かった攻撃だ。舐めてかかってはいられません──わね?

 

 あら。どうして身体が、ふわーっと。

 

「……娘。貴様、もっと早くに来い。今戦う意味があったようには思えない」

「え? ですの?」

「子供を保護したのち、貴様がいつ助けを求めに跳躍するかを待っていれば……貴様、私や子供のことを忘れて戦いに浮かれていたな。サハギンではない魔族であれば刃が通る。それがそんなにも嬉しかったか」

 

 ……確かに。別に今戦闘(バト)らずとも、こういう岩に乗って跳躍すれば魔王が私をキャッチできたと。

 確かに過ぎますわ。盲点盲点。

 

「此方を向け、娘」

「はい? ──って、ちょ」

 

 戦場を眺めていた私の顔を自身の方へ向けさせたかと思えば──顎に手を当ててきて、こう……クイ、とやる魔王。

 ……確かにあなた美形ですけれど、未婚の婦女にやっていいことではありませんのよそれ。

 

「アンデッド化の魔力は入っていないな」

「当然ですの。そんなヘマは犯しませんわ。これは風圧で切れただけ」

「万象には万が一がある。確認するに越したことはない」

「それについては同感ですけれど、確認したのなら離してくれませんこと?」

「……いいだろう」

 

 なんで不満そうなんですの?

 

「それで、件の子供は無事でしたの? これでアンデッド化していた、なんてことがあったらさしもの私も溜息を吐きますわよ」

「問題は無かった。いや、あったというべきか……。少し考えなければならない事態だった。落ち着けるところを探し、貴様にも相談したい」

「私に? 私魔族の種族的な部分は全く知りませんのよ?」

「ああ、それで問題ない。客観的な意見が聞きたいのだ」

「はあ」

 

 なんだろう。世界の秘密については沢山知っているけれど、日常的な常識は王都の婦女が知っている程度しか知らないのだけど。

 

 

 そんな感じで、一言もしゃべらない──ブラックネットの効果は切れているのに──魔族の子供と私を連れて、魔王は高台になっている場所まで飛行、そこに私達を降ろした。

 

「それで、話とは」

「すべてを確認してから動くことを約束しろ、娘」

「……まさか、やっぱりアンデッド化してますの?」

「話を聞け。考えてから動け。いいな?」

「それ答えのようなものですけれど……まぁ、わかりましたわ」

 

 そうしなければ話さないとでも言いたげな魔王。

 なんなんですの、まったく。

 

「子供の言葉に嘘偽りがないのなら。……その子は、一度アンデッドとなり、再度魔族に戻ったのだそうだ」

「……はい?」

「つまり──真実、蘇ったと」

 

 えっと。

 それ……世界の根幹案件では?

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