悪役令嬢転生かと思ったらゾンビパニックかい! 作:レッドアリーマー
そこから多分、二週間ほどが経ちましたわ。
……いえね、私だってこんなに長く魔王城へ長居するつもりはありませんでしたのよ。ただ行く当てがないといいますか。
王都は追放されていて、他の国へ行こうにも恐らくすべての国で食糧不足等々が起きていることは明白。そこへ観光気分の小娘がやってきてみなさいな。邪魔になるだけですわ。
それで善人でも居てみなさい。葛藤が生まれてさらに大変なことになるのがオチでしかありませんのよ。
であれば、少なくとも煙たがられていない魔王城に入り浸るのが安牌ですの。食事も種族特性と言ってしまえば割と好きなものが食べられますし、戦力と見做されているからアンデッド退治にも行けますし。
ただ……まぁ、そうですわね。
それも限界が来た、ということなのやもしれません。
──まことしやかに、しかし確実に。
骨女は人間なのではないか、という噂が流れるようになりましたわ。
「ほっほっほ……悲しいことじゃがの。魔族とてストレスは溜まる。そのはけ口を皆探しておる。そこへ……新しく来た客卿で、人間疑惑のあるものとくれば、ことの真偽など考えずに滅多刺しにしたくなるのが弱者の心理じゃ」
「知っていますわ。噂程度に気疲れする性質でもありませんし、絡まれても別に問題はありませんのよ。……とはいえ、気の毒には思いますわ」
「憐れむか」
「噂を立てている方々ではなく、故意ではないにせよ、その噂の元を流してしまった最年少ウィッチさんを、ですけれどね」
「……知っておったのか」
噂というものには種類がある。根も葉もない噂。火のない所に煙は立たない噂。そして、発言者の意図しない方向へ転がってしまった噂。
他にもいろいろあるけれど、此度のは意図のしていないそれであると言えた。
「いくつか流れてきた噂を統合した結果ですわ。克己と悔恨、悔しさから私のことを調べて回っていたようすですけれど、あまりにも種族特性が見つからな過ぎて"アイツ、実は人間とか言わないでしょうね"とポロっとこぼしてしまった言葉。それを拾った他の魔族らが尾ひれをつけて膨らませた噂。……見事に見破っているのはともかくとして、私を叩き出そうとする今の流れにエルレビ様は怯えているようですわね」
「言ったじゃろう。最年少で、子供じゃと。アレは嫉妬心から他者に対してキツく当たることしか知らぬ子供じゃ。じゃが、心根が腐っているわけではない。クグカのことはあれど、最良の判断じゃったと奴も納得しておる。……最近の噂には、お前さんがクグカの暗殺を企てた、などというものもあるのぅ。幹部の椅子に座るために最も近しいところを殺したと」
「私、魔王の軍門に降ったつもりは一切無いのですけれど。……けれどもし、今後……噂を信じた魔族が暴走し、私を追い出すような行為を実行したのならば、エルレビ様は壊れてしまいかねませんわね」
「……じゃの」
あっちにいっても派閥、こっちにきても派閥。
国外追放の次は勘違いパーティ追放ですわ? 異世界転生者としてあまりにも順当な道を辿っていますわ?
ま。
「というわけでして、そろそろ私はここを離れようと思いますの。エルレビ様のことを考えて、というよりは、そろそろヒリつきが欲しいから、というのが正しいですわね」
「この禍況にして命の危険を求めるのかの?」
「ええ、ここぬりーですの。魔王によってある程度の安全が確保されているから噂を信じて鬱憤を晴らそうとする、なんて余裕のある行動がとれるのですわ。ぬりー場所にいると私までぬるくなってしまいますので、それはお断りですのよ」
「ほっほっほ、確かにのぅ。なんせその噂を主導しているのがクラウスとくれば、失望も手に取るようにわかるというものじゃわい」
「そういうことですわ」
マジですわ? ……魔王第一主義だから態度問題で嫌われているとは思っていましたけれど、私がここへ来てからほとんど絡みのないままに誅殺されそうになっていましたわ?
