悪役令嬢転生かと思ったらゾンビパニックかい!   作:レッドアリーマー

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しばらく不定期更新化します


烈滅!

 私の部屋。私のための寝室。そこに繋がる戸を開くと、ベッドの上で安らかな寝息を立てて眠る私がいた。

 隣で息を呑む音。

 

「なん……で? 夢の主はあなたなのに、どうしてあなたがここで眠って……」

「私の夢、いつもそうですわよ。……でもだとしたら、やっぱり良からぬ気配は私のことですの?」

 

 ラファ・ダルクエルデという少女に憑りついた哀れな亡霊さんは。

 闇属性親和率が極めて高く、他の魂であるはずのアティアを何のデメリットもなしに留めておける性質は。

 

「ううん、それは……違うみたい。どちらかといえば、あなたのすぐ近くにいる感じがする……」

「あら、そうですのね」

 

 だとすれば、何か余計なものでも引き込んだか。

 地球じゃ恨みなんか買いようのない人生を送ったからなぁ、あるとすれば……まぁ。

 考えるだけ詮無いことか。

 

 眠る彼女の横でペラペラ話し合っていたからだろうか。

 ふと。

 その人形のような瞼が……開いた。

 

「え」

「あら、おはようですのラファ」

「ふぁふ……。……うわー夢。完全に夢ですのねこれ」

「ええ、夢ですわ」

 

 理解が早いようでなにより。

 

 私も面と向かって話すのは初めてだ。カーテシーでも決めておこうか。

 

「夢であるとわかった上で、改めて。おはようございます、籠の中の哀れな小鳥さん(ラファ・ダルクエルデ)

「おはようございます、地に落ちた悲しい小鳥さん(ラファ・ダルクエルデ)

「お互い様ですわ~」

「……なにこの二人。何があったら自分同士で煽り合いができるわけ?」

 

 半ば別人で半ば同一人物だからこそですわ?

 

 しかし、なんでしょうねこの状況。

 リリーガの意図したものではないようですし。

 

「あー、ちょっと待ってくださいまし」

 

 そう言って少女ラファは腰の後ろに手をやって……そこから書状のようなものを取り出す。

 あなた今まで寝ていましたわよね仰向けで。どこにどうやってひっついてたんですの? 夢だったらなんでもありですの?

 

「読み上げますわ。"拝啓、親愛なる【昇格者】チャン。ごきげんよウ☆ 君から貰ったプレゼントのお返しに、とっても素敵なステージを用意したヨ☆ この先君は世界の主役となっていくわけだけれド、主役が二人いちゃあ収まりが悪いだろウ☆ だから、二人で殺し合って、生き残るべき一人を決めてネ☆ 殺された方はこの先に行けないし、起きることもできないヨ☆"……以上ですの」

 

 直後、愛しき我が屋敷がスプラッター映画みたいな雰囲気に包まれる。目に見えて腐っていく壁や床。なぜかかかっていく血飛沫。

 バタンという音と共に私の部屋が舞台のセットのように開かれ、用意されるは処刑場。

 いつの間にかリリーガは観客席に移動させられていて、さっきまで彼女のいた場所……私と少女ラファの中間には二振りの剣が。

 

「な……なによこれ、私こんなの仕込んでいないわよ!?」

「わかっていますわ~。拝啓で始めておいて敬具で締めない常識知らずのせいで下手人が誰かわからなくなっているだけですの。リリーガのことは疑っていませんから安心なさいな」

 

 その転がった二振りの剣の双方を拾い上げる少女ラファ。

 

「ちょ……馬鹿、自分同士で殺し合いとか、何の意味があるか知らないけどやめなさい!」

「お優しい方。安心してくださいまし。殺し合いになどなりませんわ」

 

 そう言って、少女ラファは……二振りの剣を自らに向ける。

 

「遺言はありますの?」

「……どうして、とか。聞かないんですのね、あなたは」

「半分は余計なものだったとしても、もう半分くらいはあなたですからね、私。何を考えたかくらいわかりますわ」

「なら、遺言などないこともわかるでしょう。私はラファ・ダルクエルデ。何かを成し得た人生ならまだしも、何も成せなかった人生に遺す言葉などありませんわ。あなたは私より私であれる理由があった。私はこの世界では私で居られない理由があった。言葉とは生存競争の勝者のためのもの。なればこの口は」