ひぇー……女の嫉妬はどこが元かわからなくて絡みついてきて面倒なのですけれど、男の嫉妬は水面下で極大になっていて一気に、なので恐ろしいですわ。一括して嫉妬は面倒ですわ?
「娘子、いつ出る?」
「お見送りしてくださるのかしら?」
「少しの間とはいえ、お前さんとの話し合いは有意義じゃったからの。……これで儂に外への伝手があればよかったんじゃが、ぬくぬく安全圏引き籠り人形遊びジジイじゃからのー儂」
「私基本思い立ったが吉日タイプなので、今日中には出ていこうと思っていますのよ」
「それはそれは……素晴らしい行動力じゃの」
「ここを出たら、もう一度『
「……アーティファクトの破壊は
……ほう。
確かに。そういえばそこ、放置していましたわね。
アーティファクトが重複して存在しない、というのはゲーム知識としても当然のことでしたの。あのゲーム二周目とかありませんからね。セーブデータというかコンプリートスチルは別口で保存されるのでオールクリアの概念はありますけれど、内部データ的には二周目であるからと変わる要素はなかったはず。引き継ぎもなにもありませんからアーティファクトが被ることもありません。
けれど、だからこそ二つ目を持てるのか、を試したことはないですし、今のように同一IDで違うタグを持つ、みたいなアイテムが現れることもなかったはず。
魔王の説明では『
アティアの話から『
それでいて魔王は『
「フナリエ老。高位の魔族ならば、アーティファクトの出現を感知できたりしますの?」
「自らの種族に関係するものであるならば多少はわかるが、他種族のものとなると無理じゃな」
「なら……魔王は『
「その辺り儂らも知らされておらぬからのー。……して、娘子。お前さんらしくもないのう。──隠しているからなんじゃ。そういうの踏みにじるのがお前さんじゃろうに」
「人をノンデリカシーのように言わないでくださいまし。不必要なプライベートまで覗く趣味はありませんのよ。ところでフナリエ老、アンデッドの暴走が始まった後で、元凶クソ魔王がこの部屋には決して入ってはならない、みたいなことを言った部屋、ありませんでしたわ?」
「聞いた覚えがないのう。魔王城は全部屋が生存者と生還者のために使われておるじゃて。ああただ、地下牢にはアンデッドが潜り込んでいる可能性があって危ないからと、立ち入り禁止令が出ておったな」
「わぁ怖い。鍵とかかかっていそうですわ」
「牢へと繋がる扉を閉める鍵は蒼耀の坊の執務室にあったはずじゃのぅ。鍵の頭が三日月のような独特な形状であったから記憶していたわい」
フナリエ老に背を向ける。
良いお話相手でしたわ。楽しかったですのよ、それなりに。
「ああそうじゃ、これは手が滑っただけなんじゃがの」
ピーンと硬貨らしきものが背中越しに弾かれてくる。それをキャッチしてみれば。
「……百レネント硬貨?」
「ほっほっほ、太古にて使われていた硬貨の名も知るか。儂の大事な骨董コレクションじゃが、なぜか娘子の行く先で必要になる気がするでの、餞別じゃ」
「あら、手が滑っただけでは?」
「そうじゃったそうじゃった。まったく、歳を取ると一秒前に己が吐いた言葉も忘れるわい。──達者での」
「ええ、あなたも」
さて。
魔王は日課のアンデッド狩りをしている最中。
だから執務室への侵入は簡単だった。鍵? ぶっ壊しましたわ殴って。
鍵も見つけるのは簡単でした。デスクの裏に貼り付けてあるとか、隠し方が甘いですわ。本棚の一部を押すと仕掛け扉が開く的なソレでないと。
そうして立つは地下牢の扉前。錠前へ鍵を入れようとして……背後から近付く足音に振り返る。
「よぉ」
「あら、ご機嫌麗しゅう、ブラッド」
「……私もいるんだけど」
「ああごめんなさい。小さくて気付きませんでしたわ、エルレビ様」
一気に沸点までいきそうになるエルレビ。それを宥めるブラッド。
真面目モードですのね。
「お二人揃ってどうなされたんですの?」
「俺は散歩だよ」
「私は……私も散歩よ!」
「なるほど。私も散歩ですわ。カラカラのアンデッド退治の味変に、湿っぽいアンデッドを狩りに行きますの。どうですの、一緒に」
「おう。話が早くて良いなァ
「……地下牢は入り組んでいるから、馬鹿と新参だけじゃあ迷うに決まっているもの。私は付き添いよ」
肩を竦めるブラッド。もしかしてお兄ちゃんしてますの?