 

 ぞぶ、と。

 剣が柔肌に突き刺さる……も、進まない。そりゃそうですわ、そんな体勢では入る力も入らない。

 無惨にもそこだけはリアリティ豊かに作られているらしい悪趣味な夢。だから滑るように歩み寄り、片方の剣を奪ってその首を落とす。

 

 ごろり、と。

 ラファ・ダルクエルデの首が転がる。

 

「言葉で……なく……血反吐を……吐き出す、ため、のみに……」

「敬意を表しますわ、ラファ・ダルクエルデ。あなたもまた、凄い少女でしたの」

 

 良い考えだ。『愛されるが故に死して』の世界であれば、ラファ・ダルクエルデに意味があった。だから私ではなくあの少女が生きた。世界に理由があった。

 ゾンビパニックの起きてしまったこの世界では、彼女は生きられない。この私に代わらなければならない理由があった。だから生まれ出でることもできず、言葉も残さず、今、生者に土を掛けないために自害した。

 素晴らしい凄さだ。それは確かに、私の愛したラファ・ダルクエルデなのだろう。

 

「ただ……初めから眠っていたあなたを叩き起こし、要らぬ苦痛と死を与えたことは、しっかり許しませんの」

 

 彼女の首を落としていない方の剣を踏んで弾いて掴み取り。

 大きく踏み込んで──投げる。

 

 闇のような空間。夢幻の構造。届くはずのないその刃は……確かに何かに刺さって止まる。

 暗澹の向こうで悲鳴が聞こえたきがした。

 

「晴れなさい。闇属性の誇りは内に秘めておくべきもの。ここは陽の沈まぬ国の都。死者を送る青空は、佳景と共になければなりませんの」

 

 スプラッター映画な空気が引いていく。

 空は澄み渡り、美しき王都の街並みが戻り、剣も血も消えて。

 少女の身体も、消え去った。

 

「っ、ごめんなさい!!」

「え?」

 

 唐突な謝罪。横合いからのそれは、いつの間にか立ち位置が戻っているリリーガから。

 

「こんな……こんなつもりじゃなくて。私はアンタに休んでほしい一心で……ああ違うの、言い訳したいんじゃなくて、でもアンタに余計な傷を負わせて……」

「落ち着いてくださいな。あなたを責めることはないと言ったじゃありませんの。これには別の下手人がいるのですわ。……しかし、夢を好きに弄ることができるのなら、『長老球(エルダーコア)』と『不死根(デッドレス)』に関する魔王の勘違いもいよいよ真実味を帯びてきましたわね」

「ホント……本当にごめんなさい。……こんな夢を見ちゃ、ゆっくり休めなかったでしょ……もうアンタの覚醒は近いのに」

「いいえ? 久しぶりに王都を巡って楽しかったですし、あの子のことは一応気にはなっていましたからね。その踏ん切りがついた、というのも僥倖でしょう。それでも何か罪滅ぼしをしたいというのであれば……あ、そうですわ。アーティファクトの破壊方法とかあなた知りませんの?」

 

 究極他人事な絵面だったろうに、ここまで心労をかけられるとは。

 根が善人過ぎますわね。もう少し清濁併せ呑めるようにならないと折れてしまいますわよ~。

 

「そのアーティファクトに依る……としか。ねぇ、本当に、」

「あ、じゃあ壊したいアーティファクトの特徴を教えるので、今から覚醒までの時間破壊法を一緒に考えてくださいまし。期待していますわよ【綰摂の御姫】さん」

「……くよくよしてる私がおかしいの、これ」

「当事者がなんとも思っていないことで一喜一憂できるのは素晴らしい感受性ですわ。お世話様ですわ~」

 

 くよくよする、とか。

 私の辞典には載っていない単語なので、正答は闇の中ですわ。闇属性だけに。

 

 

 そこから、びっくりするくらいちゃんとした議論が始まった。

 学園の教室まで来て、マギステックボードにちゃんとした絵図まで描いて。

 

「いい? まずアーティファクトというのは、『無尽蔵のエネルギーを放出し、自己保存を行い、且つ自己のエネルギーの対象にならない物体系』を指すの。これはなんとなく理解できる?」

「……言われてみれば確かに、ですわね。特に『自己のエネルギーの対象にならない』というのが」

 

 たとえば『触れたモノ全てを燃やし尽くす松明』というアーティファクトがあったとして、けれどそのアーティファクト自体は自らの火によって燃やし尽くされない性質を持つ。

 件の二つ、『長老球(エルダーコア)』と『不死根(デッドレス)』も同じだ。元の材質の問題も確かにあるけど、さらに元となった百代魔王とてその魔力によって自身をアンデッド化させることはなかった。

 自身の魔力は自身を傷つけない、なんてことはない。そうであるならもっと気楽にグラヴィティパルスを使っている。

 アーティファクト、並びにそれらに比肩する力には、自身を傷つけないための保護能力もあると。

 

「わかるかしら。つまりアーティファクトの定義に『不壊である』なんて存在しないのよ。だからどのアーティファクトも必ず壊す術がある。……まぁ聞いたことはないけど、『不壊である』ためだけに存在するアーティファクトがあったら必ずとは言えなくなるわね。無尽蔵のエネルギーを非破壊のために使っている、みたいな」

「そもを問いますが、アーティファクトは誰かの手で作られるものなのですか? それとも自然発生?」

「定義がこうってだけで、自然発生のアーティファクトと人造アーティファクトが存在するわ。明らかに意図的な能力を有しているものはだいたい人造ね。『永世盤久の宝珠』なんかがまさにそう」

「あれ人造だったんですの?」

「人間に都合の良い能力だけを持っているアーティファクトが自然発生するはずないじゃない。あれは私すら生まれていない頃の賢者が作り出したものよ」

 

 いや……人間に都合の良い能力のアーティファクトだけを厳選したって可能性もあるので一概には言えないと思いますけれど。

 

「話を戻すわ。アーティファクトが壊れないのは『自己保存を行う』から。基本的な魔力攻撃に対してはアンタがやってみせたように魔力を纏って抵抗し、物理攻撃に対しては魔力で自らを抑え込んで防御力を上げる。『不壊』だから壊せないんじゃなくて、抵抗されているから壊し難いだけなのよ」

「成程……無尽蔵のエネルギーを持っているからこそ、ですのね」

「そう。壊し難いだけならなんとかなるって思うやつはそこを考えていないわ。どこまで強力な攻撃だろうとさらにそれを上回るエネルギーで抵抗されちゃあどうしようもない。とはいえこのアプローチでもいけないことはないのよ。無尽蔵のエネルギーを有していても、出力量が無尽蔵に広がっていくわけじゃあない。アーティファクトの強化可能最大範囲を超えてダメージを出し続ければいつか破壊も適うかも、くらいね」

「とんでもない夢物語に聞こえますわ」

「ええ、そう言ってる。アーティファクトによっては自己修復機能のあるやつもいるからこの方法はオススメしない」

 

 あるいは、『勇者の魂』ならば容易に『不死根(デッドレス)』を破壊できる、というのは……並行世界からなんか引っ張ってきてますの?

 そうすれば実質無限の出力を得られるから、無尽蔵程度余裕、と。

 

「アーティファクトを壊すには、そのアーティファクトが最も不得意としている事柄で攻めるのが一番よ。さっき例えに出た『触れたモノ全てを燃やし尽くす松明』なら、燃やせないもので殴るとか、燃やせないものの中に埋めるとか」

「触れたモノ全てをと謳っているのに不燃物は燃やせませんの?」

「不燃物って……。そういう一般的な尺度の話じゃないわよ。というか発火するものなら全て燃やし尽くすの対象に入っちゃうだろうし」

 

 ああ……じゃあ発火温度が極めて高い物質を近づけたら、瞬間的に爆発的な火力を得られるのか。

 面白い使い方ができそうですの。欲しいですわそのアーティファクト。『聖なる燧石』とかそんな感じだったりしません?