「ああ、それと。折角のところ申し訳ありませんが、私の部屋は今日限りで取り潰していただいて構いませんわよ」
「ええ、お帰りをお待ちしております」
大変ですわね、あなたも。クラウスとキャラ被りが。
……では。
御開帳~、ですわ。
シャラアという金属の滑る音。続け様に感じる風圧をショベルで横殴りにし、さらにしゃがむ。
頭頂のあった場所を通り抜けるは獄炎。
「骨女ァ! 跳躍!!」
「はいはい、ですわ」
剣を突いた姿勢のまま跳躍してきたブラッド。その足元へショベルを滑り込ませ、柄を思いっきり蹴ることで即席のバネになる。
纏う炎と共に大剣が刺し貫いたのは、ツギハギだらけの大男。
「っ、炎が消え──!?」
「ブラックネット・ピンポイント」
大剣の炎が消える。吸収される。そうして攻撃手段を失くしたブラッドへ噛みつこうとしていた大男。そのヘイトを強制的に私へ移す。
ブラッドが大男から剣を抜いて離脱すると同時、殺到するは三属性の矢。対象の属性耐性ガン無視で突き刺さるのが気持ちいいですわ~。
「助かったァ!」
「アンタがアンデッドになっちゃったら私達でどうにかしないといけないの忘れないでくれる!?」
「あら、そんな冗談も吐けるようになったのですね。安心しましたわ、私、トラウマを植え付けてしまったのではないかと思って」
「なんにも心に残ってないかって言われたらそんなことはないけど、覚悟が足りなかったのは事実だもの。魔族は過去を振り返らないもの。もう前だけ向いているわ」
「……それが良いことなのかはわかりませんけれど、少なくとも戦力外ではなくなりましたわね」
三属性の矢が突き刺さって、仰け反って……尚。
ぐらりと立ち上がる大男。
「このアンデッドに心当たりは?」
「ねぇなァ。アンデッドの呼び名なんざいちいち覚えてねぇのもあるが」
「私も初見。属性耐性はそこまででもないけれど、水属性を体内に置いているのでしょうね。だからブラッドの火が消される」
「ではこのアンデッド、仮称ネームレスで。フランケンシュタインだと誤謬を広めることになりますから」
「名前なんてどうでもいいさァ! 骨女、アンタの名前にこだわってねぇようになァ!」
おや、それは確かにですわ。一本取られましたのね。
じゃあネームレスからアンダーバーに変えますの?
「炎が効かなくとも、首落とせば死ぬだろう! 円輪牙!」
火属性の伴わない技とか使えたんですのね、という感想も彼方に、大剣を回転させるというよくわからない攻撃が大男の首へ直撃し……首半ばあたりで剣が止まりましたわね。
防御力がそれほどあるようには感じませんけれど、水分たっぷりでふわふわしている感じですわ? 腐肉にふわふわしているとか使いたくないですわ~。
「チィ──」
「ブラッド、剣を抜かずに屈みなさい」
「あ? っで、ぇ!?」
大人しく屈んだブラッドを踏み台に、刺さった剣を足場にして駆けあがり、首と剣の境目にショベルを差し込む。
差し込んで──ぐい、っと。
「これがショベルの、本来の使い方!!」
掘り、起こす!!