 

「要するに真空中とか水の中に入れろって話ですわよね。けれどそれって壊す壊れる云々ではなく、機能しなくなるだけでは?」

「まぁそうだけど……機能しなくなるじゃダメなの? 話を聞いた感じ、それでいいと思うんだけど」

 

 ……。

 ……確かに。いいですわ、それで。アンデッドを暴走させる機能が失われればそれでいいのですし。

 

「失礼しましたわ。それで問題ありませんの」

「じゃ、これらを前提に、その『不死根(デッドレス)』ってアーティファクトのことを考えましょう」

 

 図示される『不死根(デッドレス)』。二股の切り株。

 その下に吊り下げられるは性質の箇条書き。

 

「・アンデッドを暴走させるエネルギーを発する。これは百代目の魔王の魔力説が濃厚なのよね?」

「ええ」

「とすると……闇と光属性は除外ね。他の属性で考えるべきだわ」

「なぜですの? 魔王は魔族なのですから、闇は残るのでは」

「アンデッドに感情も思念もないでしょ。そのどっちかが関わっていたら、アンデッド操作じゃなく人間の心や感情を操作するアーティファクトになっているはずよ」

 

 おお……確かに。アンデッドを暴走させることを勝手に闇属性のそれだと思い込んでいましたけれど、言われてみれば。

 あれ、いや、でも。

 

「敵意をコントロールする魔法が闇属性にありますけれど、それは?」

「何よそれ。そんなの知らないけど」

 

 がっくり。……と気を落としかけましたけれど、そういえばマルスメディスもブラックネットを食らって驚いていましたわね。

 ブラックネットを知らない感じでしたわ。

 もしかしてこの時代には無い魔法……いえ、魔法は万能から取ってきているものなので、無いとかない……強いて言えば発掘されていない魔法となるのでしょうけど。

 

「それ、今私にかけることできる? ああ夢の中じゃ意味ないか……」

「いえ、夢中でも効果が発揮されることは証明済みですのよ。ブラックネット・ピンポイント」

 

 久しぶりのブラックネット。

 気持ち現実の私から放たれることを意識して。トァンに攻撃されないようピンポイントで。

 

「っ……ああ……この感じ、闇だけじゃないわね……」

「え? でも線形を見ても闇属性しか現れていませんわよ?」

「置換魔法、使ったでしょ、私。あれと同じで、六属性に属さない魔法もまだまだ眠ってる。これはそういうものを参照している感じがするわ」

「……その未踏破未発掘領域の魔法は、思念や感情を持たないアンデッドの敵意を惹きつけることができる、と。そういえばアンデッドの知覚系も謎なままでしたわ。案外その辺だったりするのかしら」

 

 視覚や嗅覚ではない、索敵範囲に入ってから五秒で他存在を認識する何か。

 

「そして……『不死根(デッドレス)』が操っているのもその力。リリーガ、一つ問いを」

「ちょっと待ちなさい、これ解除するから……。っと、はい、なに?」

 

 いともたやすくレジストされたことに遺憾を覚えながら。

 

「先ほどのたとえ話。『触れたモノ全てを燃やし尽くす松明』を、『既に燃やし尽くされたモノ』で殴ったり埋めたりしたら、どうなりますの?」

「あー。……その場合でも機能しなくなるでしょうね。……成程、そういうアプローチも」

「ええ、このブラックネットやアンデッド視界に関する魔法部分で『不死根(デッドレス)』をぶん殴れば、案外ころっとなんじゃないか、と思いまして」

 

 リリーガが箇条書きに文章を付け足す。

 ・アンデッドを暴走させるエネルギーを発する。エネルギーは闇属性、ないしは敵意を司る未知の魔力で構成されている。

 

「そして、アンタがチラっと言ってたことだけど……、・物理攻撃を仕掛けた時、無力化されているような感覚を覚えた。これで合ってる?」

「ええ、はい。『永世盤久の宝珠』を打撃した時にも同じ感覚を覚えましたけれど、『不壊』が定義にないのなら、全アーティファクト共通ではないのですね」

「特にツッコミはしないけど、そうね。打撃の瞬間に魔力が装甲になって出てきていて、それが防御をしているんだと思うわ」

「もしかしてですけれど、敵意を司る未知の魔力を纏って打撃すれば、その魔力装甲をすり抜けて打撃が与えられる、とかありません?」

「……可能性は無くはないわね。ただ知性ある滲み出る侵蝕に闇属性が効かない……すり抜けるように、同じ魔力だからこそ効かないってこともあると思うから、五分五分」

 

 加えるのなら、普通の魔法を纏うのも至難で、闇属性の魔力を体外に放出するのも難しくて。

 そんな状態で未知の魔力をショベルに纏わせる、ができるかどうか。……ま、やるだけやってみますわ~。

 

「最後に一つ気になっていることがあって、・そのアーティファクトは底なし沼に安置されている。これなのよね」

「それが何か?」

「いや、どうやって浮いてるのよそのアーティファクト。浮く機能なんかないでしょ」

「……いえでも、『永世盤久の宝珠』も浮いていますわ?」

「あれは台座に見える金銀の両手込みのアーティファクトだからよ。宝珠って謳ってはいるけどね」

「いえでもほら、普通のアーティファクトもなんだかんだちょっと浮いていますわ?」

「魔力が放出されているから浮いていると仮定して、じゃあどうして動かないでいられるの? じゃあどうしてそのアーティファクトの周囲の沼が沸き立ったり凹んだりしていないの?」

「それは……」

「あと、その沼からもアンデッドが湧き出てるんでしょ。なら、沼自体がアーティファクト、ないしは何らかの術式下にあると考えるべきよ。所謂ミスディレクションよね。『不死根(デッドレス)』にしか目が行かないようにして、その沼地全部が手品の種ってわけ」

 

 ……なんて。

 なんて……有意義な時間。

 ためになる。あまりにも。

 

 世界が平和になったら、間を縫って学びたいですわね、アーティファクト。

 

「『不死根(デッドレス)』に安定性を与えているのも沼地の術式かもしれないわね。噴流が凸形状の物体表面に沿って流れる現象みたいに、その沼地から人間じゃ感知できない類の魔力流が垂直方向に出ていて、その中心に別の魔力塊である『不死根(デッドレス)』が安置されているのなら納得だわ」

「仮に……底なし沼の底部に術式が描かれていたとしたら、どのようにしてそれを停止させますの?」

「そんなの力業よ力業。火か光属性の火力お化けを連れてきて辺り一帯ぶっ飛ばさせなさい」

「……それは、得意そうな方々に心当たりがありますわ」

 

 四騎士とリベルタ……でなくともブラッドの火力でぶっ飛ばせそうですわね。

 

 そんなあたりで、世界が白み始める。

 これは。

 

「あー……限界みたい。アンタの覚醒よ。……いいの、最後にこんな話で。もっと色々……」

「こんな話だなんてとんでもない。とてもためになりましたわ。あの美しい王都を取り戻すために役立ちそうですの。そして、一刻も早く美しき世界を手にするために、後ろ髪を引く夢とはおさらばしますわ」

「……そ。なら……頑張んなさい」

 

 ふわりと消えていくリリーガ。伴い、教室も学園も、王都の街並みも、光の粒となって消えていく。

 後に残るは地平線。

 

 眼前に広がる無数のアンデッドと。

 後方に犇めく無数の敗北者たち。

 

「適者生存……が合っているか合っていないかは別として。私の後方で私に縋りつくあなた方は敗者ですの。アンデッドとの生存競争に負けた敗者。──ですが、私は敗者を嘲りませんのよ。残念ながらこのトーナメントに敗者復活戦はありませんが、私が王座を手にするための土台にはなってくれているのでしょう」

 

 ショベルを持ち上げる。

 血が、腐肉が、汚泥が、半月を描いて追従する。

 

「喜びなさい。私の礎となれたことを。歓びなさい。地平の果てにて。そして慶びなさい──新たなる王の誕生を」

 

 だから。

 

「ついてきなさい。亡霊も敗者も、私の民となるのなら見捨てはしませんわ」

 

 その足掛けに、初代魔王を熨しますわよ。

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