「エルレビ様、氷、お願いしますわ!」
「わかってるっつの! アイスバーン!」
一瞬で凍り付くネームレスの傷口。ショベルに纏わせるはナイトクロー。それを見て意図を察したか、ブラッドも炎を再度点火する。
「溶けながら、燃えろやァ!」
「首をこじ開けますわ~」
私とブラッド、どちらの膂力でも断てなかった首。それを三人の合わせ技で対処するのはパーティ感がより一層増しますわね。
ただまぁ、相手はアンデッドですので。
「噛まれなくなった、というだけですのよ」
「わかってらァ! 地獄刺し!」
我が意を得たりと言わんばかりにネームレスを滅多刺しにするブラッド。今更ですけど大剣の剣速じゃありませんわよね。
オーガ。その腕力、膂力は……羨ましいですわ~。
そんな風に地下牢へ続く道を進んでいきますの。
ただ。
「ふむ……」
「ん、どうかしたかァ?」
「さっきのネームレスもそうですけれど……彼ら、どこから来たのでしょう」
「どこって……アンデッドは地中を潜って移動するじゃない。だから、どこからでもあり得るでしょ」
「にしては綺麗な道ですわ。壁や天井も。……ああいうアンデッドが元からいた、ということはありませんの?」
「そういう話を聞いたことはねぇなァ」
「私も……。それに、思い返してみればさっきの大男……元の種族がわからなかったわね」
「ええ、ですから、元々アンデッド種族の一つであり、ここにいたことには意味がある……外のアンデッドがたまたま迷い込んだパターンではないと思います」
それでいて掘削痕がないのだから、あれは元からいたアンデッドになる。
ブラッドはこれでいて結構な古株だったはず。その彼が知らないとなると、随分と昔からひた隠しにされてきた存在である可能性が高い。あ、ゲームにも勿論出てきませんのよ。
「それと、気付いていますの?」
「あァ」
「……ま、流石にね」
ならいい。
……いや。面倒だし、後顧の憂いは消しておきたいし。
「何かご用ですの、クラウス様」
暗がりへ声を掛ける。
ブラッドは振り返らない。エルレビは私と共に暗がりを見遣る。
……しばらくして、観念したかのように出てくるは、山羊頭の魔族の男性。
「地下牢は立ち入り禁止だ。即刻引き返せ」
「お断りしますわ。私、魔王の軍門に降った覚えがありませんから。これ以上秘密にされてはいそうですかと頷いているほど辛抱強くなくってよ」
「クラウス、冷めるコト言うなやァ。──テメェを丸焼きにしてやってもいいんだぜ」
「アンタが来るってことは、魔王様は……ちゃんと何かを隠しているのね」
「エルレビ、ブラッド。そこの女は初めから魔王様の庇護下にないが、お前たちは別だ。魔王様によって生かされておきながら、あの方の定めた法を破るのか」
チリ、と大気を焼き始める炎。地下空間ってこと忘れてません? さっきは入り口近くだったからよかったですけど、そろそろ酸欠必至ですわよ?
「そうかァ、残念だなァ」
「ブラッド、私魔族の年齢には詳しくなくてよ。彼、シェボンかしら。それともカプリット?」
「ハ──まぁ、ギリギリ
劫炎。振り向きと同時に放たれた炎の斬撃。
それは突如として塞がった通路に阻まれる。
「……まさかとは思うけど、通路を均していたの、アンタじゃないでしょうねクラウス」
「醜悪な考えだ、エルレビ。魔王様が私へ牢の番などやらせるはずがないだろう」
「答えになってないけど」
「──ハ! どうでもいい! おいエルレビ、ちったァ悪いと思ってんなら、骨女を助けてやれよ!」
塞がった壁に大剣を突き刺し、赤熱を起こすブラッド。その言葉の意を汲み取れない私たちではない。
「恐らく彼のことです。扉、閉めてきたのでしょうから、炎を使い過ぎると酸欠を起こしますわよ。実力的に劣る彼の勝ち筋はそれなので、お気を付けを」
「ブラッド、必要なら地上へ通じる空気穴作っておくけど」
「必要だが意味ねぇさァ! こいつは土いじりができるんだからなァ! ほら、さっさと行け!」
それでは。
死亡フラグは潰したつもりですけれど、足りなかったらごめんなさいですわ~。
進んでいく。
既に地下牢の地下牢らしいところ……壁に架かった鎖や棘、なぜかあるモーニングスターなどが見えてきている。
けれど肝心の牢がない。アンデッドは普通に湧いているので感知しつつ殺しつつ進むけど、一向に牢が見当たらない。
「こんなものですの?」
「さぁ。そもそも地下牢って何のためにあるのかわかんないのよね。普通犯罪者も敵軍も殺すじゃない、とりあえず。捕虜って考え方も理解できなくはないけど、交渉とか甘っちょろいことを今までの魔王が考えたかっていうと、そんなことないだろうし」
「ああ、確かに。築城自体は今の魔王ではなくもっと昔の魔王がしたもののはずですものね」
「どれくらい前の魔王だったかは覚えてないけど、初代でないことだけは確かね。初代魔王の城跡は別のところにあるもの」
ふーん、ですわ。
……まぁ様式美で作ったとか? それか……作らざるを得ない何事かがあったか。
「ウ……ァ、ァア……」
「あら。感知に引っかかりませんでしたわね。そこの通路を曲がった奥の部屋にいますわ、アンデッド」
「部屋って……あるとしたら牢なんじゃないの?」
「これは一本取られましたわ。……じゃあ牢にアンデッドがいますの?」
慎重に。いつでも避けられる姿勢を取って……その牢を、見る。
そこには。
「……女性? ああ……バンシーっぽいですわね」
「……それはそうだけど、コイツの服……なんか古くない?」
「古い? 私流行には疎いのですわ」
「流行とか以前の話よ。私の……ウィッチの里の長老たちが着ている服に若干似てるもの」
バンシー。大括りアンデッドな魔族ですわ。ゾンビではありませんの。
それが、手足を鎖につながれた状態で、ウウ、ウウと呻いていますの。
「これが魔王の隠していたもの? ……魔王の血縁とかですの?」
「どう見ても違う種族でしょ……」
「けど、この奥に部屋はないようでしてよ」
どうやらここが最終地点の様子。ゲームに登場しない場所だからか、わかりやすい祭壇とかわかりやすい大広間とかがない。
えーと、このアンデッド……が、『
「とりあえず殺してみましょうか」
「いやアンタちょっと本気で引、」
「えいー」
ザクー。
アンデッドなど生かしておいて得はありませんからね。
格子の隙間からショベルを突き入れ、喉を断ちますの。
案外簡単に斬れる首。落ちる頭。
それはゴロゴロと転がって……格子を挟んで私達の前にまで来て。
「ウ。ウウ……アァァア」
「……嘘。どっちも動いてる?」
「アンデッドですから首が断たれても平気と言おうとしましたけれど、頭も体も動いているのは話が変わってきますわ。……元々デュラハンだった、とか」
「あり得ないとは言い切れなくなっちゃったけど、だとして何よ」
「確かに……あら?」
転がった首は……またふわーっと浮いて、首のないバンシーの元へ戻り、くっつきましたわ。
つなぎ目など欠片もないままに、ぴったりと。
「
その名前は知っている。
……が、魔王城に出てくる魔物じゃないし、アンデッドを名乗っておきながらアンデッドではない魔物がその名を冠していた。はず。
「──
声。私たちのすぐ後ろから。
「こんな入り組んだ場所に直接転移しましたの? 危ないことをしますわね」
「問題ない。その程度で私の血肉は潰れない」
「……魔王様」
元凶クソ魔王のご登場ですわ。しかも魔力をとんでもなく消費するはずの転移を使って。
それほど急いでいたのか。
それほど会いたくなかったのか。
「エルレビ、私があなたを責めることはない。私がこれをひた隠しにしてきたことがそもそもの原因なのだから」
「あら殊勝なことで。そう、全てあなたのせいですの。……だから説明なさい。本当は何が起きたのかを」
「……ここまで知られては、仕方がない。話そう。あの日、何が起きたのかを──」
無駄に溜めるんじゃありませんのよ。最初から話せ、ですわ~。